青い春の思ひ出
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(おかしい。い組の立花仙蔵だって、擦り傷や切り傷が多い筈なのに。)
今日も今日とて、木登りの特訓をして怪我を負った百地は医務室にて、傷の処置を施してもらった。
だが、目の前で頬を赤く染めて、両目からボロボロと大きな涙を零す伊作と対面して、百地は呆然とするしかない。
「せっかく傷が塞がって、瘡蓋 になっていた所もまた皮が剥けて……いくら元気があっても、限度があるよ!!」
伊作自身も、声のボリュームに驚くと口を閉じた。それでも涙が収まる所を知らず、上級生の保健委員長が伊作を宥める。
(あぁ____、このムズムズする感じ、妹を宥める時と全く同じ感覚だ)
様々な要因で悔しさや悲しさを堪えきれず、大きな声を上げて泣き出す妹が百地の脳裏を過る。
伊作が泣き出した原因が自分であると分かるも、既に遅い。伊作と顔見知りの上級生が多い医務室において、百地の味方は居ないも同然。上級生に注意されて、木登りの特訓を中止させられるのか_____、そこまで考えた時だった。
「悪いな、蓬川。善法寺は毎日、怪我をして医務室に来るお前の事を心配していたんだ」
想定した物とは程遠い言葉が飛ばされ、百地は目を丸くさせる。
「鍛錬をして出来た傷だとは思うが、今回は大目玉を食らっても仕方ないな。頭と両手に包帯を巻いて、目には痣も出来ている……毎日、お前の事を心配している中で、そんな姿を見せられたら、温厚な善法寺も怒ってしまうよ」
百地が怪我をした箇所をつらつらと述べて、先程よりは涙が収まった伊作に、保健委員長は視線を送る。
「善法寺。無理そうなら、私が___、」
「いえ……最後まで、怪我の処置をするのが保健委員の役目です! 投げ出すなんて、絶対にしません!」
そこまで言い切った伊作を見て、保健委員長は百地の処置を引き続き、伊作に任せる事を伝える。保健委員長が持ち場へ戻ると、伊作は百地の顔を見た。
「百地は毎日、何をしているの? もしかして、ろ組の誰かから変な事をされて____、」
『それは違う。俺に嫌がらせ等してくる奴は居ない』
伊作は、百地が所属する一年ろ組で虐めや嫌がらせが横行しているのかと先走るも、百地本人が即座に否定する。
『俺の中で頑張りたい事が出来たから、それをやり遂げる為に怪我を負ってしまってるんだ』
「頑張りたい事?」
木登りの特訓に励んでいる事を伝えると、伊作はポカンと口を開けて、呆気に取られている様を見せる。
『同室が頑張っている中で、俺は何も頑張れていない事に気づいてしまって』
鍛練に励む長次、本人も知らぬ内に体力作りに励む小平太の二人に百地は焦っていた。二人に置いていかれない様、無茶な目標を設定していたのだ。百地は体だけでなく、心までもがボロボロになりかけている事に伊作は気がついた。
「僕、昔から周りの人が驚く程に不運なんだ」
ポツリと自分の身の上話を始める伊作に、百地は視線を向けた。
「何も無い所で転んで、落とし穴に落ちて、物が当たって、晴れの日でも雨になったりして……昔から生傷が絶えなかった」
アハハ…、と、困った様な笑みを見せる。伊作本人は、自分の不運に巻き込まれた他者が、自分から離れてしまうデメリットすらも幼いながらに受け止めているのだ。
「そんな不運な僕でも、なりたい物があってね……将来は瘡蓋 になりたいんだ」
突然の告白に、百地は眉間に皺を寄せた。忍者ではなく、瘡蓋 なのかと疑問を抱くも、伊作の話は続く。
「瘡蓋 って、怪我の治りかけに出来る物でしょ? 瘡蓋 が出来て、"良かったね"って言葉を送られるのが僕は好きなんだ。"良かった"って、素敵な言葉なんだよ」
今度は、パッと明るい笑顔が咲き誇る。
伊作の発言は____、忍者として生き、戦にて散った兄の生前の教えと繋がっていると百地は思った。
『俺は、"ごめんなさい"、"ありがとう"という言葉が好きだ』
忍者として生きた百地の兄は仕事柄、実家に帰省する機会が少なかった。仮に帰省したとしても、迂闊に仕事の話を出す事も出来ず、提供出来る話題も少なかった。その代わりとして、下の兄弟である百地達に言葉の大切さを説いた。
