夏色ロマンス
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私は、占いとか信じるタイプじゃない。まあ、たまに星座占いで1位だったとき限定で信じたりはするけど。
そんな私が、確信している。もしこっちの世界にも星座占いなるものが存在するならば、今日の私の運勢は超スーパーラッキーだ。
「イーーーターーーチーーーにーーーいーーーさーーーーん!」
私は、窓の外に見つけたソレをわしづかみにして、早速イタチ兄さんに見せに行った。
「…………で、何でオイラの部屋に居るんだ?うん」
「だってイタチ兄さんに見せたら、何か物凄く冷めた目で見た挙げ句にウンともスンとも相槌すら打たずに去ってしまったのです」
「それで何でオイラの部屋に居るのか、全然答えになってねえぞ、うん」
「デイダラ君なら、せめてうんとは言ってくれるなあと思いまして」
「…………うん」
呆れた表情をしているデイダラ君に、私はようやく、後ろ手に隠していたものを見せた。
「…………カブトムシ?」
「ちょーかっけくないデスか!マジこのツノ!ツノ!」
「………………」
窓の外の壁にはりついていた所を、見事に確保したというわけだ。つやつやとした逞しい体躯。すらりと伸びる長いツノ。これぞ昆虫の王者!そして格好の遊び道具!
そのカブトムシを前にして!いつもうんうん言ってるデイダラ君がさながらイタチ兄さんの如き冷たい目をしてるなんて、カブトムシに対する冒涜!
「グレート・カブトムシアターーック」
「テメェ何しやがる!うん!」
余りにも反応が無かったため、カブトムシをデイダラ君の顔面に這わせたら怒られた。
カワイイじゃん、カブトムシ。
「顔はやめろよ顔は!もしゃもしゃするだろうが、うん!」
「可愛らしいじゃないデスか、ね?」
「お前はオイラに、どういう反応を求めてるんだよ……うん」
「『凄いぞ名前!偉いぞ名前!』」
「カブトムシ如きでそんな反応期待すんな、うん」
いやでも、すでにこの時点でイタチ兄さんよりもよっぽどマシな反応を得られている。さすがはデイダラ君だ。
「まあでも……ちょっとやってみる価値はあるな、うん」
「はい?何です?」
「良いから1時間くらい待ってな。そしたら遊んでやるから、うん」
その言葉を信じ、部屋を出ること1時間。
カブトムシくんがいるお陰で退屈はしなかったけど、デイダラ君は未だに部屋から出てこない。
「デイダラ君、まさか騙したんじゃないでしょうね……もしそうだったら、今晩デイダラ君のご飯にカブトムシゼリーを混入し…」
「おいコラ。何考えてやがる、うん」
「あ、デイダラ君」
いつの間にか出て来てた。
「また下らねー事考えてたろ、うん」
「やだなぁデイダラ君、冗談デスよ冗談」
いや、お前ならやりかねない。なんて失礼な事を言いながら、デイダラ君は白い粘土の塊を取り出した。
「見てろよ、うん」
掌の口でそれを飲み込み、何度か咀嚼する。そして相変わらず、ちょっと気持ち悪そうに吐き出したものは。
「カブトムシ!」
「どーだ、凄いだろオイラの芸術は。うん?」
「凄い凄い!かっけー!カブトムシ!」
「勿論他の芸術作品同様、ちゃんとでかくなるぜ、うん」
「すっげーーーー!」
煽てられて万更でもなさそうなデイダラ君。こうなったらアイスを奢ってもらうまであと一歩!
「デイダラ君デイダラ君、それ飛べます!?飛んでみましょうよ!」
「飛べるに決まってるだろ、うん!」
デイダラ君が印を結べば、ぼわんと白い煙に包まれて、芸術作品のカブトムシが大きくなる。充分二人が乗れるサイズだ。
そちらに気を取られているうちに、本物のカブトムシはとっくに開け放たれた窓から逃亡してしまっていたのだが、今更どうでも良い事だ。
「お前もようやく、オイラの芸術が分かるようになったな、うん」
「またまたぁー。私は前っから分かってますって!さあデイダラ君、行きましょう!」
何だかやけに嬉しそうなデイダラ君の背を押して、巨大カブトムシに乗り込む。
いざ、甘味処へゆかんや!
(あっ見て下さいデイダラ君!あんな所にかき氷の旗が!)
(…………今ようやく、お前の目論見が分かったぜ、うん……)
→御礼
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