ぱろっ
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「ナナちゃんっあの、あのね!く、く…クリスマス一緒に遊ばない!?」
「あーごめん、用事あるんだよね」
寒さが本格的になってきた放課後。トキはこの時初めてナナから断られていた。
しかもクリスマスという明らかに特別なイベントに限ってのことであった。
「そ、そうなんだ…」
「うんごめんね?」
「平気!」
慌てて首を横に振り、彼女に返事をした。ナナはその後委員会でいなくなり、彼も部活で別れた。
が
「ナナちゃんに断られた…」
「だから泣いてんのか」
部活でもあまり力が入らずに早々に早上がりして委員会ではないトワと駐輪場で泣きながら話していた。
どれだけ取り繕っても悲しいものは悲しいのである。
「トワにはわかんないよ断られてないんだもん」
「言ってねえし、そもそも断られただけで泣くんじゃねえ」
「だって、ナナちゃんが、」
「お前ばっかり構ってるわけないだろ」
その通りであった。
だが初めて断られたという事実がトキの心をぐさぐさと刺している。
「でも本当に用事ってなんだろう…友達と遊ぶって感じじゃなかったし」
「さぁな…バイトとかじゃね?」
「短期バイトってこと?」
「うん」
「そういうことなら…仕方ないか」
やっと泣くのをやめたトキはトワの話を聞いて納得はしたようだ。
「ほら帰るぞ。今日ナナ遅いんだろ?」
「うん…」
まだまだ落ち込むトキを半ば無理やり立たせて一緒に下校しはじめる。お兄ちゃん気質が遺憾なく発揮される瞬間である。だが、心の中では、面と向かって断られたら俺も立ち直れなそう、と思春期の男の子らしいことを考えていた。
数日後、トワは自分の委員会の為、図書館の個室にパッドを取りにきていた。
「しつれ、うおっ!」
入った途端、お通夜のようなソラと何故かティアがいた。
「え…何?」
「あ、トワくん、こんにちは…」
「…」
「いや、何この空気…」
「大したことじゃないよ…いややっぱり大したことだな…」
いつもに増して弱弱しいソラは椅子から立つこともできず、ティアに至っては虚ろな目でスマホを見つめているだけである。異質すぎる光景にトワはさっさと出ていきたい気持ちと、気になる気持ちがせめぎあった。
「…何があったんだ?」
結果、気になる気持ちが勝った。
「いや…うーん…」
「ナナさんに誘いを断られたんです」
「えっ」
「ティアくん!?」
言葉に詰まっていたソラに代わって、今まで黙っていたティアが簡潔にはっきりと答えた。
「あの人俺らと同類ですよソラ先輩」
「同類?え、そういうこと?」
親指で雑にトワを指すティアに、ソラは二人を交互に見た。トワは納得のいかない顔でティアを見た。そしてさっさと行きたい気持ちがなくなりパッドも取らずに空いた椅子に座った。
「トワくんもそうだったんだねぇ」
「もって言われるとなんか腹立つんだけど…」
「どうせ断られてもカッコつけて気にしてない風を装ってますよコイツ」
「何お前、そういうやつだったの?」
「断られたショックでだいぶ壊れてるみたい」
八つ当たりと言わんばかりにトワに喧嘩腰で言うティアは、普段の冷静沈着な優等生とは考えられなかった。さすがのソラもこれには苦笑いをするしかない。
「生徒副会長さんがなんでここにいんだよ」
「提出書類の請求に来たんですよ。そうしたらソラ先輩がお通夜になっていて」
「お前も断られて一緒にお通夜になってたと」
「断られてません。彼女の用事が先約だっただけです」
「断られてんじゃねーか」
「…二人ともいつの間にそんなに仲良くなったの?」
「なかよくありません」
「なかよくねえよ」
彼らの確執は後編を読んでもらえると助かる。
ソラは同級生だしどこかで関わりがあるかぁと相変わらずのんびり思考で少しだけ微笑ましい気持ちになった。
「ていうか俺まだナナに何も言ってねえし」
「は?腰抜けですか?さっさと脱落してください」
「マジでお前そういう奴なんだな」
「ティアくん、ほんとに壊れてるねぇ…」
「そもそもなんでナナと遊ぶ程度に仲良くなってんだよ」
「えっ!ティアくんナナさんと遊んでるの!?」
僕一緒に遊んだことないのに!とちょっと泣きそうな声でティアに顔を向けた。ティアは無表情ながら少しだけ愉悦そうに視線を逸らす。
「一緒にご飯を食べに行く程度です。皆さんよりも、よく一緒に、でかけてるだけです」
「すごいマウント取りにきた…」
「いい性格してんな」
「照れますね」
「誉めてねーわ」
