短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
.
羽丹羽石人×夢主
最上級生で、所属する委員会 委員長を務める○○が気になった羽丹羽石人と夢主が過ごす、とある一日の話。
・
「新しく、火薬委員会に入りました。二年は組の羽丹羽石人です。どうぞ宜しくお願いします」
名無し ○○と羽丹羽の落ち着いた環境下での顔合わせは、知らぬ内にいつの間にか所属していた自身が委員長を務める、火薬委員会の活動内であった。
◇
羽丹羽が二つ返事で、火薬委員会に加入決定した現場に○○は居なかった。
理由は、六年生全員参加の野外実習に赴いていたからだ。
後に事情を知った○○が、笑顔で『火薬委員、ゲット♡』等とぬかした日には、委員長代理を除き、それぞれの委員会 委員長を務める六年生全員から、追いかけ回されたのは記憶に新しい。
しかし、どんなに得意武器を振り回そうが、飛ばそうが、俊敏さが取り柄の○○に追いつく事など、誰も出来やしない。
強いて言えば、○○の体力が落ちた所で、同じ六年ろ組の七松小平太が追いつくのであろう。
そんな渦中の関連人物とも言えよう羽丹羽が今、自分を見て煌々と目を輝かせている。
「最上級生である名無し先輩の事を、もっと教えて頂けないでしょうか?」
この発言をした時の羽丹羽は、面倒な人物になると一年は組のお騒がせ三人組である猪名寺乱太郎、摂津のきり丸、福富しんべヱから○○は聞かされていた。
以前、羽丹羽は学園長の大川平次渦正、二年い組実技担当教師の野村雄三の二人に情景の念を抱いたものの、一瞬にして散ったという。
乱きりしんは、○○と羽丹羽が同じ委員会に属しているからと、いつか厄介な事に巻き込まれると最上級生相手にお節介を発動したのだ。
それでも、当の○○は『そっか』とだけ返事をし、涼しい顔をしていたと、乱きりしんは語る。
『石人』
○○は、羽丹羽の下の名を呼ぶ。
早速、自分の素性を明かしてくれるのだろうかと心待ちにしている羽丹羽を他所に、○○は口を開く。
『腹が空いたから、まず食堂でおばちゃん特製の美味しいお昼を一緒に食べよう』
その言葉を聞いた羽丹羽の口から、「へっ?」とまだ声変わりを迎えていない、少年の甲高い間抜けな声が聞こえた。
○○とは羽丹羽が食堂へ到着した頃、既に他学年の忍たまで溢れていた。
はぐれない様にと、○○は羽丹羽に気を配りながら、本日の献立を記された貼り紙に目を通す。
『おっ。今日は、Aランチが美味しそうだ』
嬉々として、○○はそのような言葉を発した。
羽丹羽も遅れて目を通すと、そこには主食・副食・汁物・和え物が簡潔に書かれており、○○と同じAランチを選ぼうと即座に決める。
二人は列を並び、受け渡し台の前まで人が捌かれると、それぞれ同じAランチが乗せられた盆を受け取り、空いている席へと腰掛けた。
いただきますと、同時に、食前の挨拶を口にすると、○○と羽丹羽は昼食を食べ始めていく。
(名無し先輩と昼食を取るのは、初めてだけど……これが名無し先輩を知る事と一体、どんな関係が……)
白米を口にした羽丹羽は、もぐもぐと咀嚼しながら、隣で姿勢正しく、汁物を啜る○○をチラッと横目で見た。
『石人、美味しい?』
「はい。食堂のおばちゃんが作るご飯は、どれも絶品です」
『そうだろ。おばちゃん手作り特製弁当も、これまた美味なんだ。今度、委員会活動でピクニックを計画して、食べる機会でも作ろうか』
主食は何か、副食は色とりどりであった等と、具体的な説明はされていない。
それでも、自身が絶品と評価するおばちゃんの料理、それも手作りである特製弁当を想像し、羽丹羽はたった今、昼食を食べている筈が更に食欲が刺激されていく。
そこから、○○と羽丹羽は他愛ない会話を繰り広げただけだ。
何が好きで、何が嫌いか、最近楽しかった事等と、日常の何気ない一部分を切り取ったような。
昼食を食べ、○○と羽丹羽は食堂を後にしていく。
