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ナナは瞼を開けた。
眠った記憶はなかった。時間が間違っていなければ日が一番高い所にあった時だったはずだ。
では、何が起きたのか。ナナは目に見える景色をぼんやりと眺めながら思いだす。
攫われたんだっけ
一言つぶやこうとした、起き上がろうとした。
しかし両手両足を丁寧に縛られて身動きがとれず、口も声が出ないように布を噛まされている。
目の前の景色、鉄格子と赤いスーツの人が数人。何かを話しているようだが離れているため声しか聞こえない。
本来ならここで驚いて声を出してしまいそうな場面と状況だが、ナナは静かに景色を眺めるだけだった。
おかげか、赤いスーツの数人は彼女が起きたことに気づかずいなくなってしまった。ナナは首を可能な限り動かして部屋を観察した。
窓、というか外が見えそうな穴はなく、鉄格子より先の扉があるのみだ。
ナナは武術が出来るでもなければ魔法が使えるわけでもないただの一般人である。つまり逃げようにも逃げられないのだ。
絶望的な状況だが、ナナは眠るように目を閉じた。
あと何時間で来るかな。
誰もいない空間は静かで、世界から遮断されたような感覚になる。
だがそれも一瞬だった。小さな激しい爆破音と悲鳴が聞こえるようになった。
音を拾ったナナは目を開けて扉をじっと見つめた。
激しい音は段々大きくなり、途中から悲鳴が男のものだと判明できるようになってきた。扉が激しく破壊されて、破片が鉄格子にぶつかる。
「いたー! !」
扉を破損させて中に入ってきた青年は、鉄格子の扉の鍵をどこから持ってきたのかわからない鍵で開錠し、ナナの口の布をとった。
「ナナ無事!?」
「早かったねリンク。最高記録じゃない?」
「悠長だな!?もうちょっと焦ってくれる!?」
青年、リンクは誘拐されていたとは思えないナナのメンタルに驚きながら手足の拘束を解いていく。
「犯人たちは?」
「全員倒してきたよ。あーもう無事で本当によかった」
「あれか、みねうちじゃーってやつ」
「またカカリコ村で変な知恵つけたね?」
本当に誘拐されたのだろうかと疑う会話を続ける。
「ほら、帰ろう」
「うん」
ナナはリンクの首に両腕を回し、彼は彼女の膝と背中に手を伸ばして横抱きにする。あまりにも手慣れた、自然な動きであった。
「これで何回目だっけ?」
「俺と出会ってから9回目」
「お、次で10回記念」
「馬鹿なこと言ってないで、シーカーストーン取って」
「はーい」
リンクの腰についたシーカーストーンを頑張って無理やり取って画面をスライドさせていく。目的の場所にポイントを合わせて選択をyesにする。
二人はすぐに青い光に包まれて消えていった。
「ていうか、私を降ろせばいいんじゃない?」
「それは俺が嫌だ」
目的地、リンクが購入した家に到着し、中に入ってベッドに彼女を横抱きのまま座る。もっていたシーカーストーンは奪われてベッドサイドに置かれた。
「縛られてた手足見せて」
「跡しかのこってないって」
「擦れてるかもしれないだろ」
丁寧に拘束されていた部分を見ていく。確かに跡が残っているだけで皮膚が駄目になっているということはなさそうだった。
それでもリンクはその跡を忌々しげに見る。
「ね、今回早かったのはなんで?」
「目の前で堂々と攫われればわかるって…」
「それもそうか」
いまだに自分から降ろそうとしないリンクはナナの手を握ったり指を絡めたりして弄ぶ。彼女も特に気にしていないのかなすがままである。
「リンク」
「ん?」
「今回も助けてくれてありがとう」
「当たり前だろ」
「次は誰に誘拐されると思う?」
「あのさぁ…まず警戒心をもって行動してよ!俺の心臓壊す気なの!?」
誘拐の経緯は単純で、目的地への道中で知らぬ旅人に声をかけられたことが始まりだった。リンクは自分に声をかけるハイリア人がほとんどいないため、警戒するようにしている。
