竹中半兵衛
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竹中 半兵衛 様へ
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、こうして改まって筆を執り、文を認めるのは中々に緊張するものです。それが天才軍師と名高いあなたに宛てたものなのですから尚更です。私の書き連ねる文章、言葉には生まれ育った時代による齟齬があり、あなたからすれば字は汚く、文章はひどく拙く、こちらの言いたいことが上手く伝わるかどうか定かではないのですが、そこは天才軍師と謳われるあなたなのですから頑張って最後まで読み解いてください。大丈夫です。厭らしくもこちらの読まれたくない心の裏側まで暴いてしまうあなたのことですから、きっとできると信じています。
思えば、あなたとの出会いは、それはそれはとても鮮烈で強烈なものでした。この戦国という乱世において、突如として、眼前に姿を現し、未来からやって来たと正気を疑う主張をする私はさぞかし怪しく、醜悪で、排除すべき異端な存在であったことでしょう。縛り上げられた挙句、現状を理解できず呆然とする初対面で、尚且つ無抵抗の女性の顔面をさも汚物を払うかのように無慈悲に蹴るのですから、二つの意味で鮮烈で強烈な思い出です。あの時の記憶が脳裏に過ぎる度に今でも蹴られた頬がずきずきと熱を帯びて疼きます。ただの人である私に一生消えない心的な恐怖を植え付けるには十二分すぎる所業でした。天下統一をなさんとする豊臣という強軍に仕える軍師としてのあなたの立場を考えるのであればその容赦のなさは決して理解できなくもないかもしれませんが、それと同時に私の目にはあなたが人間とは異なる存在に見えることもまた自然なことであると理解してほしいです。あの瞬間、私の中での竹中半兵衛という人物像が確定的なものとなったといっても過言ではないでしょう。あなたは人の皮を被った化物です。
出逢い方こそ歴史上において類い稀なる最低最悪な形ではありましたが、あなたは様々な疑惑を完全に払拭しきれないまま、得体の知れない私を受け入れてくれました。ええ、勿論、わかっています。それは慈悲でも優しさでも況してや救いでも偽善ですらなかったのだと。私の命を繋いでいたのは血の通わない合理性を極めた打算でした。あなた達が歴史となってしまった時代を生きる私は宛ら、時代を越えた語り部、生ける預言書、神託そのものだったのではないでしょうか。これから起こる確定された出来事の数々を把握することができたのであれば、天下統一という壮大な盤面を、あなたは神なる視点から支配できたことでしょう。しかし、あなたは私から明日という過去を聞き出そうとは決してしませんでした。最初から何もかも知ってしまうことはとても楽なことかもしれませんが、そのような手段を取ることは誰かが許しても、軍師としてのあなたの矜持や品格が許しはしなかったのではないでしょうか。ただ、他の人間があなたと同じく未来を知らないままでいたいとは限らない。野放しにする選択肢はなかったことでしょう。後は、もしかしたら私が存在する、それだけで牽制としての役目があったのではないでしょうか。今更ながら白状しますが、私はそこまで歴史の成績はよくありません。つまり歴史について詳しくありません。変に期待を寄せられて神託者などとやいやいと祀り上げられ、大いなる使命と重責を科せられることがなくて、正直、安堵しています。それに関してはあなたの審美眼は間違いではなかったのです。流石は天才と言われるだけのことはありますね。その判断は私にとっては命拾いしたものではありましたが、あなたにとっては結果としてどれだけの価値があったのか、私にはわからないですし、知りたくもありません。
