河野瑞稀
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橋元組の直系組織が管理する地下道場。コンクリート剥き出しの壁に、鈍い衝撃音が幾度も反響していた。
「―がはっ!」
短い悲鳴とともに、一人の青年が板張りの床に背中から叩きつけられる。握っていた木刀がカラカラと虚しい音を立てて転がっていく。床に大の字になった青年、ミズキは顔を苦痛に歪め、濡れた前髪の間から天井を睨みつけている。荒い呼吸のせいで、彼の胸元が激しく上下していた。私は手にした木刀の切っ先を下げ、乱れてもいない呼吸を整えながら、ただ無表情に彼を見下ろした。
「ほら、立ちなさいミズキ。あと三分。今日の設定時間はまだ残ってる」
「……っ、はあ、はあ…相変わらず、容赦なかね、先輩は…」
ミズキは痛む脇腹を押さえながら、忌々しげに、けれど信頼を寄せるような眼差しを私に寄せてくる。彼はよろよろと身体を起こし、転がった木刀を拾い上げた。その身のこなしには確かな身体能力の高さが窺えるが、私から見ればまだまだ隙だらけだ。私とミズキは島田が崩壊した後の鉄坂を牛耳る橋元組の組員だ。そして私は、この手がかかる男の教育係を務めている。ミズキの主な任務は前線での立ち回り、つまり現場仕事だ。そのため、私は彼に体術、剣術、そして銃の扱いを徹底的に叩き込んできた。情報の処理や裏での立ち回りといった机の上の知識も、最低限の死なないための知識として少しだけ教えはしたが、彼が輝くのはやはり実戦の場だった。呑み込みは早い、筋もいい。橋元の若い衆の中でも、戦闘のセンスは群を抜いている。けれど―
「構えが甘い。実戦なら今ので片腕を落とされてる。もう一本」
「へいへい。これでも必死に喰らいついてるつもりなんですけど」
不敵に笑ってみせるミズキだが、その構えには焦りと迷いが見え隠れしていた。木刀を交え、乾いた音が道場に響く。ミズキの鋭い踏み込み。若さと勢いに任せた一撃は、確かに重い。並の人間ならこれだけで圧倒されるだろう。だが、軌道が直線的すぎる。私は最小限の動きでそれをいなし、彼の懐へ潜り込んで、容赦なくその顎を掌底で突き上げた。
「ぶッ!」
顎への一撃で脳を揺らされたミズキの身体がよろめく。すかさずその足首を払い、私は再び彼を床へと転がした。背中から激しい音が響く。これで今日、十四回目だ。
「これまで何度も手合わせしてきたけど、ミズキ。あなたは一度だって私に勝てたことはない。それがどういう意味か、わかってる?」
木刀を床に突き、私は抑揚のない声で言い放つ。ミズキは仰向けのまま、腕で顔を覆って小さく笑った。
「わかっとるよ。俺がまだまだ、先輩の足元にも及ばん半人前ってことやろ」
「わかっているなら結構。休憩にしましょう」
私は木刀を壁に立てかけ、用意していたスポーツドリンクのボトルをミズキに放り投げる。ミズキはそれを片手で器用に受け止め、そのまま気だるげに上体を起こし、一気に喉を鳴らして飲み干す。橋元組という組織は血も涙もない。島田という巨大な重石が取れた鉄坂で住民から骨の髄までみかじめ料を毟り取り、恐怖で支配している。正直に言って、そのやり方に思うところが、まったくないわけではない。私だって人間だ。理不尽に怯える街の人々の顔を見て、胸が痛まないと言えば嘘になる。けれど、私には橋元組にどうしても返さなければならない大きな恩義があった。かつて親の借金のカタとして裏社会の底へ叩き落とされ、行き倒れ同然だった幼い私を拾い、飯を食わせ、生きる術を与えてくれたのはこの組織だ。だから、どれだけ手が汚れても、やり方が気に入らなくても、私は橋元組を裏切るつもりは絶対にない。一方で、私の目の前で座り込んでいるこの教え子は、まるで過去の私を見ているようだった。ミズキがまだ幼い頃に父親が組に作った借金。その父親が死に、借金を帳消しにする代わりに彼はこの血生臭い世界に身を投じるしかなかった。出会うまでの経緯や境遇がこれほど重なっていながらも、彼はどうやら、私ほど非情には割り切れてはいないようだった。
