幸
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木々の木漏れ日が落ちる中、リンクは湖で休んでいた。自然の中であるため、おおかみさんの店にいくための扉がない。
「次の町までどれくらいだ?」
地図を広げて確認する。
「…まだだな」
距離を考えて、ため息をついた。おおかみさんの店に寄ることが日課になっている彼にとって、町から町への移動が旅の中で一番苦痛になっていた。
「今日は寄れないなぁ…」
「ここで野宿か?」
「あー…それがいいかもしれない」
影の中からミドナが顔を出し、リンクの言葉に反応する。
「本当はすぐに町に行きたいけど…距離的に難しそうだし」
「最初のオマエなら絶対行ってたな」
「まぁ…おおかみさんに言われてるし」
「またあの犬っころかよ」
「お前だって、俺が倒れたら困るだろ」
「…」
「計画をしっかり立てて行動しないと、できることができなくなるからな…今日はここまでだ」
「あっそう。じゃあな」
珍しく否定をしないミドナは影に戻った。リンクは一晩を明かすための準備を始める。
湖からあまり離れないように周囲を確認し、牧になりそうな枝や木を見つけては拾い、時には少し折ってもらっていく。
食べられそうな木の実やキノコがあれば、それも同じように拾う。
「ん?」
地面を集中してみていたために、おかしなことに気づけた。
綺麗な花が小さく咲いていた。
それは別におかしいことではない。おかしいのは、花がぽつりぽつりと、何かを導くように咲いていたことだ。
「えっ」
さらに、花は風に揺られただけで光のようにはらりと散って消えてしまった。そんな脆い花があるのだろうか。
彼は花が消える前に、花の道を走った。リンクが走る空気の揺れでさえ、花は綺麗に消えていく。先に、先に走っていくと、より一層明るい場所を見つけた。
走る足を止め、歩いてその場に近づく。
「ぅ…」
眩しいそこは一瞬目を細めるが、この森で見たことがない花が咲き乱れた優しい空間だった。
その中心には、小さな白い誰かと、大きな熊だった。
「あぶない!」
リンクは誰かの元に駆け寄る。
すると、白い誰かは振り返った。
「む、おぉ!りんく!」
「えっ!?お、おおかみさん!?」
小さな白い誰かは、今日寄れない店の店主であるおおかみさんであった。
「あえるとはぐーぜんだな!」
「え、いや、おおかみさん…なのか?」
「そなた、おおかみさんをわすれたのか?!かなしいぞ!」
「だって、子供じゃん…」
リンクが戸惑うのも無理はなかった。
真っ白い髪に赤い化粧、黒い瞳に耳と尻尾は変わらない。だが、姿が小さな子供であったのだ。
「むっ!そーいえばおおかみさんちいさかったな!」
「どうして子供?っていうか熊!」
「くま?おなかすいてたからごはんをあげたんだぞ!」
「は?」
熊を見れば、一生懸命皿にのった肉を食べていた。ぺろりと、お皿の物がなくなっておおかみさんを見るが、特に襲う様子はない。逆にちょっと懐いてる気さえする。
「おいしかったか?よしよしいっぱいたべていいこだ!」
「えぇ…」
「ほれ、もういきなさい」
熊を小さい手で撫でれば、熊は一声鳴いてのしのしと森へ帰っていった。
「何が…どうなってんだ」
「ところでりんく、こんなところでなにしてるんだ?」
「いや、それよりおおかみさんが何で子供になってんだ…?」
「おおかみさんもわかんない!」
本人がわかんないなら、もう誰もわかんないのである。
「つか、おおかみさんがいるってことは何処かにドアがある建物でもあんの?」
「ないぞ」
「じゃあどうやってここに来たんだよ」
「いずみのなかから」
「いずみ…?この辺じゃあそこしかないけど…そこからどうやって来たんだよ」
「こぜにをなげればこれる」
「こぜに?」
小さいおおかみさんに自然と視線を合わせるようにしゃがんで話をする。聞けば聞くほど知らない情報が出てきて、彼は混乱した。
「そんなことよりも、りんくのせかいはきれいだな!」
「ん、あぁ、ここは影がなくなったしな」
「そうか、やはりなにかあったのだな」
「おおかみさん、なんか知ってんのか?」
「しらないぞ。でもせかいがへいわでないことはわかる。おおかみさんなので」
「あぁそう…」
えへんと胸を張ったが、子供なので豊満に揺れるものはなかった。しいて言えば頭の耳がみょんと揺れたぐらいだ。
おかげか、リンクは視線をもっていかれず、冷静だった。
「おおかみさんもそろそろかえろう。おみせをあけないと」
「なら、俺も戻るか」
「そうか」
彼は立ち上がり、拾った牧を持ち直した。おおかみさんは子供らしいよちよちとした歩みでリンクの前を走る。その姿に、彼は村の子供たちを思い出して笑った。同時に無事であることを祈った。
「ん?」
「どうした」
「おおかみさん、足元」
「む?」
よちよち歩くおおかみさんの足元に花がぽんぽんと咲いていた。リンクがここに来るまで追いかけた、見かけない綺麗な花だ。
「その花おおかみさんが咲かせてたのか!?」
「あるくとさくぞ」
「歩くと咲く!?本当にあんた何者なんだよ!」
「おおかみさん!」
「今はそうじゃない!」
歩くだけで草花が生えるなんてありえないことである。おおかみさんのいつもの返答にリンクはとうとう突っ込んでしまった。
「ほれかえるぞ!」
「まてって!話が…まだ…」
歩を進めるたびにぽんぽんと咲く花。しかし子供ゆえか、進みが全然遅い。おおかみさん的には一生懸命走っているのかもしれないが、大人の歩にはかなわないのであった。
もちもちよちよち歩くおおかみさんを見て、リンクのお兄ちゃん魂がそわそわしだした。
「むっ」
「子供じゃ大変だろ…」
「おぉぉ」
リンクは我慢できず、牧を一度下ろしておおかみさんを抱き上げた。片腕でおおかみさんを抱き上げ、牧を拾う。一連の動作に、おおかみさんは感動した。
「りんくすごいちからもちだなぁ!すごいすごい!」
「普通だろ」
普段の大人の笑顔とは違う、子供特有の輝かしい笑顔が眩しい。
「落ち着けって、落ちるぞ!」
「む!」
そういえば大人しくリンクの胸に寄り掛かった。彼女のふわふわの耳が彼の頬をかすめる。
落ち着いたのを確認して、リンクは歩を進めた。
穏やかに会話をしながら彼が野宿する予定地へと戻った。
「ここでねとまりするのか?」
「今日はな。明日はタマに行くよ」
「そうか!まっているぞ!」
おおかみさんを腕から下ろす。暖かい、不思議と安心できる重みがなくなり、少し寂しいと彼は感じた。おおかみさんはまっすぐに湖に向かい、懐から緑色の輪っかを取り出して投げ入れた。
「え」
「ではまたな!」
「ちょっとまて!」
すると湖の表面に謎の光が現れ、おおかみさんは飛び込んだ。
彼女がいなくなれば、光も同時になくなり。リンクが付いた頃の景色に戻っていた。
「だから!説明しろって!!」
静かな森に彼の声がこだました。