華々しき青春の日々よ
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「折り入って、みんなにお願いがあります。」
お昼休みの食事中。政宗と元親と佐助と就さんと半兵衛さんと私でそれぞれ持ってきたお弁当や購買で買ったパンを食べていた時のこと。私がいつもとは違う改まった態度で話を切り出したのが珍しかったのか、みんなはごはんを食べながらもこちらに視線を集中させてくれた。
「Ah?そんなに畏まってどうしたんだよ。」
「いやあ…ちょっと言いにくいことなんですけど。」
「何なんだよ。水臭ぇな。」
「そうそう!困っていることがあるなら遠慮なく言っちゃってよ!俺達と名前ちゃんの仲じゃない!」
話を切り出したのはいいものの中々、その内容を明らかにしない私に気遣ってくれるみんな。就さんも周りに同調するように静かに頷く。半兵衛さんは何を考えているかはわからないが聞くだけ聞いてくれるようで早く言えと顔に出ていた。
「えっとですね…実は彼氏の振りをしてほしくてですね。」
次の瞬間、元親が飲んでいたお茶を吹き出し、それを浴びた政宗は怒りもせずにただ呆然として、佐助は食べていたパンを詰まらせ盛大に噎せていて、就さんは持っていたお箸を真顔で圧し折り、どこからともなくドスの利いた声が聞こえたので政宗か元親のどちらかと思ったら二人はご覧の有様なので、消去法で誰よりも険しい顔付きをなされている半兵衛さんが声の発生源となるのだが俄かに信じ難い。どうか勘違いであってくれ。私が話を切り出した途端、目の前でちょっとした騒ぎが起こり、場の空気がどことなく殺伐としたものに変わったのを感じた。
「げほっ…はあ、えっと、何?彼氏の振り?どうしてまた?ゴホッ!」
幾分かまともに呼吸ができつつある佐助が尋ねてきたが、まだ節々で苦しそうに咳き込んでいる。
「この間、他校の男子に告白されて断ったんだけど、友達でいいからって諦めてくれなくてさ。もう一度考えてほしいって今度また逢うことになったから、嘘をつくのは気が引けるんだけど、彼氏がいるとなると流石に諦めてくれると思うんだ。だから、面倒に巻き込むのは承知で申し訳ないんだけど、その人と逢う当日に誰か彼氏役になってくれませんか?」
好意は嬉しいのだが、それ以上にこちらは顔も名前も知らない人から突然、告白されるのは怖いというのが本音だ。あちらも勇気を出して私に思いを告げたのであろうが、こちらも勇気を出して断ったのに、まさかの保留に上手く切り返すことができなかった。あまりにも個人的なことに友達を巻き込むのは心苦しいが、こんなことを頼めるのと状況を打開できそうなのは彼等しかいないのも事実であった。
「All light!事情は把握した。honeyがtroubleで困っているのを助けるのがdarlingである俺の役目だからな。」
「何寝惚けたこと言ってんだよ伊達。その役目ならこの俺が引き受けてやんよ。」
「あ、頼んでおいてなんだけど、私としては佐助か就さんにお願いしたいんだけど。」
「What!?」「はあ!?」
早々に彼氏役に名乗りを上げた政宗と元親であったが、私がその申し出を断ると二人は険しく睨みを利かせていた視線をこちらへと集中させる。その様子を見て私はこの場で相談してしまったことを失敗した思いながらも話を続けた。
「政宗ってモテるじゃない?顔だけは良いから。」
「顔が良いのは否定しないが、だけってことはねえだろ。」
「歯並びも良いと思う。」
「何だよ歯並びって初めて言われたわ。結構つるんでるのに出て来る長所が顔と歯並びってどういうことだよおかしいだろ。」
「眼帯のデザインも良いと思う。」
「もうそれ俺褒めてねえだろ、眼帯作ったやつ褒めてるじゃねえか。」
「顔と歯並びとか眼帯のデザインが良いから髪をかき上げてドッグとか投げキッスしながらキャットとか言うだけで女子がキャーキャー言うじゃない?」