「なあ、先輩」
空になったボトルを置くと、ミズキは視線をこちらへ戻し、低く濁った声で漏らした。いつもと違う、どこか湿り気を帯びたその響きを、私の耳は聞き逃さなかった。
「何?」
「俺、今さ。組の命令で、ヨーカイに潜入してるじゃん」
橋元組のシノギに奇襲をかけ、物資の輸送ルートを妨害する。最近、縄張りを執拗に荒らし回っている謎の集団、それがヨーカイだ。上層部はこの事態を重く見て、ミズキをスパイとして敵陣へ送り込んだのだ。ボトルを置いたミズキが、顔を上げて私を見る。その瞳には、複雑な葛藤と、ひどく疲れ切った色が滲んでいた。
「あいつら…ヨーカイの連中、ただの不穏分子じゃねえんだ。ただ自分達の街を守りたいだけでさ。橋元のえげつないやり方が許せなくて、必死に抗ってるだけ。本当は、みんな良い奴らなんだ。仲間想いで、真っ直ぐで…」
ミズキの言葉が、徐々に熱を帯び、そして急速に萎んでいく。
「俺、最近わからなくなってきちまって。橋元の命令に従って、あいつらを売らなきゃいけねえ。でも、あいつらの笑顔を見てると、胸の辺りがキリキリ痛む、橋元とヨーカイの板挟みになって、もう、どうしていいかわからなくなる…」
苦しげに胸元を掴むミズキ。弱音を吐かないはずの彼が、私にそんな相談をしてきている。それだけ追い詰められているのだろう。可愛い教え子が悩んでいる姿は、確かに見ていて気分の良いものではなかった。けれど、私は。
「そんなこと、私に相談しないで」
冷たく、突き放すような声が出た。ミズキが弾かれたように目を見開く。
「私は橋元の人間なの。そんな私情を私に話している時点で、スパイとしては使い物にならない。情報管理の初歩すら忘れて、その程度で潜入しているの? それに…」
私は一呼吸置き、ミズキの真っ直ぐな瞳を見つめ返した。冷徹に徹した声音の奥にある、最低限の情を込めて、言葉を続ける。
「そんなの、自分で決めることよ。ミズキの好きにしたら良いじゃない」
「え…?」
「橋元に従ってヨーカイを潰すか、それともヨーカイに味方して橋元を敵に回すか。どっちを選べばあなたの心が納得するのか、そんなの私にわかるわけがない。どこで、誰と、どう生きるか。あなたの行く道くらい、自分の頭で考え、自分で決めなさい」
私の言葉にミズキはしばらく呆然としていた。しかし、すぐにその意図を汲み取ったのか、力のない薄笑いを浮かべた。
「好きにしろ、って……本当に相変わらず冷たいねえ。でも、敏郎おじさんにも似たようなことを言われたよ。いや、おじさんのは先輩のそのトゲがある言い方とは違って、もっと温かい諭し方だったけど」
山神敏郎。橋元組が人質として囲い込んでいる男だ。ミズキが組に入ったばかりの幼い頃から実の親のように慕い、何かと世話になっていた人物でもある。私も何度か顔を合わせたことがあるが、あのひねくれたミズキがそれほど傾倒するだけの価値がある人間なのは確かだった。私より先に彼に胸の内を明かしていたとしても、何ら不思議ではない。
「じゃあ、もし…もし俺が、組を裏切ることになったとしたら?」
その問いは、裏社会においては一発で消されても文句は言えない禁句だった。だが、私は肩をすくめて、事も無げに答える。
「それがミズキの選んだ道なら、私からは何も言うことはない」
