百物語って、一度はやってみたいよね。
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「あーーー」
「つーーー」
「いーーー」
上から順にデイダラ君、飛段君、そして私の台詞だ。
この所、蒸し暑い日が続いている。
昼間だけならまだ良い。夜も暑いのはホント勘弁だ。
今は日暮れからまだ間もない頃。
濃紺の空は夕焼けの名残を残し、僅かに白んでいる。
うん。「夏は夜」っていうし、趣があって良いんじゃないかな。このうだる様な暑ささえ無ければ。
「ヤバイってこれはマジで………名前ちゃん、溶けて死んじゃう」
「それ、面白そうだな」
今は飛段君の軽口さえ相手する気にならない。(まあ、いつも大して相手にしてないけど)
「アイスか何かねーのかよ……うん」
デイダラ君が角都さんに訴える様な視線を送ると、角都さんは「そんな贅沢は要らない」と一蹴した。
でも流石の角都さんも、今日は頭巾を脱いで髪も結っている。
「っつーか、何で居間に全員集合してんだよ!だから暑いんじゃねーのか!うん!」
だってそれは仕方無い。
個室はサウナ状態。
窓を開けても向かい合うドアを開けなければ風は通らず、まさか他のメンバーに私生活をひけらかしたい人なんていない訳だし。
個性豊かな暁メンバーと言えども、こんな時に考える事は一緒。
一番広くて涼しそうな場所という事で、見事に全員が居間に集合したという訳。
オマケに今日に限って、リーダーと小南ちゃんがいる。(いや、小南ちゃんは全然構わないんだけどね)
やがて体感温度と我慢の限界ゲージが臨界点ギリギリまで上がった頃、頭の中が涼しそうな彼が唐突な話題を持ち出した。
「怖い話しねぇ?」
飛段君は、「怖い話すると体が冷えるって言うだろー?」なんて得意気に言うけど、そんなアナタ、存在自体がホラーみたいな人に怖い話なんて言われても。
「怖い話をしたら冷えるというのは、怖い話で怖がる人間に限られる話だ」
イタチ兄さんが、もっともな意見を言う。
幽霊なんて怖がってたらS級犯罪者なんてやってられないだろうし、暁のメンバーには涼しくなれる人はまずいないだろう。
「名前は、怖い話は平気なんですか?」
鮫さんが、鮫肌の手入れをしながら聞いてくる。
「私デスか?あー……
…………怖い話苦手ー」
イタチ兄さんと目が合った。あは。
「えらく間が長かったですね。本当に苦手なんですか?」
「いやー、幽霊とか怖いよちょー怖い」
ついでにリーダーとも目が合った。
一言で形容するならば『胡散臭い』と言わんばかりの表情をしている。
「じゃあ名前は、幽霊とか信じてるの?………………馬鹿ラシイ……幽霊ナンテ居ル訳無イダロ」
「あー………信じてるか信じてないかと言われたら…………微妙なラインかな?」
イタチ兄さんとリーダーから「嘘をつけ嘘を!」という圧力を受けた様な気がしたけど、気にしない気にしない。
「名前にも苦手なモンなんかあったんだな」
「え、サソリさんそれはどういう事デスか。私にだって弱点くらいありますよ。だって、女の子だもん☆」
「あ、何か今ちょっと寒くなった……うん」
「……分かってるけど何その反応ムカつく……」
乙女心(?)を理解しないデイダラ君に制裁を加えるべく立ち上がったら、「暴れるな暑い!」と、暴れる前から角都さんに怒られた。
「じゃあ名前さん、何か怖い話して下さいよー」
「ちょっと待ってトビ君!いつから居た!!?」
「えーと、一応『名前ちゃん、溶けて死んじゃう』くらいから居たッスよー」
何この人。気配が無いの?存在感が無いの?どっち?
「……………名前、いらっしゃい」
私の、トビ君に対する微妙な視線に気付いたのか、小南ちゃんが私を呼んでくれるの……だが。
「えー、名前さん怖い話して下さいよぉ」
右手をがっしり掴まれた。
「……………トビ?その手を離しなさい?」
あれ?何だろう。熱帯夜だってのに、小南ちゃんの背後に一瞬ブリザードが見えたぞ?
「あ……じゃあちょっとした怖い話でも……」
「わーい♪」
そんな必要無いのに、マダラさんに気を遣っちゃった……。
とは言っても、怖い話のストックなんて無い。精々学校の怪談くらいだ。
………………仕方無い。『アレ』でいくか。
「じゃあー……聞きたい人だけ集まって下さい!」
集まったのは、言い出しっぺの飛段君と興味本位のデイダラ君、そしてトビ君。
「それは、丁度こんな暑い夏の日の事だったんですよ……」
集まってない人には聞こえない様な絶妙な声量で話す。
で、まあ内容は割愛するとして……3人の反応は。
「うおぉぉ何だそれ!滅茶苦茶怖ぇぇぇ!」
「ぎゃぁぁ!僕もう今日から神経過敏になりそうッスよぉぉお!」
「名前!テメーどこからそんな情報手に入れるんだ!うん!」
「大成功ー」
冷や汗を垂らしながら様子を見ていたリーダーにブイサインを送ると、リーダーは深い深いため息をついた。
「名前……一体どんな話をしたんだ……?」
「え?な い しょ デスよ♪」
煩い3人がおとなしくなった後の居間は、それでも特に気温が下がるなんて事は無く、やはり蒸し暑い夏の夜は、ゆっくりと更けていくのでした。
(あ、似たような話ならまだありますが、)
(もう良いもう良い!うん!)
→御礼
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