物理攻撃を受ける
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「さあ!やるのなら一思いにやって下さい!」
畳の上に大の字で寝そべり絶対服従の構え。その威勢とは裏腹に私の何とも無防備で滑稽な姿を見る相手は訝しそうな眼をしていた。言葉にせずとも理解出来ないと言う訴えが重々伝わった。
「どう言うつもりだい。」
「見て聞いての通りです。」
「わからないから聞いている。」
「だから!いつもの様に私を踏んだり蹴ったりして下さいと言ってるんですよ!」
先程よりも顔を顰て半兵衛さんはまた押し黙る。頭痛の種でも見るかの如く疎ましそうな目で見ているが、このまま放置して何処かへ行ったりしない所から察するに私の奇行についての理由が知りたいのだろうか。それについては私は黙秘権を行使するつもりだが。
「何故、僕が理由もなく君を踏んだり蹴ったりしなければならないんだい。」
「日常茶飯事にあなたがしてきた事なんですけど。普段ならばそれは私が抱えていた永遠の謎だったのですが今日は特別です。」
「そんな気味が悪い特別など僕は欲しくはない。」
「理由が知りたいですか?」
「是非ともね。」
「教えてあげますよ。踏んでくれたら。」
「何がそこまで君を駆り立てるんだい、名前。」
帰りたいんですよ!お家に帰りたいというただ純粋な思いが私を駆り立てるんですよ!逆に何故、あなたは今ばかりは駆り立てられないんだ!いつもはあんなに猟奇的なくせに!!!!くそ!何だいつにも増して人を見下すその目は!このままだと埒が明かない。だからと言って本当の事を言ってしまう訳にもいかない。仕方ない。ここは態と相手を煽る発言をして感情的になって咄嗟に手を出して頂く事にしよう。そうと決まれば私は腹を括り、血を吐くダメージも覚悟した。
「今更、良い人振った所で無駄ですよ。あなたが如何に無慈悲で残虐非道で最低な人間なのかは私が良く知ってますから!奇跡的に少なからず残っていた良心の呵責に苦しんでもあなたが犯して来た罪の数々は消えませんよ!あなたの様な人は死んでも地獄にさえ居場所はありま―――」
まだ吐き出せ切れていない思いの丈は中途半端に途切れさぜるを得なかった。何故なら、突如として私の体を柔らかな温もりが包み込んだからだ。一瞬、理解出来なかったが、どうやら私は半兵衛さんに抱き締められている、らしい。何故だ。何故こうなった。何故、半兵衛さんは私を攻撃せずに抱擁するのか。理解出来ないこの状況に私が平静を保てと言う方が到底、無理な話であって。
「な、何してるんですか!」
パシン
すっかり気が動転してしまった私は半兵衛さんに平手打ちをかましてしまった。すぐに我に返り、自分がたった今しでかした事に身を強張らせ、戦慄するも、結果的にこれで相手が手を出すのならと思う辺り、私はまだ正気を取り戻せていないのかもしれない。色んな事が一度に起こり過ぎて心臓が早鐘を打つ中、遂に半兵衛さんが口を開く。
「すまなかった。」
予想だにしなかった一言に全身を身動きが取れない程に硬直させていた緊張が緩和させられた。この人は今何と言った?どれだけ叫ぼうとも、どれだけ涙を流そうとも、悪びれる様子も見せず、せせら笑っていた男が、理由も話さずに踏めと言われ、挙げ句、頬を平手打ちされたと言うのに、心からすまななそうに謝っている。一体何に対しての謝罪だと言うのか。一体何でそんなに悲しそうな目で私を見るのか。
「僕のせいなのだろう。君をここまで追い詰めてしまったのは。本当にすまなかった。君がそこまで傷付いてしまってる事に気付かなかったなんて。」
「え、いや、まさしくぐうの音も出ない程その通りなんですけど。」
「今更、過ちに気付いて謝った所で許されないだろうし、償いにもならないだろうけど、せめて、これからは君を酷くした分、いや、それ以上に君を大事にするよ。絶対に傷付けないし、どんな事があっても必ず君を守るよ。」
最早、誰だこの人は。本当にあの冷徹無慈悲、傍若無人、鬼の皮を被った悪魔の半兵衛さんなのか。何だか良くは理解し難いが、私の自暴自棄な姿により、斯くして、半兵衛さんは改心されて、人間らしさを取り戻したらしい。めでたしめでたし。
冗 談 じ ゃ な い 。
何で今日に限って光に堕ちた。何て絶妙なタイミングで心を入れ換えたんだ。態とか?態となのか?狙ってやってるのか?有り得る。しかし、この慈しみに満ち溢れた眼は果たして本当に悪意を孕んでいるのだろうか?今までやらかして来た分、解き放たれた反動が生半可ではない。そのまま出家して早くもセカンドライフに突入してしまうのではないかこの人。何それ笑える。いや、笑えない。このままでは私は帰れないではないか!
「なな何言ってんですか!じゃあ、私が大事と言うなら私の為に殴るなり、蹴るなりして下さいよ!!!!」
「嫌だ!僕は二度と君を傷付けたりはしない!もう僕は今までの僕ではない!変わったんだ!」
「いや、変わり過ぎでしょ!劇的に!何と言う事でしょうですよ!てか冗談なんでしょう半兵衛さん?いつもみたいにからかってるんでしょう!」
「冗談などではない。今言った事全てに嘘偽り、況してや悪意はない一切ない。豊臣秀吉に誓っても構わないよ。」
「やばい!この人本気だ!!!!何で秀吉さんの名前を出して来たかは知らないが、秀吉さんに誓うと言う事はつまりそう言う事だ!うわあああ!半兵衛さんの阿呆!馬鹿!ボケ!クソもじゃマスク!のっぺり!4で半兵衛さんのっぺり!」
「大丈夫、大丈夫だよ名前!僕がずっと君の側に居るから!」
MANA3*140121