「お前まさか俺がそのアホしかいない世界の住人だって言うんじゃねえだろうな。」
「そんな政宗を振りとは言え、彼氏になってもらったことが露呈した日には女子達が私の靴に画鋲を入れたり、校舎裏に呼び出して「顔はやめな、ボディーにしな」ってリンチされるに決まってる。」
「どう考えてもcomicの読み過ぎだし、ちょっと時代背景が古いぞおい。そもそも振りじゃなくて、相思相愛のloverだと言っちまえばそんなことにはならねえだろ?」
「政宗。それはつまり私に死ねって言ってんの?」
「What!?なんでそうなんだよ!」
「振りだけで陰湿極まりない暴力を振るわれるんだから付き合うだなんて死と同義だから。君は知らないんだよ、女子の本当の恐ろしさを。宛ら魔女狩りのように私を生きたまま十字架に磔にして、火炙りに処した後に見せしめと称し死体を野晒しにして鳥葬することも厭わない世紀末JKになるから。」
「お前のimaginationの方がよっぽど恐ろしいわ!そんな奴等、片っ端から俺が黙らせてやるよ!お前が傷つくなんてこの俺が絶対に許さねえ。例え誰を敵に回したとしても俺だけはお前の味方だぜ、名前。」
「いや、君は敵だよ政宗。そして最初に黙らされるのは死んだ私だよ。」
「伊達はともかく、何で俺が駄目だって言うんだよ!」
私と政宗の間に元親が割り込んで来た。元親については政宗と比べてシンプルなものだが、言わなければわからないのであれば言うしかあるまい。
「だって元親、不良じゃない。」
「不良の何がいけねぇってんだい!」
「それがわからないと言うのならこれ以上話すことは何もありません。あなたのお母さんは泣いていますよ。」
「男は強くてなんぼだろ!その点、俺はこん中で1番腕っぷしには自信があるし、何より男らしさがある!彼氏の役には俺しかいねぇだろ!」
「強いのは結構だけれども、振りとは言え元親の彼女になった日には他校の世紀末ヤンキーから元親を呼び出す材料にされるだろうし、「女を返してほしければ町外れにある廃工場まで来い」って果たし状が送られて来ると思うよ。」
「どの漫画を読んでりゃあ、このご時世にそんな不良のイメージが定着するんだよ!」
「そんなことになったらやっぱり困るんだよね。私、今、配信されている映画とかドラマの続きとか観たいし。」
「どこで困ってんだお前!もっと別のことで困れよ!だがよ、例えそんなことになったとしても、俺はこの命を懸けてお前のことを守ってやるぜ!」
「簡単に命を懸けるなんて言わないで。もし私のために死んでもらっても嬉しくない。ちゃんと生きてもらわないとお母さんじゃなくても私だって泣くから。」
「お、おう。そうだな。」
「何でちょっと照れてるの。」
「いやよ。意外にもお前が俺のことを思ってくれていたのを知って嬉しくってよ。」
「当たり前でしょ。私のことなんだと思ってるの。」
「ああ。名前、お前のその気持ちに応えるためにも全力で果たさせてもらうぜ。彼氏の責任ってやつをよ。」
「言ったそばから思考が死んだ発言で私を泣かしにかかるな。」
「よーし!そうと決まったら俺が絶対にお前を幸せにしてやる!だから名前!俺に着いてこい!」
「気付いてないかもしれないけど、さっき政宗の顔面に飲んでたお茶をぶっかけたの元親だから。」
私の内部告発により政宗と元親が取っ組み合いを始めた。政宗が文字通り、水も滴る改めお茶も滴る良い男になっていたのは元親が飲んでいたお茶を吹き出したことが原因であるのだが、全然、気付いていない様子だったので、安易にそのことについて触れてしまうと私の相談について話が進まなさそうだったので、言わないでおいたのだが、何がいつ切り札となり、どこで役に立つかはわからないものである。私の選択は間違っていなかった。二人がしょうもない喧嘩をしているのを横目に私は本題を進めることにした。
