幸
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「もう無理」
「ぬあーー!!リンクー!!?」
入店してそう一言呟くと、騎士見習いのリンクは倒れた。
突然倒れて動かない彼におおかみさんが駆け寄ると、すぐに原因を理解した。
「熱い!熱すぎる!体中が真っ赤っかだぁ!」
そう、彼は熱中症になっていたのだ。
彼女は急いで彼の服を剥ぎ、自室のベッドに寝かせて部屋を冷やし、氷嚢をおでこに乗せた。
意識がなくぐったりとしているリンクはおおかみさんになされるがままである。
「リンクの世界は気温が高いのか?こんな…む、服がちょっと焦げているぞ?なんだ火の中でも入っているのか?まさか火山か?おおかみさんでも入ったらあちあちなんだぞ?」
恐らくそのまさかなのだが、答えてくれる人物は目を回している。
彼が寝ている間に服を綺麗に洗濯し、尻尾でぐりぐりと大げさに塗ってあげれば新品のような見た目に直った。
おおかみさんはそれを見て満足し、丁寧にたたんで机の上に置いて行く。そこで初めて彼の武器を手に取った。
「…ふむ」
武器は何も言わなかったが、おおかみさんは何かを理解してリンクの傍に立てかけた。それからしばらくゆるやかに、たまにかば焼きの火を焚きつけるかのように団扇をあおいでリンクを見守った。
「…ん」
「む」
「あ、れ…おーかみ、さん」
「おぉ起きたか!よしよしゆっくりしなさい」
「ぼく、おみせ…」
「今は体をやすめなさい。体が動くようになったら水を飲もうな!」
目を覚ましたリンクはまだぼんやりとして火照った顔でおおかみさんを見つめた。
「…」
「まだまだ体は熱いからな」
「からだ…あ、ぼくからだあつくて…」
「うむ、熱中症だったからな」
「ねっ…ちゅー、しょ」
「体が熱くなって倒れてしまう病だぞ。リンク危なかったんだからな」
「…?かぜじゃないの?」
「む?風邪じゃないぞ?」
「?」
どうやら彼は熱中症というものを知らないようであった。
おおかみさんは耳と尻尾をぴょんを立てて説明をしようとしたが、まだ本調子でもない相手に言っても頭に入らないと思い、とりあえず頭を撫でてあげた。
「あとで説明するからな。ゆっくり眠りなさい」
「…」
撫でられる心地よさと、体が熱いにも関わらず暖かいと感じる温度にリンクはうとうとと瞼を落とし、再び夢の世界へと旅立った。
彼が次に目を開けるとおおかみさんではなく、見たことのない大きな生き物がたたずんでいた。
「どうも…」
「…」
生き物は首に下がった貝のような物を加えて吹く。すると貝から低い響く音と共に冷たい空気が吐き出された。
「うわ冷たっ!」
「目が覚めたか!」
「おおかみさん!これ誰⁉」
「凍神殿。見守り感謝するぞ!」
「いてがみ?」
凍神と呼ばれた生き物は、もぉ、と鳴いて姿を消していった。
「さてリンクよ!何か体に変化はないか?動かない所とか」
「え!?今の何⁉」
「凍神殿だが」
「だから誰!?」
「だから凍神殿」
「だから誰なの⁉消えたけど⁉」
元気に質問できるほどに体調は戻ったようだ。
おおかみさんは笑顔で頷いて安心した。
「で、体がおかしなところはないか?」
「いや僕の話…!」
「そんなことより己の心配をしなさい!其方危なかったのだぞ!」
「えっ」
「熱中症は命に係わる病なのだぞ!火山にでも行ったのか!?」
「うん」
「行ったのかぁ!?なんで⁉」
お互いがそれぞれに驚きつつ、火山に行った理由と凍神の話をして納得する。いやリンクは若干理解しきれていないが。
そんな彼にお構いなしに熱中症の怖さを話すと、真っ赤だった顔は真っ青に変わった。
「動けてよかったぁ!」
「うむうむ、これから暑い所に行くときはちゃん準備するんだぞ」
