東雲 歩
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瀬戸内との偽装カップル作戦は、継続してます
※歩さんルートの逆ハー
瀬戸内くんとのはじめての潜入任務、
偽装カップル爆誕から数日が経った頃。
津軽さんから「結果としては良かったけど」と前置きがあった上で「カップルに見えないから、毎日トレーニングでもしたら?」と言われてしまい、カップル偽装という名のトレーニングが続いている。
瀬戸内「桃山先ぱ…、ちょもちゃん、もうあがりますか?」
いつものように、瀬戸内くんから声がかかる。
トレーニングの一環として内勤のときは、警察庁から乗り換えの最寄り駅まで一緒に過ごしている。
なんなら帰り道、ご飯を食べる日もある。
(さすがにご飯は2人じゃなくて、大石くんもいるけど)
桃山「海くん、おつかれさま。もうすぐあがるよ。一緒に帰ろうか?」
瀬戸内「はい!俺、先に片付けて休憩室で待ってますね」
瀬戸内くんはニコッと笑って、荷物をまとめて出ていった。
(瀬戸内くんの無邪気スマイル、だいぶ上達してるなぁ…)
トレーニング当初は「桃山先輩に彼女に向けるような笑顔作るとか無理」と散々言われ、ぎこちない笑顔だったが、いまはもう自然な振る舞いができている。…ような気がする。
(私もあとこれだけ片付けて…)
報告書やもろもろの書類をまとめ、
片付けていると、背後から声がかかった。
津軽「ウーサ、もうあがり?」
津軽さんの声が頭上から聞こえてきた。
(あ、頭に乗せてる…おも…)
立ち上がれないので、頭上に向けて声をかける。
桃山「津軽さん、お疲れ様です。もうあがります」
津軽「なんかさ、最近、海くんと仲良いね」
桃山「え?」
思いがけない言葉に思わず軽く振り返る。
津軽さんの頭が少し動いて、そのまま離れた。
振り返ると、腕を組んだ津軽さんが不服そうな顔をしている。
(仲良いって言うか、トレーニングをはじめた原因はアナタなんですけど…)
…と、喉まででかかった言葉を押さえて、津軽さんに切り返す。
桃山「海くん…瀬戸内くんとのトレーニングのことですか?でしたら、津軽さんからのアドバイスを受けまして、2人で猛特訓中です!」
津軽「ウサは真面目ちゃんだもんね」
うんうんと頷く津軽さん。
桃山「ちなみに、津軽さんから見て、私と瀬戸内くんってカップルに見えますか?」
津軽「…過保護なお姉ちゃんと、洗脳された弟?」
桃山「………み、みえないってことですね。まだまだか…」
ガクンと項垂れると、少し屈んだ津軽さんの手が伸びてくる。右頬にふれ、そのまま髪をなでられ、顔が近付いてくる。
津軽「ウサがハニトラの練習したいなら、俺がいつでも手解きするけど…?」
桃山「………!!心臓に悪いです!」
吸い込まれそうな瞳を、唇を、もとい顔を手で追いやり、津軽さんと距離をとる。
(津軽さん、キスする勢い…わけないよね。職場だし。ってかいま百瀬さんがいたら、絶対舌打ちか、後ろから蹴りを入れられてる…)
桃山「津軽さんはそうやってからかいますけど、私も瀬戸内くんも真剣なんです。しっかり捜査の役に立ちたいんです。だから…」
と話を続けようした時、入り口の辺りから名前を呼ばれた。
瀬戸内「ちょもちゃん…?」
瀬戸内くんがキョトンとした顔でこちらをみている。
手を前に突き出しているものの、見方によってはキスされそうになって突き返したような立ち位置である。実際、未遂のような状態である。
桃山「あっご、ごめん海くん!いま行くね」
勘違いされたかどうかは後で話そう、そう思い津軽さんに一礼して横を通り抜ける。…ことは叶わず、ガッチリと片腕を押さえられてしまった。
津軽「ウサ、俺とご飯行くって言ってたよね?」
桃山「え?」
唐突な津軽さんの問いかけに、ハテナを浮かべていると、瀬戸内くんがこちらに寄ってきた。
瀬戸内「ちょもちゃんの予約は、俺が先です。津軽さんといえど、譲りませんよ」
ギロッと敵意を剥き出して津軽さんを睨む瀬戸内くん。こわい。
津軽「んー、俺の方が上司だからなぁ。ねぇ、ウサ?」
(いやいや職権濫用!っていうかなんだこの幸せな取り合い…)
桃山「えーっと……。めちゃくちゃ有難い状況なんですが、ちょっと帰らないと色々問題がありまして…、今日は失礼します!海くん、津軽さんとご飯行ってあげて!明日また帰ろ!」
瀬戸内「はい!?」
津軽「え」
津軽さんの手を振り解き、後ろから追いかけてくる声を無視して小走りに駅まで向かう。
(海くんと帰るって伝えていたけど、もう1時間くらい経ってた…!)
