ぱろっ
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昔々あるところに四人の家族が住んでいました。
父親はおらず、母と娘の三人家族です。
「ナナ、早くしてよ!」
「はい、ただいま!」
家の中から怒った声が聞こえます。
一人の少女が大急ぎで朝ご飯の準備をしていました。そして母親と二人の娘がテーブルに座っています。ナナと呼んだ少女を手伝おうともしません。
「とろいんだから」
「やめなさいよ、アイツがとろいなんて最初からでしょ」
それどころか、ナナに対して悪口を言うばかりです。
テーブルに朝食を揃えると、ナナはすぐにいなくなり、外に出て洗濯を始めました。
「あぁ、今日も多いなぁ」
そう言いながら大量のドレスやシーツを洗っていきます。
彼女は三人からいじめられていました。母親は父親の二回目の結婚相手です。娘二人は母親の連れ子でした。
父親が亡くなってから、彼女は使用人のように使われはじめたのです。
「今日は、お買い物いかないと!」
どれだけ酷く怒られても、酷い扱いをされても、ナナは決して負けずに日々を過ごしていました。
予定がたくさんあるため、洗濯をすばやく終わらせると、次に食後の片付けを終わらせて買い物篭とお金をもって外に出ました。
「えっと…確かフルーツ多めで…」
買い物の内容を思い出しながら、市場で品定めをはじました。なるべく良い物を選んですぐに帰らないといけません。
ナナの買い物にはゆっくりする時間はありませんでした。
「それ、こっちのほうがいいよ」
「…あ」
果物で悩んでいると後ろから声がかけられました。
振り向けば、右手が少し変わった長い髪が乱れた青年が立って、果物を握っていました。
「こんにちは!」
「こんにちは。今日は早いんだね」
顔見知りなのか、ナナは驚かずに挨拶をします。青年も笑顔で返事をしました。
「お昼の準備がまだなので…なるべく早めに帰りたいんです」
「そうなんだ。じゃあ俺手伝うよ。何買うの?」
「えっでも…」
「いいからいいからっ」
青年の言葉に半ば押し切られる形で買い物を手伝ってもらうことになりました。彼の目利きはとても上手で、よりよい品をすぐに選んでくれました。ナナは大助かりです。
「店員さん!お代これでいい?」
「えっ!」
「ほら、早く帰らないと」
「あの、お代は!」
「いいから気にしないで!」
「そんなわけにはいきません!」
買い物が終わると、お金を青年が払ってしまいました。ナナは驚いてお金を青年に渡そうとしますが、青年は時間を理由に彼女からお金を受け取りません。
「こんなことしてたらお昼ご飯間に合わないよ?」
「そんなことよりもリンクさんにお返ししないとっ」
「だからいいってば!俺が好きでやってるの!」
「ならこれだけでも!」
リンクと呼ばれた青年の手を握って無理やりお金を渡しました。そのまま離さぬようにとぎゅっと握らせます。
「それでは!ありがとうございました!」
「あっ…え」
ナナはすぐに走ってその場から離れました。リンクは握られた手とナナの後ろ姿を交互に眺めているだけです。
「……えっ…手、握られた…?」
急いで帰ったナナはすぐにお昼ご飯の準備を始めます。その間にも、二人の娘から怒った声と命令が聞こえてきます。母親は特に何も言わず、ただただナナを睨むだけです。
ご飯を作り終えれば、すぐに家の掃除をしにいきます。彼女の一日は、こうやって過ぎていきます。やっと落ち着ける時間はお月様が空に浮かんでいる頃でした。
「あぁ疲れた」
ナナの部屋は二階より上の屋根裏です。簡素な固いベッドに机と椅子があり、窓が一つあるだけでした。
彼女はすぐに眠る、のかと思いましたが小さな袋を持ち、服の埃を軽くはたいて落とします。それから、部屋を出ていきました。そのまま外に出て、どこかへ歩いていきます。
たどり着いたのは、綺麗な湖と、花や妖精が飛ぶとても美しい場所でした。中でも特別大きなきらきらした花に近寄り、もってきていた小さな袋の中からお金を取り出します。
「大妖精さま、大妖精さま。今日も一日お見守りくださりありがとうございます」
