クパン
「シュアや〜」
自室で静かに本を読んでいると透き通る綺麗な高めの声に顔をあげた青年ジョシュア
先程名前を呼んだ声は母親のハニだろう
ジョシュアは母に呼ばれた要因を聞くべく読みかけのページに栞を挟み、机の上に置く
「オンマ、どうしたの?」
どうせいつものあれだ、大した用はないだろうとある程度の検討をつけつつも、そんなことを考えている事と微塵も感じさせないジェントルマン・ジョシュアは母に話を聞く
「顔が見たくなったから呼んだだけで要件は何もないよ〜
強いて言うなら、
可愛い可愛いシュアはヌグエギ?」
クパン家恒例の通称ヌグエギハラスメントが始まった
「ハニオンマのエギ〜」
うんざりするほど幼少期から言わされていたこの決まったセリフをにこやかに言いのける息子ジョシュア
この親にしてこの子ありとはよく言ったものだ
そして先程からこの光景を静かにソファーから見守っている
(いや隠せていると思っているようだが嫉妬が滲み出ている)ハニの夫、スンチョル
この3人がクパン一家である。
息子は思う、
実はオンマはアッパにやきもちを妬いて欲しくて僕にこんなやりとりをさせるのではないか、と
そしてその予想はあながち間違ってはいないのだ。
もちろん、ハニの愛息子であるジョシュアのことも大好きなことに違いはない。
のだが、結婚して何年経とうといたずらっ子精神が尽きないハニオンマはアッパの妬いてる顔が好きで好きで仕方がないだけだ。
高校生の息子がいてるとは思えない天真爛漫さ
そこがハニのいいところでもあるが、思春期の息子的にはもう少し落ち着いていてほしいと常々思っている
面倒はごめんなので敢えて言わないだけで、
現に今だって息子に嫉妬し、拗ねてしまった夫を慰める母を見ていて何も思わない訳がない
高校生にして気苦労が絶えないジョシュアの休日はいつも両親のいちゃいちゃに巻き込まれることから始まるのだ
…おまけ…
「スンチョラ〜?」
「……。」
いかにも拗ねてます、と言った夫の表情にしたり顔になるハニ
「もーシュアにも妬いちゃうの?」
にやけきってしまっている表情を管理もせず問いかける
「息子だろうと愛する妻がデレデレしてるのは見てて気分のいいものじゃないだろ、」
“あぁ、そうだよ!悪いか!?”といった逆ギレに近い反応を想定していたからか二の句が継げない状態に陥ったしまったハニを見て、今度はスンチョルがしたり顔になった
「ちょっと照れたの?」
正鵠を射られた様子を見て、嫉妬したことだけでなく、息子に妬いていると言う不甲斐なさに沈んでいた気持ちが晴れてきたようだ
そんな両親の様子を見て、しめたと言わんばかりに自室へ蜻蛉返りする息子を気にもとめず、いつもはできない反撃を楽しむスンチョルであった。
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