ミズキの瞳が微かに揺れた。驚きとそして救われたような光がそこに混ざる。けれど、彼はすぐに表情を引き締め、さらに踏み込んだ質問を重ねてきた。
「じゃあ…もし俺が組を裏切って、先輩の敵になったら?その時はどうする?」
その質問に対して、私の答えは最初から決まっていた。私はミズキを真っ直ぐに見据え、一ミリの迷いもなく言い放った。
「その時はその時よ。容赦なく叩き潰す」
「…はっ、あんたならそう言うと思ったよ。本当に、可愛い教え子に対して情ってものがないよなあ」
「言ったでしょう。私は橋元を裏切るつもりはないって。あなたが組織の敵になるなら、私は橋元の組員としてあなたを排除する。そこに私情を挟む余地はない」
冷酷な現実。それが私とミズキの立場だった。どれだけ情をかけて育てようが、組織の敵になれば殺し合う。それがこの世界のルールだ。それなのに、ミズキは私のその言葉を聞いて、なぜか嬉しそうに、どこか挑戦的な笑みを深めたのだ。彼はゆっくりと立ち上がり、服の汚れを払う。
「はは、流石は先輩だ。全然ブレねえ。でもさ、もしものことがあって、先輩が追い詰められるようなことがあったら、その時は俺が先輩を助けるから」
「……は?」
私は思わず眉を顰めた。何を言っているんだ、この男は。
「何言ってるの。体術も剣術も銃も、私よりずっと弱いくせに。私を助けるだなんて、一度でも私にまともな一撃を当てられてから口にしなさい」
鼻で笑って吐き捨てた私に、ミズキは少しも怯むことなく、むしろ確固たる意志を宿した目で私を捉えた。その瞳からは、いつの間にか濁った迷いが完全に消え失せていた。
「今は、ね。やけど、いつか絶対に先輩ば追い抜く。俺は、何があっても先輩ば助けたいんよ。先輩が俺に道ば示してくれたみたいに、俺も先輩を守れる男になる」
真っ直ぐすぎる、あまりにも眩しい言葉に心の中で勘弁してほしいと私は深く、深く溜息をついた。私は徹頭徹尾、保身的な人間だ。この世界に身を置きながら矛盾しているようだが、揉め事は御免被りたいし、組織のなかで平穏に適当な立場を維持して生き残れればいいと思っている。それなのに、この手がかかる教え子は、いつも私を自分の熱量に巻き込もうとする。これ以上、私を困らせて何が楽しいのだろう。私が呆れてただ無言で見つめ返すと、ミズキは何かを思い出したように、無防備な笑顔のまま、ぐっと顔を近づけてきた。
「先輩、そんな顔すんなって。それより、俺はまだ諦めてないから。あの約束」
「…何の話?」
「俺が手合わせで勝ったら、何でも御褒美一つくれるってやつ。俺は忘れてないからな」
「………」
そういえば、そんな口約束をした記憶も微かにある。だが、今日だけで十四回も無様に転がされている男だ。私に勝てる未来など逆立ちしても見えないため、すっかり記憶の底へ放り出していた。私は呆れを通り越し、唇の端を意地悪く釣り上げる。
「ええ、期待せずに待ってる。あなたが棺桶に片足を突っ込む前には、一矢報いられるといいのだけれど」
「ボロクソに言うじゃん!まあ、見てなって。次は絶対、俺が勝って見せるからさ」
屈託なく笑うその顔を見て、私は予感した。その笑顔が、橋元という泥濘の中で彼が見せる、最後の足掻きになるのだろうと。