「そうする…うぅこわぁ…」
「さてリンク、歩けそうか?」
「た、たぶん…」
「無理ならここにご飯をもってくるぞ」
「そういえばここってどこ?」
「おおかみさんの部屋だぞ」
店内とは違う生活感のある室内を見渡して言った。彼女がその質問に答えると、リンクはへぇと声を漏らした。
「…おおかみさんの部屋⁉」
「うむ!だから存分に」
「このベッドおおかみさんが使ってるってこと⁉」
「そうだが」
「お、降ります!歩けます!歩かせて!」
「おぉ?」
真っ青な顔がまた真っ赤になり、急いで彼はベッドから転がり落ちた。そのままなんとか立ち上がって扉に向かって突撃した。
「落ち着けリンク」
「おぉおおおおち、おちついて!」
「ほら服と剣を忘れているぞ」
「服!服ね!うん!剣もだね!」
目の焦点が合わぬまま緑の服と剣を背負って、改めて扉を開けて飛び出した。
「うああああーー!いだっだっ!」
そして階段を踏み外して下まで転がり落ちたのだった。
「リンク!大丈夫か⁉」
「だいじょぶ…いたいけど…」
「もー!一体どうした?そんなにお腹が空いていたのか?」
思春期の男の子の心を、おおかみさんが理解してあげられることはなかった。怪我的に大きなものはなかったため、リンクはいそいそと、おおかみさんはいつも通り定位置についた。
「じゃあ水をゆっくり飲みながら待っていてくれ」
「う、うん…」
ガラスのコップにいれられた水を言われた通りちょっとずつ飲みながら、彼女の調理工程を眺めはじめた。
おおかみさんはすぐに二つの鍋に火をつけ、一つにはミルクを入れる。次にボウルの中に卵の黄身を三つほど入れ、砂糖をあり得ない量入れる。リンクはぎょっとしたが、おおかみさんは気にせずその二つを混ぜ始めた。
やがて中身が白っぽくまろやかな色になると、温まったミルクを少しずつ混ぜていく。ミルクを全て入れ終わると、それを厨の裏にもっていった。
戻って別の鍋を見る。どうやらすでに中に何か入っていたようだ。湯気がゆるやかに空に流れだした。
「リンク、まだできるまで時間がかかるから先にこっちを食べていてくれ!」
「これは?」
「おかゆだぞ!お米を水で煮たものだ。この梅干しと塩昆布を混ぜても美味いぞ!」
「おかゆ…うめぼし?」
おかゆはリンクの見知った料理に似ているが、梅干しと塩昆布には全く見たことがなかった、薄い紅色のふにゃふにゃした木の実と白い粉のついた黒い毛のようなもの。リンクはまずおかゆから匙で一口食べる。
「…おいしい」
優しいとろとろの触感とほんのりの甘さに感動するが、物足りなさも感じる。そこで言われた木の実を乗せて口に入れようとすると、洗い物をしていたおおかみさんが慌てて止めた。
「こらこらリンク!梅干しは酸っぱいからちょっとずつ食べるんだぞ!」
「えっそうなの?」
そう注意をされて匙で梅干しをちょっとに分けて口に入れる。
「…っしゅっっっ…!!」
「酸っぱいだろう!」
「でも、でもっ…何でかやめられない…!」
初めて感じる柑橘系とは違う酸っぱさにリンクは驚いたが、おかゆの柔らかい甘さと梅干しの酸っぱいながらもほんのり塩気のある味が後を引く。梅干しを小さくわけておかゆと一緒に食べる。
もくもくと酸っぱさに悶えながらも食べる姿に彼女はにこにこと笑いながらコップの水を継ぎ足した。
「ん、固い」
「種だな、食べなくていいぞ」
「うん…おおかみさん…」
「むふふおかわりならいいぞ!」
梅干し一つでおかゆを食べきったリンクに対し、おおかみさんはおかゆのおかわりをよそって戻す。次に彼は塩昆布というわからない食べ物。食べ物なのかも見た目ではわからないが、おおかみさんの店でまずいものは出ないことを知っている。
これもちょんと少しだけ乗せておかゆと一緒に食べる。