『言葉は使い方によって、武器にもなる。過ちを犯してしまった時、誰かに助けて貰ったり自分が助けた時に……言わないで後悔する前に、自分の気持ちがしっかり届く様に、俺はその言葉は必ず言うんだ』
最後まで言い終えてから、百地は腰を上げて正座をする。両手を床に付け、伊作に向けて深々と頭を下げていく。正に、土下座の姿勢だ。
『伊作。お前を泣かせてしまって、ごめんなさい』
そんなっ、頭なんて下げないでよ。
その言葉を発そうとした伊作であったが、百地なりに誠意を込めて、謝罪しているのだと解釈すると、言葉を飲み込む。
「顔を上げて」
声色は、とても穏やかな物であった。
伊作にそう言われ、百地は土下座の姿勢を止めて、下げていた頭をゆっくりと上げていく。
「百地、これは忘れないで。キミの事を見てくれている人は、ちゃんと居るからね」
それは今の百地にとって、救いの言葉とも取れる。
焦燥感から無茶な目標を立て、どれだけ挑んでも手の届く事が出来ないもどかしさに襲われる。次第に、その手を伸ばす事すら出来なくなる程、精神的に疲弊していた。たった一言でも自分を肯定する言葉が、百地は堪らなく嬉しい。
「一年ろ組の七松小平太です」
「同じく、中在家長次です」
その時____、聞き馴染みのある二つの声が聞こえた。
百地と伊作は、互いの事で周りが見えなくなっていたせいで、障子戸の開ける音にも気がつけていない。
「あの……こちらに、一年ろ組の蓬川百地は来られていますか?」
恐る恐るといった様子で、長次が上級生の保健委員に声を掛けた。持ち場に居た保健委員長は、百地と伊作の居た場所を指す。
長次と小平太と目が合った。
そう思った瞬間、百地の目には、飛びついてきた長次が映された。
「百地! 無理しないでって、言ったのに! 私、凄く心配して……っ!!」
怪我だらけとなり、包帯が巻かれていた百地を見た長次は、先程の伊作の様にボロボロと涙を零す。ずびっ…、と、鼻水を啜 る音も一緒に聞こえてくる。
百地が長次に声を掛けようとするも、小平太の手のひらで両頬を同時に叩かれ、乾いた音がした。
「百地の阿呆! 泣いてる長次の代わりに、私が怒ってやる!」
手のひらで頬を押されている百地は、話す事も出来ずにいる。眉を潜めて、百地を睨みつける小平太であったが、目尻には涙の粒が溜まっている。
『ふ、ふはひほお、ほひふへっへ(ふ、ふたりとも、おちつけって)』
「落ち着けだって? 落ち着けなかったから、私と長次が百地の所に来たんだ! そんなに怪我するなら、明日からもっと沢山遊んで、強くなろう!」
小平太の気迫に気圧され、百地は口を開けなくなる。長次と小平太の二人分の体重が掛かると、百地は耐えられずに後方に倒れていく。
「へっ?」と伊作の声が聞こえるも、三人に潰されてしまい、姿が見えなくなった。
「誰か下敷きになってるぞ」
下敷きにされた伊作に気がついた小平太だが、キョトンとした表情をするだけで、その場から退きはしない。
「不運が発動しちゃった〜……」
三人分の体重が伸し掛り、伊作は涙目になりながら自分の不運を憂 うのであった。
・
伊作は今日も医務室にて、怪我をした生徒達の怪我の処置を施す。誰彼構わず手当をしてしまうお人好しな伊作にとって、保健委員会の仕事は、天職そのものとも言える。
「いけいけどんどーん!」
障子戸の向こうから、小平太の元気な声が聞こえてきた。百地の同室であると分かり、伊作は障子戸を開けて、部屋の外に出る。
『小平太、相変わらず速いな……』
「これじゃ、またすぐに捕まっちゃうね……」
額から汗を垂らし、疲れきった様子の百地と長次が走っていた。何事かと思った伊作であったが、二人の背後から迫ってくる小平太を視界に捉え、察したのだ。
「にゃはははは! 私の体力は、有り余っているんだ! またすぐに捕まるなんてつまらぬ事、してくれるなよ?」
笑顔を浮かべながら、汗ひとつかいていない鬼役の小平太。捕まらない様にと必死に逃げている百地と長次。
伊作以外の下級生は、その光景を見るとギョッとした顔を見せる。それに対して、上級生は微笑ましく眺めていたりと、対称的だった。
"そんなに怪我するなら、明日からもっと沢山遊んで、強くなろう!"