「でもそのごはんの誘いも今回断られたんだよね?大事な用事なのかな…」
「…」
「あんたすごいな」
「え?」
ティアがまた虚ろな目になった。
「でもここまで断るなら俺が言ったところで変わんないだろうな。用事なら仕方ないし」
「まぁそうだね。いい加減切り替えないと」
「…そうですね。来年もありますし」
「僕来年が最後…?」
「時間で一人いなくなるのは確定してるな」
「よかったですね」
「ねぇ本当に二人とも仲良くないの?」
ようやくそれぞれの仕事に取り掛かり始めた。
一方そのころ、部活終わりのトキと何もないナナが下校していた。
「あの、ナナちゃん聞いていい?」
「何?」
「用事って、なにするの?」
おずおずと聞いてくるトキに彼女は苦笑いをした。
「大した事じゃないよ」
「そ、そうなの?」
「うん、ごめんね一緒に遊べなくて…せっかくのイベントなのに」
「あ、ちがっ僕気にしてないから!ただ、用事の内容が気になっただけで」
「本当に大したことじゃないんだけど、私が言い出したことだし」
「ナナちゃんが?」
「っあ、ううん!何でもないの!じゃあ私ここで!ばいばい!」
「う、うん…ばいばい…」
結局内容をはぐらかされてしまい、分かれ道になってしまった。トキは会話からして、彼女が何かを隠しているという確信があった。
そのため、別れた後彼女の後ろを少しだけ長く見ていた。
すると衝撃の光景を目にしてしまったのだ。
「え…誰?」
遠目にいるナナと、知らぬ若い男性が会合していたのだ。
会話は聞こえないが、様子からして彼女が一生懸命話しているように見える。男性は後ろ姿しか見えないが、ナナがいろんな感情を見せながら、二人はどこかに入っていった。
居なくなった後トキも急いでその場に走り、場所を確認する。
商店街が並ぶ中の狭い路地、一軒家のような出入口が見えた。
つまり、要するに、あれである。
「な、わ…ぁ…」
言葉にならない声と涙が出そうな顔になり、トキは大慌てで学校に逆戻りし始めた。
本日、時間が押していたため大急ぎで委員会の仕事を終わらせたソラとトワは図書館を出ていた。
「ソラって学生寮なんだな」
「うん、トワくん気を付けて帰ってね」
「どーも…ところで、なんでお前ずっといたんだよ」
「先輩が資料を渡してくれませんでしたので」
「ご、ごめん…」
資料をもらう為、二人の業務を手伝って残っていたティアは何事もないような顔でもらった資料を確認している。
「ソラ先輩、そろそろ生徒会長直々に会いにきますよ」
「え!そ、それは流石にやばいな…」
「副会長が来てる時点でだいぶヤバいと思うけどな」
「はい。要注意人物としてリストに載ってます」
「嫌すぎる!何そのリスト!」
短時間で割と仲良くなれるのは男子ならではな気がする。
解散ムードの中、必死に図書館に向かって走ってくる男子生徒がいた。
先ほどのトキであった。
「トワー!大変大変!!どうしようー!」
「あ?お前ナナと先帰ったんじゃ」
「それどころじゃないよー!」
「は?一緒に下校してんですか?」
「ティアくん今そうじゃないと思う」
トワを見つけて泣きついたトキに、トワは普通じゃないと感じ、ちゃんと向きなおった。
「何があったんだ?」
「ナナちゃんが、ナナちゃんが」
「ナナになにかあったのか!?」
「知らない男と一緒に家に入っていったー!」
エコーがかかったように三人の脳内でその言葉が反射していた。
言葉の意味を理解するのに時間がかかったが、理解をするとトワは眉間を抑え、ティアは虚ろな目で握っていたパッドにヒビをいれ、ソラは真っ白になっていた。
「……見間違いだろ」
「僕がナナちゃんと見間違えると思ってんの!?」
やっと絞り出したトワの声にトキは悲しくも現実を突き付けてくる。そういう意味で信頼ができる彼の言葉なだけに、現実であることを実感してしまう。
「ちょっと」
「なに」
「詳しく教えてください」
「えっ誰」
「早く、詳しく、場所も時間も全部話してください」
「ま、ほんとに誰!?」
虚ろな目のままトキに迫るティアを止められる人はいなかった。それどころではないからである。
トキはトキで最初に投げ飛ばされた相手なんて覚えていなかった。図書館の前でカオスな空間が出来上がっていた。
しばらくして立ち直ったトワがソラを起こし、ティアの結んだ髪を引っ張り空気をリセットした。
とりあえず案内をしろと伝え。問題の場所へと案内される。
「あ、この人が副会長なんだ」
「あと俺らをぶん投げたやつだぞ」
「ぶん投げ……あぁ!あの時の!」
「もう規則違反してませんよね?」
