綻び
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アレだ。
人間って唐突にピンチに直面したら、全然駄目になる人とピンチにこそ実力を発揮する人とに分かれると思うんだ。マジで。
………で、私はどっちだろうか。
アジトの暗い廊下を走りながら、そんな事を考える。
後者であって欲しいな。いや、後者じゃなかったらマズイ。
何でかって?
簡単に説明するなら数分前、アジトにトビ君が来たんだ。
で、私はアジトにひとりでお留守番中だった。
あー名前さーん今日は暇なんスかー遊びましょー。→いやいや、遊ばないから。(逃走)→あ、隠れんぼっスか?上手く隠れなきゃ、すぐ見付けちゃいますよー。
もうね、ホントこの人さ。
お面割りてェ。
「…………っ!」
気配を感じ、咄嗟に物陰に身を隠す。
廊下をるんたったと歩くトビ君。
「名前さーん。どこっスかー」
危ない危ない。バレてない……かな?
「名前さーん?」
…………いや、
あの口調って事は……演技中、だよね。
ばれてる?
しかしトビ君は、向こうの方に歩いていく。
何だ。私も結構、気配隠すの上手いんじゃん。
「………もう大丈夫かな」
「名前さん見ーっけ!」
「ぎゃあ!」
そういやこの人、神出鬼没なんだった。
背後を取られた私は、慌てて振り向こうとする……が、
「名前さん確保!」
「わぁっ!?」
後ろから両手を掴まれ、いわゆる「ばんざーい」の格好にされる。
なんつーか、えらい屈辱。
「トビ君!離して下さい!」
「えー、嫌ですよー」
折角捕まえたのに。
ぼそ、と呟いたその声は仮面で曇ってはいたけど、確かに私の耳に届いた。
あれ?もしかして、何気にマダラさんモード?
「名前さん、僕の事避けてるでしょ?だからちょっと、」
私の腕を掴んだ手に、力が込められた。
手首が、鈍く痛む。
「少しゆっくり、お話したいなぁって思って」
「……だったらこんな事しなくても、普通にお喋りしましょうよ」
「だって名前さん、離したら逃げちゃうでしょ」
いやいや逃げるだなんてそんな。全力で逃げますが何か。
手首が痛い。どんな握力してるんだよ。
でも弱味を見せたら負ける気がして、至って平然を装う。
「前から聞きたかったんスよねー。名前さんって、どこから来たんスか?」
やっぱり、その話題か。
私に答える気が無い事を見抜いたのか、手首を掴む力が脅しレベルに強くなった。
思わず、顔が歪む。
「………っだから、言いましたよね?異世界から来ましたよーって。っていうか、そんなのデイダラ君から聞いたら良いじゃないデスか」
「デイダラ先輩経由では、聞きにくい事もあるんスよー」
「じゃあリーダーとか」
「俺、まだ正式な暁のメンバーじゃないんスよ。リーダーに会うなんてとてもとても」
嘘つけェェェ!!どの口が言うかラスボスが!
何か、カチンと来た。
「………ふーん、そうです、かっ!」
まさに不意打ち。トビ君の脛を、思いっ切り蹴り飛ばしてやった。
「痛っ!」
手首を掴んでいた力が緩み、その隙に振りほどく。
「へっへーん!名前ちゃんを舐めてたら痛い目に……」
思い切り罵倒して去ってやろうと思い、意気揚々と振り向いた瞬間、
私はほとんど本能的に、視線を伏せた。
今、
目を合わせたら駄目。
写輪眼、だ。
「………あれ?名前さん、何してるんスか?」
「……いやー……ちょっと、」
口調はトビ君なのに、口調以外はもう全部マダラさんだ。
しかも写輪眼発動中。マダラさん本気モード。
「……この際はっきり言いマスが、」
「ん?なんスか?」
「……トビ君、ちょっと怖いデスよ」
視線を上げないまま言うと、トビ君はからからと笑う。
「あはは、暁のメンバーに囲まれて暮らしてる人が、僕如きを怖がってどうするんスかー」
「……それでも、怖いモンは怖いんデスよ。あんまり関わらないでくれません?」
「えー、酷いなあ」
トビ君は、どこまでも道化をやめないつもりらしい。
そりゃ都合は良いけど、怖い事に変わりは無いんだよなあ。
「そんな事言われても、僕結構名前さんの事気に入ってるんでー、これからもしつこく絡みますよ?」
「そーデスか。じゃあその度にデイダラ君を盾にさせて頂きます」
殺気が消えた。
ようやく私は、視線を上げてトビ君を見た。
「ま、かなり嫌われてるみたいなんで、今日は帰るっスよ!また会いましょーね!」
トビ君は、さっきまでの迫力はどこへやら、一変して「いつものトビ君」のノリでぱたぱたと手を振り、アジトの出口へと歩いていった。
「………っバーカ!ドーナツ野郎!」
その姿が見えなくなってから、私は思い切り叫んだ。
こういうのを、負け犬の遠吠えって言うんだろう。
(だって、彼れはあたかも平穏を壊す綻びの様で)
→御礼
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