今日は、歩さん家に行く約束をしていた。
歩さんはめずらしく直帰で、お互い明日も早いのでお泊まりはナシ。
定時からまもなく1時間が経過しており、焦りながら改札を抜ける。
(LIDEで一報しておいたほうがいいかも…)
『ちょっと仕事が長引いて、いま向かってます』と連絡すると、既読がついた。返信はいつも通りない。
(見てくれたんなら良かった…!)
最寄りの駅で降りて、食材を買いに近くのスーパに寄り、マンションに向かった。
インターホンを押すと、すぐに反応があり、部屋着の歩さんが出迎えてくれた。
桃山「歩さん!お待たせしました。遅くなってすみません!すぐご飯の支度しますね」
東雲「おつかれ。………。」
歩さんはドアを開けてチラッとこちらを見ると、すぐ居間に戻っていた。
いますぐ後ろから抱きつきたい衝動を抑え、居間に荷物を置く。手洗いうがいなど済ませてキッチンで作業していると、歩さんがキッチンの入り口から、口に手を当てて考えるような仕草でこちらを見ていた。
桃山「あ!ご飯ですよね、遅くなってすみません!急ぎます!」
再度謝って、手際よく料理をはじめる。
東雲「………キミ、なんかあった?」
桃山「はえっ!?」
ストンと食材を切るタイミングで、歩さんから問いかけられ、切った拍子に変な声が漏れる。
東雲「…………」
横まで見ると、まだ口に当てる仕草のままだ。
(海くんのことはともかく、津軽さんのことは…触れない方がいいかも…)
とっさに判断し、瀬戸内くんの話をする。
桃山「い、いつも通りですよ!今日も海くんと帰ったんですけど、良いことあったとかなかったとかそんな他愛もない話をしてました!」
東雲「………」
歩さんは、はぁぁとため息をついて居間に戻っていった。
(な、なにそのため息は…!もしかして嘘ついてるのバレてる?まさかね…でもありうる…)
嫌な汗をかきながらも、料理をすすめた。
桃山「お待たせしました。歩さん、桃山スペシャルです!焦げてないタイガーです!どうぞ!」
東雲「タイガーは虎、これはエビ」
とか何とか言いながらも、歩さんは、モグモグとエビフライを口に運ぶ。
東雲「………いいんじゃない」
歩さんから褒め言葉を受けて、笑みが溢れた。
桃山「へへっ…」
夕食後---
後片付けをして、帰宅するまでの間、
テレビをつけて、リビングでくつろぐ時間。
(この時間が、幸せっていうんですね、神様仏様なんでもいいから幸せ…感謝…)
ジーンと心の中で幸せを噛み締めていると、歩さんが怪訝そうな顔をしてこちらみて呟いた。
東雲「怖…」
桃山「これは、幸せいっぱいの顔です!」
東雲「あ、そう………。キミ、今日は後輩と帰ったんだっけ」
桃山「え?あっ、えーっと、はい、ハイ」
先ほどと変わらない表情で、東雲さんは続ける。
東雲「キミの後輩は、キミと帰れなかったみたいだけど?」
桃山「え!?」
どこでその情報を…と発しようとして歩さんを見ると、ナナメ45度からの自信ありげな表情にかわっている。
(これはやっぱりバレてる…?バレた上で、探られるときの顔してる…?)