だがナナはひょこひょこと近寄ってしまったのだ。それがイーガ団の罠とも知らずに。
「普通人に声かけられたら返事はするよ」
「旅してるならもっと警戒するべきなんだよ」
「そんな一般人に無茶な」
「9回も!誘拐されてるの!自覚ある!?」
ちょっと怒ったリンクはナナの頬をむにっとつまんだ。
「いやでも赤い人たちは今回が初めてだし…」
「初めてじゃない!2回はあった!」
「嘘!2回も赤い人いたの⁉」
「あったんだよナナが目を覚ます前だったり正体を出さなかったりしただけで!」
むいむいと頬の感触を少し楽しみながら彼は訴えた。ナナはその手を取り払うことはせずにリンクの言葉に驚いていた。
「それは、赤い人たちが誘拐の才能あるね」
「反省の色が見えない!」
相変わらず違う方向に思考をもっていく彼女に対して両頬をつまんでむにむにとひっぱった。
「いひゃいいはい!」
「いい加減学習しろって言ってるの!本当ならこんなものじゃ済まないかもしれないんだからな!わかってる⁉わかってないから9回も攫われてるんだよね!」
「はひゃいはいあ!ははいはっへー!」
頬から手を離した。引っ張られた頬は若干赤い。
「いたい…」
「これ以上の痛いこと、最悪殺されるかもしれないんだよ」
「うん」
「…本当にお願いだから気を付けて」
「うん」
流石に痛みとリンクの言葉が効いたのかしおしおと頷いた。その様子を見て、少しやりすぎたかもしれないと思ってしまう。リンクはナナに甘いようだ。
「でもさ、これリンクも悪いと思う」
「は?」
「絶対助けにきてくれるし、守ってくれるって信頼させてくれるから」
まだ言うかと睨んだが、続きの言葉で固まってしまった。素直に嬉しい言葉だったのだ。
「ま、まぁ。ナナを連れていくって決めたからね。当然っていうか」
「だから、リンクと居ると安心できるの。どこかに連れて行かれても怖くなんてないんだ」
「そう…」
彼はナナをそっと優しく抱きしめた。彼女も両腕を彼の体に回す。
「なんて言葉に騙されるわけないだろー!」
「わーっ!」
勢いよくそのままベッドに押し倒した。
「本音だからって俺が毎回誤魔化されると思ってんの⁉」
「誤魔化してない!リンクも悪いって思ってる!」
「俺は悪くない!ナナが安心しきってるのが悪い!」
「なんだとぉ!じゃあリンクを信用するなってことか⁉」
「信じていい!」
「一瞬で矛盾すんな!」
口喧嘩のような小競り合いが始まった。言っている内容は険悪なものではないが。
「俺を信じていいけどナナが警戒するに越したことはないんだよ!本当に何されるかわかんないんだから!」
「あー…流石に10回目は嫌だからリンクの言う通りに警戒するよ…知らない人に声をかけられても近寄らないし、魔物を見つけたらすぐ逃げる。オッケー?」
「…まぁよし!」
やや納得はいっていなさそうだが、今回はこれで良しとしたようだ。
しかしナナの上からどこうとはしない。
「…リンク、私は今とても警戒している」
「なんで?俺といると安心するんでしょ?」
「安心はするけど今はあなたが一番危険だと思うの」
「そうそう、そうやって危機感をもって行動してね」
「わかった、わかったからどいて」
「なんで?」
先ほどまでのお怒り顔が嘘のように笑顔だ。
ナナは知っている。この顔のリンクが一番何をするかわからないことを。そしてこの状況で行われるのは一つであることを。
「あの、次は努力するんで、本当に」
「そうだね次はね」
「だからどいてもらえませんか…あぁー!ごめんなさい!」
「今更謝ったって遅いんだよ。俺の心配した気持ちは重いんだから」
「本当にすみませんでした!やだ!明日歩けないのはやだー!」
深く深くベッドに沈まされ、翌日は起き上がることすら許されなかった。リンクに介護されて恥で爆発しそうになりながらナナはその日を過ごした。
そして3日後に10回目の記念を迎えた。
安心させる君が悪い
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