花の真ん中は水で満たされており、中にお金を入れてナナは言いました。妖精とお月様で照らされる湖はとても綺麗です。
「…あら、ふふっ」
大妖精さまにお祈りをしていると、ふわふわと飛んでいた小さなまあるい妖精がナナに近寄って肩に降りました。
小さな妖精は次から次へと彼女に近寄って、好きに降りたり、周りをふわふわと飛んだりとしています。
「ありがとう。でももう帰らなきゃ」
そういうと、妖精たちは「またね」というようにきらきらと輝いて飛んでいきました。ナナは手を振って見送ります。それから湖から家に帰っていきました。
屋根裏の部屋に戻り、固いベッドに横になって眠りにつきます。そしてまた、忙しい朝がきます。
ナナは、毎日こうして過ごしていました。
そんなある日、家族たちが大慌てでドレスや肌を気にしていました。
「ナナ!すぐにお風呂用意して!」
「肌用のフルーツもよ!」
「は、はい!」
言われた通り、ナナはお風呂と果物を準備しはじめます。お風呂で娘たちは体や肌を綺麗にしました。そしてすぐに化粧と、ドレスを選びはじめます。
ナナはその様子を見て、三人が慌てる理由を察していました。
「じゃ、家の片付けやっといて」
「可哀そうねぇ。舞踏会に行けないなんて!」
「まぁアンタ汚いしドレスもないから当然ね!」
娘と母親は迎えにきた馬車に乗りました。そのままどこかへ行っていしまいます。ナナはそれを見送って家に戻って言われた通り片付けをはじめました。
家族が散らかした服を整理して、お風呂を綺麗にしていきます。
「舞踏会…まぁ、無理ね」
家から見える大きなお城。そこで舞踏会が開かれるようです。母親たちが大慌てだったのはその舞踏会が今夜開かれるという手紙を読んだからでした。
しかしナナはいけません。母親、娘たちが意地悪をして仕事を増やし、わざと汚れるようにしてしまうのです。
そして何より彼女は綺麗なドレスをもっていませんでした。
「あぁ、汚れがひどい」
顔も服も一段と汚れたナナは体を洗おうと、井戸に桶を投げ入れます。桶の水を室内に運び、タオルと薄着を用意しました。
服を脱いで、水にタオルを浸します。そしてゆっくりと体を拭いて洗っていきます。
「っはぁ冷たい!」
最後に水を頭からかぶり、洗い流します。体と髪の水滴をタオルでふき取り、用意した薄着を着て、汚れた服をもって外に戻りました。そして井戸から水を汲んで今度は服を洗いはじめました。
その時です。どこからか落ちる音が聞こえてきました。
「え!何⁉」
音の方をみれば、落ちたものが生き物なのか立ち上がります。
ナナは怯えてしまいました。
「あぁーっ落ち着いて!俺!リンク!」
「え…?」
起き上がった生き物はゆっくりとお月様の光の中に入ってきました。声と言葉の言う通り、いつもの長い髪をぼさぼさにしたリンクでした。
「えっ…えっと…」
「その、こ、このあたりに大妖精がいるって聞いてさ!探してたら、たまたま…そう偶然!」
「そう、ですか…」
一生懸命自分がここにいる理由を話します。ナナは大妖精の場所を知っているので、その言葉を信じました。
「じゃあ、大妖精さまのところに案内しましょうか?」
「えっ!?あ、えと…その、服が…」
「あっ!ごめんなさい私一人だと思って…!」
薄着の彼女は肌がとても出ており、リンクは顔をずっと逸らしていました。ナナは困ってしまいました。
「あぁどうしよう…ほかに服なんてないのに…」
「え?」
リンクがナナの言葉を聞いて、彼女の足元を見ます。桶に入った服が見えました。リンクは服がないことに納得して、すぐに腰にあるポーチの中から布を取り出します。
「これ、かぶってて」
「えっ」
柔らかい、暖かい布はナナでもわかるような高価なものでした。
「これっ高いんじゃ」
「そんなのどうでもいいから!」
「でででも!」
「服洗い終わったら大妖精の所に連れてってよ。その服じゃ、いろいろ危ないし…その間それ着てて」
「…はい」
リンクに言われた通り、ナナは布を被りました。
