黒い箱庭
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名前が眉間に皺を寄せ、僕を睨んでいる。そんな顔も悪くはないのだけれど、訳も解らずに反抗的な眼差しを向けられるのは正直、気分が良いものではない。
「何かな、名前。そんな目を怒らしめたりなんかして、僕に詰られる事を御所望なのかな?」
「えっ!?あ、いやいや違います!違います!」
僕の発言にさっきとは打って変わった焦った身振りで睨んでいた事を否定する。しかし、僕は相槌すると同時に口角を吊り上げて疑いの目を向けた。それにしどろもどろしながら名前は事の訳を説き明かし始める。
「私、どちらかと言えば視力は悪い方じゃなかったんですけど、なんか、最近、どうも視界がはっきりしないんです」
あぁ、そう言う事か。僕は内心そう呟いた。
景色が霞むのが焦れったいのか、名前は眼を強く擦る。僕は反射的に自分の眼を傷付ける名前の手首を掴んだ。
「駄目だよ。そんな事したら」
小さな呻き声を上げる名前の顎をもう片方の手で持ち上げ、顔を必要以上に近付ける。
「ちょっ…」
「ほら、これで良く見えるだろう?」
「いやいやいや!半兵衛さんの顔しか見えないですから!」
良いじゃないか、それで。君のその眼に写るのは僕ただ一人。考えただけで欲が疼く。君が欲しいと。僕の手で君を支配したいと。
「例え、何も見えなくなったとしても安心して良いよ。その時は―」
背後に回り込み、名前の両目を片手で塞ぎ、耳元に唇を寄せる。
「…半兵衛さん…?」
「僕が君の眼になってあげるよ」
光を失って、僕に縋れば良い。
闇の中で、僕だけを感じれば良い。
恐らく、ここに留まる限り、名前の視界は狭まり、最後には視力を完全に失うだろう。それでも、僕は君を逃すつもりなんて更々ない。
嗚呼、可哀想な名前。でも、何も心配する事なんてないんだよ。
君が死ぬまで、いいや、死んでも、ずっと僕が愛してあげるから。
黒い箱庭
(視界には暗闇と狂気のみ。)
MANA3*090626