いよいよ、私が取るに足らない役立たずだと誰もが気付き始めた頃。私は、明日をも知れぬ命運が尽きる恐怖に怯える日々が続きました。死ぬ覚悟なんてできるはずもなく、ただただ体を震わせることしかできず、そんな私に何ができたかというのであれば、誰に宛てるでもない未練がましい遺書を書くくらいでしたが、それらはすべて杞憂に終わったのです。何の価値もない私を見捨てることもなくあなたは生かしてくれました。いえ、正しくは生かされていたと言った方が適切でしょう。この時の私はまだ竹中半兵衛という人間、いや、化け物の真髄を知らなかったのです。飲み物や食べ物に薬を盛って経過観察をしたり、安全だからと身を隠すように指示された場所はいつの間にか敵に囲まれていたり、突然、何の予兆もなく私の頬に重く鋭い平手打ちをしたり、手伝いと称して身動ぎ一つ取れない縄の縛り方をされたり、そのまま一晩放置されたり、別の日には馬の鞍に繋がれて引き摺り回されたり、突然、往復で平手打ちをしたり、そんなこんなで怪我を負って治療した後、心配するふりをして患部を強めに圧迫しながら触れて悲鳴を上げさせたり、突然、平手打ちをして倒れ伏した私を踏んだり、躙ったり、詰ったり、その他諸々。取るに足らない役立たずだと気付いたにも関わらず、語るも地獄、聞くも地獄の数え切れない鬼畜の所業。この文を書いている今でも、その時のことを思い出して、眩暈がし、体のあちらこちらが痛みを訴えるような錯覚を覚えます。命拾いをしたとは言いましたが、まさか拾われた命を弄ばれようとは思いもしませんでした。何故、あのような人ならざる行為を平然と、何なら至極楽しそうに微笑みながら行えたのか。どう考えてもやり過ぎですし、私には到底、理解に及びません。理解したいとも思いません。理解するとはつまり、あなたと同じ場所まで堕ちてしまうことだからです。あなたは人の形をした地獄そのものです。
しかし、いつ死んでもおかしくない、それこそあなたと出逢ったその日が命日にもなっていたかもしれない私がこうして今も生きている。それは他でもない半兵衛さんのおかげであることは認めざるを得ない事実です。初めて出逢った時、私が神でも仏でも救世主でも超人でも何でもないただの人間だと知った時、その後も幾度となく生死の分岐点に立たされ、絶望の淵を彷徨った私に生きる道を与えてくれたのはいつだってあなたでした。人を人とも思わない残虐非道の数々と並んで助けてもらった場面も少なくはありませんでした。いえ、やはり心做しか、前者の方が多かった気もします。
最初こそ、この命はあなたの打算によって繋ぎ止められました。もしかしたら、その次も、そのまた次も、私が岐路に立たされた時、少なからず何らかの無慈悲な損得勘定が含まれていたのかもしれません。だとしてもです。私を救ったのは血の通わない合理性を極めた打算なのです。私はその打算に感謝をしています。ちなみにこの感謝ですが、さきほど述べた拷問の数々は含まれませんので悪しからず。人は受けた恩も忘れませんが、それと比べるまでもなく恨みというものは、骨の髄まで、魂の奥底まで刻み込んで、永遠に決して忘れないものです。決して。それを努々、お忘れなきよう。あなたの場合はそれを承知の上で敢えて、やっていると言われても何ら不思議ではありませんが。
そんなあなたに、私は果たして何か一つでも恩に報いることはできたのでしょうか。命を救われたなんて人生をかけても返せるかもわからない恩を私ごときの凡人が。否、例え、あなたが救ってくれたこの命を賭したとしても、その恩に報いるようなことは私はできていないですし、きっとできないでしょう。だから私は考えたのです。せめてあなたの枷だけにはなりたくないと。あなたの夢の邪魔にはなりたくないと。そして私はある結論に至りました。あなたから離れることが唯一にして最大限の恩返しになるのではないかと。これ以上、あなたの手を煩わせないために、貴重な時間を奪わないように、夢の妨げにならないように、私はあなたの前から姿を消すことにしました。私が居なくなることによって、特に不都合はないでしょう。せいぜい、あなたの好奇心を擽り、日頃の鬱憤の捌け口となるおもちゃが一つなくなるくらいのものでしょうが、それにより余計な時間や労力を取られずに済むのですから、むしろ望ましい結果ではありませんか。