先ほどまでのお花畑な気持ちとは一変し、たらりと冷や汗が落ちる。
桃山「………えーっと」
東雲「………」
桃山「瀬戸内くんとは、たしかに今日は一緒にいなかったカモナ〜…なんて…」
まさに上の空を見上げ、ちらっと歩さんをみる。
相変わらず、ナナメ45度からの自信ありげな表情をしている。
(まだ嘘つくのかと思われてそうな…)
東雲「………何かあれば、聞くけど?」
控えめにも歩さんは言ってくれる。
津軽さんのことを隠してるのが、馬鹿馬鹿しくなってくる。
(大体、津軽さんが勝手に迫ってきてというか、手ほどきするとか言ってきて、別にキスもしてないし何もないんだから隠すことないのでは…?)
冷静になり、深呼吸して歩さんに向き直った。
桃山「はい、すみません。瀬戸内くんとは帰ってません。遅かったのには別の理由があります。」
東雲「………へぇ?」
どこか楽しそうな声が返ってくる。
桃山「津軽さんが、絡んできて、それで遅くなりました」
(嘘じゃない、言葉足りんかもだけど、嘘ではない)
じっと歩さんの目を見つめていると、ふっとそらされた。
東雲「ふーん…」
桃山「………」
東雲「………」
口に手をあててなにか考えているようだが、歩さんは何も言わない。
桃山「えっと…それだけです、はい」
東雲「ふーん…。てっきりキスでもされたのかと思ったけど、そんなわけないか」
歩さんの営業スマイルと的確な予測のコメントに、思わず吹き出す。
桃山「んぐっ!!!」
東雲「唾飛んできたんだけど…」
スマイルは一瞬で消えて、嫌そうな表情をみせる。
桃山「すすすみません、歩さんが変なこと言うから驚いちゃって…」
東雲「別に、キミこそ気にしすぎなんじゃない?…キスされそうになったとか?」
桃山「!?!?」
(ダメだ、このままじゃ顔に出てしまう…)
東雲「もう顔に出てるし。そう言うこと…」
歩さんは、またふっと顔を逸らした。
桃山「キスはしてませんし、丁重にお断りしました。ご安心ください」
東雲「………当然」
歩さんはまた「はぁぁ」とため息をついている。
桃山「歩さん、だから…」
ちょうど喋りかけたそのとき、
ピピピピピーーー と帰宅のアラームが鳴った。
東雲「時間だね」
桃山「はい…」
その日は仕方なく、駅まで見送ってもらい、帰宅した。
駅までの道のりでは、津軽さんのことはなかったかのように、鳴子や黒澤さんの話をして終わった。
翌日---
早めに出社すると、石神班の黒澤さんと後藤さん、そして大石くん、他にも数名出勤している様子だ。
桃山「大石くん、おはよう。朝早いなんて珍しいね」
大石「桃山先輩、おはようございます。今日はアイツに呼ばれて…」
アイツが誰なんだろうと思っていると、後ろから声をかけられた。
宮山「桃山先輩…!おはようございます。」
振り返ると、S署に配属となっているはずの宮山くんがこちらに近寄ってきていた。
桃山「えっ、宮山くん!おはよう。この間ぶりだね、こんなところでどうしたの」
銀室ではないメンバーが、このフロアを訪れるのは珍しいが、石神班や加賀班のメンバーは特に気にしていないようだ。
(歩さんもまだきてないし…大石くんに用があったのかな)
宮山「なんでってそりゃ、俺も先輩に会いたくて…」
そのまま手でも握られそうな勢いで、だんだん距離が近くなってくる。
桃山「えーっと…」
大石「これ、お前に借りていたやつ」
宮山くんとの距離感に困っていると、大石くんが物理的に割り込んできた。めっちゃ助かる。
何かが入った紙袋をぐいっと宮山くんの脇腹に押し当てている。
宮山「あ、ああ。大石、おはよ。もうきてたのか。」
