SS
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
秀吉さんと大谷さんから、全然休もうとしない頑固一徹石頭軍師の半兵衛さんを何とか休ませてほしいと頼まれてしまった。二人が言って聞かないのなら、虫の声になど耳を貸すはずがないというのに。それに半兵衛さんが忙しいのは、私にとって平和の訪れなので、そのままにしておきたいところなのだが。あの二人に頼まれたとあっては断れるはずもなく、私は半兵衛さんの部屋に赴き、畏まって畳の上で正座をして、机に向かって熱心に作業をする背中に言葉を投げかけるのであった。
「半兵衛さん、休みましょうよ。」
「………。」
「皆さん、心配されていますよ。」
「………。」
「休める時にちゃんと休んでおかないと後に差し支えると思うんですけど。」
「………。」
やる前から、わかっていたことではあるが、やはり、言葉を交わすどころか、私の声が届いていないのか何の反応もない。まるでここに自分以外は居ないとでも言うかのように無反応。帰りたい。大谷さんは「主の献身的な心で語りかければ、賢人もきっと聞き入れてくれるはず。」と言っていたが。その後に「胸の一つや二つ差し出してやれ。」とも。私の知らない献身を提案しないでもらいたい。何だ、胸の一つや二つを差し出す献身的な心って。下劣この上ない。抑々、半兵衛さんがそんな美徳を穢すような献身に喰いつくわけがない。そんなことは私よりも理解しているはずなのに、一体、大谷さんの中での竹中半兵衛という人間像はどうなっているのか。これ以上、何を言っても時間を浪費するだけだろうし、あまりしつこくして、半兵衛さんの逆鱗に触れたくもない。最後に献身的な冗談を言って、やるだけのことはやったことにして、そろそろお暇させていただこう。それなら大谷さんも文句は言うまい。
「半兵衛さん。私の胸を揉ませてあげるので休みましょう。」
途端、筆が置かれる音が鳴り、いつからこの部屋に鎮座していたかも知れない、重い腰が軽々と持ち上がったかと思えば、半兵衛さんがすたすたとこちらへと歩み寄って来るではないか。まるで今まで動かはずがなかった地蔵が、突如として動き出したそんな光景に驚きと恐怖を禁じ得ない。身が竦んで、声も出せないその間に、半兵衛さんは私の元に来て、しゃがみ込む。まさか、揉むのか!?本当に!?困惑する私に伸ばされる両手は、胸、ではなく両肩へとそっと置かれた。目と鼻の先にある半兵衛さんの御尊顔。久々に拝むその顔は目元に薄っすらと隈が出来ていて、いつもよりも一層、顔色の悪さに拍車がかかっている。それでも、その瞳は確かに目の前の私の姿をとらえていた。
「名前。」
「は、はい。」
「君は誰にでもそんなことを言うのかい。」
「え。」
「不用意に体を触らせようとすることだよ。況してや胸だなんて。」
「い、いえ。言ったことないです。」
声を震わせながら答えると半兵衛さんは深い溜息を吐いた。本当に疲れているのだろう。それは、体の奥に溜まった毒が抜けていくような、重く沈んだ疲労の溜息だった。
「名前。君は仮にでも女なのだよ。」
「仮には余計です。」
「そう思うのなら、もっと自分を大切にしてくれ。君がそんな軽々しく振る舞う人じゃないのは知っているが、もしも、誰に対してもそんなはしたないこと言っているのだとしたら、考えただけで気が滅入るよ。頼むから僕に無駄な心配をかけるな。」
「…あの…何か、すみません…。」
あの半兵衛さんから至極真っ当な正論を言われて、思わず面を食らってしまい謝罪をする。休んでもらうつもりが、変に心配をかけてしまったようだし、何だか申し訳なくなってしまう。
「それで。どのくらいだい?」
「…どのくらいとは?」
「胸に触れる許容時間だよ。」
「………。」
「ちなみに直に触ってもいいのかな?」
「………。」
「無言は肯定と捉えるよ。ああ、それとも君も満更ではないのかな。」
「………。」
「それじゃあ、遠慮なく。そんなに緊張しなくとも、すべて僕に任せてくれればいいから。」
—————
「やれ、名前。」
「あ、大谷さん。」
「賢人に休息を与える責は果たせたか?」
「はい。献身的に接したら大人しく休んでくれましたよ。」
「ひひ、主の慎ましやかな胸を差し出せば、賢人とてあれよあれよと陥落よ。」
「大谷さんはもう少し発言に慎みを持った方がいいですよ。断じてそんなことしてないですからね。」
「やはり、案山子以下の能無しも、使い様によっては主の存在が存外、役に立つ。賢人のこととなれば殊更な。」
「何故、善意で働いた私は賞賛に擬態した慎みのない侮辱を浴びせられているのでしょうか。あ、しばらく半兵衛さんを起こさないで下さいね。死ぬほど疲れてるんで。」
「あい。わかった。」
MANA3/251001