確かに存在した幻想
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足利氏が起こした大政奉還、ではなく天政奉還によって、誰もが己の運命を賭けて天下獲りすら目指せる世になった。とは言うものの特にこれと言った変化が今一実感出来ずピンと来ないのが実情であり、舞台に上がるのもいつもの人間離れした人間達で、良いか悪いか、やはりいつも通りの混沌とした乱世が日常なのであった。それは豊臣も例外なく同じであり、今日も今日とてこの日ノ本の為にと戦の真っ最中である。戦場となったのは加賀国境の賤ヶ岳。相手は前田軍、つまりは嘗て友達だった人と戦っているのだ。その戦況を書いて字の如く、高みの見物しているのであった。
「名前、今すぐしゃがまないと大変な事になるよ。」
「え?ッのわあ!!!!」
半兵衛さんの言葉の真意がわからずにいた私の視界に風を切って何かがこちらに飛んで来たのに気付き、それを反射的に避けた。と言うよりも、驚いて倒れた事によって結果的に回避出来ただけなのだが。後ろを見ると、そこには斜めから地面に突き刺さる一本の矢があり、それが飛んできたものの正体なのであろう。事をなきに得たがあれが刺さったのが地面ではなく私だと思うとごくりと唾を飲み込んだ。
「やれやれ。君は本当に愚図だね。」
「は、ははは半兵衛さん!!!!矢が飛んできたなら飛んできたとちゃんと言って下さいよ!危うく死ぬ所でしたよ!」
「言ったじゃないか。」
「言ってませんよ!矢が飛んできたとは言ってませんよ!偶々、避けれたから良かったものの!わかってたのなら口ではなくて何かしらの行動をして下さいよ!」
「では、次に何かが君の方へ飛んで来た時は当たらない様にここから君を突き落とす事にしよう。」
「それはそれで死ぬじゃないですか!どちらかと言えばそっちの方が死ぬ可能性高いし!」
半兵衛さんに救済を求めた私が間違っていたのだ。でも一番の間違いは半兵衛さん自身なのは間違いではない。それにしても半兵衛さんの様な人が前線に出ないのは兎に角、指揮も取らず、私とこんな所でただ戦況を眺めているだけで良いものなのか。
「半兵衛さんはここに居て、あちらの方に行かなくても良いんですか。」
「必要ない。僕の役目は既に終えている。指揮を出さずとも、豊臣は勝つさ。そして、必ずや秀吉はこの国を統べる天下人となるよ。」
「はあ。」
「それに君が危険な目に遭わない為にも僕がここに居るんだろう。」
「いや、次何か飛んで来たらここから私の事突き落とすんでしょう!?」
危険な目に遭わない為にもとか危険分子に言われましても!でも、まあ、確かに半兵衛さんが居なかったらあの矢で今頃私は死んでいたのかもしれないし。一人にされるよりかは増しだろうか。でも、突き落とされるのは嫌だ。
早く戦なんて終われば良いのに。そんな事を思いながらも再び、ぼんやりと戦場を眺めていると、目に飛び込んで来たのは他とは明らかに存在感が違った赤色と黄色。どうやら、遂に秀吉さんが前田さんと対峙する時が来た様だ。秀吉さんはいつもと変わらない様子であったが本当はどうなのだろうか。友達だった人と戦って何も思わないだろうか。半兵衛さんもそうだ。私なんかにはこの人達の気持ちなど到底わかるはずもないだろうし、口を挟むなんて烏滸がましいにも程がある。ただ、私だったら。そう考えると今映る光景はあまりにも悲し過ぎた。
「秀吉。半兵衛はどうしたんだ。」
秀吉さんと同じく、友達だった半兵衛さんの姿が見当たらない事に不思議そうにする前田さん。秀吉さんが居るならと思われたのだろうか。その逆も然りで秀吉さんの隣にはいつだって半兵衛さんが居たのだからそれは姿が見えない事に疑問は抱くだろう。逢えた所でこの人の心は絶対に揺るぎはしないのだろうけど。
「半兵衛は死んだ。」
ん?今、秀吉さんは何て言っただろうか。聞き間違いかもしれないが半兵衛さんが死んだと言ったのか。冗談だろうか。いや、秀吉さんはそんな人ではない。増してやこんな状況で。もしかして、今回はそう言う作戦なのかもしれない。だから、半兵衛さんは戦場に出なかった。それなら辻褄が合う。何にせよ半兵衛さんはここに居るのにと、当人が一体どんな表情をしているかと隣を見遣れば、その人は私が想像もしていなかった、心做しか切ない様な、悪戯がばれてしまった子供の様な、困った様に笑っていたのであった。
「本当に、君は愚図だね。」
確かに存在した幻想
(嗚呼、心がイタイ。)
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4の秀吉の創世をプレイしてストーリー上、戦友を変えられたのですが、半兵衛サンが良かったので戦友を半兵衛サンのままで行ったら、がっつり隣に半兵衛サンが居るのに「半兵衛はどうした!」「半兵衛はしんだ。」なんて会話をしていたのでこれは書くしかあるまいと書きました。正直、笑った。軍師としての未練はないですが、主人公の事だけが心残りで守護霊の様な背後霊の様な浮遊霊の様な存在になった半兵衛サンの話。主人公が半兵衛サンの死を受け入れられずに幻を生み出してると言う解釈も可ですが前者で。二人の会話が何で聞こえたとかあんまり考えていなかった。
MANA3*140426