「話を戻すんだけど、彼氏の振りは佐助と就さんのどちらかに頼みたいんだけど。もちろん、迷惑でなければ。」
「そんなの決まってるじゃない!」
「ああ、答えなどすでに出ておる。」
「俺が彼氏役をするよ!」「その役目、我が引き受けよう。」
その場に訪れるひと時の静けさ。二人の快諾は私にとって有難いものであるはずなのに、ほぼ同時に発せられた返答に私は何て答えて良いのかわからず、言葉を詰まらせてしまう。妙な空気が流れ始めたのを感じ始めた時、対面に座っていた二人が顔を見合わせた。
「いやあ、意外だなあ。毛利の旦那に演技だなんて俺様まったく想像できないんだけど。」
「普段から欺瞞を振りまく貴様なら偽ることなど造作もないであろうが、所詮は偽り。我に芝居など不要。ただ名前の相手として出向くまでよ。」
「おーっと、そうやっていつまでも澄ました顔して余裕ぶっこいてると足をすくわれちゃいますよ。まあ、俺様としては有難い限りだけどね。偽りだろうと芝居だろうとそれを本気でやるだけさ。それに、一緒に名前が出た時点で大差はそんなにないんじゃないの?」
「我と貴様の間に差異はないと申すか?道化に身を投じるあまり、現実も己自身も見失ってしまったようだな猿飛。」
そこで醜く争っている政宗と元親と違って二人に頼めばスムーズに問題解決へと事が運ぶと思っていたのだが、その予想とは反して行き詰った状況に何となく空気が悪くなっていくのを肌で感じた。ここは早期解決と空気を変えるためにも思い切ってあっち向いてホイでもして決める提案が脳裏に過ぎるが、今の雰囲気が私の口と心を重くさせ、いつの間にか私は意見を出しにくい立場となってしまっていた。何故だ。私は当事者だぞ。
「名前。この男、そなたも知っての通り、情報通と言えば聞こえは良いが、その実態は個人情報は勿論、風聞、醜聞、取るに足らぬ秘密から隠蔽された事実まで、陰で鼠のように嗅ぎ回り、人の弱点を掌握することを生き甲斐とする悪趣味の持ち主だ。それは学内外に留まらず、その暗躍振りから事件の裏には猿飛ありとささやかれるほど。仮とは言え、彼ような奴が相手と知れば、そなた自身にもあらぬ悪評がまとわりつくこととなるぞ。」
「そうなの佐助?いつ逮捕される予定なの?」
「そんな予定ないよ!してないから!まさか今の話、鵜呑みになんかしてないよね!?」
「そうだね。知り合いから犯罪者は出てほしくないから佐助のことを信じてるよ。」
「期待していた信用のされ方じゃないんだけど! 名前ちゃん、さっき不良を理由に長曾我部の旦那は断ってたけど、毛利の旦那なんて裏番だかんね!人の弱点を掌握するとか裏で暗躍してるとかそれやってるの俺様じゃなくてこの人だから!長曾我部の旦那の比じゃないから!そんな人、彼氏役にしたらそれこそ名前ちゃんの印象が悪くなっちゃうよ!俺様にしときなって!ね?絶対に後悔させたりしないから!」
「就さんはそんなことしないよ。こんなに優しいのに。」
「この人が優しいの名前ちゃんにだけだからね!」
二人の主張と態度から見定めた限り、今回の件は就さんに頼んだ方が良いと心が偏りつつあるのだが、ここで就さんを選んで、佐助を断ると私の真偽不明の悪い噂や個人情報を流出されてしまう可能性を考えるとどうにも踏み切れない。まさか、そんなことを佐助がしないとは思うのだが、何だか必死な様子も相俟って怖い。
「我か此奴か迷っているのであれば教えてやろう。どうやらこの者には心に決めた相手がいるらしい。」
「ちょ!それ言うの反則でしょ!」
「え、佐助好きな人いるの?」
「え!?いないよ!」
「いないの?」
「いや、いるけど、いないと言うか、いないけどいるって言うか何と言いますか。」
「何それ。意味がわかると怖い話してる?」
「ていうかさ!それを言うなら毛利の旦那だっているでしょ!好きな人!」
「え!就さん好きな人いるの!?」
「俺様の時と喰いつき方が明らかに違うくない名前ちゃん!?」