昨日、小平太が百地に向けて放った言葉を伊作は思い出す。ここ最近の動向を振り返るなら、百地は木登り特訓をしている筈だ。けれど、今日は小平太の遊びに付き合い、鬼ごっこを繰り広げている。
あれから、今現在の百地の能力で、木登りを達成する事は難しいと小平太に断言された。まずは、基礎体力を身につける事を小さな目標として設定する。木登り達成は、大きな目標に切り替えれば良いと長次から提案を受けた。
怪我ばかりで授業に支障が出ては、何の為に忍術学園に入学したのかと思った百地は、長次の提案に乗ったのだ。
(百地……、キミの事をしっかり見てくれる人は、すく近くに居たじゃない)
僕達はまだ、忍たまの成り立てなんだよ。ボロボロになった心のままじゃ、いつか本当に壊れちゃう時が来るから。キミの事を見てくれる同室を大事にして、いつか立派な忍者になろうね。
伊作は、百地に対しての言葉を心中に留めた。保健委員長から呼ばれた伊作は、障子戸を閉める。小平太の笑い声が聞こえてくると、伊作もつられてクスッと笑う。
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(おかしい。い組の立花仙蔵だって、擦り傷や切り傷が多い筈なのに。)
今日も今日とて、木登りの特訓をして怪我を負った百地は医務室にて、傷の処置を施してもらった。
だが、目の前で頬を赤く染めて、両目からボロボロと大きな涙を零す伊作と対面して、百地は呆然とするしかない。
「せっかく傷が塞がって、
伊作自身も、声のボリュームに驚くと口を閉じた。それでも涙が収まる所を知らず、上級生の保健委員長が伊作を宥める。
(あぁ____、このムズムズする感じ、妹を宥める時と全く同じ感覚だ)
様々な要因で悔しさや悲しさを堪えきれず、大きな声を上げて泣き出す妹が百地の脳裏を過る。
伊作が泣き出した原因が自分であると分かるも、既に遅い。伊作と顔見知りの上級生が多い医務室において、百地の味方は居ないも同然。上級生に注意されて、木登りの特訓を中止させられるのか_____、そこまで考えた時だった。
「悪いな、蓬川。善法寺は毎日、怪我をして医務室に来るお前の事を心配していたんだ」
想定した物とは程遠い言葉が飛ばされ、百地は目を丸くさせる。
「鍛錬をして出来た傷だとは思うが、今回は大目玉を食らっても仕方ないな。頭と両手に包帯を巻いて、目には痣も出来ている……毎日、お前の事を心配している中で、そんな姿を見せられたら、温厚な善法寺も怒ってしまうよ」
百地が怪我をした箇所をつらつらと述べて、先程よりは涙が収まった伊作に、保健委員長は視線を送る。
「善法寺。無理そうなら、私が___、」
「いえ……最後まで、怪我の処置をするのが保健委員の役目です! 投げ出すなんて、絶対にしません!」
そこまで言い切った伊作を見て、保健委員長は百地の処置を引き続き、伊作に任せる事を伝える。保健委員長が持ち場へ戻ると、伊作は百地の顔を見た。
「百地は毎日、何をしているの? もしかして、ろ組の誰かから変な事をされて____、」
『それは違う。俺に嫌がらせ等してくる奴は居ない』
伊作は、百地が所属する一年ろ組で虐めや嫌がらせが横行しているのかと先走るも、百地本人が即座に否定する。
『俺の中で頑張りたい事が出来たから、それをやり遂げる為に怪我を負ってしまってるんだ』
「頑張りたい事?」
