災いは歪な音を立てて
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全ては私の不注意から始まった。
災いは歪な音を立てて
秀吉さんに頼まれて部屋の掃除をしてたんです。ちゃんと真面目にやってました。
でも不幸は突然やって来たのです。
ガシャン
「…」
良くなさ過ぎる音が部屋に鳴り響いた。反射的に足下を見ると壷だったらしきものが割れていた。
「…」
や
やってしまった………!!!!
割れた壷の破片を見る限り何だか高級そうな壷だ。私は素人だが、この壷は絶対に高級だ。
ああ…ヤバイ。非常にヤバイ!!火曜サスペンスのテーマも聞こえて来た!!ヤバイ誰か死ぬっぽい!!誰がだ!?私だ!!!!私しか居ない!!!!
「どどどどどどどうしよう…どうしようどうしよう…取り敢えず落ち着こう…落ち」
ガラッ
突然、部屋の襖が開く音が聞こえ、落ち着く所か逆に心拍数が上がった。入って来たのが秀吉さんなら私は死ぬ。ショック死する。
振り返るとそこに居たのは
「…何をしてるんだい名前?」
半兵衛さんだった……。
何てタイミングの悪い。
「名前、秀吉は何処に居る……………………」
半兵衛さんの視線が割れた壷に行ってる。
「ははは半兵衛さん!これはですね!?」
「…」
視線が壷から私に移された。
そして、半兵衛さんは……いや…悪魔は
怪しくニヤリと笑った。
「ああ…どうするんだい?」
ああ…今の半兵衛さんにニョキニョキと悪魔の触角と尻尾が生えていくのが見える。
「……正直に謝るつもりで」
「謝っただけで、果たして秀吉が許してくれるかどうか……」
「…」
「最悪の場合」
「…」
「死をもって償うしかないね」
火サスが聞こえる!!火曜サスペンスのテーマが再び聞こえて来る!!!!
悪魔にも現場を目撃された訳だし。黙ってても悪魔が密告するに違いない。そして私が秀吉さんに殺される、その瞬間を見てほくそ笑むに違いない。
「でも私、」
「バキボキゴキバキッ…グチャビチャグチャ…」
「…」
遠い目をしながら半兵衛さんが口でグロテスクな効果音を発している。多分、私が死ぬ瞬間の音だ。
半兵衛さんには五体不満足の私の屍が見える様です。
「何なら黙っててあげようか?」
「え!?」
予想外の言葉に驚いた。いや待て。目の前に居るのは悪魔だ。デビル竹中だ。悪魔の囁きに耳を傾けるな私。
「やっぱり私」
「バキボキゴキバキッ…バキバキバキバキゴキバキ!!…グチャッビチャグチャ…ビチャ…」
「お願いします」
何かさっきより私が激しく死んでる!!!!ハードに死のハーモニーを奏でてる!!激しくミンチになってる!!絶対に!!!!
五体不満足は嫌です。
「どうした名前。食が進んでおらぬ様だが」
「えぇ………まぁ…………」
夕食時。私の頭は罪悪感と恐怖とミンチな私の姿でいっぱいだ。凄いカオスですよ。混沌。
食も進む筈がない。
「秀吉。名前は昼間に雑草を食べまくってたから、お腹が減ってないんだよ」
半兵衛さん、それはフォローですか!?それとも虐めですか!?
