元JKの記憶喪失空っぽ夢主は、忍たま達に囲まれて生き延びたい
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朝の通学路、いつもの交差点。
制服姿の生徒達が、疎まばらに歩いている。コンビニに立ち寄り、ビニール袋を片手に持つ者、イヤホンを耳に差し込み、音楽の世界に没入する者、最近の流行について語る者。十人十色の朝が、当たり前の様に出迎えていた。
「おはよ、○○!」
とある女子生徒は、○○と呼ばれた少女の背中姿を見つけると、元気よく声を掛けた。その声に気がつき、後ろを振り向いた月夜は、声の主が自分のクラスメイトだと分かると、笑みを浮かべて、手を降る。
『おはよ!』
ワイシャツの上に、白の厚手ベストを重ねている。黒いスカートは校則通りの丈で、くるぶし丈の白い靴下、そして茶色いローファー。身だしなみのどこを切り取っても、普通に属している高校生の姿だ。
(今日もまた、いつもの日常が始まる)
心の中で、誰にも聞こえない独り言を呟いて、クラスメイトと昨夜、視聴した人気アイドルグループの配信について語らう。
名無し○○は、現代日本を生きる女子高生。
父親が積み上げた汗と努力の結晶である入学金を払い、制服に袖を通し、こうして日々の登下校を繰り返している。
朝、駅の改札を抜ければ、軽快にカードを鳴らしていく同年代の背中があり。ホームでは、眠気を隠すようにコーヒーを啜るスーツ姿の社会人たちと、スマホをいじる学生たちが並ぶ。あらゆる人々が、それぞれの一日を淡々と始めていた。
校門を潜れば、所属するクラスの扉の向こうに、名前を呼んでくれる友達がいる。朝の挨拶、昨日のドラマの話、好きなアイドルの動画の再生回数ーーーどれもが囁かで、取るに足らない話題だったが、心地良い。
自宅に帰れば、キッチンから漂う醤油の香り。炊きたての白米の湯気、夕食の味噌汁と共に、自分を出迎える母親の声が迎えてくれる。小さな温もりの集積が、○○の日常。
それは、特別ではない。だけど、決して当たり前ではない。だからこそ彼女は思っていた。自分は、どこにでもいる平均的な高校生なのだと。華やかすぎもせず、不幸すぎることもない。夢も希望も、囁かな不安も、全部まとめて普通という名の枠に収まる。
◇
ある日、○○の所属する学年にとって、毎年恒例の校外行事がやってきた。
それは、静岡の地で行われる半僧坊研修。写仏と座禅体験、由緒ある寺院の歴史や信仰を学ぶ、"心の修養”についての校外学習。
(歴史って、こ難しくて…、あんまり興味湧かないんだよねぇ)
前日のしおりを読みながら、○○は自室の机に突っ伏し、そうぼやいた。由緒正しい寺院の豪壮な景色に圧倒され、その畳の上で胡坐をかき、難しい話を一方的に聞かされる姿など、○○には苦痛で仕方ない。
(あー…、行く前から、もう帰りたい……)
とはいえ、参加は義務。校外学習用のジャージを入れた外泊用のボストンバックを持ち、いつもの制服を袖に通していた○○は、薄曇りの朝にバスへと乗り込む。
学校側が事前に連絡を取り合い、観光会社が手配した大型バスは、グレーの車体に青いラインが走る。内部は二列シートが向かい合い、荷物棚とTVモニターが取り付けられていた。
「山の中でお坊さんと座禅って、拷問じゃない?」
「いや、まじそれ。せめて昼ごはん美味しければいいけど〜」
前後の座席越しに、○○と仲の良いクラスメイトの会話が聞こえた。○○もそれに混ざり、同調して笑いのけた。ワイワイとお菓子の袋がカサカサ鳴る音、スマホを操作する指の動き、友達の笑い声。バスの中は、まるで校舎の延長線だ。
(このまま無難に終わって、早く家に帰りたい……)
出発からおよそ、一時間半が過ぎた頃だった。バスは、県境を越え、緩やかに蛇行する山道を登っていた。両脇には、しっとりとした杉林。道幅は狭く、ところどころ苔むした石垣が続く。対向車とすれ違う度に、車体が傾き、タイヤの軋む音が微かに聞こえる。
(バスの揺れで、眠いなぁ……もう寝ちゃおう……)
その時だった。睡魔に襲われ、車内で寝ようと思っていた○○の耳に、鈍い衝撃音が届いた。
それに続くかの様に、何かが崩れるような、割れるような異音が、車外から響いた。
(えっ? な、なに……?)
車内がざわつき、流石の○○も寝ている状況ではないと、顔を上げて、窓の外を見やった。
(はっ……??)
視界の隅には、茶色い土砂の塊が岩肌が剥き出しの斜面から、木々の隙間を通り、大量の土と石が波の様に迫る光景が広がっていたのだ。
月夜は目の前の光景に、理解が追いつかない。そうこうしている間に、巨大な岩石の一つが、バスの側面に衝突し、タイヤの破裂音が外から大きく聞こえてきた。
その衝撃と共にバスは大きく横滑りし、前のめりに傾いた。座席ベルトを締めていない生徒の一人が、前の席に顔面からぶつかり、数人の悲鳴が上げる。月夜の体も反射的に窓に手をついた。外の景色が、大地ではなく空に切り替わる。
(や、やばい……っ!!)