紙袋を受け取りながら、宮山くんが答える。
あからさまに、嫌な表情を向けている。
大石くんは気に求めず、座席に戻りながら言った。
大石「……桃山先輩、そろそろ瀬戸内がきます」
桃山「あっ海くんもう来るんだ。昨日のこと謝らないと」
このまま立っているとまた距離を詰められそうなので、私もそそくさと座席に着いた。
宮山「海くん………?どういうことですか?先輩、まさかアイツと付き合ってるんじゃ…」
大石くんから受け取った紙袋をさらにぐしゃっと握りながら、宮山くんが呟いた。顔が怖い。
その顔の後ろから、チラッとみえた黒澤さんが薄目で笑ってるような…。
桃山「海くんと?付き合ってないよ!いや、付き合ってる?…うーん、付き合おうとしてる?」
どう表現するのが適切なのか迷っていると、宮山の顔がどんどん強張っていく。
よりによってアイツなんかに…と呟きも聞こえた、気がする。
瀬戸内「おはようございます」
そうこうしてるうちに、瀬戸内くんも出社したようだ。
(めっちゃ間が悪いし、そろそろ百瀬さんたちもきそうな…)
瀬戸内「ちょもちゃん!昨日なんで帰っちゃったんですか………って。宮山?なんで?」
話しかけにきた瀬戸内くんが、怪訝そうに宮山を見る。
宮山「瀬戸内、お前桃山先輩と付き合ってるのか…?」
瀬戸内「…だったらなに?」
宮山「………!!!な、なんで、あの人は…先輩…」
瀬戸内「あの人…?」
2人の顔がこちらを向く。
桃山「お、おはよう海くん。昨日は津軽さんとのこと、ありがとう。帰っちゃってごめんね。えっとこのあと合同の捜査会議だよね?先に会議室行くね!じゃ!」
捲し立てるように海くんに声をかけ、2人の間を通り抜けて、会議室に向かった。
(朝からなんだこの緊張感…変な汗かいた…)
ドキドキしながら廊下を歩いていると、向かいから津軽さんの姿が見えた。
(げっ、また心臓に悪い人が…いやいや朝だし大丈夫、挨拶だけしよ)
桃山「津軽さん、おはようございます」
津軽「ウサ、おはよ。昨日は…、なんか良いことあった?」
桃山「先に会議室空けておきます」
津軽「………」
ニコニコする津軽さんに対して、負けじとニコニコを浴びせ返して、横を通り過ぎる。
変態の足止め、3班合同宮山も
津軽さんはインカム越しに嫉妬してくれ
東雲さんは帰りに
宮山は後日談で瀬戸内に、
※歩さんルートの逆ハー
瀬戸内くんとのはじめての潜入任務、
偽装カップル爆誕から数日が経った頃。
津軽さんから「結果としては良かったけど」と前置きがあった上で「カップルに見えないから、毎日トレーニングでもしたら?」と言われてしまい、カップル偽装という名のトレーニングが続いている。
瀬戸内「桃山先ぱ…、ちょもちゃん、もうあがりますか?」
いつものように、瀬戸内くんから声がかかる。
トレーニングの一環として内勤のときは、警察庁から乗り換えの最寄り駅まで一緒に過ごしている。
なんなら帰り道、ご飯を食べる日もある。
(さすがにご飯は2人じゃなくて、大石くんもいるけど)
桃山「海くん、おつかれさま。もうすぐあがるよ。一緒に帰ろうか?」
瀬戸内「はい!俺、先に片付けて休憩室で待ってますね」
瀬戸内くんはニコッと笑って、荷物をまとめて出ていった。
(瀬戸内くんの無邪気スマイル、だいぶ上達してるなぁ…)
トレーニング当初は「桃山先輩に彼女に向けるような笑顔作るとか無理」と散々言われ、ぎこちない笑顔だったが、いまはもう自然な振る舞いができている。…ような気がする。
(私もあとこれだけ片付けて…)
報告書やもろもろの書類をまとめ、
