テイクアウト犬
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野良子犬が居た。さて、どうする?
テイクアウト犬
「駄目だ」
城門の前で半兵衛さんに見つかった。これは予定外だ。
しかも、まだ何も言ってないのに私が抱いている子犬を見た途端、拒否された。予定外どころじゃない。
「何ですか、半兵衛さん。私まだ何も言」
「その犬を飼うなんてふざけた事を言うのなら犬もろとも君を切り刻む」
い犬も!?まだ子犬なのに!!!!何て無慈悲な!!血も涙もない!!
飼うのが駄目なら…何て言えば………。
「飼うんじゃないです」
「じゃあ何なんだい」
「一緒に暮らすんです」
「………君は最後の最後まで馬鹿だったね」
「や止めッ!!ごめんなさい!!すみません!!飼うの駄目って言うものですから、ちょっと言い方変えてみて、ごめんなさい!!!!だから関節剣を向けないで下さい!!」
「………素直に最初から、そう言いたまえ」
素直に言ったら切り刻むんでしょう?じゃあ私はなんて言えば良かったんですか。もう私は半兵衛さんが解らないです。何がしたいのか解らないです。
「……飼っても良いですか?……」
「駄目だ」
「…何でですか?」
「既に飼ってるからだ」
「はい?何か飼ってましたか?」
「何を言ってるんだ。君を飼ってるに決まってるじゃないか」
………私って飼われてたんですか。気付かなかった。いや違う。私は飼われてなんかいない。飼育された覚えなんかない。私は人間だ。
「半兵衛さん。私は人間です」
「知らないのかい名前?人間でも飼う事は出来るんだよ」
だから貴方は鬼畜ドSだと思われるんだ。
「……飼っても良いですか?……」
「駄目ったら駄目だ」
「ほら良く見て下さいよ。可愛いじゃないですか」
「その犬を僕に近付けないでくれたまえ。汚らわしい。全く、類は友を呼ぶとはこの事だね」
どうゆう意味だ。
いや、敢えて理由は聞かないでおこう。私が傷付くだけだと思うから。
「想像してみて下さい。自分がこの子犬と同じ立場だとし」
「その犬と僕を一緒にしないでくれないか」
「…………まだこんなに幼いのに独りで誰にも頼れない。寝床も食事も無いなんて……………半兵衛さんには耐えられますか?」
「僕は一人でも生きて行く自信はある。その犬の様に弱くも醜くもないからね」
さっきから貴方、子犬に対して酷いですよ。可哀想に。私には、この子犬の気持ちが解る。痛い程、解る。今まさに子犬と私の心はシンクロしていると思う。
「仕方ないですね。半兵衛さんが、この子の名前を付けて良いですよ」
「じゃあ名前で」
「えぇ…」
「ほら、名前。おいで」
どっちを呼んでるんですか。私も子犬も戸惑います。てか行くわけないじゃないですか。
と思ったら、半兵衛さんが呼んだ途端に私が抱いていた子犬は腕から抜け出し半兵衛さんの足下へ行くとゆう裏切り行為が。
ああ!!!!その人に近付いちゃいけない!!弄りに弄り倒された上にポイ捨てされるか、ほぼ全殺しとゆう悲劇の結末がぁあ!!!!