腹ごしらえを終え、これから鍛錬に励むのか、忍術の勉学に勤しむのかと想像を膨らます羽丹羽だが、○○はまたしても期待を裏切る。
『散歩しよう』
本日二度目の、甲高い間抜けな声が○○の真横から聞こえたのだった。
羽丹羽が呆気に取られようが、○○には関係ない。
ただ足を進めて、散歩を楽しむだけである。それでも歩幅は羽丹羽に合わせており、羽丹羽が早足になる事も、置いていかれる事も無い。
『そこ、落とし穴があるから危ないよ』
突如、○○は前方へ向け、指をさした。
羽丹羽の視線の先には、目印の小枝が何本も置かれていた。
そこに一歩でも足を踏み入れれば最後、天才トラパーの異名もを持つ四年い組、綾部喜八郎の蛸壺の餌食となる。
「私達や先輩方が歩く道に、落とし穴を掘って大丈夫なんでしょうか?」
『学園の敷地内は競合区域だから、関係ないんだよ』
喜八郎本人は、趣味の蛸壺堀りに勤しんでいるだけな所もある。しかし、これは学園に侵入した曲者を捕らえる罠としても有用であるのだ。
羽丹羽は、蛸壺があるという合図の小枝を見たから、蛸壺に嵌る事はなかった。
しかし○○は、合図よりも先に地面の色の違いに気がつき、羽丹羽に声を掛けた。
『他の二年生とは、上手くやれているか?』
「はい。二年い組の三人は、一年生に少し意地悪な所はありますけど、根は優しいのは分かります。同室の時友くんは、穏やかで、時友くんと一緒に居ると、私も楽しいです」
背伸びをしたい年頃だからか、二年生は一年生に対して、意地悪や揶揄いをする事が多々ある。
それも愛情の裏返しではあるが、一年生には理解出来る訳もなく、"自分達に意地悪をしてくる先輩達(一部を除く)"と認識を持たれ、散々である。
『よし、ここで寝転ぼう』
○○は、一本の木を指した。
先客は見当たらず、木陰で休憩を取ろうと提案すると、羽丹羽も断る事はしない。
一年ろ組の面々が日陰ごっこをしているのかと探す○○だが、今日は別の所に居るのだと分かれば、早々に捜索を打ち切った。
「名無し先輩は、いつもこうして過ごされているのですか?」
草原の上で横になった羽丹羽は、同じく横になり、腕を伸ばしてリラックスしている○○に疑問を投げかけた。
『そうだなぁ。いつもこんな感じだよ』
食堂で昼食を取り、散歩をして、木陰を利用して休みを取る……、これといった特徴の見られない、なんて事ない日常の一部分である。
『石人は、俺に何を期待してくれていたんだ?』
「えっ?」
『俺の事を教えて欲しいって、石人が言っていただろ?』
それは確かに、羽丹羽本人が○○に向けて言い放った言葉だ。
○○に言われた事により、羽丹羽は、ハッとした様子で本来の目的を思い出す。
「そうですね……、私の父が仕えている城には、忍者が居らず、戦で窮地に陥るかもしれないから、一日でも忍術の勉強を頭に叩き込もうと考えていました。知識も経験も豊富な、身近に居て話しやすい先輩と考えた時、火薬委員会 委員長の名無し先輩が浮かびました」
羽丹羽の父は、カワタレドキ城に仕える侍でもある。
カワタレドキ城には忍者が一人も居らず、情報収集もままならない状態において、戦に身を投じるのは自殺行為も甚だしい。窮地を救うべく、父からの命で羽丹羽は忍者の勉強をすべく、紆余曲折を経て、忍術学園に編入した。
余談だが、タソガレドキ城は、カワタレドキ城と手を結ぼうという目論見がある。
順当に勉学に励み、学園を卒業すれば、羽丹羽は晴れてカワタレドキ城に属する一人目の忍者となる。
タソガレドキ忍軍の組頭、雑渡昆奈門は、そんなカワタレドキ城の動向に神経を尖らせているという。
カワタレドキ城は、良くも悪くも注目を集めている城だ。羽丹羽も過去に、忍術学園を目指して歩いていた途中、何者かに跡をつけられていた事がある。
そして、タソガレドキ忍軍にも注目されていたりと、本人は首を傾げる部分ではあるが、外部からの危険が迫っている危なかっしい少年とも言えよう。
『そっか。石人にそう思われて、俺は嬉しいよ』
