幸
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おおかみさんは日課である畑の様子を見ていた。
土からは新芽がぽつぽつと瑞々しく芽吹いている。
「うむ、大きく育つんだぞ!」
笑って新芽に話かけていれば、上空からの音を耳が拾った。しかし自慢の銅鏡を構えることなく、自慢の尻尾を準備している。姿が見えてきたら、素早く、短くちょんちょんと尻尾を振れば、時空が微睡みの中のように鈍くなった。
ゆっくり落ちてきた緑を、おおかみさんは難なく捕まえ、お姫様抱っこをした。
「あぁー…あ?」
「其方は戸のないところで生活をしているのか?」
衝撃に備えていた緑の青年は不思議そうに周りを見て、おおかみさんがいることに気づいた。
「おおかみさん!あっ!畑!!畑つぶしてない!?」
「つぶしてないぞ。おおかみさんがリンクを捕まえたんだからな!」
「え、あれ、僕どうなって…」
畑が潰れていない理由を聞いたリンクは、自分の体の状態を確認した。何がとは言わないがおおかみさんの豊満なたぷんたぷんが彼のお腹に当たる感触があった。
「おっおおかみさんおろしておろして!!」
「むぉ、どうした急に」
「いいから!おろして!」
顔を真っ赤にして必死に訴えるリンクを、おおかみさんは言う通り降ろした。地面に足が着くと、彼は必死に呼吸を整えた。
「大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶ…」
「落ちたり慌てたりそそっかしい奴だなぁ」
「僕だって落ちたくて落ちてるんじゃないよ…おおかみさんのお店どこにもないんだもん」
「タカマガハラは困ってる人の前に現れるんだぞ!」
「どういうこと?」
「おおかみさんぱわーでお店は特定の人の前に現れるということだ。落ちてくる客はリンクしかいないが…」
「んー?んー…よくわかんない…」
リンクは腕を組んで首を傾げた。
「まぁタマに来ないことは良いことだぞ」
「えぇ!それは嫌だよ!おおかみさんのご飯食べたい!」
「そう言ってもらえるのは嬉しいぞ!」
おおかみさんは尻尾も耳も振って嬉しさを表現する。リンクはなんとなく撫でたい気持ちになったが、女性のため自重した。
「それで、おおかみさん…ご飯食べていい?」
「うむ!ここに来たからにはお客だ!満足いくような料理を作ろう!」
「やったぁ!」
二人は最初の頃と同じように裏手から店に戻り、リンクはカウンターへ、おおかみさんは調理場へと位置につく。
「さてリンク。何か食べたいものはあるか?」
「うーん…聞かれるとちょっと思いつかないな…」
「ならば、米かぱんどちらが良いか?お腹の好き具合でもいいぞ」
「パンがいいかも…でも思い切り食べたい気もする…」
「ふむ、ぱんで思い切りか…」
リンクの言葉を聞いて、おおかみさんは手を動かし始めた。
先ずボウルにひき肉を入れてそれだけを捏ね始めた。手早く、粘り気が出るまでよくまぜ、肉を何等分かに分けてから球体を作り、空気を抜きながら平らにしていく。それが終わると、フライパンを火にかけて、油をひいた。
「それは…肉?」
「うむ、ひき肉という」
「パンなのに?」
「ぱんだからいいんだ」
フライパンに熱が通ると、平らにした肉の表面に塩と胡椒を強めにふって、フライパンに並べた。
肉の焼けるじゅわじゅわという激しい音がなる。片面の焼き目を確認し、ひっくり返したあと弱火にして蓋をした。
次におおかみさんはレタス、トマト、玉ねぎを取り出した。レタスは手ごろなサイズにちぎり、トマトは輪切り、玉ねぎは半月切りにして水にさらす。そしてフライパンの肉を確認し、一度火を止めてから、おおかみさんは裏手から艶のある茶色の焼き目が美味しそうなパンをもってきた。