それから数日後。その時は呆気ないほど唐突に訪れた。深夜だというのに事務所内は異様な喧騒に包まれていた。怒号、慌ただしく行き交う組員たちの足音、そして重苦しい緊張感。私は廊下の壁に背を預けながら、その騒ぎをどこか他人事のように眺めていた。通り過ぎる若い衆の会話から、ヨーカイ、裏切り、ミズキという単語が断片的に耳に飛び込んでくる。ああ、やっぱりか。胸の奥で冷たい納得が広がっていくのを感じた。あの日、道場で迷いを吐露していたミズキ。彼はついに自分の道を選んだのだ。橋元を捨て、ヨーカイという、自分が信じた仲間の元へ走ることを。組内がこれだけ騒がしいということは、ミズキの裏切りが発覚し、今まさに追手が差し向けられようとしている、あるいは彼自身が何か決定的な行動を起こしたということだろう。私は深く溜息をつき、その場から離れようと歩き出した。巻き込まれたくはない。私は橋元の人間として、上からの指示を待つだけだ。わざわざ自分から泥沼に飛び込む必要はない。そう思って、人通りの少ない裏口へと続く薄暗い通路を歩いていた、その時。
「―先輩」
背後から、聞き慣れた声がした。逼迫した、余裕のない焦りが混じった声。私は足を止め、ゆっくりと振り返った。そこに立っていたのは、息を荒くし、服のあちこちに汚れや微かな返り血を付着させたミズキだった。その手には武器が握られており、全身からただ事ではない緊迫感が漂っている。私はいつものように、ただ静かに彼を見つめ、静かに問いかけた。
「…何をしているの、ミズキ」
ミズキは私を真っ直ぐに見つめ、決然とした口調で言った。
「俺、組を抜ける。橋元のやり方は、もう見てられない。俺はヨーカイの仲間達と一緒に、この街を守る。橋元と戦う」
「そういうことを聞いてるんじゃない」
気が遠くなるほどの呆れに、私はわずかに首をもたげて天を仰いだ。すぐにそれを押し殺し、ミズキを見据え直す。
「私はあなたの進路相談の相手をしているわけじゃないの。組を抜ける決意をしたなら、なぜさっさと逃げないの?今、組の中はあなたの裏切りの件で蜂の巣をつついたような騒ぎよ。見つかれば命の保証はない。そんな状況で、なぜこんなところで油を売っているの。死にたいの?」
私の指摘にミズキは一歩、私の方へ足を踏み出した。その瞳には、並々ならぬ熱が籠っている。
「先輩…!一緒に行こう」
思わず、素っ頓狂な声が出そうになった。ミズキは必死な形相で、私の手を掴まんばかりの勢いで言葉を捲し立てる。
「先輩だって、組のやり方に思うところはあるはずやろ!?こんな血も涙もない組織におり続ける必要はなか!先輩の強さがあれば、どこでだって生きていける。ヨーカイの連中も、俺が説明すれば絶対に歓迎してくれる!やけん、俺と一緒に―」
「粋がるな、クソガキ」
私の感情を削ぎ落とした一言が、ミズキの熱弁する口を鋭く封じた。その場の空気が一瞬で凍りつく。ミズキは思考を止められたように、絶望に目を見張った。私は一歩、ミズキへと歩み寄り、彼を有無を言わせぬ視線で射すくめた。
「好きにすればいいとは言った。ミズキが橋元を裏切って、自分の信じる道を行くなら、私は止めないって。だけどね、私を巻き込まないで」
「先輩…」
「橋元を裏切る気なんて更々ない。私にはこの組織に恩義がある。どれだけ人道から外れようが、どれだけ世間から後ろ指を指されようが、ここが私の居場所なの。あなたがどれだけ高潔な理想を掲げようが、それを私に押し付けないで」
自嘲混じりの乾いた笑いを一つ漏らし、私は彼との境界線を引くように、さらに言葉を冷たく重ねていく。
「私は保身的な人間なの。自分の地位と、今の平穏が何よりも大事。あなたみたいな命知らずの正義の味方に付き合って、一緒に行く当てもない地獄へ落ちるなんて絶対に嫌」
ミズキの顔から見る見る内に血の気が引いていく。私の言葉は、彼の淡い期待も、無防備な甘えも、すべて木端微塵に打ち砕いた。それなりの時間を共に過ごしてきたというのに、彼は私の泥臭さをまるで理解していなかった。命のやり取りをするこの世界で、私に一体、どんな感傷的な優しさを期待していたというのか。
