一本残らず刺衝して
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先程から髪を指に絡ませたり梳かす様にしながら頭を撫でられている。この頭を撫でられると言う行為が好きな女性は多いのではないだろうか。斯く言う私も頭を撫でられるのは好きだ。理由を深く考えた事はないのだが、本能的な欲求を満たしてくれるのではないのだろうか。兎に角、不快になる理由は見当たらない。中には子供扱いされているだとか好きな人以外だと嫌だとか言う人も居るのだろうけども。
そんな私の好きな行為を今されている。喜ぶべき所なのだが素直に喜べないのは頭を撫でる相手に問題があったからだ。
「…あ、あの…半兵衛さん…。」
「何だい?」
「い、いえ…何も…。」
髪を梳く様に指に絡ませながら私の頭を撫でるのは半兵衛さんだった。あの半兵衛さんだ。いつも人を、主に私を不幸のどん底に陥れる悪意と狂気を孕んだ手が今は慈しみを持って愛撫してくる。恐ろしい。そりゃあ、理不尽に暴力を振るわれるのは私でなくとも誰でも嫌だろう。だからと言って、常日頃邪悪な人間が途端聖人君子になった所でどうであろうか? 気 味 が 悪 い だ ろ う ? そんな事を軽々しく口から晒けてしまったら今、頭を撫でている手が慈愛から忿懣へ、パーからグーへと形を変えて私の頭も形を変えて盛大に中身を晒けてしまうだろうから言ってはいけない。理不尽に虐げられないに越した事はないかもしれないが内心は複雑だ。何か裏があるのではないかと、新手の嫌がらせではないかと疑ってしまう。これまでの経緯からしてそう思うのは無理もない話である。
「気持ち良いかい?」
「え、えぇ、まあ…はい…。」
いや、気持ち良いか気持ち悪いか聞かれたら気持ち良いですよ。絶妙な手つきがこの上なく気持ち良いですよ。ですけど、この状況はこの上なく気持ち悪いですよ。心に暗雲が立ち込めて鬱々とし、瞬きした次の瞬間に殺されてしまうのではないかと気が気でなく体はおどおどびくびくと酷く落ち着かない。
しかし、暫くすると頭を撫でる手がとても心地好くて、怖いけど、あまりにもふわふわと気持ち良くて、何だかうとうとと眠気が手招きして微睡んで来た。瞼が重い。
「眠いのなら寝ても良いのだよ。」
え、何て言いました。死にたいのなら寝ても良いのだよ?だって?いつもながら何て恐ろしい事を吐くんだその口は。寝てはいけない、寝てはいけないぞ私。寝たら死ぬぞ。懸命に心のエールを自身に送り続けるも瞼は何もかもを拒もうと閉じかけている。やはり、睡眠と言う欲求には人は抗えないのか。だが、考えてみればいつもの鬼畜の所業によって地獄の様な苦痛の末に死ぬよりは安らかに死ねるのではないのか。そんな早計な考えが脳裏を過ぎった瞬間、微弱な抵抗を続けていた瞼は力尽きて目の前が真っ暗になった。
「―知―て―かい…名前―。」
微睡んでフェードアウトしていく意識の中に響く半兵衛さんの声。凛としたその声も半睡する私の耳にははっきりと聞こえない。まさに意識を手離しかけている私にとって半兵衛さんが何を言おうとしているのかなんて取り分け、その内容に興味は芥子粒程にも芽生えなかった。今はただ安らかに眠らせてくれ。おやすみなさい、そしてさようなら。
「髪は性感帯の一つなのだよ。」
朦朧としていた声が俄かに信じ難い一言と共に明確に鮮明にはっきりと聞こえた。マジでおやすみ三秒前だった眠気も何処ぞへと吹き飛んでいき、微睡みに沈みかけていた意識もとても清々しいとも爽やかとも言えない覚醒を果たした。ほぼ寝起きの状態なのにも関わらず、おっ広げた両目で半兵衛さんを見ると目を閉じる前と比較して明らかににやにやと卑しい笑みを浮かべていた。
「勿論、髪に神経があるわけではないのだけれど、毛根周囲の末梢神経が刺激され、その刺激が脳に送られて性的興奮を起こすのだよ。」
僕の手が気持ち良いのだろう?と頭を撫で続ける半兵衛さんは先程よりも目を細め厭らしく口角を吊り上げている。一気に顔に熱が集中し、卑猥に感じ始めた手を振り払って私は叫ぶ。
「セクハラじゃねぇか!!!!」
一本残らず刺衝して
MANA3*121028