木登りの特訓に励んでいる事を伝えると、伊作はポカンと口を開けて、呆気に取られている様を見せる。
『同室が頑張っている中で、俺は何も頑張れていない事に気づいてしまって』
鍛練に励む長次、本人も知らぬ内に体力作りに励む小平太の二人に百地は焦っていた。二人に置いていかれない様、無茶な目標を設定していたのだ。百地は体だけでなく、心までもがボロボロになりかけている事に伊作は気がついた。
「僕、昔から周りの人が驚く程に不運なんだ」
ポツリと自分の身の上話を始める伊作に、百地は視線を向けた。
「何も無い所で転んで、落とし穴に落ちて、物が当たって、晴れの日でも雨になったりして……昔から生傷が絶えなかった」
アハハ…、と、困った様な笑みを見せる。伊作本人は、自分の不運に巻き込まれた他者が、自分から離れてしまうデメリットすらも幼いながらに受け止めているのだ。
「そんな不運な僕でも、なりたい物があってね……将来は
突然の告白に、百地は眉間に皺を寄せた。忍者ではなく、
「
今度は、パッと明るい笑顔が咲き誇る。
伊作の発言は____、忍者として生き、戦にて散った兄の生前の教えと繋がっていると百地は思った。
『俺は、"ごめんなさい"、"ありがとう"という言葉が好きだ』
忍者として生きた百地の兄は仕事柄、実家に帰省する機会が少なかった。仮に帰省したとしても、迂闊に仕事の話を出す事も出来ず、提供出来る話題も少なかった。その代わりとして、下の兄弟である百地達に言葉の大切さを説いた。
『言葉は使い方によって、武器にもなる。過ちを犯してしまった時、誰かに助けて貰ったり自分が助けた時に……言わないで後悔する前に、自分の気持ちがしっかり届く様に、俺はその言葉は必ず言うんだ』
最後まで言い終えてから、百地は腰を上げて正座をする。両手を床に付け、伊作に向けて深々と頭を下げていく。正に、土下座の姿勢だ。
『伊作。お前を泣かせてしまって、ごめんなさい』
そんなっ、頭なんて下げないでよ。
その言葉を発そうとした伊作であったが、百地なりに誠意を込めて、謝罪しているのだと解釈すると、言葉を飲み込む。
「顔を上げて」
声色は、とても穏やかな物であった。
伊作にそう言われ、百地は土下座の姿勢を止めて、下げていた頭をゆっくりと上げていく。
「百地、これは忘れないで。キミの事を見てくれている人は、ちゃんと居るからね」
それは今の百地にとって、救いの言葉とも取れる。
焦燥感から無茶な目標を立て、どれだけ挑んでも手の届く事が出来ないもどかしさに襲われる。次第に、その手を伸ばす事すら出来なくなる程、精神的に疲弊していた。たった一言でも自分を肯定する言葉が、百地は堪らなく嬉しい。
「一年ろ組の七松小平太です」
「同じく、中在家長次です」
その時____、聞き馴染みのある二つの声が聞こえた。
百地と伊作は、互いの事で周りが見えなくなっていたせいで、障子戸の開ける音にも気がつけていない。
「あの……こちらに、一年ろ組の蓬川百地は来られていますか?」
恐る恐るといった様子で、長次が上級生の保健委員に声を掛けた。持ち場に居た保健委員長は、百地と伊作の居た場所を指す。
長次と小平太と目が合った。
そう思った瞬間、百地の目には、飛びついてきた長次が映された。
「百地! 無理しないでって、言ったのに! 私、凄く心配して……っ!!」
怪我だらけとなり、包帯が巻かれていた百地を見た長次は、先程の伊作の様にボロボロと涙を零す。ずびっ…、と、鼻水を
