無策無謀に突撃
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人間、その気になれば何でも出来るらしい。そして悲劇を生む。
無策無謀に突撃
今まさに合戦の最中。
どかの軍だか知らないが、豊臣軍に無謀にも戦いを挑んで来ました。どうやら豊臣軍にドSが居る事を知らないらしい。
しかし、挑んで来た割りには大した事はなかったらしく勝ち戦と決まったも同然らしい。半兵衛さんと私は稲葉山城から高見の見物をしていました。
「わあ…凄いですね。私、初めて戦を見ました」
「名前。あんまり身を乗り出さない方が良いよ。ここでも流れ弾が来ないとは限らないからね。死にたいのなら別だけど」
「いや、まだ死にたくはないです」
「まあ、君は簡単には死ななそうだからね」
死にますよ。簡単に死にますよ。あなたは私を何だと思ってるんですか。
「でも念には念をだね。名前」
「はい?」
「君に武器を授けるよ」
武器?
正直、ちょっとわくわくした。
人を殺せる武器とは言え私にとっては玩具感覚だ。
「はい」
「え」
「君の武器だ」
「半兵衛さん。耳掻きは武器とは言えません」
「弘法は筆を選ばずって知っているかい?」
私は弘法じゃない!それに弘法だって筆を選んだはずだ!!フッサフサの毛並みの筆を選んだはずだ!!!!弘法にも私にも選ぶ権利はあるはずだ!!
「無理です!何が無理って何もかも無理です!全部無理だ!」
「何もしていないのに………最初から諦めるな!」
何か怒られた。言ってる事が理屈っぽいのが許せない。
「耳掻きでどう戦えって言うんですか!?耳掻きなんて気持ち良くなるじゃないですか!幸せに満たされますよ!」
「大丈夫だよ。ぐさっとやればね。ぐさあっと」
ドSの人の考えや気持ちは私には理解出来ない。したくない。
「…ん?………あれ官兵衛さんですよね?」
「…………ああ…官兵衛君だね。間違いなく」
「何か囲まれてません?」
「ああ。囲まれてるね。間違いなく」
「………やられそうじゃないですか?」
「ああ。やられるね。間違いなく」
助ける意志が全く見えない。
「良いんですか!?このままだと官兵衛さん死んじゃいますよ?!」
「官兵衛君…死んだふりでもしてくれないだろうか」
「あなた官兵衛さんに何を期待してるんですか!」
「名前。僕だって助けに行けるなら助けたい。だけど秀吉にこの稲葉山城を任せられた以上、僕がここを離れる訳にはいかない」
いきなり真面目に正論を言われてしまった私は何も言い返す事が出来きなかった。でも…
「わ…私がここに残ります!」
「駄目だ。耳掻きが武器の君を一人ここに残すなんて出来ない」
じゃあ耳掻き以外の武器を寄越せば良いじゃないか!何で耳掻きを寄越した!?素晴らしいミスチョイスですよ!
「私、官兵衛さんと約束したんです!」
「約束?何の約束だい?」
「……か…かるた…するって…」
「ふう…仕方ない。官兵衛君の死んだふりに期待するか」
今、絶対に心の中で「しょうもねっ」って思われた。
畜生!!!!
