いつか帰り着くとしても
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突如として後頭部に襲来した強く重い衝撃。無防備だったのもあり、あまりに突然で、あまりにも強烈で、一瞬、全てが飛んだかと思ったが辛うじて意識は保つ。幸い、その割にはただただ唖然とする私に痛みは伝わっては来ない。片手で後頭部を押さえながらぽかんとする私の目に映るのは先程まで笑いながら他愛ない話をしていた半兵衛さん。その表情は数秒前とは打って変わり、苦虫を噛み潰した様なもので、それが更に私を憮然とさせた。まだ上手く回らない思考でもただ一つわかるのは私の後頭部の衝撃は半兵衛さんが殴った事によって生じたものだということ。しかし、その理由は全く以って理解出来ない。
「二度とそんな事を口にしないでくれ。」
その言動から察するからして知らず知らずに私は何か半兵衛さんの気に障る事を言ってしまった、らしい。私の記憶が殴られたショックでとち狂っていなければ相手の神経を逆撫でする発言をした覚えはないつもりだ。殴られる前に私が言った事と言えば不意に自分が居た世界の事を思い出し、そう言えばと昔の話を切り出しただけだ。もしかして、いや、そんなはずは。第一、それで何故殴られねばならない。
いくら考えても落ち度があったとはとても思えないが半兵衛さんの雰囲気に気圧されてしまう。思わず沸々と怒りが込み上げてもそれは何ら間違いではない当たり前の反応だろうが私の心には不思議とそんな感情は一切沸き上がらなかったのだ。それは、きっと、恐らく、半兵衛さんの一方的に私を糾弾する顰めっ面が胸が締め付けられそうな何とも悲痛な眼差しで私を見てくるからだ。おいおい、訳もわからず不意を突かれて殴られたのは私だと言うのに、まるで半兵衛さんが被害者でこれでは全て私が悪い様ではないか。遺憾の意を表したい現状であり、そうするべき所であろうが、頭の中が真っ白になってしまった私にそんな意思などありはしなかったのだ。それ所か罪悪感まで芽生えて来るのだから本当に意味がわからない。一体どうして、何故そんな顔をして私を睨むのか、私が何か気に障った事したと言うのなら教えてほしいと心底思うが、どうもそんな事を聞ける雰囲気でもない。口が滑りそうになるが早計に聞いたのであればまた殴られ兼ねなさそうだった。
「…ごめん、なさい。」
謝ってしまった。何も悪い事をしてないであろうに、理由もわからないまま謝ってしまった。今更ながら半兵衛さんに殴られた後頭部が痛くなって来た。しかし、それ以上に心が酷くずきずきと痛むのは何故であろうか。全く以って理解に苦しむ。
いつか帰り着くとしても
(君を奪う世界なら消えてしまえ。)
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ずっと一緒に居たいのに主人公が自分の世界の話をするもんだから帰りたいとか思ってるのかと不安になる以上に苛々して殴ってしまった半兵衛サンの話。
(MANA3*130122)