「しょっっっぱ‼」
「塩だからな!」
「でも、これもおいしい…」
食べたことのないコリコリの食感と塩をそのまま食べているんじゃないかと思うほどの塩気に驚きと感動を覚え、これもぱくぱくと食べていく。
夢中で食べるリンクを見て、彼女は裏手に入る。
奥から、もぉ、という鳴き声が聞こえた。
「リンク、おかゆはどうだ?」
「美味しいよ!不思議なくらい!酸っぱい木の実と塩なのに…」
「ふふふ。少ないものでも美味しくできるものだ!」
おおかみさんは何がとは言わないがたわわなたぷんたぷんを揺らして胸を張った。
リンクはすぐに目を晒して同意する。
「さてリンクよ。これからもっと美味しいものを用意しよう!」
「もっと美味しい物?」
そういうと、おおかみさんは舌から見たことのない機器を取り出した。そして隙間に大きな四角い氷をはめ込む。
「おおかみさん、それなに?」
「かき氷器だぞ!」
「かきごおりき?」
「見てればわかる」
機器の下に器を置いて、ハンドルらしい取っ手を握り、くるくると回し始めた。すると器に白いふわふわしたものが落ちていく。
「わぁ…」
「リンク、何色が好きだ?」
「え?色?」
「うむ!色だ!」
「えぇと…青色かな…」
「あいわかった!」
ふわふわが乗った器に、また別に取り出した青い液体が入った瓶から中身を掬ってふわふわにかける。それから横に冷えたボウルの中身を掬って添えた。
「おまちどう!かき氷とおまけのあいすくりーむだ!」
「かきごおり…アイスクリーム…!!」
白いふわふわの山とあわい黄色の丸いアイスクリームが店内の明かりで小さく輝く。見ているだけでもわかるひんやりとした冷たい印象に、暑さで倒れたリンクには極楽に見えた。
「見ててもいいが、早めに食べないと溶けてなくなってしまうぞ」
「ハッ!」
おおかみさんに言われてすぐに匙を手に取って白いふわふわに差し込む。何の抵抗もなく匙を受け入れ、匙の上に乗る。
ゆっくりと口に含むと、見た目通りのふわふわした食感が一瞬で消えて冷たい水に代わる。
「冷たい!美味しい!」
青い液体は甘くて少しさわやかに感じる。食べればわかるがただの氷なのにそれがとても美味しいのだ。
「これ氷なの⁉すっごいふわふわしてる!この青いのも甘くておいしい!」
「氷も削り方次第でふわふわになるんだぞ!青いのは甘いしろっぷだ。あいすも食べるといいぞ」
「アイス!」
まだ溶けずに残っている丸いアイスクリームに匙を入れる。適度に溶けた柔らかさで力はあまりいらなかった。
「…美味しいー!甘くて冷たくて、すっごい滑らか!」
「そうかそうか!」
「僕こんなアイスクリーム初めて!固くない!」
「むふふ」
「味も濃くてたまらない…!」
アイスクリームとかき氷を交互に食べていると、急に頭痛がしてきた。
「いっ…いったぁ…!」
「む、頭が痛くなってしまったか」
「な、なぁにこれ…これもねっちゅーしょー?」
「それは冷たい物を急いでいっぱい食べてしまったせいだぞ!少し待てば収まろう」
「うぐぐ…」
食べる手を止めて頭痛に耐えていると、ゆっくりと収まってきた。次からはゆっくりと食べ進める。
「あぁ溶けてきちゃったぁ!」
「あ、またそんな急いで」
「うぅ…痛い…」
美味しいと痛いを繰り返して、器の中身は空っぽになった。
「美味しかった!」
「うむうむ!喜んでもらえてなによりだ!」
「おかわりは…」
「これは駄目だ。冷たい物を食べすぎると体によくないぞ」
「駄目かぁ…」
珍しく駄目と言って食器類を取り下げた。リンクはしょんぼりと落ち込んだ。
「うむ、しかしだいぶ良くなったんじゃないか?」
「うん!おかげで元気になったよ!ありがとうおおかみさん!」
「タマはそういう店だぞ!」
「次来た時もかき氷とアイスクリーム食べたいなぁ…」