百地が長次に声を掛けようとするも、小平太の手のひらで両頬を同時に叩かれ、乾いた音がした。
「百地の阿呆! 泣いてる長次の代わりに、私が怒ってやる!」
手のひらで頬を押されている百地は、話す事も出来ずにいる。眉を潜めて、百地を睨みつける小平太であったが、目尻には涙の粒が溜まっている。
『ふ、ふはひほお、ほひふへっへ(ふ、ふたりとも、おちつけって)』
「落ち着けだって? 落ち着けなかったから、私と長次が百地の所に来たんだ! そんなに怪我するなら、明日からもっと沢山遊んで、強くなろう!」
小平太の気迫に気圧され、百地は口を開けなくなる。長次と小平太の二人分の体重が掛かると、百地は耐えられずに後方に倒れていく。
「へっ?」と伊作の声が聞こえるも、三人に潰されてしまい、姿が見えなくなった。
「誰か下敷きになってるぞ」
下敷きにされた伊作に気がついた小平太だが、キョトンとした表情をするだけで、その場から退きはしない。
「不運が発動しちゃった〜……」
三人分の体重が伸し掛り、伊作は涙目になりながら自分の不運を
・
伊作は今日も医務室にて、怪我をした生徒達の怪我の処置を施す。誰彼構わず手当をしてしまうお人好しな伊作にとって、保健委員会の仕事は、天職そのものとも言える。
「いけいけどんどーん!」
障子戸の向こうから、小平太の元気な声が聞こえてきた。百地の同室であると分かり、伊作は障子戸を開けて、部屋の外に出る。
『小平太、相変わらず速いな……』
「これじゃ、またすぐに捕まっちゃうね……」
額から汗を垂らし、疲れきった様子の百地と長次が走っていた。何事かと思った伊作であったが、二人の背後から迫ってくる小平太を視界に捉え、察したのだ。
「にゃはははは! 私の体力は、有り余っているんだ! またすぐに捕まるなんてつまらぬ事、してくれるなよ?」
笑顔を浮かべながら、汗ひとつかいていない鬼役の小平太。捕まらない様にと必死に逃げている百地と長次。
伊作以外の下級生は、その光景を見るとギョッとした顔を見せる。それに対して、上級生は微笑ましく眺めていたりと、対称的だった。
"そんなに怪我するなら、明日からもっと沢山遊んで、強くなろう!"
昨日、小平太が百地に向けて放った言葉を伊作は思い出す。ここ最近の動向を振り返るなら、百地は木登り特訓をしている筈だ。けれど、今日は小平太の遊びに付き合い、鬼ごっこを繰り広げている。
あれから、今現在の百地の能力で、木登りを達成する事は難しいと小平太に断言された。まずは、基礎体力を身につける事を小さな目標として設定する。木登り達成は、大きな目標に切り替えれば良いと長次から提案を受けた。
怪我ばかりで授業に支障が出ては、何の為に忍術学園に入学したのかと思った百地は、長次の提案に乗ったのだ。
(百地……、キミの事をしっかり見てくれる人は、すく近くに居たじゃない)
僕達はまだ、忍たまの成り立てなんだよ。ボロボロになった心のままじゃ、いつか本当に壊れちゃう時が来るから。キミの事を見てくれる同室を大事にして、いつか立派な忍者になろうね。
伊作は、百地に対しての言葉を心中に留めた。保健委員長から呼ばれた伊作は、障子戸を閉める。小平太の笑い声が聞こえてくると、伊作もつられてクスッと笑う。
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