……ああ…でも私も自暴自棄になって知らない間に食べてたのかもしれない…。吐きたい。全てを吐き出して楽になりたい。
「…名前。雑草は止めておけ」
「………はい…」
……………半兵衛さんがニヤニヤしてる。
一瞬で私が雑草を食した説は虚言だと悟った。後、騙した半兵衛さんよりも騙された私に腹が立った。
やっぱり半兵衛さんの方がムカつく。
「名前。肩が凝った」
「そうですか」
「揉んでくれないのかい?」
「何故ですか?」
「バキボキゴキバキッ…グチャビチャグチャ…」
「…」
ふ…馬鹿だな私。考えてみなよ?あの半兵衛さんだよ?あの半兵衛さんが口止め料を要求しない訳ないじゃないか。何やってんだ私。しっかりしろよ私。うん。
取り敢えず今はしっかり肩を揉もうじゃないか私。悪魔でも肩は凝るらしいよ?明日使える無駄知識が増えたじゃないか私。ポジティブに行こうよ私。
「名前。醤油を持って来てくれないか」
「名前。この荷を蔵に運んでくれないか」
「名前。お茶を頼むよ。後、羊羹も。何?無いだって?じゃあ買って来てくれたまえ。今直ぐに」
「名前。場内の廊下を全て雑巾掛けしておいてくれないか。塵一つなく綺麗にね」
「名前。背中を流してくれないか」
「名前。薬を飲ませてよ。口移しで」
「名前。もう取り敢えず何でも良いから面白い事してよ。雑草を食べるとか」
「……半兵衛さん。幸せって何でしょうね…」
「そうだね。難しい質問だ。例えるなら自分は何もせず、他人を下僕の様に扱う事かな」
「わぁ…凄い幸せそうですねぇ。良いですねぇ……わぁ…あの雑草、美味しそうじゃないですかぁ?」
「駄目だよ。秀吉が怒るから」
私は廃人の仲間入りをしそうな位、満身創痍だった。
半兵衛さんの無茶苦茶な命令のお陰で自分を見失いかけている私がいる。
因みに今は縁側で半兵衛さんとお茶を飲んでます。人生の大部分を終えた老人の様に。
ああ…ポジティブに行こうと意気込んでた私が懐かしく感じる。もうポジティブとか無理だ。寧ろ、ポジティブに逝けそうだ。
もう眠い…凄く眠い。思わず欠伸が出る。
「ふぁぁ~……眠っ」
「じゃあ昼寝でもしようか。ほら立って」
「何処行くんですか?今日からは土の下が私の寝床なんですよ」
「何を言ってるんだ。早く行くよ」
「そうですね…早く逝かないと」
私は半兵衛さんに引き摺られ、部屋に入って行った。
あ…あの雑草も美味しそう。
「布団を敷くのが面倒だからってこれはどうかと」
「嫌なのかい?」
「嫌ではないですが」
何で腕枕をされて私は昼寝をしなければならないのでしょうか。もう敢えて逆らいませんでしたけど。
「腕が痺れませんか?」
「平気だよ」
「涎垂らしますよ?」
「その時は覚悟しておきたまえ」
「努力します」
取り敢えず私は眠い。腕枕とゆうものを初めて体験したが思ったよりも何か寝心地が良い。
「名前」
あ…半兵衛さんが呼んでる。
「この機を利用して言うのも卑怯かもしれないけど」
すみません。眠いです。
「僕がもし」
おやすみなさい。
んん……?………今、何時だろうか…。あれ?私、布団の中に居る?半兵衛さんは?何か半兵衛さんが言ってた様な…。
「…取り敢えず起きよう」
布団を畳み、部屋を出て寝ぼけながら行く宛もなく廊下を歩く。
歩いていたら近くの部屋から誰かの声が聞こえた。
「…半兵衛さん?」
私は部屋の襖を開けた。
「…」
「ん?名前か。何用ぞ」
目が覚めた。そしてショック死しそうになった。
部屋には秀吉さんが目の前にあの壷の残骸を広げていた。私の中で何かが崩れ去った。久々に火サスのテーマが流れる。
そしてあの音も聞こえて来た。
バキボキゴキバキッ…グチャビチャグチャ…
「ひひひひ秀吉さん!!!!!!すみませんでした!!!!!!」
「?どうした名前。何故、土下座など下らぬ事をする」
「壷!!すみませんでした!!!!私が割りました!!!!!!五体不満足だけは許して下さい!!!!!!」
「何を言っているか解らぬが何か勘違いをしておる様だな」
「?」
「この壷は何時だったか半兵衛の奴が転かして亀裂が入り脆くなっていた壷だ」
「…?」
「ああ…もう、ばれちゃったのか」
振り返ると部屋の入り口に半兵衛さんが何時の間にか立っていた。もう色んな事が一度にやって来て頭が上手く回転しない。
「半兵衛…お前、名前に何かしたのか」
「いいや。僕は別に何もしていない」
頭は回らないがつまりは…
「半兵衛ぇえ!!!!この野郎!!!!騙したな!?!?良くも騙したな?!?!?!?!」
「何を言ってるんだい。君が勝手に勘違いをしたんじゃないか。それに、君が壷を割った事を隠そうとしていた事は事実だろ?」
「煩い!!!!悪魔め!!!!この場で殺してくれるわ!!!!秀吉さん!!!!この人、殺して良いですよ!!!!!!」
「その前に僕が君を殺す」
「頼むから我を巻き込むな」
あの悲劇の事件から数日が経った。
今、私は部屋の掃除をしている。
「大して部屋も散らかってる訳じゃないし…この辺で良」
ガシャン
「…」
良くなさ過ぎる音が部屋に鳴り響いた。
因みに、この部屋は私の部屋……ではない。
この部屋の主は
「ああ…またやっちゃったね。名前」
振り返るとそこには
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MANA3*0921