勝負にお世辞は必要無い。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「………団子が無い」
事の発端は、イタチのこの一言だった。
じゃあ、自分の買い物ついでに買って来ようかと小南が言い出せば、自分で買いに行けとか女性をパシリに使うなとか、主に名前とペインから囂々と非難の声が飛ぶ。
「良いのよ2人共。どうせ私も買わなきゃいけないものが……」
「「じゃあ私/俺も行く」」
普段は決して意見を同じとしない2人が、綺麗にハモりながらそう言った。
小南は状況を理解しているのかいないのか、どっちがついて来るの?と呑気に尋ねる。
「…………リーダーはいつも忙しいんデスから、アジトでゆっくりしていて結構デスよ?」
「何だ名前。お前いつからそんな良い奴になったんだ?お前こそ、修行のひとつでもしたらどうだ?」
2人の間の空気が摂氏零度を下回った頃、見かねたイタチ兄さんがそろそろ昼にしないかと提案する。
それを聞いて、名前の頭の中で(表現としてはいささか古典的ではあるが)白熱電球が明々と輝いた。
名前はペインの腕を引き、耳元に口を寄せた。
「じゃあ……ひとり一品、お昼のおかずを作って美味しかった方が勝ち。小南ちゃんと一緒に買い物に行けるって事でどうでしょう」
「………名前。言っておくが俺は上手いぞ」
「料理なら私だって負けませんよ?」
2人の視線というか闘志が、ばちりとぶつかって火花を上げた。
「じゃあ、私とリーダーがお昼御飯を作りますので、小南ちゃんとイタチ兄さんはまったり待っていて下さい!」
名前が高らかに宣言すると、小南とイタチは少なからず驚いた様な顔をする。
「何故リーダーが昼ご飯を?」
「……………………そんな気分だからだ」
勘の良いイタチは、ペインの長すぎる沈黙で全てを察したらしいが、小南は「ペインの手料理なんて、久しぶりだわ」なんて言って笑っている。
そして、試合開始のゴングは静かに鳴らされた。
小一時間後、食卓に並んだ料理の数々。
篭る気合いが伝わってくる。
「あら、美味しそう」
ペインと名前との間に満ち満ちている殺気に気付いていないのか、相変わらず小南はのんびりと笑って席に着いた。
「名前は料理が上手なのね」
「えへへー」
よしよし、と小南に頭を撫でられている名前に、ペインの苛々度が更に上昇する。
その様子を傍らから見守っていたイタチは呆れた風にため息をつき、目の前のおかずを口に運んだ。
「………これを作ったのは?」
「あ、それは私デスよー。お味はいかがデスか?」
イタチの評価を聞こうと、名前が催促する。
興味無いふりをしているペインも、耳をそば立てているのは明らかだ。
「………少し塩辛くないか」
「普段団子ばっかり食べてるからじゃないデスかー」
「………(コイツ…)」
イタチの評価に即座に反応した名前は、じゃあリーダーの作った料理を食べてみろと催促する。
「……………」
一口食べて、すぐに分かった。
僅かな差ではあるが、ペインの料理の方が美味しい。
だがそれを正直に口にしてしまえば、全く面白くない結果になってしまうだろう事は目に見えている。
「…………どっちもまあまあだな」
「えー!」
そもそもこの勝負、優しい小南は「どちらも美味しい」と言うに決まっているのだから、後はイタチの判断にかかっているのだ。
それなのにこんな曖昧な返事をされたら、いよいよ決着がつかない。
「じゃあー……見た目的にはどっちが美味しそうデスか?」
「別に、どっちも普通じゃないか?」
「……………イタチ兄さん、ちょっと遊んでません?」
「さあ」
明らかに遊んでる。
「くそう、リーダーどうします?」
「………自分が何をしているのか、だんだん阿呆らしくなってきた」
「いやいやいや、そこは考えちゃ駄目デスよリーダー」
台所に逃げ帰り、2人でひそひそ話していると、食卓から食器の重なる音と椅子を引く音がした。
どうやらイタチも小南も、食べ終わったようだ。
「つーかリーダー、アンタいっつも小南ちゃんと一緒に居るじゃないデスか!少しは譲りなさいよ!」
「気に食わないから却下」
涼しい顔をしているペインに苛々をつのらせる名前だが、何か考えついたのか、にやりと嫌な笑みを見せた。
「……つーか、これ全部小南ちゃんにばらしたら、圧倒的に名前ちゃんの勝利じゃね?小南ちゃん、私に甘いし」
「………卑怯な」
「はっ!聞こえまっせーん!小南ちゃん聞いて下さ…」
居間に戻ると、イタチと小南、そして……
「あれ、鮫さんおかえり……な、さい……」
鬼鮫の手には、白い袋。
「………何それ」
「ああ、道中に甘味処があったものですから、お土産に団子をと」
イタチは早速お茶の準備を始め、小南は「じゃあ買い物はまた今度にしましょうか」と、ソファで寛いでいる。
「リーダーも来ているんでしょう?一緒に…」
「空気読め馬鹿ぁぁぁぁ!」
うわぁん!と泣き真似をしながらどこかへ走っていく名前を、鬼鮫は呆れ半分困惑半分の表情で見送る。
「何ですか、あれは」
「ふふ、お買い物に行けなかったものだから、落ち込んでるのね」
小南の一言に、イタチが驚いた表情をする。
「気付いてたのか」
「ええ、料理対決でしょう?あの2人、何だかんだ言って仲が良いのよね」
「じゃあ何故、知らないふりなんか……」
イタチの質問に対して、小南は当然と言わんばかりに、そして限りなく白く眩しい笑顔で言った。
「だって、じらされてる2人って可愛いでしょう?」
色んな意味で、小南暁最強伝説が生まれた瞬間だった。
(名前、ペイン、一緒にお団子食べましょう)
(リーダーの分も食べまーす!)
(ふざけるな誰がやるか)
→御礼
1/2ページ