元JKの記憶喪失空っぽ夢主は、忍たま達に囲まれて生き延びたい
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数日が経過して、わたしは学園長先生の庵ではなく、学園内に設けられた女子専用の長屋へと案内された。その一室の片隅にて、板張りの床の上に敷かれた薄手の敷布の上で、静かに腰を下ろしている。
(わたしが、ここで倒れていた時に残っていた物……、)
膝元にて抱えていた、"りゅっくさっく"。右手に持っている、"すまあとほん"。どちらの名称も、何故か自然に頭に浮かぶのに、どこか音が歪んでいる気がしてならない。
(それに、わたしのこの服装……、他の人達と違う…らしい……)
この学び舎に通う子供たちーーー通称、忍たま(女子の場合、くのたま)と呼ばれる生徒達、勉学や忍術を教える教員達は、忍装束と呼ばれる服を纏っている。頭巾に長袖、上下がひとつながりの柔軟な衣服。それぞれ学年に応じた色で統一され、目にも鮮やか。
対して、わたしの服は上下の衣服が切り離された異形の形。脚絆と呼ばれる履物とは、かけ離れ、どことなく硬さを感じる茶色の履物。今は履いていないけれど、どこか窮屈で、室内の木の床には不釣り合いに思えた。
(あの黒い服を着るのは…何かちょっと……、この上下の切り離された服が忍装束ですって、言い聞かせるのは駄目なのかなぁ)
そう思った時、右手に持っていた"すまあとほん"が、小刻みに震え出し、思わず手を放す。"すまあとほん"が床に落ちると、木材の軋む音を立て、今も尚、震えは止まらない。
そして次の瞬間、わたしの目の前にーーー今、自分が着ている服とそっくりな黒い衣服が、空気を割くようにして現れたのだ。
(えっ……??)
形も質感も、今の衣服に限りなく近く、それでもこの学園で支給される忍装束に馴染む様な気がした。不可解さを感じて息を呑みながら、"すまあとほん"をそっと拾い上げた。先程までの震えは無くなり、掌の上で沈黙していた。
(これ…着ても大丈夫だよね……?)
恐る恐る、新しく現れた衣に手を伸ばす。黒く、柔らかな生地。ゆっくりと袖を通すと、冷えた肌を包むように温かく、ほっとする。
上の服を脱いで、黒色の厚みのある服を着て、着心地は問題ない。次に下の服を脱いで、おもむろに履いていくと、肌色を晒していた太腿やくるぶしに、黒色の布(後の時代のタイツ)が一瞬にして現れた。下の服を脱ぐと、同じ様に黒色の布も消えたので、寒い風に晒された肌が耐えられる様にと配慮された、防寒対策だ。
その時だった。引き戸の向こうから、戸をこんこんと優しく叩かれ、誰か来たのだと分かった。
「○○さん。制服の採寸を行うのだけれど、入っても宜しいかしら?」
山本シナ先生と呼ばれた人だ。わたしを学園長先生の庵から、この長屋の一室へと案内してくれた女性で、綺麗な人だと一番最初に思った。
『は、はい…、どうぞ』
引き戸を開けても良いと話してから、わたしは自分の服装を思い出した。"すまあとほん"が出してくれた服を見たら、シナ先生はどう思うんだろう。それでも、シナ先生がそんな事を知っている訳もなく、引き戸が開かれて、お天道様の光がふわりと部屋に差し込む。
「……あら、」
『あ、あの…シナせんせーーー』
「御免なさい。ひょっとして、採寸はもう終えられていたのかしら? 私ったら、珍しくうっかりしていたみたい」
シナ先生の放った言葉から、咎めや驚きはなかった。代わりに、珍しくヘマをしたと話しており、今の自分の服装が"採寸合わせを終えて、出来上がった忍装束"と捉えたそうだ。わたしは話を合わせるべく、小さく頷いて見せた。
「採寸合わせが終わったのなら、この学園での過ごし方について教えられそうね」
先程の出来事を気にする様子も見せず、どこからともなく、シナ先生の手元にこの学園で使用する教材等が現れた。そこから、わたしはこの学園での過ごし方について、シナ先生から直々に教わる事となる。薄暗い長屋の一室が、まるで陽だまりの中に浮かぶ教室のように、ふわりと温もりに包まれていく。
「それじゃあ、まずは学園の一日の流れから説明するわ。朝は早くて厳しいけれど、慣れてしまえば大丈夫よ」
そう言って、シナ先生は巻物を手に取り、指で示しながら語り始めた。その声色は落ち着いていて、どこか優しく寄り添ってくれるように。
(……ここで、ちゃんとやっていけるかもしれない)
自分がどこから来たのか、どうして学園長先生の庵前で倒れていたのか、何の為に"りゅっくさっく"と、"すまあとほん"が残されていたのか、今のわたしには分からない。けれど、ほんの少しだけ、未来に向かって歩く準備が整ったような気がした。
