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半兵衛さんが倒れた。戦略及び策謀の立案、敵情視察に情報収集、他国との同盟の交渉、防衛の策定に軍の士気管理、陣形の指揮、兵站と補給管理、その他諸々。軍師の責務に加え、自らも戦禍に身を投じ、夢のために命を懸けて剣を振るう。それなのに碌に食事をとらない、睡眠もとらない。その結果がこれだ。当然である。当然のこと過ぎて心配よりも先に呆れの感情が湧いてくる。それみたことかと言ってやりたいところを何とか飲み込んだ私は、半兵衛さんの寝込む布団の傍らで大谷さんとその様子を見守っていた。口には出さないが、一応、病人である大谷さんが病人の半兵衛さんを看病をしている姿は、素晴らしい支え合いに映る傍ら、その実、支え合っているどころか共倒れになるかもしれない戦国の病病介護に複雑な気分にさせられた。
「幾分か具合の方はましにはなったが。いやはや、顔色はまるで死人の蒼白さよ。」
「縁起でもないこと言わないで下さい。大谷さんが言うと冗談に聞こえないんですよ。」
「ぬしが先頃のように胸を差し出せば、賢人も気力を湧かせるやもしれぬ。」
「差し出してませんよ。存在しない記憶やめて下さい。」
「差し出さぬと言うのか。ぬしの恩人が斯くも地獄の苦しみを味わっていると言うのに。」
「半兵衛さんが自分から過労死という名の地獄を選んで勝手に苦しんでいるだけです。どうしてそんな人に手ではなく胸を差し出すんですか。そんなの慈愛ではなく常軌を逸脱した痴態ですよ。」
「賢人よ。名前が快気のため、ぬしの望み、喜んで何なりと応じると申しておる。」
「言ってません。」
「…何でも?」
「うわっ、喋った。」
「名前が、僕のために、望みを聞くって…。」
「いや、言ってませんって。」
「ああ、言った言った。」
「添い寝もしてくれるのかい?」
「ああ、添おう添おう。」
「ちょっと、大谷さん。勝手なこと言わないで下さい。」
「体を拭いてもらうことも。」
「ああ、拭おう拭おう。」
「大谷さん、いい加減にして下さい。」
「薬を飲ませてもらっても。」
「ああ、構わん構わん。何なら口から口へと移してもらえばよかろ。」
「おいこら大谷。おい大谷てめ大谷この野郎。」
「賢人が欲するのであらば、名前がそれ以上のことも振れば忽ち願い遂ぐる奇しき宝槌のごとく叶えてくれよう。」
「それ以上…何でも…—」
「大谷オラぁ!はっ倒すぞボケが!え!は、半兵衛さん!?血が、血が大量に!まさか病気が悪化したんじゃ!?」
「あなや、この女、ついぞやりおったわ。桑原桑原。」
「何でですか!私何もしてないですけど!」
「案ずるな。これは鼻血よ。」
「鼻血!?何で鼻血!?例え鼻血だったとしても、それはそれで鼻血でこの量は案ずるでしょ!」
「はあ、はあ…名前。横になってばかりいると身体が鈍ってしまうからね。君の手で、ほぐしてもらえると助かる。全身くまなく頼むよ。おや、どうしたんだい?顔が赤いね。弱っている今の僕の姿を目の当たりにして、いかがわしい想像でもしたのかい?心配せずとも僕の体調が回復したら、お礼にその想像を現実にしてあげよう。覚悟しておきたまえ。」
「大谷さん。どうやら半兵衛さんは色々と手遅れのようです。くたばり損ないがクソほど喋り出したかと思えばご覧の有様です。どの道、このままでは半兵衛さんは苦しんで死んでしまいます。楽にしてあげるべきです。殺しましょう。私が介錯します。それがせめてもの恩返しです。」
「ぬしが賢人の死となるならば、三成がすぐにでも、その吹けば飛ぶ綿毛の頭を刎ねに参ろうぞ。」
「誰も味方がいない。世界が私の存在を否定し続けている。」
「いついかなる時でも、ぬしに寄り添う良心であろうとするわれを否と申すとは。哀シイ、哀シイ。」
「現時点で大谷さんが私にとって一番の敵なんですけど。良心が他者に胸を差し出せって言うんですか。」
「やはり、ぬしの胸と尻を差し出すしかあるまい。」
「言ってるわ!私の尊厳を踏み躙りながら、胸とついでに尻も差し出せって抜かしてるわこの良心!やっぱり、大谷さんは敵です!ぎゃああああ!どさくさに紛れてどこ触ってるんですか半兵衛さん!」
MANA3/251028