○○は、羽丹羽からの言葉を素直に受け入れる。
例えそれが、自分に五車の術のどれかを仕掛けていようが、まずは呑み込み、そこから疑いに入るのだ。
『忍者を目指すなら、勉強は勿論大事だ。けどこうやって、気の向くままに平和に過ごす事も必要だよ』
忍術学園に滞在している間は、学園の領地内で戦が起きている事もなく、必要以上に気にしていない下級生の忍たまも存在する。しかし外に出れば、各国間で戦が繰り広げられ、戦況によっては貧しい生活を強いられる人々も少なくはない。
○○は、忍者の卵の忍たまである今、忍術学園という環境に甘え、卒業するまでの[[rb:猶予期間 > モラトリアム]]も楽しむのも一つの手だと考えている。
特に羽丹羽は、父親が仕える城の関係もあり、緊張が張りつめている面も見られたからと、○○はそのように伝えた。
『そうだ。六年の忍たま長屋に甘味物が置いてあったな。取ってくるから、ここで待ってな』
その場から立ち上がった○○は、一瞬にして姿を消した。
羽丹羽は突然の事に、何度も目を擦ったが、真横に居た筈の○○は居ない。
そんな事を考えていれば、○○はまたしても一瞬にして、片手に包みを持った状態で、羽丹羽の元へと帰ってきたのだ。
「これは?」
『町で最近、出たばかりの新作で美味と評判の饅頭』
好物の甘味物を前にして、○○は目を煌々と輝かせている。
羽丹羽が包みの中を除くと、同じ色の饅頭が六個分、綺麗に並べられている。
『(本当は、六年生全員で食べろと言われてたけど)せっかくだから、食べていけ。俺も食べるから』
括弧の部分は心の中に留め、甘味物で心に安らぎを与えようとした○○は、羽丹羽から見れば良い先輩として見られているのだろか。
だが実際は、学友と分け合う筈である甘味物を無断で長屋から持ち出し、○○は、ニコニコと笑顔を浮かべて饅頭を頬張っているのだ。
○○と別れ、二年は組の長屋へと戻った羽丹羽は、無断で饅頭を持ち出した事があっさりとバレて、六年生に追いかけ回されている○○の姿など、知らないのであった。
.
羽丹羽石人×夢主
最上級生で、所属する委員会 委員長を務める○○が気になった羽丹羽石人と夢主が過ごす、とある一日の話。
・
「新しく、火薬委員会に入りました。二年は組の羽丹羽石人です。どうぞ宜しくお願いします」
名無し ○○と羽丹羽の落ち着いた環境下での顔合わせは、知らぬ内にいつの間にか所属していた自身が委員長を務める、火薬委員会の活動内であった。
◇
羽丹羽が二つ返事で、火薬委員会に加入決定した現場に○○は居なかった。
理由は、六年生全員参加の野外実習に赴いていたからだ。
後に事情を知った○○が、笑顔で『火薬委員、ゲット♡』等とぬかした日には、委員長代理を除き、それぞれの委員会 委員長を務める六年生全員から、追いかけ回されたのは記憶に新しい。
しかし、どんなに得意武器を振り回そうが、飛ばそうが、俊敏さが取り柄の○○に追いつく事など、誰も出来やしない。
強いて言えば、○○の体力が落ちた所で、同じ六年ろ組の七松小平太が追いつくのであろう。
そんな渦中の関連人物とも言えよう羽丹羽が今、自分を見て煌々と目を輝かせている。
「最上級生である名無し先輩の事を、もっと教えて頂けないでしょうか?」
この発言をした時の羽丹羽は、面倒な人物になると一年は組のお騒がせ三人組である猪名寺乱太郎、摂津のきり丸、福富しんべヱから○○は聞かされていた。
以前、羽丹羽は学園長の大川平次渦正、二年い組実技担当教師の野村雄三の二人に情景の念を抱いたものの、一瞬にして散ったという。
乱きりしんは、○○と羽丹羽が同じ委員会に属しているからと、いつか厄介な事に巻き込まれると最上級生相手にお節介を発動したのだ。
それでも、当の○○は『そっか』とだけ返事をし、涼しい顔をしていたと、乱きりしんは語る。
『石人』
○○は、羽丹羽の下の名を呼ぶ。
早速、自分の素性を明かしてくれるのだろうかと心待ちにしている羽丹羽を他所に、○○は口を開く。