パンを横に切り、パンの底を一番下にした。その上から水を切った玉ねぎ、焼いた肉、ケチャップ、チーズ、レタス、トマトを重ねて最後に残ったパンの上を置いて皿にのせた。
「ほれ、はんばーがーだぞ!」
「はんばーがー?」
パンの間に野菜と肉が挟まった不思議な見た目のそれを、彼は興味津々に見ていた。
「手でもって食べるんだ」
「そのままでいいの?」
「うむ!」
「じゃぁ、早速…」
両手で中身が出ないように抑え、一口かじった。
「んーっ!!」
野菜のシャキシャキの触感と水分、肉の強い味が以外と合う味であった。赤いソースが甘酸っぱく、こってりとした感じがあまりしない。
「おいしー!」
「よかった!」
夢中で食べるリンクに、おおかみさんは笑顔で答えながら、手元は次の料理の準備をしていた。フライパンから焼ける音が止まらない。
「パンと野菜って、あんまりなイメージだったけど全然美味しいね!」
「果物でもあうんだぞ!」
「果物!?パンに?」
「うむ!興味があれば次来た時に作ってやろう!」
「うん!」
ハンバーガーをあっという間に食べ終え、口周りのソースを拭いとる。
「…おおかみさん」
「ふふふ、わかっているぞリンク。おかわりだ!」
次のお皿がすぐに出てきた。
今度は挟まっている中身が違うものであった。
「肉と、これベーコン?チーズも挟まってる!」
「うむ!先ほどのよりもぼりゅーむがあるぞ!」
「わ。すご…肉汁が…」
今度も瞳を輝かせながら両手でつかみ、一口食べた。
先ほどとは違い、肉のジューシーな濃い味がダイレクトに伝わってきた。熱で溶けたチーズがさらに美味しさに拍車をかけ、食べる手が止まらない。
「おいしっ!すごっ!」
「落ち着いて食べるんだぞ、中身が飛び出して」
「あっ」
夢中で食べていたため、後ろから具材の一部が飛び出し、皿に着地した。おおかみさんはすぐにフォークを出して横に置いた。
「だから落ち着けと言ったのに」
「ごめん…ありがとう」
フォークで落ちた具材をまた挟みなおして今度は慎重にかぶりつく。美味しさは変わらないため、すぐに笑顔になる。
水を飲みながらハンバーガーを食べていき、おかわり分もあっという間に食べ終えてしまった。
「わぁ…おいしかったぁ…!」
「お粗末様だ!良い食べっぷりでおおかみさんも嬉しい!」
残った食器を取り下げて、水の流れる音と食器の当たる音が聞こえてきた。満足そうなリンクはハンバーガーの美味しさに浸っている。
「あぁそうだ、リンク」
「なに?」
「タマに来る方法、教えよう」
「え!?」
「毎回畑に落ちてきてもらっても困るからなぁ」
「うぅ…」
おおかみさんはリンクに店への行き方を口頭で教えていく。
「お祈りするだけでいいの?」
「うむ、その祈りがなによりも大事なものだ」
「…おおかみさんって、なんだか女神様みたい」
「うん?」
「こう祈ったり、お店を困ってる人のところにもってきたり」
「おおかみさんは、おおかみさんだ。女神様なんてものじゃない」
「そうかなぁ…ここに来ると安心できるっていうか、おおかみさんと居るとすごくあったかい気持ちになるのに」
「そうか」
穏やかに笑いながら、食器を洗う手は止めなかった。
「いつもありがとうおおかみさん」
「おおかみさんはみんなの味方だ。困ったり、疲れたりしたらいつでも来るといい」
洗い終わった食器を拭いて片づける。穏やかに笑ってはいるものの、褒められて嬉しいのか尻尾がぶおんぶおんとゆっくり揺れていた。
リンクもそれを見て笑っていた。
「…え!?尻尾!?」
「むお!」
「お、おおかみさんその尻尾なに!?えっ頭に耳もある!!」
「おおかみさんだからあるぞ」
「理由になってないよ!本当に女神様だったりするの!?」
「しない。というかそなた気づいてなかったのか」
「全然気にしてなかった…!」