「そなた意外と甘い物が好きだよな」
かき氷とアイスクリーム
「ぬあーー!!リンクー!!?」
入店してそう一言呟くと、騎士見習いのリンクは倒れた。
突然倒れて動かない彼におおかみさんが駆け寄ると、すぐに原因を理解した。
「熱い!熱すぎる!体中が真っ赤っかだぁ!」
そう、彼は熱中症になっていたのだ。
彼女は急いで彼の服を剥ぎ、自室のベッドに寝かせて部屋を冷やし、氷嚢をおでこに乗せた。
意識がなくぐったりとしているリンクはおおかみさんになされるがままである。
「リンクの世界は気温が高いのか?こんな…む、服がちょっと焦げているぞ?なんだ火の中でも入っているのか?まさか火山か?おおかみさんでも入ったらあちあちなんだぞ?」
恐らくそのまさかなのだが、答えてくれる人物は目を回している。
彼が寝ている間に服を綺麗に洗濯し、尻尾でぐりぐりと大げさに塗ってあげれば新品のような見た目に直った。
おおかみさんはそれを見て満足し、丁寧にたたんで机の上に置いて行く。そこで初めて彼の武器を手に取った。
「…ふむ」
武器は何も言わなかったが、おおかみさんは何かを理解してリンクの傍に立てかけた。それからしばらくゆるやかに、たまにかば焼きの火を焚きつけるかのように団扇をあおいでリンクを見守った。
「…ん」
「む」
「あ、れ…おーかみ、さん」
「おぉ起きたか!よしよしゆっくりしなさい」
「ぼく、おみせ…」
「今は体をやすめなさい。体が動くようになったら水を飲もうな!」
目を覚ましたリンクはまだぼんやりとして火照った顔でおおかみさんを見つめた。
「…」
「まだまだ体は熱いからな」
「からだ…あ、ぼくからだあつくて…」
「うむ、熱中症だったからな」
「ねっ…ちゅー、しょ」
「体が熱くなって倒れてしまう病だぞ。リンク危なかったんだからな」
「…?かぜじゃないの?」
「む?風邪じゃないぞ?」
「?」
どうやら彼は熱中症というものを知らないようであった。
おおかみさんは耳と尻尾をぴょんを立てて説明をしようとしたが、まだ本調子でもない相手に言っても頭に入らないと思い、とりあえず頭を撫でてあげた。
「あとで説明するからな。ゆっくり眠りなさい」
「…」
撫でられる心地よさと、体が熱いにも関わらず暖かいと感じる温度にリンクはうとうとと瞼を落とし、再び夢の世界へと旅立った。
彼が次に目を開けるとおおかみさんではなく、見たことのない大きな生き物がたたずんでいた。
「どうも…」
「…」
生き物は首に下がった貝のような物を加えて吹く。すると貝から低い響く音と共に冷たい空気が吐き出された。
「うわ冷たっ!」
「目が覚めたか!」
「おおかみさん!これ誰⁉」
「凍神殿。見守り感謝するぞ!」
「いてがみ?」
凍神と呼ばれた生き物は、もぉ、と鳴いて姿を消していった。
「さてリンクよ!何か体に変化はないか?動かない所とか」
「え!?今の何⁉」
「凍神殿だが」
「だから誰!?」
「だから凍神殿」
「だから誰なの⁉消えたけど⁉」
元気に質問できるほどに体調は戻ったようだ。
おおかみさんは笑顔で頷いて安心した。
「で、体がおかしなところはないか?」
「いや僕の話…!」
「そんなことより己の心配をしなさい!其方危なかったのだぞ!」
「えっ」
「熱中症は命に係わる病なのだぞ!火山にでも行ったのか!?」
「うん」
「行ったのかぁ!?なんで⁉」
お互いがそれぞれに驚きつつ、火山に行った理由と凍神の話をして納得する。いやリンクは若干理解しきれていないが。
そんな彼にお構いなしに熱中症の怖さを話すと、真っ赤だった顔は真っ青に変わった。
「動けてよかったぁ!」
「うむうむ、これから暑い所に行くときはちゃん準備するんだぞ」
「そうする…うぅこわぁ…」
「さてリンク、歩けそうか?」