『腹が空いたから、まず食堂でおばちゃん特製の美味しいお昼を一緒に食べよう』
その言葉を聞いた羽丹羽の口から、「へっ?」とまだ声変わりを迎えていない、少年の甲高い間抜けな声が聞こえた。
○○とは羽丹羽が食堂へ到着した頃、既に他学年の忍たまで溢れていた。
はぐれない様にと、○○は羽丹羽に気を配りながら、本日の献立を記された貼り紙に目を通す。
『おっ。今日は、Aランチが美味しそうだ』
嬉々として、○○はそのような言葉を発した。
羽丹羽も遅れて目を通すと、そこには主食・副食・汁物・和え物が簡潔に書かれており、○○と同じAランチを選ぼうと即座に決める。
二人は列を並び、受け渡し台の前まで人が捌かれると、それぞれ同じAランチが乗せられた盆を受け取り、空いている席へと腰掛けた。
いただきますと、同時に、食前の挨拶を口にすると、○○と羽丹羽は昼食を食べ始めていく。
(名無し先輩と昼食を取るのは、初めてだけど……これが名無し先輩を知る事と一体、どんな関係が……)
白米を口にした羽丹羽は、もぐもぐと咀嚼しながら、隣で姿勢正しく、汁物を啜る○○をチラッと横目で見た。
『石人、美味しい?』
「はい。食堂のおばちゃんが作るご飯は、どれも絶品です」
『そうだろ。おばちゃん手作り特製弁当も、これまた美味なんだ。今度、委員会活動でピクニックを計画して、食べる機会でも作ろうか』
主食は何か、副食は色とりどりであった等と、具体的な説明はされていない。
それでも、自身が絶品と評価するおばちゃんの料理、それも手作りである特製弁当を想像し、羽丹羽はたった今、昼食を食べている筈が更に食欲が刺激されていく。
そこから、○○と羽丹羽は他愛ない会話を繰り広げただけだ。
何が好きで、何が嫌いか、最近楽しかった事等と、日常の何気ない一部分を切り取ったような。
昼食を食べ、○○と羽丹羽は食堂を後にしていく。
腹ごしらえを終え、これから鍛錬に励むのか、忍術の勉学に勤しむのかと想像を膨らます羽丹羽だが、○○はまたしても期待を裏切る。
『散歩しよう』
本日二度目の、甲高い間抜けな声が○○の真横から聞こえたのだった。
羽丹羽が呆気に取られようが、○○には関係ない。
ただ足を進めて、散歩を楽しむだけである。それでも歩幅は羽丹羽に合わせており、羽丹羽が早足になる事も、置いていかれる事も無い。
『そこ、落とし穴があるから危ないよ』
突如、○○は前方へ向け、指をさした。
羽丹羽の視線の先には、目印の小枝が何本も置かれていた。
そこに一歩でも足を踏み入れれば最後、天才トラパーの異名もを持つ四年い組、綾部喜八郎の蛸壺の餌食となる。
「私達や先輩方が歩く道に、落とし穴を掘って大丈夫なんでしょうか?」
『学園の敷地内は競合区域だから、関係ないんだよ』
喜八郎本人は、趣味の蛸壺堀りに勤しんでいるだけな所もある。しかし、これは学園に侵入した曲者を捕らえる罠としても有用であるのだ。
羽丹羽は、蛸壺があるという合図の小枝を見たから、蛸壺に嵌る事はなかった。
しかし○○は、合図よりも先に地面の色の違いに気がつき、羽丹羽に声を掛けた。
『他の二年生とは、上手くやれているか?』
「はい。二年い組の三人は、一年生に少し意地悪な所はありますけど、根は優しいのは分かります。同室の時友くんは、穏やかで、時友くんと一緒に居ると、私も楽しいです」
背伸びをしたい年頃だからか、二年生は一年生に対して、意地悪や揶揄いをする事が多々ある。
それも愛情の裏返しではあるが、一年生には理解出来る訳もなく、"自分達に意地悪をしてくる先輩達(一部を除く)"と認識を持たれ、散々である。
『よし、ここで寝転ぼう』
○○は、一本の木を指した。
先客は見当たらず、木陰で休憩を取ろうと提案すると、羽丹羽も断る事はしない。
一年ろ組の面々が日陰ごっこをしているのかと探す○○だが、今日は別の所に居るのだと分かれば、早々に捜索を打ち切った。
「名無し先輩は、いつもこうして過ごされているのですか?」
