阿伏兎から労を込めて
🐰
どぉーも 初めまして
俺は宇宙海賊春雨の第七師団副団長 阿伏兎だ
ん?
初めましてじゃないって?
いやいや
おたく等からしたらそうかもしれないが 俺からしたら初めましてだ
まぁ 堅苦しい挨拶はすっ飛ばして
今日は俺と 俺らの団長――神威について紹介しよう
因みに今は 地球より小規模のチンケな星で夕飯中さね
モグモグモグ...
「うーん この星のご飯は美味しくないな やっぱり地球のご飯が一番だよ」
飯食いながら 小うるさいオッサンみたいなこと云ってるが これが俺らの団長神威だ
年のころは 十七 八か
体格は中肉中背 白く透けた肌に真朱色の髪 顔には常に笑顔を浮かべって 見た感じじゃただの優男なんだが
その実 かなりの戦闘能力を持ってる
────修羅が血
己と同等 それ以上の剛なる者の血をもって初めて 俺の魂は潤う
なあんて のたまうあたりわかるだろうが 戦闘民族夜兎の血を濃ゆ~く受け継いでんのさ
あの夜王も星海坊主も手を焼くほどだ
俺は正直 夜兎の力を存分に発揮して生きる若者がいるってのは嬉しいね 云わないが
ただ本能に従順な 好戦的で快楽主義の自分ファーストすっとこどっこいの世話は大変なわけ
例えば
「わがまま云わずに食べてくれ アンタ胃に入ればなんでもいいんでしょーが」
こんな事云やあ
「俺の舌は阿伏兎ほど粗雑に出来てないんだ なんでもいいと思うの? そんな事云うなら」
お前をメッタメタのギッタギタにして食べちゃうぞ だと
「いやいや こんなギスギスした兎食べたら腹下しちゃうっての」
苦笑いで返せば 冗談だよ不味そうじゃん なんて云いながらケタケタ笑ってやがる
どこのジャイアンだ?
食べるは冗談にしろ 下手をしたら鱠にされかねない
勿論そうなったら 俺も素直にやられる気はないがね
同族で殺しあうってのは むなしいよな
「あ そうだ 阿伏兎 アレ作ってよ」
ほぉら まためんどうな事を云い出したぞ
ってかオジサンはコックさんじゃあないからね
部下だよ 部下
「なぁに云ってんだ団長 あんなモンよりこの飯の方がうまいに決まってんだろォ」
一応云っておくが 団長が不味い不味い云ってる飯だって今居る星じゃ三ツ星なんだ
確かにこの刺身は頂けないがな
一体何の魚なんだか
それでも食えない程じゃない
ただ 団長が地球の飯贔屓なだけなのさ
大食漢の夜兎を何年もやってみろ
腹を満たすために大して味わいもせず丸呑みしてんだ 俺はな
なのに目の前のすっとこどっこいときたら 夜兎も真っ青の大食いのくせに 箸を投げ出して
「作ってよ あーぶーとー?」
なぁんて笑顔で首を傾げてる
そんな仕草されてもなぁ
確かに見た目はいいだろうが あんたの中身を知ってる部下としては うすら寒いだけなんだよ
「食べたいな アレ」
「団長 気に入って頂いてるところ悪いが」
材料が無いから
作れっても材料無いのよ ほんと
それにな 厨房だって勝手に使えないだろォ
諦めてくれ
「うーん」
だが この団長きかないんだ
パンパン
手を叩いて呼び出した 魚っぽい種族に何かを囁いている
いやな予感がするな こりゃ
「さぁ 行こうよ」
おや?
予想外 団長が立ち上がった
珍しく素直に諦めたのか?
って・・・
そんな訳ねーよなぁ コレに限って
「どちらへ~?お姫様」
嫌味で云ってやったんだけどね
「阿伏兎は厨房 俺は部屋で待ってようかな」
かわされちまったよ
俺が 厨房
このお姫様は 客室
な おかしいだろう?
俺は部下であって 下僕や執事じゃないぞ
おたく等も変だってわかるよな
なのに
「じゃ 待ってるよー 早くしてね」
だとさ
「勘弁してくれよ~ 団長~」
部下の切実な声にも意を介さない横暴ぶり
片手を上げると機嫌良さげに出て行っちまった
パワハラで訴えるぞ コノヤロー
ってな感じで
人の話を聞く気もない わがままで身勝手なヤローだから 世渡りもへったくそだ
俺が見張ってなきゃあ 今頃第七師団は壊滅してただろう
そうだなあ
目付役 見張り役 世話係 面倒事押しつけられオジサン・・・
とにかく 俺は副団長をやらされて 神威の駄目でとんまで どうしようもない部分を補う役目なわけだ
仲裁で片腕失ったって 飯を作らされたって 愛すべき同族の繁栄のためなら 諦めもつくってもんだ
すっとこどっこいを海賊王にだってしてやるさ
しょうがない 俺の性分だ
さて
それじゃあ 団長の夜食を作りに行くとしますか
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