乱酔態‐元就編‐
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彼の氷の面がこうも容易く溶けるとは思わなかった。
乱酔態‐元就編‐
安らかな私の眠りを邪魔したのは意外にも元就さんの捨て駒の兵の人だった。
「何ですか?」と眠い目を擦りながら聞くと「良いから兎に角、来て下され!」と私を問答無用に引っ張って連れ去ろうとする。
私は訳もわからずに安眠妨害された上に眠いのに何処かに行くなんて嫌だったから必死に寝具の枕、敷き布団、掛け布団の三点セットにしがみついた。
暫く元就さんの捨て駒の兵の人との攻防戦が続いたが、元就さんの捨て駒の兵の人は私を引っ張るのを止め寝具の枕、敷き布団、掛け布団、私の四点セットをズルズルと何処かへ引っ張り始めた。
「……この人、誰ですか」
「…信じ難いだろうが元就様だ」
私は目の前の人を見て目が覚めた。
さっきまでの眠気が嘘の様に何処かへ行った。
「あ、名前ちゃ~ん。こっちにおいでぇ~」
「これは夢これは夢これは夢これは夢」
「名前殿!!現実から目を背けないで下され!」
おいおい嘘だろう。あの元就さんが顔を赤くしてヘラヘラ笑って私の事を「名前ちゃん」って呼んでますよ。
有り得ない。これ以上に有り得ない事なんて存在しないくらいに有り得ない。
「元就さん、どうしちゃったんですか?」
「う…うむ。どうやら酒の飲み過ぎで酔ってしまわれた様なのだ」
ああ、成る程。言われてみれば杯やら酒樽やら散乱してますね。
で
「何で私が連れて来られたんですか」
「元就様が名前殿を連れて来いと申された」
「名前ちゃ~ん。早くおいでぇ~」
私はキャバ嬢か。酔っ払いのご機嫌な社長さんにご指名されたキャバ嬢か。
生憎ですけど店仕舞いですよ、社長さん。
「では私はこれで」
ガシッ
「!?」
「捕まえたぁ~」
捕まったぁ!!!!!!!!
「で…では、某はこれにて」
「ちょちょちょちょちょちょ!これ!これどうすんの!?」
私もこの場からも、この現実からも逃げたいが、これが離してくれない。
「ぬおぉお!!!!離して下さいぃぃ~~どわっ!?」
思いっきり引っ張られた私は元就さんの胸元へダイブした。神速で離れようとしたが、それ以上に元就さんの腕が私に素早く絡み付いた。
「名前ちゃん、肌すべすべ~」
「ひいぃぃ~~~~~!!!」
元就さん頬摺りしないで下さい!
あなたの方が肌スベスベですし!畜生!
「ももも元就さん!離れて下さい!!」
「や!」
離れるのを拒否した元就さんは更に私を抱き締め、首筋に顔を埋めた。
何キャラですかあなた。
チューーー………
…………
何か首筋に……吸われてるっぽい…感触が…。
しかも生々しい音付きで。
チューって…。
顔を上げた元就さんは相変わらずヘラヘラ笑っていた。
「………何かしましたか?」
「名前ちゃんは我のものという証を付けたのだ~」
「…」
「これで名前ちゃんは我のものなり~」
オクラ!てめぇ~~!!!!
この野郎!!!!!!
「名前ちゃんは我の事をどう思ってる~?」
「は?」
「どう思ってるの~?」
い…言って良いだろうか。
「オ…」
「お?」
「オクラ」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
や…
やべぇー…
「アハハハハ!名前ちゃん、面白い~」
「え」
セーフ?セーフ?セーフ?
「オクラ、バカ、ボケ、アホ、冷徹人間、バカ、オクラ、みんなの事をもっと労れ、後それから………バーカ…………オクラ」
「名前ちゃん本当に面白い~。アハハハハハ」
何でそんな無邪気に笑えるんだ!?
何か…罪悪感が…。
「じゃあ、我の事、好いてる?」
「え…は…あ…の…」
「好・い・て・る?」
「いててててて!!止めて下さい!!ほっぺ引っ張らないで下さい!」
「好いてる?」
「いてててててててい!!好きです!好きですから!!」
「本当?わーい元就うれしー」
いっ…たぁーー!!!!こいつ!!
本当は酔ってる演技とかじゃねぇだろな!?
「我も名前ちゃんの事を阿呆な奴だと思うなり」
「…」
否定は出来ませんが。
「無能だし~」
否定は出来ませんが。
「愚か者にも程があるし」
否定は出来ませんが。
「捨て駒にも使えぬ馬鹿者で」
ん?
「その馬鹿加減は死しても治らぬ天性のもので」
…
「仕様もない愚考には哀れむ余地もなし。井の中の蛙以下と思い知れ。貴様は所詮」
…
「虫螻同然よ。この屑が」
あれぇ~…可笑しいなぁ?
もう一度、私の事を『名前ちゃん』って呼んで下さいよぉ。
あの無邪気に笑うあなたは一体、何処に行ったんですかぁ。
そんな妖しく笑うあなたなんて見たくもありませんでしたよ私。
「………酔ってたんじゃ」
「酔ってなどおらぬ。全ては貴様を欺く演技よ」
当たらなくて良い事が当たってしまった…!!!!
「見事に我の策通り動いたな」
そんなつもりありませんでしたよ。これっぽっちも。
「…しかし、その夜具だけは計算外だった」
元就さんの言う夜具とは私がここに来るまで、しがみついていた枕、敷き布団、掛け布団の三点セットの事を言っている。
「さて、貴様が我の事を好いている事もわかった」
「そそれは元就さんが…!!」
「貴様は既に我のものだ。丁度、夜具もある」
「寝るならどうぞ」
「貴様も一緒にな」
「嫌あぁぁぁああ!!!!!!!!!!はなはなはな離して下されぇ!!!!!!」
ズルズルと私は元就さんに寝具の所へ引っ張られた。
もう、あれだ。これは夢だ。
夢であって下さい。
**0907/MANA