ここまで、まるで、あなたのようにと、聞きようによっては恩着せがましいことをつらつら書き連ねていますが、私が恐れたのは打算で生かされることでも、況してや、打算で殺されることでもありません。さきほども言いましたが、勿論、死にたいわけではありません。でも、それ以上にいつしか私はその打算する価値すらなくなることを何よりも恐ろしいと思うようになったのです。あれほど酷い目に遭わされておきながら自分でもおかしいと思います。恐ろしく烏滸がましい矛盾です。もはや末期の症状ではないかと気分が悪くなり、酷い自己嫌悪に陥ります。この世界において、異物である私は常に孤独を感じていました。本当の意味で居場所がなく、言葉が通じているわけではなく、心から理解してくれる人が居ない。死にたくはないのにどうしようもなく、消えたくなることがあります。このまま、帰ることができないと考えただけで、心が不安で圧し潰されそうになるのです。そんな私にとってあなたの害をなす好奇心は良薬のようにその孤独を一時的に忘れさせ、精神を保てるほどには、ほどよく鈍らせていました。しかし、それは心を安定させると共に心を蝕む薬でもありました。薬と言えど、飲み過ぎては体には毒になります。だから、私が消えることはあなたのためであるのと同時に私のためでもあるのです。私の選択はお互いの利点となるでしょう。なので、これは決して、私が消えるのはあなたから受ける暴力から逃げるからというわけではありません。その点は誤解なきように。文という手段を選んだのも、改めて、あなたと向き合った時、すべてを見通すような瞳を見つめながらこのような話ができる自信がないからです。それでも感謝も何も伝えずに出て行くのは、あまりにも不義理だと思うので、文という選択をしたのです。もう一度、言いますが、これは決して、誓って、あなたから受ける暴力から逃げるわけではありません。しかしながら、暴力を肯定しているわけではありません。ええ、決して、絶対に、断じて、到底ありえないことです。暴力とは罪。つまり、あなたは罪人、いえ、あなた自身が罪そのものなのです。半兵衛さんが私との出逢いと別れを機に真っ当な人間になることを祈っています。例え、天地がひっくり返っても、明日、世界が終わるとしても無理だとは思いますが。
思い返せば、色んなことがありましたが、いざ、あなたともう会えないとなると、何だか悲しいといいますか、憑き物が落ちたように清々するというか、厄介払いができて吹っ切れたというか、暗雲を抜けたような晴れやかな気持ちになるというか、とにかく生まれ変わったような清らかで不思議な感覚です。何にせよ、私の人生の中でとても大きな分岐になるのは間違いありません。そして、その分岐にはあなたはいません。この複雑な気分も時間が解決してくれるものだと、前向きに考えようと思います。あなたがこれを読んでいる頃には私はもうこの世にいないのかもしれません。しかし、この文を書いた後にいつかあなたとどこかでばったりと再会してしまって、気まずい思いをするよりはきっとましなはずです。
最後になりますが、私を救ってくださり、私を見捨てずにいてくださり、私を生かしてくださり、ありがとうございます。私の心からの感謝が少しでも半兵衛さんに伝わっていれば幸いです。それではどうか、お元気で。何卒、御自愛なさって下さい。それなりに長生きできますように。そして、できれば、二度と逢わないことを願っております。さようなら。
敬具
名前