「!?!?名前!!!!何処に行く?!」
「半兵衛さんが無理なら私が行きます!!!!」
「名前!!待ちたまえ!!!!」
半兵衛さんの私を呼び止める叫び声が聞こえた。
私は構わず、走った。
死んでもらっては困るのだ。一人だって死なせたりしない。
叱るなら無事に帰れた時に叱って下さい、半兵衛さん。
「ごるあぁぁああああああああ!!!!!!!!お前等!!!!この耳掻きが目に入らぬかぁぁあ!?!?ほじるぞ?!?!奥までほじるぞぉお!!!!」
「ひぃっ!なっなんだあいつ!!」
「やべぇぞ!!!!頭、可笑しいんじゃねぇか!?!?」
「と…取り敢えず撤退だぁ!!!!撤退!!!!」
「鬼だぁ!!!!耳掻きの鬼が居るぞぉ!!!!!!」
ああ…私ってこんなに口が悪かったんだ。
私の気迫に恐れてか、敵軍は散って行った。
弱っ。
「はぁ…はぁ……だ…大丈夫ですか?官兵衛さん」
「名前殿。何故、ここに?」
「助けに来たんです。もう敵軍は来ないですよ。この戦は私達の勝ちです。…帰りましょう…」
「しょ…承知しました」
私は官兵衛さんを連れてドSが待つ城に戻った。
「名前!!!!」
城の入り口で物凄い形相をした半兵衛さんと遭遇してしまった。
「…た…ただいま…」
「何を考えてるんだ君は!!!!」
「……すみません」
「あ…あの半兵衛様…」
「官兵衛さん!!!!」
「………し…しかし…名前殿……」
官兵衛さんが何か喋ろうとしたが私がそれを防いだ。官兵衛さんが喋ろうとした内容を知っているから。
「名前」
「は…はい!」
「後ろを向きたまえ」
ギクッ
「…何故ですか?」
「良いから。早く」
「名前殿…やはり…」
「シャラァップ!!官兵衛シャラップ!!!!」
ガシッ
「…なっ!?」
官兵衛さんの方を見た瞬間、半兵衛さんに肩を掴まれ、強制的に後ろを向かされた。
見られてしまう。
「?!?!医者だ!!!!直ぐに医者を呼びたまえ!!!!」
見られてしまった。
真っ赤な私の背中を。
「これで良いです。ですが暫くはあまり激しく動かれぬ様、お願いします」
「あ…はい。ありがとうございました」
「では」
手当てをしてくれたお医者さんが部屋を出て行った。
と、入れ代わりに半兵衛さんが部屋に入って来た。
「名前」
「…」
「話は官兵衛君から聞かせてもらった」
「…」
「官兵衛君と城に向かっている途中に君が後ろから敵に斬られた事。助けた官兵衛君に助けられ、この事を僕に喋ったら殺すって脅した事…」
「…」
「駄目じゃないか。折角、助けた官兵衛君を殺すなどと脅したら」
「…」
「どうしてあんな無茶をしたんだい」
「……か」
「官兵衛君は君とかるたの約束なんてしてないと言っていたよ」
畜生。お喋り官兵衛め…。後で覚えておけよ。
「あんな事で秀吉の僕への信頼が失う訳じゃないんだよ」
「そう…ですか」
あんな事でって。所詮、官兵衛さんの命なんてそんなものだったのか。
「傷は大丈夫なのかい?」
「あ…はい。もう大丈夫です。斬られた時は痛ッ!!って思いましたけど今は本当に大丈夫です」
「…」
「でも吃驚ですよ。斬られるなんて。血がブワァでしたからね。ブワァ」
「名前」
「あ…耳掻きも案外、役に立ちましたよ。何事もやってみないとわからないですね」
「名前」
「それより、やっぱりこの傷って残っちゃいますよね。でも名誉ある傷ですよね」
「名前」
「もう…何ですか?」
「怖かったよね」
「え」
「怖かったよね。凄く」
「……………ちょ……」
「…」
「…ちょっとだけ…怖かったです」
私がそう言うと半兵衛さんはそっと抱き締めてくれた。
「泣いても良いよ」
「…………泣きません…」
「ふっ…名前は強いね」
「…」
……でも何か涙は出そうにないが鼻水は出そうだ。いや、もう出ている。
「半兵衛さん」
「なんだい?」
「半兵衛さんの服で鼻水、拭いて良いですか?」
「駄目」
でしょうね。
「啜ってどうにかして」
「…ズズズズ~~」
「ん…良い子だね」
頭をよしよしと撫でられる。私は鼻水を啜っただけだ。そんなに鼻水を付けられたくなかったんですか。
「もう二度とあんな無茶をしてはいけないよ」
「…はい」
「約束だからね」
「はい」
私だってもう二度とあんな事は頼まれたってしたくない。
「それにしても君は本当に馬鹿だね」
「…」
「?!何をするんだ名前!!今直ぐ離れたまえ!!!!」
ムカつくから私は思いっきり半兵衛さんに抱き着いて思いっきり顔を擦り付けて鼻水を付けてやった。
**0918/MANA3