「…本気、なん?先輩は、本当にこのまま、組の言いなりで…—」
「本気よ。だからあなたのお守りは、今日で終わり」
私は腰の銃に手をかけ、それをゆっくりと引き抜いた。銃口はミズキ、ではなく、彼のはるか斜め後ろ、通路の闇へと向けられる。そして、彼に聞こえるか聞こえないかほどの低い声で囁いた。
「…教育係からの最後の餞別。見逃してあげるから、さっさと行って。三分だけあげる。三分経ったら、私は無線で裏切り者を発見して交戦中と連絡する。それまでに私の視界から消えて」
「先輩……あんた、俺を…」
ミズキは拳を固く握りしめ、悔しさと悲痛、そして、諦めの混ざった目で私を見つめていた。まだ何かを言いたそうに動くその唇を、私の言葉が遮る。
「…ああ、それから、敏郎さんのことなら、心配しないで」
私は銃口を向けたまま、事務的に言い足した。ミズキが橋元を抜けるにあたって、彼の存在は懸念事項であることは火を見るより明らかだった。私の口から出た名前に、ミズキが戦慄したように息を呑む。
「私が必ず守る。あなたと違って私は強いし、組織内の立場もある。裏から手を回して、彼に傷一つつけさせないようにしておく。だからあなたは、余計な心配をせずに自分の心配だけしなさい」
「……っ…先輩……」
ミズキの瞳に、熱いものが込み上げる。それが私への感謝か、あるいは己の無力さへの悔しさか。そんな湿っぽい心情など、これから敵同士になる私にはどうでもいいことだった。
「話は終わり。二度と私の前に顔を見せないで」
感傷に浸ることなど一切せずに言い放つと、私は彼から完全に視線を外した。
「……1、2、3—」
無機質にカウントを始める私。ミズキはしばらくの間、そんな私を凝視していた。その唇が微かに動き、何かを呟こうとしたが、言葉にはならなかった。やがて、彼は決意したように踵を返した。
「……悪ぃ、先輩。…今まで、ありがとうございました」
あらゆる柵を断ち切って駆け抜けていく足音が、薄暗い通路の奥へと消えていく。その足音に宿る確かな力強さは、もう私の教えることなど何もないことを物語っていた。ミズキが完全に射程圏外へと去ったのを見届け、私はゆっくりと銃を収める。猶予の三分が潰えたのを確認すると懐から無線機を引き抜き、電源を入れる。
「こちら、裏口通路。裏切り者のミズキを発見、交戦した。対象は負傷し、西側の外壁伝いに逃走。追尾する。応援を頼む」
虚偽の報告を淡々と流しながら、私は小さく息を吐き出した。最後の最後まで本当に手のかかる教え子だった。これで彼との糸は完全に切れた。教育係でもなければ、可愛い教え子でもない。次に相まみえる時は互いの命を貪り合うだけの敵同士だ。その時はあの日告げた通り、一ミリの容赦もなく叩き潰す。そう自分に言い聞かせる私の耳の奥で、あの日、道場でのミズキの言葉が、ひどくしつこく鳴り響いていた。
『いつか絶対に先輩ば追い抜く。俺は、何があっても先輩を助けたいんよ』
「…あーあ、どこで教え方を間違えたんだか」
私は誰もいなくなった闇の中で、ぽつりと呟いた。願わくば、あいつに生き延びてほしい。そんな殊勝な言葉は、私には似合わない。死んでほしいわけではないけれど、どうせ死ぬなら、せめて私の目の届かない場所で、勝手にくたばってほしい。これ以上、私に余計な仕事を増やさないためにも。
無頼レジスト
———
シーズン3で死怨様が実装され、ストーリーが進行したら矛盾が生じそうな話だったため、その前に書き上げたのですが、案の定、主人公が死怨様ポジでした。殺される。お許しください死怨様。ミズキの話が掘り下げられる度に体調が悪くなります。後、3話ほど続く予定です。
MANA3/260617