死体擬きに接吻
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廊下に死体が転がっていた。
死体擬きに接吻
近付いてみると廊下に転がってた死体は名前だった。
「名前。寝てるのかい?死んでるのかい?」
返事のない名前の鼻の下にそっと手をやった。
……息はしていた。当然と言えば当然だけど。ここは陽が程良くあたるから昼寝には最適の場所なのだろう。名前は気持ち良さそうに寝ている。
僕はすやすやと眠る名前の隣へ腰を下ろし、その無防備な姿を観察した。
体は猫の様に縮こまって丸くなり規則的な寝息で上下している。
黒い瞳も今は瞼で覆われ口は半開きになっていて何となく卑猥だ。
しかし、その寝顔は無邪気な子供そのものだった。
名前は僕が見る事はない遠い未来からやって来た娘だ。
この時代に来て暫くは経つが弱音を吐いている所を見た事がない。名前が生まれた時代は今よりは平和らしい。性格が些か楽天的な事もあるのだろうが、この乱世で名前は極普通に生活出来ている。
苦しい、悲しい、寂しいなんて感情をまるで知らないかの様にいつもへらへらと笑っている。
人が思うより名前は強い娘だ。
「それにしても…」
本当に気持ち良さそうに眠っている。
悪戯で起きる事を覚悟に鼻を摘む。数秒して息苦しくなったのか顔を歪め、後に「ぐばっ!」とゆう奇声と共に顔を振って僕の鼻を摘む手から逃れた。しかも起きない。何事もなかったかの様に寝ている。
その様子を始終見て思わず笑ってしまう。
ああ…そろそろ限界だ。
「無防備な君が悪いのだからね」
寝ている名前の体に覆い被さる。
そして…―
「 」
その言葉に僕の体は瞬時にピタリと動くのを止める。
驚愕した。
僕は初めて
名前が零す弱さを見た。
「……名前…」
僕は何一つ気付かなかった
「駄目だよ」
君の隠れた想いに
「君を帰したりなんかしないから」
本当は辛かったんだね
「そんな事…許さない」
本当は寂しかったんだね
でもね
「絶対に離さないから」
僕が先に死んでも
君が先に死んでも
いつまでも繋ぎ止めるから
「好きだよ…名前」
届くはずのない愛を耳元で囁いて、髪をくしゃりと掴み、頬を撫で、今は確かな君の存在を味わう。
まだ夢を見る君の頬に口付けた。
**0916/MANA3