布は首元にボタンがあり、フードとしても使えるようでした。布を濡らさないように気を付けながら服を洗います。
水を絞って、彼女専用の物干しに服をかけました。
「お待たせしました。ご案内いたします」
「うん、よろしく」
ナナはお月様が照らしてくれるいつもの道を辿り、リンクを大妖精の所へと案内をはじめます。
暫く歩いていると、綺麗な湖が見えてきました。
「ここです」
「ありがとう!」
「はい!では私は…」
「え?あ、もう帰るの?寄っていかない?」
「このような服では、大妖精さまに失礼ですし…何よりこれをお返ししないと」
そう言いながら、ナナは借りた布を脱ぎます。しかしリンクがそれを止めてしまいました。
「駄目、それ着てて。それに服なんて大丈夫だと思うよ」
「えっ?」
「ほら行こ!」
彼は彼女の手を左手で握って湖まで歩いていきました。
湖も妖精も変わらずきらきらとして綺麗です。
「綺麗な所だね」
「はい」
「ナナはよくここに来るの?」
「そうですね…近くなので、大妖精さまに祈っています」
「そうなんだ!」
湖の傍まで歩いて、お月様が映る水面を眺めます。
妖精たちがナナに気づいて近寄ってきました。
「ふふふっ」
「…妖精に好かれてるんだね」
「あっ…えっと、変ですか…?」
「ううん、逆にすごいと思う。妖精が逃げることはあっても、近寄ってくるなんて見たことないよ」
「そう、ですか」
リンクの言葉にほっとします。
「あのさ、ここまで連れてきておいてなんだけど」
「はい」
「ナナは舞踏会に行かないの?確か、この国に暮らす人たち皆は参加できるはずなんだけど…」
質問を受けて、ナナは悲しむことはしませんでした。
舞踏会はお城の王様と王女さまが、国民に感謝を込めて年に何度か開かれているものでした。だから街の明かりは少なく、人の気配もあまりありません。
「私は、舞踏会に行くドレスがありません」
「え」
「お城に行く馬車も、靴もありません。だから行けません」
「えっでもっあれ?」
ナナの言葉を聞いて、リンクが驚きます。そんな彼を見て、ナナは小さく笑いました。
「でも私は行かなくてもいいんです」
「そんなことないよ!」
「いいんですよ」
「…」
綺麗に笑う彼女に、リンクは何も言えなくなりました。
「それにね、一度だけ、行ったことがあるんです」
「え!?」
「夢みたいな、素敵な舞踏会でした」
「じゃ、じゃあまた行こうよ!ね!?」
「いけません。あれは一度だけの夢ですから」
「夢じゃないって!…あ、あんまり楽しくなかった?」
リンクは必死に舞踏会へ行かせようとしています。それでもナナは首を縦にはふりません。
「とても楽しかったです。本当に夢みたいでした」
「じゃあ、どうしていかないの?ドレスだって、その、よければ俺が用意するよ!」
「そこまでしないでください!」
「あ、はい…」
「もう!…舞踏会に行って、素敵なお城と素敵な方と踊れたことは、本当に、本当に綺麗で一生忘れない思い出です」
「なら」
「だからこそ、あの一瞬は一度だけでいいんです」
あの時の、あの一瞬で駆け抜けた夢がいいのです。
「そういえば、リンクさんも舞踏会には行かないんですか?」
「え!?えーと…お、おれは、俺も服がなくてさ!」
「じゃあ自分の服を買ってください!ほら!今なら間に合いますって!」
「いいの!別に興味ないし!」
「そうなんですか?」
「そうなんです!」
彼も彼女と同じく、行かないと言います。それから少しだけ無言になってしまいました。
「…うふっ」
「ふはっ」
二人はクスクスと笑いあいました。
「じゃあ、ここに居てもいいね」
「そうですね」
「…時間、大丈夫?」
「…はい」
「無理しないでね」
「しませんよ」
二人は妖精とお月様の光で輝く湖を眺めました。
お城の舞踏会のような華やかさはありません。豪華さもありません。
でも、この景色がナナは好きでした。
しばらく眺めていましたが、お城の鐘の音が聞こえます。
「12時だ」
「…流石に、そろそろ帰らないと」
「うん、わかった。送るよ」
リンクは左手をナナに差し出します。彼女も手を差し出しました。