○○は、何かに縋るようにして、リュックサックを抱きかかえた。中に入っているのは、水筒、筆記用具、しおり、そしてーーー白いスマートフォン。
耳鳴りがして、肺の中から酸素が抜けていくような感覚。そうして○○の視界は、何も見えずに触れられない暗闇に沈んでいく。
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朝の通学路、いつもの交差点。
制服姿の生徒達が、疎まばらに歩いている。コンビニに立ち寄り、ビニール袋を片手に持つ者、イヤホンを耳に差し込み、音楽の世界に没入する者、最近の流行について語る者。十人十色の朝が、当たり前の様に出迎えていた。
「おはよ、○○!」
とある女子生徒は、○○と呼ばれた少女の背中姿を見つけると、元気よく声を掛けた。その声に気がつき、後ろを振り向いた月夜は、声の主が自分のクラスメイトだと分かると、笑みを浮かべて、手を降る。
『おはよ!』
ワイシャツの上に、白の厚手ベストを重ねている。黒いスカートは校則通りの丈で、くるぶし丈の白い靴下、そして茶色いローファー。身だしなみのどこを切り取っても、普通に属している高校生の姿だ。
(今日もまた、いつもの日常が始まる)
心の中で、誰にも聞こえない独り言を呟いて、クラスメイトと昨夜、視聴した人気アイドルグループの配信について語らう。
名無し○○は、現代日本を生きる女子高生。
父親が積み上げた汗と努力の結晶である入学金を払い、制服に袖を通し、こうして日々の登下校を繰り返している。
朝、駅の改札を抜ければ、軽快にカードを鳴らしていく同年代の背中があり。ホームでは、眠気を隠すようにコーヒーを啜るスーツ姿の社会人たちと、スマホをいじる学生たちが並ぶ。あらゆる人々が、それぞれの一日を淡々と始めていた。
校門を潜れば、所属するクラスの扉の向こうに、名前を呼んでくれる友達がいる。朝の挨拶、昨日のドラマの話、好きなアイドルの動画の再生回数ーーーどれもが囁かで、取るに足らない話題だったが、心地良い。
自宅に帰れば、キッチンから漂う醤油の香り。炊きたての白米の湯気、夕食の味噌汁と共に、自分を出迎える母親の声が迎えてくれる。小さな温もりの集積が、○○の日常。
それは、特別ではない。だけど、決して当たり前ではない。だからこそ彼女は思っていた。自分は、どこにでもいる平均的な高校生なのだと。華やかすぎもせず、不幸すぎることもない。夢も希望も、囁かな不安も、全部まとめて普通という名の枠に収まる。
◇
ある日、○○の所属する学年にとって、毎年恒例の校外行事がやってきた。
それは、静岡の地で行われる半僧坊研修。写仏と座禅体験、由緒ある寺院の歴史や信仰を学ぶ、"心の修養”についての校外学習。
(歴史って、こ難しくて…、あんまり興味湧かないんだよねぇ)
前日のしおりを読みながら、○○は自室の机に突っ伏し、そうぼやいた。由緒正しい寺院の豪壮な景色に圧倒され、その畳の上で胡坐をかき、難しい話を一方的に聞かされる姿など、○○には苦痛で仕方ない。
(あー…、行く前から、もう帰りたい……)
とはいえ、参加は義務。校外学習用のジャージを入れた外泊用のボストンバックを持ち、いつもの制服を袖に通していた○○は、薄曇りの朝にバスへと乗り込む。
学校側が事前に連絡を取り合い、観光会社が手配した大型バスは、グレーの車体に青いラインが走る。内部は二列シートが向かい合い、荷物棚とTVモニターが取り付けられていた。
「山の中でお坊さんと座禅って、拷問じゃない?」
「いや、まじそれ。せめて昼ごはん美味しければいいけど〜」
前後の座席越しに、○○と仲の良いクラスメイトの会話が聞こえた。○○もそれに混ざり、同調して笑いのけた。ワイワイとお菓子の袋がカサカサ鳴る音、スマホを操作する指の動き、友達の笑い声。バスの中は、まるで校舎の延長線だ。
(このまま無難に終わって、早く家に帰りたい……)
出発からおよそ、一時間半が過ぎた頃だった。バスは、県境を越え、緩やかに蛇行する山道を登っていた。両脇には、しっとりとした杉林。道幅は狭く、ところどころ苔むした石垣が続く。対向車とすれ違う度に、車体が傾き、タイヤの軋む音が微かに聞こえる。
(バスの揺れで、眠いなぁ……もう寝ちゃおう……)
その時だった。睡魔に襲われ、車内で寝ようと思っていた○○の耳に、鈍い衝撃音が届いた。
それに続くかの様に、何かが崩れるような、割れるような異音が、車外から響いた。
(えっ? な、なに……?)
車内がざわつき、流石の○○も寝ている状況ではないと、顔を上げて、窓の外を見やった。
(はっ……??)
視界の隅には、茶色い土砂の塊が岩肌が剥き出しの斜面から、木々の隙間を通り、大量の土と石が波の様に迫る光景が広がっていたのだ。
月夜は目の前の光景に、理解が追いつかない。そうこうしている間に、巨大な岩石の一つが、バスの側面に衝突し、タイヤの破裂音が外から大きく聞こえてきた。
その衝撃と共にバスは大きく横滑りし、前のめりに傾いた。座席ベルトを締めていない生徒の一人が、前の席に顔面からぶつかり、数人の悲鳴が上げる。月夜の体も反射的に窓に手をついた。外の景色が、大地ではなく空に切り替わる。
(や、やばい……っ!!)
○○は、何かに縋るようにして、リュックサックを抱きかかえた。中に入っているのは、水筒、筆記用具、しおり、そしてーーー白いスマートフォン。
耳鳴りがして、肺の中から酸素が抜けていくような感覚。そうして○○の視界は、何も見えずに触れられない暗闇に沈んでいく。
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