ED3-2 Epilogue another story
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行く宛もなく体躯はゆらゆらと揺蕩う。冷たく仄暗い場所。私が生まれた場所。一筋の、僅かな光も差し込まない虚ろなるこの場所に私は帰って来たのだ。
流れに身を委ねるまま、何処に向かおうとしているのか、この先どうなってしまうのか。私にはそんなことどうでも良かった。何故、私は未だに存在するのか。何故、私のような者が存在してしまったのか。何故、瑕疵の私に意思などがあるのか。そんなものがなければ、いや、そもそも私などが生まれなければ、こんなことにはならなかっただろうに。あの人のことを忘れられただろうに。
光の傍に居過ぎたせいなのか、心做しか今居るこの場所が以前よりも黒く淀んでいる気がした。今にも私の体を消し、飲み込みそうな程に黒く。いっそ、消してくれるならどんなに楽なことだろうか。
もう、考えるのは止そう。それは無意味でしかないのだから。私と同じように。すべては元に戻ったのだ。そう、すべては何事もなかったように元に戻っただけなのだ。
「…これで…良かったんだ。これで…―。」
私は眠るようにしてゆっくりと眼を閉じた。それも意味がないことだとはわかっている。眼を閉じようが閉じまいが、見える光景は何ら変わりがない暗闇なのだから。
その時、何かが私の瞼を貫き、眼球を刺激した。思わず眼を開くと、眼前にはこの場所には届くはずのない目映く煌々たる光がそこにあった。信じられない光景に私は愕然と眼を見開いた。
「……何…で…?」
光は、忘れたくても忘れることが出来なかったその人は、記憶の中に残る表情と同じように、優しく微笑んだ。
「言ったはずだ。例えそこが光の届かない闇の中でも僕は君を見つける、と。随分と待たせてしまったね、名前。遅くなってすまない。」
迎えに来たよ、そう言ってその人は出逢ったあの時と同じように私に手を差し伸ばす。どうして。有り得ない。すべては元に戻った。私のことなど誰も覚えているはずがない。だが、目の前には確かにその人が居た。これは私の浅ましい欲が生み出した夢なのか。将又幻なのか。白状すると驚く以上に私は嬉しかった。願ってはいけないとわかりつつも、逢いたいと心から切望した人との再会に感情が高ぶる。どうせ、どんなに足掻こうがこの人からは逃れられないのだから。そう自分で自分に都合の良い言い訳をし、せめて、せめて夢でだけでもと私は恐る恐る光に手を伸ばし、その手をしっかりと掴む。
しかし、引き寄せられた体を抱き締める腕と髪を撫でる手から伝わる感触と温もりは夢でも幻でもなく、紛れもない現実であった。
深淵なる闇の中で孤独に打ち震える瑕だらけの私を救ってくれたのは他でもないあなたでした
MANA3*100910
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