片付けていると、背後から声がかかった。
津軽「ウーサ、もうあがり?」
津軽さんの声が頭上から聞こえてきた。
(あ、頭に乗せてる…おも…)
立ち上がれないので、頭上に向けて声をかける。
桃山「津軽さん、お疲れ様です。もうあがります」
津軽「なんかさ、最近、海くんと仲良いね」
桃山「え?」
思いがけない言葉に思わず軽く振り返る。
津軽さんの頭が少し動いて、そのまま離れた。
振り返ると、腕を組んだ津軽さんが不服そうな顔をしている。
(仲良いって言うか、トレーニングをはじめた原因はアナタなんですけど…)
…と、喉まででかかった言葉を押さえて、津軽さんに切り返す。
桃山「海くん…瀬戸内くんとのトレーニングのことですか?でしたら、津軽さんからのアドバイスを受けまして、2人で猛特訓中です!」
津軽「ウサは真面目ちゃんだもんね」
うんうんと頷く津軽さん。
桃山「ちなみに、津軽さんから見て、私と瀬戸内くんってカップルに見えますか?」
津軽「…過保護なお姉ちゃんと、洗脳された弟?」
桃山「………み、みえないってことですね。まだまだか…」
ガクンと項垂れると、少し屈んだ津軽さんの手が伸びてくる。右頬にふれ、そのまま髪をなでられ、顔が近付いてくる。
津軽「ウサがハニトラの練習したいなら、俺がいつでも手解きするけど…?」
桃山「………!!心臓に悪いです!」
吸い込まれそうな瞳を、唇を、もとい顔を手で追いやり、津軽さんと距離をとる。
(津軽さん、キスする勢い…わけないよね。職場だし。ってかいま百瀬さんがいたら、絶対舌打ちか、後ろから蹴りを入れられてる…)
桃山「津軽さんはそうやってからかいますけど、私も瀬戸内くんも真剣なんです。しっかり捜査の役に立ちたいんです。だから…」
と話を続けようした時、入り口の辺りから名前を呼ばれた。
瀬戸内「ちょもちゃん…?」
瀬戸内くんがキョトンとした顔でこちらをみている。
手を前に突き出しているものの、見方によってはキスされそうになって突き返したような立ち位置である。実際、未遂のような状態である。
桃山「あっご、ごめん海くん!いま行くね」
勘違いされたかどうかは後で話そう、そう思い津軽さんに一礼して横を通り抜ける。…ことは叶わず、ガッチリと片腕を押さえられてしまった。
津軽「ウサ、俺とご飯行くって言ってたよね?」
桃山「え?」
唐突な津軽さんの問いかけに、ハテナを浮かべていると、瀬戸内くんがこちらに寄ってきた。
瀬戸内「ちょもちゃんの予約は、俺が先です。津軽さんといえど、譲りませんよ」
ギロッと敵意を剥き出して津軽さんを睨む瀬戸内くん。こわい。
津軽「んー、俺の方が上司だからなぁ。ねぇ、ウサ?」
(いやいや職権濫用!っていうかなんだこの幸せな取り合い…)
桃山「えーっと……。めちゃくちゃ有難い状況なんですが、ちょっと帰らないと色々問題がありまして…、今日は失礼します!海くん、津軽さんとご飯行ってあげて!明日また帰ろ!」
瀬戸内「はい!?」
津軽「え」
津軽さんの手を振り解き、後ろから追いかけてくる声を無視して小走りに駅まで向かう。
(海くんと帰るって伝えていたけど、もう1時間くらい経ってた…!)
今日は、歩さん家に行く約束をしていた。
歩さんはめずらしく直帰で、お互い明日も早いのでお泊まりはナシ。
定時からまもなく1時間が経過しており、焦りながら改札を抜ける。
(LIDEで一報しておいたほうがいいかも…)
『ちょっと仕事が長引いて、いま向かってます』と連絡すると、既読がついた。返信はいつも通りない。
(見てくれたんなら良かった…!)