ナナをエスコートしながらゆっくりと湖から家まで歩きます。
彼女の家に着けば、手は離されました。
「今日は本当にありがとう」
「いいえ!あ、これお返しします!」
「あー…いや、うん、ありがとう!体冷やさないようにね」
「はい」
「それじゃあ、また。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
名残惜しそうにリンクは布を受け取って足早に帰っていきました。
ナナも彼が見えなくなるまで見送ると、一度呼吸を整えて、明日の準備をはじめたのです。
そうしてまた、いつもの朝が始まりました。変わらず朝から晩までナナは働きます。
そんな日々が少しだけ続いたある日の事でした。
朝から家が騒がしくなりました。
「…今度はなにかしら」
舞踏会は終わったばかりです。家族がナナをいじめる以外で騒ぐことはないはずでした。
扉を少し開いて騒ぎの元をのぞき見します。玄関ではお城の兵であろう人が一人立っていました。金色よりも少しだけくすんだ長い髪を縛り、帽子をかぶった近衛兵の青年です。
ナナはすぐに屋根裏部屋へと隠れます。来客が来た時はそうするようにと、母親から言いつけられていたからです。
騒がしい音が少しだけ遠のきました。
「あぁもういい迷惑だわ!早く帰ってくれないかなぁ…」
屋根裏に居る間は彼女の仕事が進みません。こんなことを言ってしまってはいけませんが、ナナは来客に早く帰ってほしいのです。
しかし彼女の希望通りにはなりませんでした。足音がこちらに近寄ってきていたのです。
ナナは驚きました。窓から外を見ても、来客が帰った様子はありません。では、こちらに来るのは誰なのでしょうか。
トントントン
扉がノックされました。
ナナは出て良いものかわかりません。
「失礼ですが、中に入らせていただきます」
返事をしないナナに対して、青年の声が聞こえます。さらに奥では何かを話す母の声が聞こえました。
扉がゆっくりと開きます。
「…やはり、もう一人いましたね」
「あ、あの…何か…」
扉を開けた青年は表情を変えずに、ナナを青い瞳でまっすぐ見てそう言いました。
「あなたに城に来ていただきたいのです」
「えぇっ⁉わ、私何かしてしまったのでしょうか?!」
「それは城に来てからお話させていただきます。よろしいですね」
お城からの命令には逆らえません。ナナは黙ってうなづきました。
母と娘たちはクスクスと笑ってナナを指さします。
彼女は家の前にある馬車に乗り込み、さらに青年が乗りました。彼女の不安をよそに、馬車はお城にむけて走りだします。
お城に到着すると、ナナは馬車を降りる時、青年に手を差し出されました。
「…結構です」
「お嫌いですか」
ナナは自分で馬車から降りました。そのまま青年がナナを案内します。
舞踏会で通った道とは別の場所を歩きます。やがて、青年以外の近衛兵が守る扉の前にたどり着きました。
青年がその扉を叩きます。
「どうぞ」
「はっ」
中から綺麗な声が聞こえました。青年は扉を開けます。
扉の奥は綺麗に飾られた絵画やベッドがあり、しかし机の上には何やら見たことのない物々しい石やビンが置いてありました。
「ようこそいらっしゃいました」
部屋の中にいた綺麗なドレスを着た美しい女性がいました。彼女はナナに優しく声をかけます。
「驚いたでしょう?大丈夫ですよ」
「あ、あ…ゼルダ様⁉しっ失礼いたしました!」
「そうかしこまらずに」
女性はゼルダと呼ばれました。この国の王女様です。
「あなたを急にここに連れてきてしまってごめんなさい」
「とんでもございません!」
「実は、あなたを婚約者として迎え入れたいのです」
「はい、はい!?」
「彼があなたを婚約者にと」
ゼルダ様が彼、青年に視線を向けます。ナナは驚きました。罪を犯したのではなく、結婚相手にと呼ばれたのです。
その相手はここまで迎えにきた青年でした。
「あの、どう…」
「確か、舞踏会で一度彼と踊ったと聞きましたが」
「…その、大変光栄なお言葉なのですが、私には相応しくありません。失礼とは存じますが、私は婚約者にはなれません」
