素顔のまま、君にキスをした。
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「……ねーマダラぁ」
ゆりが、甘えた様な声で俺を呼んだ。
窓際に座って本を読んでいた俺は、ページから視線を離す事無く、何だかよく分からない生返事をする。
「……マダラ」
「ああ」
「……凄く集中してる?」
「ああ」
「…………今日の天気は?」
「ああ」
会話をしながら読める様な易しい本では無いので、つい適当に返事をしてしまう。
………否、本当は本の内容なんて、全く頭に入っていない。
聴覚はゆりの小さな呟きすら拾うし、全身の感覚はゆりの立ち場所や表情すら感じ取ろうと必死だ。
全く、我ながら呆れた集中力だな。
「マダラー」
「……………」
それでも返事をしないのは、ごく単純な理由。
ゆりをじらすと、大層愛らしい表情(やや親父臭い表現だとは思うが、事実だ)を見る事が出来るからだ。
ゆりは唇を尖らせ、俺と背中を合わせて窓際に座る。
「マダラー、つまんないー」
「………デイダラにでも遊んでもらえ」
「あ、良いのかなーそんな事言っちゃって。浮気しちゃうぞー」
「…………」
冗談で言ったつもりだったのだろうが、俺はゆりの服の裾を強く引いた。
「わ……マダラ、冗談だよ」
「なら良い」
「……とか言って、また本読むし」
我儘というか何というか、かなりしつこい筈のこの娘だけれど、それすら愛しく感じる自分は、既にかなりの重症なのかも知れない。
そんな事を考えていたら、ゆりが俺の背中に全体重を預けた。
背中越しに伝わる体温、ずしりと感じる体重が心地良い。
「マダラー、御面取ってよ」
「……………」
「2人きりの時くらいさ、良いじゃんかー」
ゆりの声が、いよいよすねた調子を帯びてくる。
これ以上放置したら、ゆりの機嫌は最悪になる。
そうならない程度にじらす。
それがなかなか面白いのだ。
「マーダーラー!御面取れー!私に構えー!」
遂に本音が出たゆりに、俺は仮面の下で苦笑いを浮かべた。
じゃあそろそろ、構ってやるかな。
「マダラ!マダラ!マーダー………んっ、」
良い加減に煩かったので、仮面をずらして口付ける。
一瞬驚いた顔のゆりだったが、すぐに目を閉じた。
ディープを期待しているのか。
だが残念。ちゅ、と小さなリップ音を立てて唇は離れる。
「……………」
「どうした?」
白々しく尋ねてやると、ゆりはすねた目で俺を睨んだ。
「意地悪」
「お前の言う通り、仮面は外しただろう?」
「やだ、全部外して」
ゆりが、仮面に手をかける。
やれやれ、やはり我儘な娘だ。
「俺の素顔は希少価値なんだ」
「また訳分かんない事言ってるし」
からん、
仮面が床に落ち、また唇が重なった。
(キスする時だけ、外してあげよう)
(君にだけ、見せてあげよう)
→御礼
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