最寄りの駅で降りて、食材を買いに近くのスーパに寄り、マンションに向かった。
インターホンを押すと、すぐに反応があり、部屋着の歩さんが出迎えてくれた。
桃山「歩さん!お待たせしました。遅くなってすみません!すぐご飯の支度しますね」
東雲「おつかれ。………。」
歩さんはドアを開けてチラッとこちらを見ると、すぐ居間に戻っていた。
いますぐ後ろから抱きつきたい衝動を抑え、居間に荷物を置く。手洗いうがいなど済ませてキッチンで作業していると、歩さんがキッチンの入り口から、口に手を当てて考えるような仕草でこちらを見ていた。
桃山「あ!ご飯ですよね、遅くなってすみません!急ぎます!」
再度謝って、手際よく料理をはじめる。
東雲「………キミ、なんかあった?」
桃山「はえっ!?」
ストンと食材を切るタイミングで、歩さんから問いかけられ、切った拍子に変な声が漏れる。
東雲「…………」
横まで見ると、まだ口に当てる仕草のままだ。
(海くんのことはともかく、津軽さんのことは…触れない方がいいかも…)
とっさに判断し、瀬戸内くんの話をする。
桃山「い、いつも通りですよ!今日も海くんと帰ったんですけど、良いことあったとかなかったとかそんな他愛もない話をしてました!」
東雲「………」
歩さんは、はぁぁとため息をついて居間に戻っていった。
(な、なにそのため息は…!もしかして嘘ついてるのバレてる?まさかね…でもありうる…)
嫌な汗をかきながらも、料理をすすめた。
桃山「お待たせしました。歩さん、桃山スペシャルです!焦げてないタイガーです!どうぞ!」
東雲「タイガーは虎、これはエビ」
とか何とか言いながらも、歩さんは、モグモグとエビフライを口に運ぶ。
東雲「………いいんじゃない」
歩さんから褒め言葉を受けて、笑みが溢れた。
桃山「へへっ…」
夕食後---
後片付けをして、帰宅するまでの間、
テレビをつけて、リビングでくつろぐ時間。
(この時間が、幸せっていうんですね、神様仏様なんでもいいから幸せ…感謝…)
ジーンと心の中で幸せを噛み締めていると、歩さんが怪訝そうな顔をしてこちらみて呟いた。
東雲「怖…」
桃山「これは、幸せいっぱいの顔です!」
東雲「あ、そう………。キミ、今日は後輩と帰ったんだっけ」
桃山「え?あっ、えーっと、はい、ハイ」
先ほどと変わらない表情で、東雲さんは続ける。
東雲「キミの後輩は、キミと帰れなかったみたいだけど?」
桃山「え!?」
どこでその情報を…と発しようとして歩さんを見ると、ナナメ45度からの自信ありげな表情にかわっている。
(これはやっぱりバレてる…?バレた上で、探られるときの顔してる…?)
先ほどまでのお花畑な気持ちとは一変し、たらりと冷や汗が落ちる。
桃山「………えーっと」
東雲「………」
桃山「瀬戸内くんとは、たしかに今日は一緒にいなかったカモナ〜…なんて…」
まさに上の空を見上げ、ちらっと歩さんをみる。
相変わらず、ナナメ45度からの自信ありげな表情をしている。
(まだ嘘つくのかと思われてそうな…)
東雲「………何かあれば、聞くけど?」
控えめにも歩さんは言ってくれる。
津軽さんのことを隠してるのが、馬鹿馬鹿しくなってくる。
(大体、津軽さんが勝手に迫ってきてというか、手ほどきするとか言ってきて、別にキスもしてないし何もないんだから隠すことないのでは…?)
冷静になり、深呼吸して歩さんに向き直った。
桃山「はい、すみません。瀬戸内くんとは帰ってません。遅かったのには別の理由があります。」
東雲「………へぇ?」
どこか楽しそうな声が返ってくる。
桃山「津軽さんが、絡んできて、それで遅くなりました」
(嘘じゃない、言葉足りんかもだけど、嘘ではない)
じっと歩さんの目を見つめていると、ふっとそらされた。
東雲「ふーん…」
桃山「………」
東雲「………」
口に手をあててなにか考えているようだが、歩さんは何も言わない。
桃山「えっと…それだけです、はい」
東雲「ふーん…。てっきりキスでもされたのかと思ったけど、そんなわけないか」
歩さんの営業スマイルと的確な予測のコメントに、思わず吹き出す。
桃山「んぐっ!!!」
東雲「唾飛んできたんだけど…」
スマイルは一瞬で消えて、嫌そうな表情をみせる。
桃山「すすすみません、歩さんが変なこと言うから驚いちゃって…」
