末裔
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「僕は、何も怒ってるんじゃないんだ」
ただ本当のことを君の口から
聞きたいだけだよ、と
無表情でつぶらな瞳がこちらを真っ直ぐに刺す。
「そ、それは…」
ぐむむとことばを紡ぐ女性。
いくら大人のような物言いで話すとはいえ、
この少年とこの女性では、
お付き合いをしているとは思いもしないが
実のところ、そうなのである。
「君の弟なんだって?」
見かねた少年は、追い打ちをかけるように
一つまた付け加えた。
どうやら先程の怒っていないという言葉は、
もっぱらのウソのようだ。
彼女はこの少年を彼氏とは言わず、周りに
弟だと言っていたらしい。
どうもそれがどこかから聞いて、少年は
冗談じゃない、とこの現状である。
尚さら口をみっちりと結んでしまう彼女に、
腕組みをしながら ふぅ、とため息を吐く。
「それならそれで、いいじゃないか。」
「じゃあ姉さん、お達者で」
「まっ…」
待って、と素直に言えばいいものを、
それすら言えないほど悪いと思っているのなら、
今ここでごめんと一言言えるだろうに。
人間は、とくに女性というものは
難しいんだなと、どこか他人ごとのように達観しながら、
彼女を振り向いて。
「なんだい」
なんだか、こちらがいたたまれなくなって、
助け舟を出してやる。
「ごめんなざぁい」
今にもこぼれそうな、目にこれでもか、
と言うほど涙を溜めて、どうやら
舟に乗り込んだようだ。
思わず駆け寄って、もういいんだよと
抱きしめてやりたい気持ちをグッと抑える。
弟でも何でもない、この女の男として。
「…もう次はないよ」
「うっ…うん…」
えぐえぐと鼻水も涙も垂れだして、返事をする。
これだけ反省しているのだ。
もう水に流してやろう。
「帰ろうか」
「う゛ん…」
少年が伸ばした手に駆け出して、
ぎゅっと握りしめる。
はたと見るとこの少年とこの女性では、
お付き合いをしているとは思いもしないが
実のところ、そうなのである。