幸
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「こんにちはおおかみさん!」
「ん?」
「久しぶりだね!」
「んん?」
おおかみさんはいつも通りタカマガハラで料理の下準備をしていた。そしていつものように緑の勇者が入店してきたのだ。
ただ、見たことのない青年であった。
「おおかみさん?」
「う、む…?」
「リンク!今のアナタは大人なのヨ!」
「…あっ!そっか!おおかみさん僕だよ!子供だったリンク!」
「む⁉あのリンクなのか⁉」
「そうだよ!」
青年は小さな勇者のリンクだと言う。
「大きくなったなぁ!」
「流石女神サマ、受け入れるのが早いわ…」
「おおかみさんは7年経っても変わらないんだね!」
「そなたの世界は7年経っているのか!」
「そうみたい!僕こんなにおおかみさんと近いんだ!嬉しい!」
おおかみさんの腰より小さかったリンクが今やおおかみさんと同じくらいの身長である、声も顔だちも体付きもまさに青年と呼ぶにふさわしい。
「僕ね!おおかみさんの事抱っこできるよ!」
「そうかそうか!」
「重い荷物も、おおかみさんのことも守ってあげれるよ!」
「頼もしいなあ!」
「だからおおかみさん!結婚してください!」
「ん?」
7年前と変わらぬ純粋な笑顔でそう言ってきた。これには流石のおおかみさんも固まってしまう。
「リンク!やめなさいって言ったでしょ!」
「だ、だってナビィ…」
「一体どうしたんだリンク」
「どうって、僕おおかみさんのこと好きだから」
「うむ、ありがとう」
「じゃあ結婚してくれるの!?」
「リンク!こら!」
久しぶりに来店し、見目の良い青年になった勇者が突然結婚をしようと申し出るというすごいことが起きている状態だ。
ナビィがリンクをぽんぽんと体当たりで止めている。
「リンク、婚姻はできないぞ」
「こんいん?結婚の話をしてるんだよ?僕おおかみさんのことが好きだからずっと一緒に居たいんだ」
「…?」
「あ、あのっ女神サマ!お話を聞いてもらえますか!」
「おぉ頼む…」
リンクを落ち着けてナビィの話を聞き始めた。曰く、彼は7年間眠って成長したのだという。おおかみさんはその話を聞いてリンクのちぐはぐさを理解した。
彼は心だけ子供なのだ。
「そうか。リンクもナビィも最初は戸惑っただろう」
「うん、びっくりしちゃった」
「そうですネ…」
「でもこれならおおかみさんと一緒にいてもおかしくないよね!」
「うーむ、どうしたものか」
真っすぐでなんの迷いもない心だからこそ、無下にできないのである。
「おおかみさん?」
「そうだな。まずご飯を食べてから考えよう」
「ご飯!」
「うむ!何か食べたいものはあるか?」
「僕もう大人だからね!大人のご飯食べる!」
「うーむ大人のご飯…」
正直料理に大人も子供もないのだが、7年といえどおおかみさんの常識からすれば彼はまだ未成年。お酒類は出せないし、かと言って子供が喜びそうな物を出せば拗ねてしまうのはわかりきっていた。
さてさてどうしようか。
「ふむ、ここは久しぶりにおむらいすにしようか」
「オムライス?それ、子供が食べるやつじゃない?」
「ふふふ…リンクよ。オムライスにも大人用があるのだぞ」
「えっ!」
子供の時分が喜んで食べていた物を提案され、リンクは少し不貞腐れたが大人用と聞いて気分はあがったようだ。
おおかみさんは、何がとは言わないがたわわなたぷんたぷんを揺らしながら胸を張った。
「今回は大人用のおむらいすを作ってやろう!大人だから味が複雑だぞぅ!大人のリンクはこの味の良さがわかるかなぁ?」
「わ、わかるよ!僕大人だもん!」
「よぉし!ならすぐ作ってやるからいい子で待っているんだぞ!」
「うん!」
ニコニコと上機嫌で椅子に座って待つ様子はただの子供である。ナビィは安心したのか息をついてリンクの頭にとまった。
おおかみさんはそんな二人を見てフライパンに火をつけて、オムライスに必要な材料をそろえる。
玉ねぎ、鶏肉、グリンピース、卵を用意し、チキンライスに必要なものからみじん切りにしていく。
温まったフライパンに油をひき、みじん切りにした野菜、鶏肉を入れて炒める。
「おおかみさん、まだ?」