「してないよ!ていうかなんでついてくるの!?」
ティアと彼女の関係を知らないトキは何故ついてくるのか不思議だった。ソラに関しては最初から敵意丸出しの為、挨拶もそこそこである。
「ここっ!たぶんこの家に入っていったんだよ」
「ここにねぇ」
「じゃぁ表札の写真と二人で出てくるところを写真に撮りましょう」
「ねぇトワこの人何なの?」
「様子のおかしいヤベー奴」
「ナナさんと、皆さんより、一緒に、ごはんを食べに行く程度の仲です」
「なっ!なんっ」
「またマウント取りにきた…」
ティアの発言にトキが衝撃と怒りで声を荒げた。
「騒ぐと周りに迷惑ですよ」
「誰のせいでこんな慌ててると思ってんの!」
「待って、誰か出てきた!」
四人は急いでそれぞれ隠れた。
狭い路地からナナと、やはり知らない男性が出てきた。
そのまま彼女は丁寧にお辞儀をして足取り軽やかにその場を後にした。
「マジかよ」
「嘘ぉ…」
「見間違いじゃなかった…!」
「まだです、まだ二人の関係が」
現実を受け入れる者と受け入れられない者がそれぞれいるが、事実として彼女と知らぬ男性が一緒にいたのを目撃してしまった。
「ま、まさかクリスマスの用事って…」
ソラの言葉に他がピンときてしまい、さらに絶望にゆがむ。
「いつ…いつの間にナナちゃんが、そんなっ」
「…つら」
「僕じゃ、ダメだったんだね…」
「なんでクリスマスってあるんですかね」
それぞれ言いたいことを言い。悲しみで前が見えなくなっている。あまりの悲壮感に商店街のおばさんおじさんが声をかけて、飴をあげていった。
クリスマス当日。
やはりナナを諦められない奴らによる集いで問題の商店街に来ていた。
トキとトワは半ば諦めムードであるが、残りの様子がおかしい副会長とまだチャンスがほしい先輩は勇気を出してクリスマス一式の人込みに踏み込んでいった。
目的地はもちろん消えた彼女と男性の家である。
「あれ、みんなどうしたの?」
覚悟を決めて乗り込んだ場所で、ナナはエプロンを付けて荷物を運んでいた。
「いや、ナナも何してんだよ」
「何って、商店街の手伝い」
「は?」
平然とこたえられた言葉にそれぞれ開いた口がふさがらなかった。
「用事って、手伝い?」
「そうだけど…」
「え、え、じゃあなんでちゃんと言ってくれなかったの?」
「言ったら手伝うって言うじゃん」
聞けば、例の男性は指を折ってしまい、クリスマスの賑わう時だけでもナナが手伝うという約束をしたのだそうだ。
ちなみに男性は家族と暮らしており、決して二人きりではない。
「私の事なのに、トキくんに言って手伝ってもらうわけにいかないでしょ…って何なにほんとにどうしたのみんな」
彼女が隠れてそういう関係ではないことに喜びと勝確でティアとソラが力強くハイタッチしたり、トワがトキの頭を軽く叩いて詫びを入れたりと、謎の空間になっていた。
「ナナさん、ここの店以外にも手伝うの?」
「はい…準備とか、荷物運びとかで…」
「そっかぁ。ナナさん本当に優しいんだね」
「いいえ!帰りに買い物したりして良くしてくれてるから、そのお礼がしたいだけで」
「それでもすごい事ですよ」
二人に褒められ、少しだけ照れるナナ。
理由がわかり、彼らのやることは一つであった。
「さて、俺らもやるか」
「うん!」
「え」
「この商店街に会長さんっていらっしゃいますか?」
「挨拶してから行こうか」
「え」
四人の会話にナナは困惑と、予想を思いつく。
「あの、もしかして皆、手伝う気?」
「もちろん!」
「予定ないし」
「話聞いて、そのままっていうのはね」
「ボランティアも学生として良い経験かと」
不安要素がなくなった彼らは示し合わせたように準備中で忙しそうな店や、人手不足で大変そうな店へと向かっていった。
「いやちょっと!」
ナナの声もむなしく、彼らは商店街へと散っていった。
彼女もため息をつき、もう自由にやらせようと自分の仕事に戻っていった。
学生が手伝う商店街は、イベントということもあってとても賑わっている。いるのだが
「おじさん!荷物ここでいい?」
「おー、お母さんの手伝いか、偉いな!」
「ごめんなさい、僕今日だけの手伝いで…」
「飾りつけなおします。結構得意なので」
王子様系、王道イケメン系、ゆるふわかっこいい系、美男ギャップ系とタイプは違うが、全員お人よしの割とハイスペックな男が居れば賑わうのは当然で。
そしてその四人を連れてきたナナは当然おば様たちに質問責めにされるわけで。
「…だから言いたくなかったのよ!!」
猫たちが見守るゴミ捨て場でナナはそう叫んだ。