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探偵ワトソンは眠らない


#5 探偵と暗号




特別棟3階の奥にある図書室。今日も僕はそのドアを開ける。その1番奥の右から2番目の椅子に座る彼に持っていた2枚の紙を見せつける



『ワトソン、これなんだと思いますか?』



そこには 3415445 と 1253243 と書かれていた




遡ること2週間前





________

『ふぁ〜あ』

僕は大きなあくびをしながら昇降口に入ると、見慣れた背中を見つけ声をかける



『実花ちゃんおはよ〜!』


「あっセトカちゃんおはよう!」



加賀野実花ちゃん。あのときは探偵と犯人の関係だったが今はクラスで1番仲良しな友達である


「セトカちゃん昨日の数学の小テストできた?」


『無理…あれ半分以上できないと追試なんでしょ…自信ないわ〜、』


「あはは、私も!毎週とか辛すぎだよね!しかも月曜の1限だし!」


『ほんとそれ〜!!担任が数学担当とか聞いてないし……超怖い…』


「わかる!でも意外だなぁ…セトカちゃん数学得意そうだと思ったから…」


『えっ、僕、数学超嫌いだよ?嫌いすぎて数学の授業全部把握してるから。月曜1限でしょ、水曜5限でしょ、木曜3限でしょ、金曜4限』


「探偵って数学とか得意そうなのに…」


『た、探偵だって苦手分野くらいあるもん…』


「ふふっ、そうだね。ってあれ?何これ?」



教室に入ったとき、実花ちゃんが不思議そうに声を上げる

実花ちゃんの机の下に何か紙が落ちていた。
それはただの1年の学年通信に見えるが裏の真っ白な方に赤いペンで何か数字が書いてある



『3415445』


「なんだろうこれ?」


『何かの暗号……?』


「うーん意味分かんないね」


『昨日帰るときはこんなの無かったよね?』


「うん…」


『3415445……さよいごよよご?みしいごししご?なんじゃこりゃ…?』



「おーい、お前ら!早く席につけー!」



ちょうどその時、僕等の担任が教室に入ってきて言った



「今日は42人全員居るな。今日は放課後、図書委員の集まりがあるから該当するやつは1年C組に行くように……」



担任がホームルームをする。
3415445…かぁ……これが一体何を意味するのか…そしてなぜこんなところにこの暗号が残されていたのか…
誰が、何の目的で…



「…加瀬、黒川、本山の3人は明日の放課後、数学の追試だ。勉強しとけよー」



良かったよかった。僕は追試じゃないらしい
僕はほっと息を吐く


分からないことだらけだが、
まずは誰がこの暗号を残したか、だ。
昨日、僕と実花ちゃんは曜日制の掃除当番で放課後、教室を掃除した。その時にはあんな紙は落ちていなかった。つまり、あの暗号が残されたのはその後。確か、昨日はこの教室でどこかの委員会の集まりがあったはず……えっと…どこの委員会だっけ?


僕は隣の席の実花ちゃんに小声で聞く



『実花ちゃん、昨日ここの教室で集まりやったのどこの委員会だっけ?』


「生徒会だよ」


『生徒会?』


「うん。担任の先生が生徒会の顧問だからここでやるって言ってたじゃん。昨日と、来週もやるからさっさと掃除しろって。聞いてなかったの?」


『ああー!!も、もちろん聞いてたよ!ありがとうね!』



そんなこと言ってたっけ?僕は密かに首をかしげる

生徒会かぁ、この学校では確か、2年生と3年生で構成されてるって言ってたな。
あいにく、僕に生徒会の知り合いは居ない。
そうだ!あの先輩に聞いてみよう

僕はラインで先輩の名前を探し、メッセージを送った。





________

「なるほど、それで私が呼ばれたわけね」



『そうです!桜先輩なら何か分かると思って!』


この人は高槻桜先輩。ダニエルくん殺人事件で仲良くなった先輩だ



「残念だけど私は生徒会とかよく知らないのよねぇ…」


『そうなんですか…』


「でもがっかりしないで!私の友達の生徒会役員呼んどいたからもうすぐ来ると思うよ!」


『せんぱぁい!さすがです!ありがとうございます!』



さっすが僕の頼れる先輩だ



「あっ来た来た!日高〜!こっちだよ〜!ってあれ?未央は一緒じゃないの?」



来たのは白髪紫目のチャラそうな先輩。この人が生徒会の人?もう一人くる予定だったのだろうか?