「やれやれ。まさか、文を残して行くだなんてね。こんな紙切れで義理を果たしたつもりでいるのであれば、随分と僕も安く見られたものだ。本当に心から感謝しているというのあれば、僕の目の前で、その口から直接聞かせてほしかったものだよ。況してや命の恩人であればなおのことだ。あまりにも礼儀を欠く行動じゃないか。まったく、最初から最後まで勝手なご身分だね。しかし、この責任の一端は巡り巡って今まで世話を焼いた僕にあるのかもしれない。もっと僕が正しく躾ておけば、こんな恩を徒で返すような恥を晒すことはなかったのかもしれない。とすれば、二度と同じ過ちを犯さぬよう、僕が正しく、そして厳しく、再教育をする必要があるようだ。さて、君はこれについてどう思うんだい?」
「殺してください。」
あれだけ死にたくはないと思っていたはずなのに、こんなにも死を渇望するだなんて誰が予想したであろうか。誰が想像したであろうか。感謝と別れを認めた手紙を送った本人に読み聞かされるだなんて。羞恥のあまり、自暴自棄になって穴があったら入りたいどころか、そのままその穴に埋もれて土に還りたい。
「あれほど、生にしがみついてた君が殺してくれだなんて、滅多なことを言うものでもないよ。」
「死にたい…消えたい…。」
感謝と少しの憎悪。ありったけの想いを込めて書いた手紙を半兵衛さんの部屋の机に置いて、すぐに自室戻って、予めまとめておいた荷物を回収して、長らく過ごして来た城から出て行こうとした私だったが、自室へ向かう道中、数人から話しかけられたり、頼まれごとをされてしまい、どうせ最後だからときちんと対応していると、想定よりも時間がかかってしまったものの、もうすぐで自室に着くだろうという頃、何やら城が騒がしくなるのを感じ取り、今日は戦に出る日だったかと考えている私の目の前に通常よりも眼光と前髪を研ぎ澄ませた石田さんが凄まじい速さで距離を詰めて来たかと思えば、次の瞬間には腹部に生じた鈍痛により悲鳴を上げるよりも早く、私はそこで意識を手放す。次に目を覚ました時、は罪人のように縛り上げられ、畳に転がされていた。腹部に残った微かな痛みに呻きながら見上げたその先には見覚えしかない紙を手にした半兵衛さん。全身の毛穴からドッと汗が噴き出し、呼吸と脈拍が乱れる私を他所に半兵衛さんは紙を開いて、内容を声に出して、事も無げに読み上げ始めた。拘束された私にはそれを阻止することも、一世一代の想いを綴った雑音から耳を塞ぐことも敵わなかったので、わーわーと相手より大きな声量で喚きまくることしか抗う術がなかった。しかし、半兵衛さんも読み上げる口を閉じることなく、私より声量をあげて来たので、更に大きな声を出そうとしたところで、鳩尾に蹴りを入れられ私が黙らせられ、手紙を書いたことを心底後悔することとなる。今の私にはどんな罵倒もどんな慈悲もどんな説教もこの命続く限り追い打ちにしかならないし、生きてくことが地獄なので死こそが唯一の救済でしかない。もう一度、言う。何度でも言おう。殺してくれ。
「僕に黙って勝手に居なくなろうと知った時は、どうしてくれようかと思ったけれど、君もこうして戻ってきたことだし、今回に限っては不問にすることにしよう。」
「…戻って来た?拉致監禁捕獲の間違いでは?」
「それにこの文は存外僕にとっては嬉しいものだからね。」
「はい?」
「これほどまでに筆跡から僕への執着が隠しようもなく溢れている情熱的な思い綴った恋文を認めてくれるなんて。」
「どこをどう読んで恋文と勘違いできるのですか。」
「おや、自分で書いておきながら自覚がなかったのかい?」
手にしていた紙をゆっくりと折り畳むと、半兵衛さんは傍らにしゃがみ込み、乱れた私の髪をそっと指先で耳にかけた。
「君は地獄だ、化け物だと誹りながら、その僕が居なければ精神を保てない。僕という存在がなければ生きていけないと、これほどまでに熱烈に書き連ねているじゃないか。これを恋文と言わずして、何と呼ぶんだい?」
「遺書です。」
「そう頑なに否定しなくてもいいんだよ。」
「いや、しますよ。文の作者が遺書だと言ってるのですからそれは遺書なんですよ。斜め読みしたとしてもあまりにも脳内で都合よく変換され過ぎですよ。」
「僕に生かされる打算に感謝し、僕という存在に依存せずにはいられない。僕の好奇心が孤独を忘れさせる良薬であり、同時に心を蝕む毒でもある。これほどのまでに僕という人間に深く侵され、執着や依存を滲ませる文を認めておきながら、恋文ではないというほうが無理だと思うけど?」