「た、たぶん…」
「無理ならここにご飯をもってくるぞ」
「そういえばここってどこ?」
「おおかみさんの部屋だぞ」
店内とは違う生活感のある室内を見渡して言った。彼女がその質問に答えると、リンクはへぇと声を漏らした。
「…おおかみさんの部屋⁉」
「うむ!だから存分に」
「このベッドおおかみさんが使ってるってこと⁉」
「そうだが」
「お、降ります!歩けます!歩かせて!」
「おぉ?」
真っ青な顔がまた真っ赤になり、急いで彼はベッドから転がり落ちた。そのままなんとか立ち上がって扉に向かって突撃した。
「落ち着けリンク」
「おぉおおおおち、おちついて!」
「ほら服と剣を忘れているぞ」
「服!服ね!うん!剣もだね!」
目の焦点が合わぬまま緑の服と剣を背負って、改めて扉を開けて飛び出した。
「うああああーー!いだっだっ!」
そして階段を踏み外して下まで転がり落ちたのだった。
「リンク!大丈夫か⁉」
「だいじょぶ…いたいけど…」
「もー!一体どうした?そんなにお腹が空いていたのか?」
思春期の男の子の心を、おおかみさんが理解してあげられることはなかった。怪我的に大きなものはなかったため、リンクはいそいそと、おおかみさんはいつも通り定位置についた。
「じゃあ水をゆっくり飲みながら待っていてくれ」
「う、うん…」
ガラスのコップにいれられた水を言われた通りちょっとずつ飲みながら、彼女の調理工程を眺めはじめた。
おおかみさんはすぐに二つの鍋に火をつけ、一つにはミルクを入れる。次にボウルの中に卵の黄身を三つほど入れ、砂糖をあり得ない量入れる。リンクはぎょっとしたが、おおかみさんは気にせずその二つを混ぜ始めた。
やがて中身が白っぽくまろやかな色になると、温まったミルクを少しずつ混ぜていく。ミルクを全て入れ終わると、それを厨の裏にもっていった。
戻って別の鍋を見る。どうやらすでに中に何か入っていたようだ。湯気がゆるやかに空に流れだした。
「リンク、まだできるまで時間がかかるから先にこっちを食べていてくれ!」
「これは?」
「おかゆだぞ!お米を水で煮たものだ。この梅干しと塩昆布を混ぜても美味いぞ!」
「おかゆ…うめぼし?」
おかゆはリンクの見知った料理に似ているが、梅干しと塩昆布には全く見たことがなかった、薄い紅色のふにゃふにゃした木の実と白い粉のついた黒い毛のようなもの。リンクはまずおかゆから匙で一口食べる。
「…おいしい」
優しいとろとろの触感とほんのりの甘さに感動するが、物足りなさも感じる。そこで言われた木の実を乗せて口に入れようとすると、洗い物をしていたおおかみさんが慌てて止めた。
「こらこらリンク!梅干しは酸っぱいからちょっとずつ食べるんだぞ!」
「えっそうなの?」
そう注意をされて匙で梅干しをちょっとに分けて口に入れる。
「…っしゅっっっ…!!」
「酸っぱいだろう!」
「でも、でもっ…何でかやめられない…!」
初めて感じる柑橘系とは違う酸っぱさにリンクは驚いたが、おかゆの柔らかい甘さと梅干しの酸っぱいながらもほんのり塩気のある味が後を引く。梅干しを小さくわけておかゆと一緒に食べる。
もくもくと酸っぱさに悶えながらも食べる姿に彼女はにこにこと笑いながらコップの水を継ぎ足した。
「ん、固い」
「種だな、食べなくていいぞ」
「うん…おおかみさん…」
「むふふおかわりならいいぞ!」
梅干し一つでおかゆを食べきったリンクに対し、おおかみさんはおかゆのおかわりをよそって戻す。次に彼は塩昆布というわからない食べ物。食べ物なのかも見た目ではわからないが、おおかみさんの店でまずいものは出ないことを知っている。
これもちょんと少しだけ乗せておかゆと一緒に食べる。
「しょっっっぱ‼」
「塩だからな!」
「でも、これもおいしい…」