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数日が経過して、わたしは学園長先生の庵ではなく、学園内に設けられた女子専用の長屋へと案内された。その一室の片隅にて、板張りの床の上に敷かれた薄手の敷布の上で、静かに腰を下ろしている。
(わたしが、ここで倒れていた時に残っていた物……、)
膝元にて抱えていた、"りゅっくさっく"。右手に持っている、"すまあとほん"。どちらの名称も、何故か自然に頭に浮かぶのに、どこか音が歪んでいる気がしてならない。
(それに、わたしのこの服装……、他の人達と違う…らしい……)
この学び舎に通う子供たちーーー通称、忍たま(女子の場合、くのたま)と呼ばれる生徒達、勉学や忍術を教える教員達は、忍装束と呼ばれる服を纏っている。頭巾に長袖、上下がひとつながりの柔軟な衣服。それぞれ学年に応じた色で統一され、目にも鮮やか。
対して、わたしの服は上下の衣服が切り離された異形の形。脚絆と呼ばれる履物とは、かけ離れ、どことなく硬さを感じる茶色の履物。今は履いていないけれど、どこか窮屈で、室内の木の床には不釣り合いに思えた。
(あの黒い服を着るのは…何かちょっと……、この上下の切り離された服が忍装束ですって、言い聞かせるのは駄目なのかなぁ)
そう思った時、右手に持っていた"すまあとほん"が、小刻みに震え出し、思わず手を放す。"すまあとほん"が床に落ちると、木材の軋む音を立て、今も尚、震えは止まらない。
そして次の瞬間、わたしの目の前にーーー今、自分が着ている服とそっくりな黒い衣服が、空気を割くようにして現れたのだ。
(えっ……??)
形も質感も、今の衣服に限りなく近く、それでもこの学園で支給される忍装束に馴染む様な気がした。不可解さを感じて息を呑みながら、"すまあとほん"をそっと拾い上げた。先程までの震えは無くなり、掌の上で沈黙していた。
(これ…着ても大丈夫だよね……?)
恐る恐る、新しく現れた衣に手を伸ばす。黒く、柔らかな生地。ゆっくりと袖を通すと、冷えた肌を包むように温かく、ほっとする。
上の服を脱いで、黒色の厚みのある服を着て、着心地は問題ない。次に下の服を脱いで、おもむろに履いていくと、肌色を晒していた太腿やくるぶしに、黒色の布(後の時代のタイツ)が一瞬にして現れた。下の服を脱ぐと、同じ様に黒色の布も消えたので、寒い風に晒された肌が耐えられる様にと配慮された、防寒対策だ。
その時だった。引き戸の向こうから、戸をこんこんと優しく叩かれ、誰か来たのだと分かった。
「○○さん。制服の採寸を行うのだけれど、入っても宜しいかしら?」
山本シナ先生と呼ばれた人だ。わたしを学園長先生の庵から、この長屋の一室へと案内してくれた女性で、綺麗な人だと一番最初に思った。
『は、はい…、どうぞ』
引き戸を開けても良いと話してから、わたしは自分の服装を思い出した。"すまあとほん"が出してくれた服を見たら、シナ先生はどう思うんだろう。それでも、シナ先生がそんな事を知っている訳もなく、引き戸が開かれて、お天道様の光がふわりと部屋に差し込む。
「……あら、」
『あ、あの…シナせんせーーー』
「御免なさい。ひょっとして、採寸はもう終えられていたのかしら? 私ったら、珍しくうっかりしていたみたい」
シナ先生の放った言葉から、咎めや驚きはなかった。代わりに、珍しくヘマをしたと話しており、今の自分の服装が"採寸合わせを終えて、出来上がった忍装束"と捉えたそうだ。わたしは話を合わせるべく、小さく頷いて見せた。
「採寸合わせが終わったのなら、この学園での過ごし方について教えられそうね」
先程の出来事を気にする様子も見せず、どこからともなく、シナ先生の手元にこの学園で使用する教材等が現れた。そこから、わたしはこの学園での過ごし方について、シナ先生から直々に教わる事となる。薄暗い長屋の一室が、まるで陽だまりの中に浮かぶ教室のように、ふわりと温もりに包まれていく。
「それじゃあ、まずは学園の一日の流れから説明するわ。朝は早くて厳しいけれど、慣れてしまえば大丈夫よ」
そう言って、シナ先生は巻物を手に取り、指で示しながら語り始めた。その声色は落ち着いていて、どこか優しく寄り添ってくれるように。
(……ここで、ちゃんとやっていけるかもしれない)
自分がどこから来たのか、どうして学園長先生の庵前で倒れていたのか、何の為に"りゅっくさっく"と、"すまあとほん"が残されていたのか、今のわたしには分からない。けれど、ほんの少しだけ、未来に向かって歩く準備が整ったような気がした。
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