ゼルダさまも、顔が動かなかった青年も驚きました。ゼルダさまはすぐに気を取り直して、言葉を続けます。
「何か、理由があるのでしょうか…?例えば…その、別の婚約者がいる、とか…」
その言葉に青年は体を固くしました。
でもナナは首を横にふります。
「いいえ。私にそのような方はおりません」
「では、家族ですか?」
「…いいえ」
「気持ちの問題ですか?」
ナナはゼルダさまを見ます。
「私には、心に決めた方がおります」
今度こそ、ゼルダさまと青年は驚きで固まりました。彼女は青年をちらと見ます。ナナは変わらず、もっと力強く優しく言います。
「このような気持ちをもっていては、彼に申し訳ありません」
「…」
「…」
「叶わなくても、あの人がいいんです。ですので申し訳ありません」
「わっ…わかりました…最後に、その心に決めた方の話を聞いても…?」
呼吸をしているのかも怪しい青年の代わりに、ゼルダさまがやっとのことで声を出しました。ナナは頷きます。
「とてもやさしい方です。私にはもったいない方ですが」
「そう、ですか」
「はい。いつも変わった右手で傷つかないように左手を使って…」
「リンク!しっかり!彼女は勘違いしてるだけです!!」
ナナの言葉を遮って、ゼルダさまは固まった青年に呼びかけて頬をぺちんと叩きました。
青年はその痛みで現実にもどってきました。
「ほら!」
「あ、あの…今彼の名前…」
「…あ、まさかナナ…」
「え?」
「ゼルダ様、御前失礼します」
青年はナナの前に立つと帽子を取り、髪留めを外してわざと髪をぐしゃぐしゃにしました。右の手袋を取ります。
「これならわかる?!」
「えっあ…え…!?」
さっきまでの表情のない顔はなくなり、必死に自分だと伝えようとする、街でお世話になるリンクがいました。
「まさか俺だとわかってなかったなんて…」
「り、リンクさん!?え!?」
「そう俺!街でナナの買い物手伝って、大妖精に会いにきた俺!」
「な…な…っ!」
街でよく会うリンクはお城の近衛兵だったのです。
「俺、あの時の舞踏会で君と会ってから、ずーっとナナのこと探してたんだよ!」
「えぇ!?」
「あんなに綺麗な人初めてみたし、お淑やかで…ナナこそお姫様っていう…」
ゼルダさまは咳払いをしました。
「あーええと、ガラスの靴落とした時も探してもらったけど見つからなかったし、ほんとに諦めてたけど…街で、君を見つけたから」
「よくわかりましたね…」
「わかるよ!あの時から忘れられなかったんだから!」
リンクはナナに左手を差し出します。
「ナナ、君の事が好きなんだ」
「あ…」
「心に決めた人って、自惚れてなければ俺だよね?」
「…」
「俺と結婚してくれませんか?」
ナナは頬を赤くして、差し出された左手を見つめます。
そして、ゆっくりと手を重ねました。
「私も、リンクが好きです…結婚させてください!」
「っやったぁ!」
リンクは喜び、ナナを抱きしめました。ナナも驚きましたが、そっと彼の背中に手を回します。
ゼルダさまは安心して二人を見守ります。
しばらく抱き合っていると、リンクはナナから離れて姿勢をただします。
「ゼルダ様、大変失礼いたしました…」
「はっ…申し訳ありません!」
「いいえ!こんなに嬉しいことはありません!リンクもこれで呆けることがなくなりますね!」
「あの、やめてください…」
「?」
今度はリンクが咳払いをしました。
聞いてみると、リンクはナナと出会ってから彼女のことを忘れられず、仕事中ぼんやりすることが増えていたのだそうです。
「そんなに…」
「そんなにです」
「すみませんでした…」
「でも、リンクに良い人が見つかって喜ばしいのは事実です。おめでとうございます、リンク!」
「ありがとうございます」
「ナナも、彼は少し変わっていますがよろしくお願いいたします」
「こちらこそ!不束者ですがよろしくお願いします!」
国の王女さまから認められた二人は、その後無事に結婚し、幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
ガラスの靴なんていらない