「気にかかるか?」
「そりゃあ、気になるでしょ!」
「此度の相手に我を選ぶならば、その真偽について言及してやろう。」
「だあああああああ!!ダメだって!ダメダメダメ!ずっこい!ほっんとこの人ずっこいわあ!一度くらい正々堂々やろうとか思わないわけ!?」
「正々堂々など弱者の常套句よ。勝ち目のない者ほど正義や礼節を盾にする。」
「もうこの際だから言わせてもらうけど、あんたに対しての態度って明らかに尊敬とか憧れで止まりで、それ以上の感情は向けられてなさそうだよね!?それに比べたら?俺様なんて?全然チャンスありますし?今回のが切っ掛けでめっちゃ進展しちゃうかもね!なーんて!」
「言いたいことはそれだけか猿飛。ならば死ね。」
平和というのは不安定な位置で辛うじてバランスを保たれているものである。そういう意味では平和という概念自体が、人間の願望の投影に過ぎないのかもしれない。前向きにまともな対話をできるはずだった二人でこの有様だ。死の宣告をする就さんとそれを受けた佐助を見ていて私はそう思った。佐助は30秒後に死ぬ。私にはそれを止める術がない。一体、どこで選択肢を誤ったと言うのだろうか。いや、やっぱり誰か一人に絞って相談しなかった時点でこうなることは決まっていたのだろう。新たに生まれた問題の数々にどうしたものかと手で顔を覆い、深いため息と共に天を仰ぐ。
「僕がやるよ。」
それは混迷を極めた喧騒の中でも不思議とよく通る声だった。引き付けられるようにそちらを見ると今まで沈黙を保っていた半兵衛さんが机に肘をついて、口元に組んだ手を添え、眼鏡越しに鋭い眼光だけを覗かせるどこぞの司令官のような姿勢をしていた。今にも汎用ヒト型決戦兵器に乗れと言わんばかりだ。その視線が私を捉えていることを認識した途端、走る緊張感。その背後には心なしかゴゴゴゴゴ…という効果音が漂っているのが見える。
「え、や、やる?何をですか?」
「君の彼氏役は僕がやる。」
「え?いやいやそんな、半兵衛さんってこういう厄介事に巻き込まれるのって面倒でしょ?」
「僕がやる。」
「で、でも、こんなこと引き受けたところで何もメリットはありませんし。」
「僕がやる。」
「は、半兵衛さんのお手を煩わせるわけには…。」
「僕がやる。」
有無を言わさない威圧感を放ち無限受注BOTと化してしまった半兵衛さん。私が何を言おうとも僕がやると機械のように同じ言葉を繰り返すその様は、感情を欠いたようでいて、どこか揺るがぬ決意が滲んでいた。先にも述べた通り、付き合ってもいない女の彼氏の振りなど面倒この上なく、何のメリットもないこの頼みごとを打算眼鏡である半兵衛さんが引き受けるだなんて微塵の期待もしてないし、こちらから頼む気も更々ない。軽率に何かを頼んで見返りにどんな無理難題な要求をされるかわかったものではないからだ。一生、半兵衛さんから差し出される用途不明の書類に押印しろとか、週100でパシりになれとか、授業中に自分で考えたオリジナルの空想の生き物の真似をしろとか。半兵衛さんなら言い兼ねない。何にせよその目的が不明瞭であることが恐ろしいのに、断固として譲らない姿勢が一層その恐怖を際立たせていた。あ、やばい。何か息苦しい。呼吸ってどうやるんだっけ。熱も出て来た気がする。何だか頭も痛い気がするし、吐き気とか眩暈とか蕁麻疹、鼻水、鼻血、幻覚、幻聴、毒、麻痺、気絶、混乱、炎上、凍結、石化とありとあらゆるバッドステータスに襲われる感覚だ。しかし、ここで頷いてはならない。決して。一瞬の了承と引き換えに私の一生がめちゃくちゃにされてしまう。それだけは回避しなければ。
「えっ…とぉ…。」
「………。」
「…そのぉ……。」
「………。」
「………。」
「………。」
「…………お願いします…。」
「Hey!竹中!見えないpressureかけて名前にNoを言わせないようにしてんじゃねえぞ!