東雲「別に、キミこそ気にしすぎなんじゃない?…キスされそうになったとか?」
桃山「!?!?」
(ダメだ、このままじゃ顔に出てしまう…)
東雲「もう顔に出てるし。そう言うこと…」
歩さんは、またふっと顔を逸らした。
桃山「キスはしてませんし、丁重にお断りしました。ご安心ください」
東雲「………当然」
歩さんはまた「はぁぁ」とため息をついている。
桃山「歩さん、だから…」
ちょうど喋りかけたそのとき、
ピピピピピーーー と帰宅のアラームが鳴った。
東雲「時間だね」
桃山「はい…」
その日は仕方なく、駅まで見送ってもらい、帰宅した。
駅までの道のりでは、津軽さんのことはなかったかのように、鳴子や黒澤さんの話をして終わった。
翌日---
早めに出社すると、石神班の黒澤さんと後藤さん、そして大石くん、他にも数名出勤している様子だ。
桃山「大石くん、おはよう。朝早いなんて珍しいね」
大石「桃山先輩、おはようございます。今日はアイツに呼ばれて…」
アイツが誰なんだろうと思っていると、後ろから声をかけられた。
宮山「桃山先輩…!おはようございます。」
振り返ると、S署に配属となっているはずの宮山くんがこちらに近寄ってきていた。
桃山「えっ、宮山くん!おはよう。この間ぶりだね、こんなところでどうしたの」
銀室ではないメンバーが、このフロアを訪れるのは珍しいが、石神班や加賀班のメンバーは特に気にしていないようだ。
(歩さんもまだきてないし…大石くんに用があったのかな)
宮山「なんでってそりゃ、俺も先輩に会いたくて…」
そのまま手でも握られそうな勢いで、だんだん距離が近くなってくる。
桃山「えーっと…」
大石「これ、お前に借りていたやつ」
宮山くんとの距離感に困っていると、大石くんが物理的に割り込んできた。めっちゃ助かる。
何かが入った紙袋をぐいっと宮山くんの脇腹に押し当てている。
宮山「あ、ああ。大石、おはよ。もうきてたのか。」
紙袋を受け取りながら、宮山くんが答える。
あからさまに、嫌な表情を向けている。
大石くんは気に求めず、座席に戻りながら言った。
大石「……桃山先輩、そろそろ瀬戸内がきます」
桃山「あっ海くんもう来るんだ。昨日のこと謝らないと」
このまま立っているとまた距離を詰められそうなので、私もそそくさと座席に着いた。
宮山「海くん………?どういうことですか?先輩、まさかアイツと付き合ってるんじゃ…」
大石くんから受け取った紙袋をさらにぐしゃっと握りながら、宮山くんが呟いた。顔が怖い。
その顔の後ろから、チラッとみえた黒澤さんが薄目で笑ってるような…。
桃山「海くんと?付き合ってないよ!いや、付き合ってる?…うーん、付き合おうとしてる?」
どう表現するのが適切なのか迷っていると、宮山の顔がどんどん強張っていく。
よりによってアイツなんかに…と呟きも聞こえた、気がする。
瀬戸内「おはようございます」
そうこうしてるうちに、瀬戸内くんも出社したようだ。
(めっちゃ間が悪いし、そろそろ百瀬さんたちもきそうな…)
瀬戸内「ちょもちゃん!昨日なんで帰っちゃったんですか………って。宮山?なんで?」
話しかけにきた瀬戸内くんが、怪訝そうに宮山を見る。
宮山「瀬戸内、お前桃山先輩と付き合ってるのか…?」
瀬戸内「…だったらなに?」
宮山「………!!!な、なんで、あの人は…先輩…」
瀬戸内「あの人…?」
2人の顔がこちらを向く。
桃山「お、おはよう海くん。昨日は津軽さんとのこと、ありがとう。帰っちゃってごめんね。えっとこのあと合同の捜査会議だよね?先に会議室行くね!じゃ!」
捲し立てるように海くんに声をかけ、2人の間を通り抜けて、会議室に向かった。
(朝からなんだこの緊張感…変な汗かいた…)
ドキドキしながら廊下を歩いていると、向かいから津軽さんの姿が見えた。
(げっ、また心臓に悪い人が…いやいや朝だし大丈夫、挨拶だけしよ)
桃山「津軽さん、おはようございます」
津軽「ウサ、おはよ。昨日は…、なんか良いことあった?」
桃山「先に会議室空けておきます」
津軽「………」
ニコニコする津軽さんに対して、負けじとニコニコを浴びせ返して、横を通り過ぎる。
変態の足止め、3班合同宮山も
津軽さんはインカム越しに嫉妬してくれ
東雲さんは帰りに
宮山は後日談で瀬戸内に、