草原の上で横になった羽丹羽は、同じく横になり、腕を伸ばしてリラックスしている○○に疑問を投げかけた。
『そうだなぁ。いつもこんな感じだよ』
食堂で昼食を取り、散歩をして、木陰を利用して休みを取る……、これといった特徴の見られない、なんて事ない日常の一部分である。
『石人は、俺に何を期待してくれていたんだ?』
「えっ?」
『俺の事を教えて欲しいって、石人が言っていただろ?』
それは確かに、羽丹羽本人が○○に向けて言い放った言葉だ。
○○に言われた事により、羽丹羽は、ハッとした様子で本来の目的を思い出す。
「そうですね……、私の父が仕えている城には、忍者が居らず、戦で窮地に陥るかもしれないから、一日でも忍術の勉強を頭に叩き込もうと考えていました。知識も経験も豊富な、身近に居て話しやすい先輩と考えた時、火薬委員会 委員長の名無し先輩が浮かびました」
羽丹羽の父は、カワタレドキ城に仕える侍でもある。
カワタレドキ城には忍者が一人も居らず、情報収集もままならない状態において、戦に身を投じるのは自殺行為も甚だしい。窮地を救うべく、父からの命で羽丹羽は忍者の勉強をすべく、紆余曲折を経て、忍術学園に編入した。
余談だが、タソガレドキ城は、カワタレドキ城と手を結ぼうという目論見がある。
順当に勉学に励み、学園を卒業すれば、羽丹羽は晴れてカワタレドキ城に属する一人目の忍者となる。
タソガレドキ忍軍の組頭、雑渡昆奈門は、そんなカワタレドキ城の動向に神経を尖らせているという。
カワタレドキ城は、良くも悪くも注目を集めている城だ。羽丹羽も過去に、忍術学園を目指して歩いていた途中、何者かに跡をつけられていた事がある。
そして、タソガレドキ忍軍にも注目されていたりと、本人は首を傾げる部分ではあるが、外部からの危険が迫っている危なかっしい少年とも言えよう。
『そっか。石人にそう思われて、俺は嬉しいよ』
○○は、羽丹羽からの言葉を素直に受け入れる。
例えそれが、自分に五車の術のどれかを仕掛けていようが、まずは呑み込み、そこから疑いに入るのだ。
『忍者を目指すなら、勉強は勿論大事だ。けどこうやって、気の向くままに平和に過ごす事も必要だよ』
忍術学園に滞在している間は、学園の領地内で戦が起きている事もなく、必要以上に気にしていない下級生の忍たまも存在する。しかし外に出れば、各国間で戦が繰り広げられ、戦況によっては貧しい生活を強いられる人々も少なくはない。
○○は、忍者の卵の忍たまである今、忍術学園という環境に甘え、卒業するまでの[[rb:猶予期間 > モラトリアム]]も楽しむのも一つの手だと考えている。
特に羽丹羽は、父親が仕える城の関係もあり、緊張が張りつめている面も見られたからと、○○はそのように伝えた。
『そうだ。六年の忍たま長屋に甘味物が置いてあったな。取ってくるから、ここで待ってな』
その場から立ち上がった○○は、一瞬にして姿を消した。
羽丹羽は突然の事に、何度も目を擦ったが、真横に居た筈の○○は居ない。
そんな事を考えていれば、○○はまたしても一瞬にして、片手に包みを持った状態で、羽丹羽の元へと帰ってきたのだ。
「これは?」
『町で最近、出たばかりの新作で美味と評判の饅頭』
好物の甘味物を前にして、○○は目を煌々と輝かせている。
羽丹羽が包みの中を除くと、同じ色の饅頭が六個分、綺麗に並べられている。
『(本当は、六年生全員で食べろと言われてたけど)せっかくだから、食べていけ。俺も食べるから』
括弧の部分は心の中に留め、甘味物で心に安らぎを与えようとした○○は、羽丹羽から見れば良い先輩として見られているのだろか。
だが実際は、学友と分け合う筈である甘味物を無断で長屋から持ち出し、○○は、ニコニコと笑顔を浮かべて饅頭を頬張っているのだ。
○○と別れ、二年は組の長屋へと戻った羽丹羽は、無断で饅頭を持ち出した事があっさりとバレて、六年生に追いかけ回されている○○の姿など、知らないのであった。
.
