虚しさは息が途絶えるまで
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あなたが言葉を求めるならば
私は惜しみ無く言葉を紡ごう
けれど、あなたが幾度とソレを求めるものだから
私は思ったのだ
あなたは満たされてはいないのではないかと
「ねぇ、名前。僕の事、愛してるかい?」
紫の瞳が真っ直ぐに私を見詰める。
私はどれだけその瞳に写され、そして何度同じ事を質されただろうか。
「愛してますよ」
それを聞くと半兵衛さんはいつもの様に柔らかく微笑んで肩に顔を埋めながら、私をそっと抱き締めた。
私を優しく抱き締めてくれるこの腕に捕らわれていると言う違和感を感じながらも、私は拒む事などしなければ、そう思いもしなかった。
「もう一度言ってくれないか」
耳元で囁かれた甘い声はまるで麻酔の様で。
私の思考回路を一時停止させた。
「愛してます」
「もっと」
求めるのは心を満たす為
「愛してます」
「もっと」
繰り返すのは満たされない為?
「愛してます」
「もっと」
愛しているのに、あなたを満たす事が出来ない自分が嫌なんです。
あなたの腕の中に在りながらも、あなたを満たす事が出来ない自分が嫌なんです。
半兵衛さん、
どうしてですか?
微かに漏らす吐息に笑いを含ませて、半兵衛さんは顔を上げた。その表情は、楽しそうとも、嬉しそうとも、喜んでいるとも言えなかった。
だが、目の前に居る人物は、いつもの様に柔らかく微笑んでいるのだ。
半兵衛さんは私の頭をそっと撫でた。
「僕が殺したい程に、君の事を愛しているからだよ」
私が今、どんな顔をしているのかは分からない。
ただ、不思議な事に心は平常を保っている。
「僕は君を殺したい程に愛している。けれど、君を殺してしまっては、君は僕に「愛してる」と言ってくれなくなるだろう?だから、名前―」
愛してると言ってくれ
僕が君を殺めぬ様に
僕の心を満たす為に
愛してると言ってくれ
「名前。僕の事を愛しているかい?」
未だに平常心を保つ。始終、動揺一つしないのは逆に異常であるのだろうか。
殺したい程に愛されている。
私は初めて知る真意を渇いた地面が水を吸い込む様に受け入れた。
告げられなくとも感じ取っていたのかもしれない。望んでいたのかもしれない。
そして、どこかで喜悦している私が居る。
「私は―」
言葉を紡がなければあなたは私を殺しますか?
「殺してほしい」と言ったら、あなたは私を殺しますか?
あなたに殺されれば、あなたは本当に満たされますか?
私はいつか、あなたに殺されるのだろうか。
嗚呼…しかし、きっと私はあなたの手にならばと。
虚しさは息が途絶えるまで
(結局、あなたは満たされる事はない。)
MANA3*080830