尻尾を振る子犬の頭を半兵衛さんは、しゃがみ込んで、よしよしと撫でる。
「よしよし名前。君は本当に馬鹿だね」
「止めて下さい」
「名前。そこに伏せていたまえ。君にはそれがお似合いだ」
「止めて下さい!!」
「ほぉ~ら、名前。これが何か解るかい?」
その手には、そこら辺に落ちていた木の棒があった。チラチラと子犬に見せつけ興味を持たせる。
大体、やる事が見えて来た。
「命の限りぃーーーーーーー!!!!!!!」
半兵衛さんは命の限り、木の棒を遠く遥か彼方に投げた。子犬は喜んでワンワン吠えながら木の棒が投げられた方へと消えて行った。
「ああ゛!!!!ちょっ!まっ…?!」
子犬を追い掛けようとしたら半兵衛さんに腕を掴まれた。
「何処に行くんだい。名前」
「いや、子犬を追い掛けないといけないじゃないですか!!」
「必要ないよ」
「でも」
「あの犬を捨てるか、今、飼われてる君が捨てられるかだよ」
なんだ、その二択は。一人と一匹が一緒に幸せになれる道はないのか。
「でも、僕は君を捨てる気はない。だから、あの犬を捨てる」
「…」
喜んで良いのか複雑だ。取り敢えず、一人と一匹が一緒に幸せになれる道はないんですか?
「大体、君があの犬とこれから仲良くするなんて想像しただけで腹が立つよ」
何ですか、それは。仲間外れは嫌なんですか。言ってくれれば仲間に入れてあげるのに。
「汚れたもの同士、仲良くする所なんて見てるだけで頭痛がするよ」
お前を
いつか
汚してやる。
「さぁ、帰るよ。名前」
「あ!ちょっと半兵衛さん!!」
私の腕を引っ張って城に入ろうとスタスタ歩き始めた半兵衛さん。だが、その脚の動きは直ぐにピタリと止まる。
「どうしたんですか?」
「…」
「……あ…」
前方を見ると子犬が枝をくわえて座っていた。
その姿を見ると半兵衛さんは小さく舌打ちをする。
「ちゃんと木の枝を持って帰って来ましたね」
「僕は君とゆう犬の本質を見誤ったようだ。いや…予想以上だった…と言うべきかな」
この人は子犬に何を言ってるんだ。
「ほら、半兵衛さん。この子、良い子でしょう?」
「ふん。大判小判の在処を掘り当てる訳でもあるまいし」
花咲じいさんに出て来る犬の事を言ってるんですか?大判小判だと?もう、そんな半兵衛さんには虫やら塵やらを掘り当てるのがお似合いですよ。
「半兵衛さん。飼っても良いですか?」
「………そうだね。秀吉が許可したなら、僕も許可しよう」
秀吉さんか。どうだろう……許してくれるだろうか。でも、話せば解ってくれると思う。半兵衛さんよりは。
「じゃあ秀吉さんに聞いて来ます」
「僕も行く」
「……取り敢えず、腕を離してくれませんか?」
「さぁ、早く行くよ」
「…」
「ならぬ!!!!ならぬぞ!!!!!!」
「……そっ…そこをなんとか」
「ならぬ!!!!!!」
怖ッ!!!!怖ッ!!!!!!このゴリラ、怖いんですけど!!!!
「ギャン!!ギャン!!ギャン!!ギャン!!ギャン!!」
「ぬぅ…犬の分際で我に刃向かうか!!!!生意気な!!!!器の違い、見せてくれるわ!!!!!!」
秀吉さんが子犬、一匹で取り乱している。恐ろしい位に豹変している。子犬も子犬で秀吉さんを見るなりギャンギャン吠えだした。何なんだ、この一人と一匹は。
「半兵衛さん。犬猿の仲ってゴリラも可なんですか」
「名前。秀吉に無礼だよ。今すぐ僕に土下座したまえ」
「何で半兵衛さんに!?」
「僕の気分が良くなるから」
だから貴方は鬼畜ドSだと思われるんだ。
「ぬわっ!!!!我に噛みつきおって、この糞犬めが!!!!葬ってくれるわ!!!!!!」
やや秀吉さんが劣勢に見えるのは気のせいだろうか。
「まぁ、こうゆう事だ。諦めるんだね」
「…はい」
何で、そんなに嬉しそうな顔をするんですか半兵衛さん。ムカつくんですけど。
私は子犬を飼う事を諦めた。あの秀吉さんに刃向かう強さがあるなら独りでも生きて行けるだろう。
ごめんね。
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MANA3*1005