焦熱に融けた理性
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昼つ方。
手が届かない高い場所から陽の光がこの世を明るく照らす。障子が開け放たれた室内にもそれは及ぶ。天井の高さ、部屋の奥行き、形象、色彩、視界に写る光景が鮮明に識別出来る。
ただ、今この状態だけは理解出来ずにいた。
「……っ…半兵衛、さん…」
名前を呼ばれて僕は正気に戻る。現状は既に混乱を極めるものであった。
青々とした畳の上でうつ伏せで床に倒れている名前が見える。
名前の頭を畳に押さえ付け、両手首を背中で固定する僕の手が見える。
名前の訝しい表情が見える。
どこからどう見ても僕が名前を押し倒しているのは明白であった。
どうして、こんな事になったのだろうか。さっきまで、他愛もない会話をしていたはずなのに。それなのに。頭を回転させたが皆目見当もつかなかった。その瞬間の記憶が完全に欠落していた。
「…半兵衛さん…痛い、です…」
名前が呻き声を上げながら顔を歪めている。手を緩めて解放すればいいものの僕は一向にこの生存権を掌握した有利な体勢を崩そうとはしなかった。戻せない時間に固唾を呑んだ。
こんな事をして僕はどうしようと言うのだろうか。そう考えて頭に浮かび上がる情景は疚しいだけでしかないもので。
欲情したとでも言うのか?この僕が?
認められない。しかし、説明がつかない。自尊心を擁護しようと何かに責任を擦り付けようとも、その何かが見当たらない。じわりと汗が滲む感触に今日は酷く日射しが強いと感じた。
暑さのせいなのか、はたまた自分が置かれている状況からの恐れなのか、薄らと名前の項にも汗が滲んでいる。玉と玉が繋がり、今にも伝い落ちそうな水滴を舌に絡ませ掬い上げる様にしながら項を舐めた。
「ひぃっ!」
小さな悲鳴を上げる名前。本当に僕は何をしているのだろうか。この後、一体どうするつもりなのだろうか。解らない。理性が鬩ぎ合うものの、それでも内から迫り上がる喜悦と嗜虐心を抑える事が出来なかった。
布の隙間から滑り込ませる様に侵入させた手を背中に這わせると名前は再び小さな悲鳴を上げ、流石に危機感を感じたのか藻掻き始めた。
これ以上はまずい。今なら引き返せる。理解はしていている。けれども―。
制止を懇願するかのごとく潤んだ瞳を僕に向ける名前を見て恍惚と笑む。怯える名前の耳元でそっと囁く。
嗚呼、今日は酷く暑い。
そうだ、全て暑さのせいだ。
そう思った途端、概念的に思考する能力はどろどろに融解して蒸発した。
「もう、諦めなよ」
果たして、その言葉は誰に向けたものだったのか。そんな問い掛けも無意味と化した。
焦熱に融けた理性
(どちらにせよ結果は同じ。)
MANA3*090722