食べたことのないコリコリの食感と塩をそのまま食べているんじゃないかと思うほどの塩気に驚きと感動を覚え、これもぱくぱくと食べていく。
夢中で食べるリンクを見て、彼女は裏手に入る。
奥から、もぉ、という鳴き声が聞こえた。
「リンク、おかゆはどうだ?」
「美味しいよ!不思議なくらい!酸っぱい木の実と塩なのに…」
「ふふふ。少ないものでも美味しくできるものだ!」
おおかみさんは何がとは言わないがたわわなたぷんたぷんを揺らして胸を張った。
リンクはすぐに目を晒して同意する。
「さてリンクよ。これからもっと美味しいものを用意しよう!」
「もっと美味しい物?」
そういうと、おおかみさんは舌から見たことのない機器を取り出した。そして隙間に大きな四角い氷をはめ込む。
「おおかみさん、それなに?」
「かき氷器だぞ!」
「かきごおりき?」
「見てればわかる」
機器の下に器を置いて、ハンドルらしい取っ手を握り、くるくると回し始めた。すると器に白いふわふわしたものが落ちていく。
「わぁ…」
「リンク、何色が好きだ?」
「え?色?」
「うむ!色だ!」
「えぇと…青色かな…」
「あいわかった!」
ふわふわが乗った器に、また別に取り出した青い液体が入った瓶から中身を掬ってふわふわにかける。それから横に冷えたボウルの中身を掬って添えた。
「おまちどう!かき氷とおまけのあいすくりーむだ!」
「かきごおり…アイスクリーム…!!」
白いふわふわの山とあわい黄色の丸いアイスクリームが店内の明かりで小さく輝く。見ているだけでもわかるひんやりとした冷たい印象に、暑さで倒れたリンクには極楽に見えた。
「見ててもいいが、早めに食べないと溶けてなくなってしまうぞ」
「ハッ!」
おおかみさんに言われてすぐに匙を手に取って白いふわふわに差し込む。何の抵抗もなく匙を受け入れ、匙の上に乗る。
ゆっくりと口に含むと、見た目通りのふわふわした食感が一瞬で消えて冷たい水に代わる。
「冷たい!美味しい!」
青い液体は甘くて少しさわやかに感じる。食べればわかるがただの氷なのにそれがとても美味しいのだ。
「これ氷なの⁉すっごいふわふわしてる!この青いのも甘くておいしい!」
「氷も削り方次第でふわふわになるんだぞ!青いのは甘いしろっぷだ。あいすも食べるといいぞ」
「アイス!」
まだ溶けずに残っている丸いアイスクリームに匙を入れる。適度に溶けた柔らかさで力はあまりいらなかった。
「…美味しいー!甘くて冷たくて、すっごい滑らか!」
「そうかそうか!」
「僕こんなアイスクリーム初めて!固くない!」
「むふふ」
「味も濃くてたまらない…!」
アイスクリームとかき氷を交互に食べていると、急に頭痛がしてきた。
「いっ…いったぁ…!」
「む、頭が痛くなってしまったか」
「な、なぁにこれ…これもねっちゅーしょー?」
「それは冷たい物を急いでいっぱい食べてしまったせいだぞ!少し待てば収まろう」
「うぐぐ…」
食べる手を止めて頭痛に耐えていると、ゆっくりと収まってきた。次からはゆっくりと食べ進める。
「あぁ溶けてきちゃったぁ!」
「あ、またそんな急いで」
「うぅ…痛い…」
美味しいと痛いを繰り返して、器の中身は空っぽになった。
「美味しかった!」
「うむうむ!喜んでもらえてなによりだ!」
「おかわりは…」
「これは駄目だ。冷たい物を食べすぎると体によくないぞ」
「駄目かぁ…」
珍しく駄目と言って食器類を取り下げた。リンクはしょんぼりと落ち込んだ。
「うむ、しかしだいぶ良くなったんじゃないか?」
「うん!おかげで元気になったよ!ありがとうおおかみさん!」
「タマはそういう店だぞ!」
「次来た時もかき氷とアイスクリーム食べたいなぁ…」
「そなた意外と甘い物が好きだよな」
かき氷とアイスクリーム