「ああ、未央は面倒くさいからパスってさ。まぁこの生徒会長様が何でも答えてあげようじゃないか!」



ふふんと気障ったらしく鼻を鳴らす



『えっ?!生徒会長?!』


「ああ、そうだよ。俺が生徒会長の日高蓮だ。ホントは笹川未央っていう会計も来るはずだったんだけど面倒ってさ」


ごめんね。そう言って会長さんはウインクをする



「高槻から聞いた話だと、昨日集まった時の話を聞きたいとか…?」


『そうなんです!昨日、1年A組を生徒会が使ってたって聞きまして!実は僕の隣の席に変なメモが落ちてて…誰かの忘れ物じゃないかって思うんですけど…』


「忘れ物かぁ…その席って何処なの?」


『えっと…先生側から見て左から3番目の一番後ろの席です』



僕は手帳を見ながら答える



「一番後ろ??そんな席に座った人なんていないよ」


『へっ?何でですか?』


「だって、生徒会って人数少なくて前から座ってくから。話し合いとかするし。後ろの方に座る人なんていなかったと思うけど…。後ろの方で会議に参加しないやつなんか居たら俺が覚えてると思うぞ」



だから風に飛ばされてその場所に落ちちゃったんだと思うけどなぁ。そう言って会長さんは僕を見る


それじゃあ誰が落としたか分からない…
手がかりなしかぁと僕は落胆した



『そうですか…じゃあ会長さんはこの数字の意味分かりますか?』



そう言い僕は"3415445"と書かれた紙を会長さんに見せる



「え〜なにこれ。何かの暗号?」


『僕にもさっぱり分からなくて…』


「でも推理小説とかで見そうだよね!次の犯行現場を示してる…とか!」


『は、犯行現場…?!って事は殺人予告ってことですか?!』


「いやいやいや、そうかもって思っただけで…多分違うと思うぞ…そんな物騒な…」


『いや!分からないですよ!何かしらの事件が起こるのかもしれません!こうしちゃいれません!ちょっと校内を巡回してきます!桜先輩!会長さん!ありがとうございましたー!!』



そう言って僕は勢い良く教室を出た



「……なんか台風みたいな1年生だな。冗談のつもりで言ったんだけど…」


「あれでも名探偵なんだよー!この前ね、美術室の事件を解決したのあの子なんだよ」


「えーまじで?!バカっぽそうなのにな。いかにも迷探偵って感じ!」


「あはは!それは私も最初思った!」





________

そんな事を言われているなんて露知らず、
教室を飛び出した僕はあれから校内中を何か異常がないか見て回った……が何もなかった…

きっと今日ではないのだろう。そう思い、あれから毎日何か事件がないか目を光らせている…が何も起こらない



そうして一週間が過ぎた



『ギリギリセーフ!おはよ!実花ちゃん!』


遅刻ギリギリで教室に入った僕。すぐに担任も入ってくる。危なかったぁ


「おはよ。超ギリギリだね」


『数学の課題やるの忘れててさー!4ページ分速攻でやってきた……』


「うわぁ…お疲れさま。そういえば、セトカちゃん、暗号の件、あれから進展あった?」


『全然……殺人予告かもって調べてるけどな〜んも』


「さ、殺人予告?!物騒だね。暗号見つけてからちょうど一週間だし、何か起こるんじゃない?」


『でもあの数字から日付も場所も連想できないし…ん?』


そう言って僕の机に教科書を入れようとしたとき、何かが入ってることに気がついた



『………っこれ!』



机の中から紙切れを引っ張りだす
そう、それはあのときと同じ赤い文字で書かれた暗号であった。

担任がホームルームをしている真っ最中だが聞いている場合ではない。どうして僕の机に………?!



「セトカちゃんそれ…また暗号?!」


『そう、…僕の机に……入ってたの…』



それは保健だよりの裏紙で"1253243"と書いてあった


『え…超怖いんだけど…なに、僕死ぬの?』


赤文字で書いてあることが更に僕を怖がらせる
一体何を意味しているんだ……



「……ろ、おい!月城!聞いてんのか!」


『っはい!』


突然、担任に名前を呼ばれ前を向く
やっべ!話聞いてなかった!