「まだだぞリンク。大人なんだから待つこともできないと駄目だぞ」
「できるよ!」
そわそわ落ち着かないリンクをよそに、チキンライスをどんどん仕上げていく。
オレンジに染まったライスを一度フライパンから別の皿に降ろし、新しいフライパンを火にかけ、使ったフライパンを洗い始めた。
新しいプライパンにはケチャップと色の黒い液体を入れて混ぜる。
洗い終わったフライパンをまた火にかけて、バターを入れた。
「知らない匂いがする…」
「リンク、これなんだと思う?」
「え、なんだろう…お店で見たビンだけど…」
「これはな、ワインだぞ」
「ワイン!」
大人と言えばお酒と思うリンクは興奮した。
おおかみさんはワインのコルクを開けて薄暗い液体の中に少しだけ混ぜる。他に調味料を入れて混ぜながら煮詰め始めた。
隣のバターが溶けたフライパンには、溶いた卵を流し入れる。じゅわじゅわと音をはじけさせ、固まりはじめた。
すぐにフライ返しで片面を掬いあげて軽く巻いていく。最後に折り目を下にするように手首のスナップや叩いて回転させた。
全ての火を止めて、お皿に置いたライスに丸まった卵焼きを乗せた。最後に黒い液体を小さな器に入れ替えた。
「待たせたな!これがふわとろおむらいすとでみぐらすそーすだぞ!」
「ふわとろオムライス…でみ…そーす」
待ちに待ったリンクの前にでてきたのは綺麗な薄い色の卵焼きと見たことのない黒いソース。見知ったオムライスとは違う形とソースに戸惑いながらも興味を抑えられないようだ。
「これが大人用のオムライス…じゃあ早速!」
「まぁ待ちなさい」
「え?」
「まず卵をこう、横に切って広げるんだ」
「横…こう?」
「そうそう。上だけ切るんだぞ」
差し出されたナイフで言われた通り卵を切り込む。
すると重力に耐えられなかった卵の中身がとろりとこぼれ落ちた。
「わぁっ!」
「むふふ」
卵を切れ目からめくれば、ぷるぷる震えながらもとろりとした中身がライスを覆い隠した。艶やかな卵は光を反射して輝き、湯気が自慢気にリンクの顔にぶつかった。
「なにこれ!すっごい!綺麗!」
「ふっふっふ…そこにこのでみぐらすそーすをかけるんだぞ」
「これを…」
興奮と楽しさが溢れかえるリンクは言われた通りにデミグラスソースを上から注ぐ。
ソースもとろりとしたもので、ぷるぷるの卵を駆け下りながらソース特有の酸っぱいような甘い匂いが舞い上がった。
「おっおおかみさん!おおかみさん!!」
「さぁ召し上がれ!」
彼女の合図ですぐに匙に持ち替えていっぱいに掬うとすぐに口に入れた。熱い卵と暖かいライスが丁度よい温度になる。
ぷるぷるした柔らかい卵とライス。そこに食べたことのない味のソースが口いっぱいに広がり、卵とチキンライスと混ざる。
酸っぱいような甘いようなソースはおおかみさんの言う通り複雑でなんといえばよいのかわからない。
だから、言えることはただ一つ。
「美味しい!」
「うむ!」
おおかみさんは満足げに一つうなずいた。
「すっごい!これなに⁉食べたことない!これすっごく美味しいよ!」
「そうかそうか!おおかみさんは嬉しいぞ!」
「オムライスってこんなに変わるんだ!」
満面の笑みでオムライスを夢中で食べていく。
美味しさのあまりか、体が大きくなったからか、お皿の上は綺麗になくなってしまった。
「おいしかったぁ!」
「良い食べっぷりだったぞ!見ているこちらも気持ちがよい!」
「ねぇねぇ!他にもこういうのあるの!?」
「そうだなぁ…はんばーぐやすぱげってぃもあるぞ!」
「いいないいなー!次はどっちも食べたい!」
「これこれ、両方は食べきれないかもしれないぞ」
「食べれるよ!おおかみさんのご飯だもん!」
「ふふ、嬉しいなぁ!」
綺麗になくなった食器を片付けて水に浸す。
リンクは目の前に残ったコップの水を一口飲んだ。
「次はどっちも食べて…またオムライス食べて…酒場で食べてるご飯も食べてみたいなぁ…」
「リンク!食べるのもいいけどちゃんと旅もするのヨ!」
「わかってるよ!」
「まぁ何かあったらまた来なさい」
おおかみさんの言葉に返事をし、満足したリンクはナビィと一緒にタカマガハラを出て行った。
「ふぅ…婚姻の話は忘れてくれたか…」
「あっ!結婚の話忘れてた!」
「もうやめなさいって!」