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「もし、明日世界が滅ぶとしたらどうしますか?」
ふとした疑問を何となしに呟いた私を半兵衛さんは恰も、役に立たなくなった瓦落多を見る様な目で見た。とても同じ人間に向ける目付きではない。嘆かわしい事にそれは今に始まった事ではないのだけれども。だが、その威圧的な眼差しで見据えられ、聞くべきではなかったと後悔した。
「何を馬鹿な言っているんだい名前?」
「で、でも、有り得ない話ではないですよ!」
そう、有り得ない話ではないのだ。形あるものいつかは壊れると言うのに世界が滅びないと何故、言い切れる。明日と言うのはあまりにも急で実感も湧かず、俄かに信じ難いかもしれないがそれだって必ずしも可能性は0ではないのだから。その可能性を何人たりとも否定なんて出来ないし、鼻で笑うなど間違っているのだ。そうだ、あなたは間違ってますよ半兵衛さん!あなたのその分け隔てなく人を蔑む考えは間違っているし、私を塵でも見るかの様な目で見るのも間違ってるんだ!
「そんなの有り得ない。君が怜悧な人間になるくらい有り得ない。絶対に有り得ないよ。あえて言うならば、明日、世界が滅びる方がまだ有り得るかもね。」
この人、何処まで私を罵り倒せば気が済むんだ!冷静にどう考えたって私の頭が良くなる方が可能性としては有り得るでしょうが!有り得ないって言い過ぎでしょうが!どんだけ私を否定するんだ!どちらかと言えばあなたが真人間になる方が有り得ないと私は思う。明日、世界が滅ぶかは定かではないが半兵衛さんの常識やら温情やら人間性と言ったものは残念ながら疾うの昔に滅んでいる。いや、それらが最初からあったかも疑わしい。そんなもの半兵衛さんには最初からなかったんだ。
「それに君が言う様に、例え明日、世界が滅びようとも僕がやる事、為すべき事は変わらないよ。そんな絵空事如きに僕の歩みの阻ませたりはしない。」
「つまり、やっぱり有り得ないと思っている訳ですね。」
「僕は最初からそう言っている。」
やれやれ、これだから名前は、と半兵衛さんは鼻先で笑いながら首を横に振った。これは闇夜に乗じて暗殺されても文句は言えまい。
「僕の答えが不満だったのかい?」
「そう言う訳ではないですけど。」
不満と言うか諦めと言うか呆れると言うべきか。何にせよ思っていた様な答えではなかった事に納得出来なかったのが顔に出ていたであろう私に半兵衛さんは言った。不満はないと言えば嘘になるが半兵衛さんの発言により気分が削がれたので私の中でこの話は半兵衛さんは腐っても半兵衛さんと言う事でピリオドを打っている。しかし、半兵衛さんはまだ何か私にあるのか顔を寄せて静かに口端を上げて笑った。
「それとも、明日、世界が滅びるその瞬間までずっと君と一緒に居たいと言えば良かったのかな?」
その意表をついたとんでもない発言に何を言っているのかと慌てて否定しようとしたが、狼狽した私を他所に半兵衛さんはそうはさせまいと言わんばかりに余裕な態度を崩さず言葉を続けた。
「言っただろう。明日、全てが滅びようとも変わりはしない。それは君が僕の隣に居る事も同じだ。」
え、私、明日世界が滅びるとするならやりたい事をやりたい派なんですが、と言える状況でもなく、ぐっと押し黙る私を見て半兵衛さんは緩やかに微笑んだ。明日、世界が滅びるかは解りはしないが私の世界はたった今、ある意味で滅びた気がした。
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去年の12月21日の時事ネタ。世界が滅びるとかどうとか巷で話題沸騰でして折角なので書こう思いまして結局、世界が滅びなかった御蔭でこうして更新出来ました。
MANA3*130306