「お前、数学の追試だから明日の放課後残ってろよ」


『ぼ、僕1人ですか…?!』


「そうだ。ちゃんと勉強して臨むようにー」



うへぇまじかぁ……僕一人とか辛すぎなんだけど……机に突っ伏し、大きなため息をつく僕を見て隣の席の実花ちゃんがクスクスと笑う。


2枚の暗号はいずれも火曜の朝に見つかった
1枚は実花ちゃんの机の下。もう一枚は僕の机の中。僕達二人の机は一番後ろの席であり、生徒会の人が座らない席でもある。

つまり、忘れたとかではなく、故意に僕の机の中に入れたということ……


これは一体何を意味するのか、誰が、何故入れたのか……

僕にはさっぱり分からない





もちろん数学も………





________

その日の放課後、僕はワトソンのもとを訪れていた。それは数学を教えてもらうためではなく、暗号のヒントを貰うため


「ふーんなるほどね」


僕の話を聞いたワトソンがにやりと笑う
 


『ワトソン分かったんですか?!』


「ああ、なんてことはねぇよ」


『でも、だれが、いつ置いたかも手がかりがなさすぎるじゃないですか!』


「手がかり?十分すぎるくらいあっただろ。2つの暗号が置かれたときの共通点から推測できるだろ」


『えっと……あっ裏紙だったこととか?!』


「それから何が分かるってんだよ。前日の放課後に生徒会の会議があったって事に決まってんだろ」


『えっでも…後ろの席には誰も座ってないって……てか、昨日も生徒会の集まりがあったなんて知らないんですけど!』


「はぁ…、人の話くらいちゃんと覚えとけって…
加賀野が言っていただろう、"昨日と来週も生徒会の集まりがあるからさっさと掃除する"とか…」


『覚えてましたよ!ちょ、ちょっと、ど忘れしてただけで!でも生徒会の人は後ろの席には座らないんですよ!そしたら僕の机の中に暗号が入ってたことが説明できないじゃないですか!』


「後ろの席に座っていてもおかしくない人がいたとしたら?」


『そんな人います?会議に参加しなくても注目されないような人が?』


「ああ。それはお前の担任だ。確か生徒会の顧問なんだろ?それなら一歩引いた後ろの席で見ていてもおかしくない。おかしくないからこそ、覚えていないってことが起こる」


『なるほど、確かにあり得ますね。僕の担任が暗号製作者ってことは理解しました。それで肝心の暗号の意味は何なんですか?』


「それは…」


『それは?』


「明日になれば分かる」


『はぁ?!何なんですか、それ!まさか殺人予告とか言わないですよね?!』


「まぁ、お前にとってはある意味殺人予告かもな」







________



『って何も起こんないじゃん』

僕は不貞腐れながら呟く

昨日、ワトソンから「明日になれば分かる」とかカッコつけて言われた。だけどもう放課後

これはワトソンに文句言いに行かなくちゃな、
そう思い、教室を出ようとした時だった



「おい、どこ行くんだ?」


『へっ?』



突然、僕の担任に声をかけられる


「まさか忘れたなんて言わないよな、追試」


『あっ…』


忘 れ て た

暗号のことで頭がいっぱいで数学の追試のことをすっかり忘れていた。やっべ…勉強してねぇわ…



「ほら他クラスの追試者も来るから早く座れ〜」


『せんせーどこ座ればいいんですか?』


「えっと…1253243だから…20人だな。ABクラスはそこの列に座れ」




ん、今の数字どこかで……、




『あーーーーーーー!!!』



「っ何だ月城?」



担任が、迷惑そうに僕を見る。
そうか!そうだったのか!!



『い、いえ!何でもありません!』



つまりだ。担任は生徒会の会議のとき、ただ黙って後ろに座っていた。それだけでは無かった。きっと数学の採点をしていたのだ。
月曜日は数学の小テストの日と決まっている

そしてあの暗号、あれは追試者の人数だ
7桁だったのは7クラスあったから。それをメモっていただけの話だったのだ。暗号が赤いペンで書かれていた理由も頷ける

なるほど…ワトソンがある意味殺人予告って言ったのは僕が追試になるってことを言っていたんだね…
あれ、僕、追試になったってワトソンに言ったっけな??



追試のテスト用紙を前にして僕は考えていた。テスト用紙は真っ白だ。別に分からないんじゃない。頭が暗号のことでいっぱいになってるだけだ。分からなかったことが今になって考えると納得いくことだらけだ



まったく…ワトソンが追試のときに暗号の意味が分かるようにするからこうなるのだ…

あの時もったいぶらないで教えてくれりゃ良かったのに…あの性格悪男め…


責任取って数学もワトソンに教えてもらお…
そう思い僕はペンを握り直した




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