国語でよくある《作者の心情を答えよ》の問題があるとするのなら、半兵衛さんの採点結果はマイナス百億点である。寧ろ、採点を放棄したくらいだ。する価値がない。言動が公式が明言しているのに公式が勝手に言っているという過激考察派じゃないか。こんなの考察の考察が必要になってくる。日本人の心情である察しと思い遣りはどこへやった。同じ日本人として恥ずかしいと言いたいところだが、そもそも相手は人ではなかったから、私が恥ずべきことは何もなかった。半兵衛さんはふっと目を細めて、微笑む。それはまるで慈母のように優しく、無垢な子供のように無邪気で、そして、吐き気がするほどに邪悪だった。
「君をここまで僕なしではいられない体に、おっと、語弊があるね。僕という毒がなければ精神を保てない状態にまで仕上げてしまったのは、他ならぬ僕自身だ。ならば、その依存させた責任は、僕が最後まで取ってあげなくてはいけない。一生をかけてね。」
「大丈夫です。それよりその文を土に埋めてください。私ごと。」
「そんな勿体ないことはしないさ。この文は何度も読み返して、僕の心の支えにさせてもらう。一生大事にするよ。それから、君がまた、分不相応な自立なんていう夢を見たくなった時に、読み聞かせてあげるためにね。君の歪んだ愛の形を、僕が何度でも肯定してあげるよ。」
「私の心はどうなる!?あなたが私の書いたものを勝手に心の支えにすることで傷つけ、崩れそうな私の心はどうなると言うのですか!何が私の心の支えになると言うのですか!支えてもらっておきながら、私の心を殺すつもりか!」
「心配しなくても僕が支えてあげるよ。」
「支えられるわけないだろ!私の心の均衡と安寧を脅かす者が!一体何を支えるというんだ!この卑怯者!鬼!悪魔!鬼畜軍師!人でなし!」
「そんなに声を張り上げなくても、僕はどこにも行かないさ。それに君がどれだけ僕を罵倒しようと、僕の耳にはそれが愛の囁きにしか聞こえないよ。」
普段ならば、そんな真似は絶対にしないが、半兵衛さんに些細な陰口でも囁こうものなら、到底、天秤の釣り合わぬ苛烈な制裁が下されるのは目に見えている。例え、その囁きが真実だったとしても。しかし、今はどうだ。縄で縛られ、畳に転がされ、身動き一つ取れぬまま、程度の低い罵倒を喚くだけしかできない哀れな私の頭を優しく、時に指先で髪を梳くようにして撫でてくる。かつて私に恐怖と暴力を植え付けてきた、あの手で。その事実、この現状が私の神経を宥めるどころか、逆撫でていることにこの人は知ってか知らずか、どうしようもなく機嫌が良いようだった。気付いた上で、あえて愉しんでいる可能性は大いにある。何せ、あの竹中半兵衛なのだから。
「愛なんて囁いていませんよ!どんな都合のいい頭と耳をしてるんですか!アホなんですか!」
「骨の髄まで、魂の奥底まで刻み込んで、永遠に決して忘れないものです。これはつまり、僕のことを一生忘れずに想い続けるということだろう?」
「事実を秘匿するな!その直前に恨みって書いてあったでしょうが!」
「よしよし。大丈夫だよ。僕も君が好きだし、愛しているよ。」
「ばーか!ばーか!変態!アホ!鬼畜!ろくでなし!」
「そんな私にとってあなたの害をなす好奇心は良薬のように私の孤独を一時的に忘れさせ、精神を保てるほどには―」
「うわああああああああ!!やめろおおおお!!やめて!!やめてください!!お願いします!!」
「ああ、本当に君は可愛いね、名前。これほどまでに僕を必要としてくれるなんて。」
「ていうか、何でそんなにしっかりと内容覚えてるんだこの人!」
別れを告げるための文が、皮肉にも一生私を繋ぎ止めるための最悪の呪縛になろうとは、誰が予想できたであろうか。私はただただ項垂れて、逃げ場のなくなった未来を思って涙を流すしかなかった。
拝啓、竹中半兵衛様
MANA3/260310