「テメェ、そんなことして俺らが納得すると思ってんのか!?ああ゛!?」
「おや、何をそんなに喚き立てているんだい?君達が納得しようがしまいがそんなことは重要ではない。尊重すべきは彼女の意志。そうだろう?」
「どの口がそんなふざけたjoke抜かしてんだ?」
「まったく仕方がないな。名前?今回の彼氏の振りをすると言う話だけど是非、僕にお願いしたいんだよね?」
「ハイ。ソウデス。」
「僕が君の彼氏で嬉しいかい?」
「ハイ。ウレシイデス。」
「僕のことが好きかい?」
「ハイ。スキデス。」
「うん。僕も好きだよ。と言うことで悪いね諸君。この話はもうおしまいだ。」
「何がと言うことでだコラァ!何でい今の心の通わねぇやりとりわよぉ!こんなもんほとんど洗脳だろうが!勝手に終わらせてんじゃねぇぞ!」
「You're insane!名前の目も心も死んでるだろうが!さっさとあんたと言う呪縛から解放しな!」
「やれやれ。そこまで言うのならこうしよう。その名前に告白したと言う件の頭がおかしい男子に見定めてもらおうじゃないか。誰が彼女の恋人にふさわしいのか。」
「………は…?」
心が行方知れずになっていた私の耳に突拍子もない発言が飛び込んで来て現実に引き戻される。今、この人は何と言っただろうか。告白して来た男子に見定めてもらう?誰が私の恋人にふさわしいのか?何を言ってるんだ。そして、何でそんなことをするんだ。それに何の意味があると言うんだ。そもそも、告白を断るために彼氏の振りをしてほしいのにその相手にふさわしい彼氏を選んでもらうってどういうパラドクスなの?誰が得するパラドクスなの?その先に待つ未来とは果たして何なのですか。あまりの意味不明な提案に戻って来たばかりの意識が再び遠退いていきそうだ。後、頭がおかしい男子ってどう言うことだ。何故、逢ったこともない顔も名前も知らない人間のことをそんな風に言えるんだ。そっちの方がおかしいだろ。私に告白したと言う情報だけで頭がおかしいと決めつけるなど、この時代にどんな独裁ジャッジメントを下しているのか。進路希望に世界征服とでも書いているのか。先生に怒られろ。とにかく、今は訳がわからんオーディションが開催されるのを何としても阻止せねば。
「待って下さい!私はそんなの―」
「Ha!上等じゃねえか!誰が名前に相応しい男か決着をつけようぜ!」
「おい!非公式な催しにはしゃぐな!」
「おもしれぇ!やってやんよ!俺が選ばれても後から文句言うんじゃねえぞ!」
「何が面白い!後とは言わず今、文句あるけど!勝手に話を進めるな!」
「それって第一印象で選んでもらうの?それともアピールとかしたりするの?まあ、何にせよ俺様、勝ちますけど。」
「アピールって何!?何をアピールするつもりなの!?」
「斯様な茶番に興じたとて、所詮、結果は何も変わらぬ。」
「…ちょ、ちょっと…。」
「それで?その男子とは次にいつどこで何時に会う約束なんだい?」
「………。」
こうして私の相談は解決の糸口が見えないまま、逆に問題だけが積み重なり後悔の二文字で終わった。男子との約束についてまるで真犯人を目の前にした警察のような取り調べを受けたが、事態が泥沼化するは火を見るよりも明らかだったし、私と男子のためにも口を固く閉ざし、どうにか厳しい追及を耐えることができた。
それから、約束当日。彼氏がいるという言い訳が使えなくなった以上、もう一度はっきりと自分の気持ちを伝える他ないと私は意を決して男子と再び会ったのだが、どこからともなく五人が現れた。何故だ。どうしてここに。どこから湧いて出たんだ。どこで情報が漏れた。私の不安と恐怖と焦燥を他所に、彼等は誰が私の彼氏にふさわしいかと正気を疑う問いが放たれたのを合図に地獄のオーディションが開催された。突如として現れた自称彼氏の不審者達の登場、すべてが謎で覆われた選考会の審査員に仕立て上げられ案の定、男子は酷く動揺した様子でどう言うことかと私に聞いてきたが知らん。正直、私が聞きたいくらいである。いや、やはり知りたくはない。関わりたくもない。収拾のつかない状況に彼等の威圧的な態度に男子は意味もわからず半泣きで謝罪をしたが、「男のくせに情けない」「そんなんでこいつに告白するな」と容赦なく追い撃ちをかけられる始末。もうやめてくれ。そんなことがあって男子は私のことを諦めてくれたが、告白したら五人の自称彼氏を連れて来て心と常識をクラッシュさせる処刑という名のオーディションを催す女子がいるなんて変な噂が広がらないことを心から祈るばかりだ。
華々しき青春の日々よ
MANA3/250523
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