短編
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六年生×夢主 現パロ(年齢操作)
夏休みのクラス課題で、"身近な人の御先祖様について知る"をテーマに、同級生の仙蔵と伊作と共に、御先祖様に忍者が居ると言う、ある三人と会う話。
◆忍たま乱太郎の元の舞台(室町時代末期)を主軸とした話が好き・現代パロディが苦手の方は、ブラウザバック推奨。
◆夢主含め、現代を生きる六年生は前世の記憶無しです。容姿の設定は一切、設けていません。一人称はそのままですが、読者様のご想像に一任します。
◆本夢短編のみの設定
・文次郎→○○達の担任。
・仙蔵→同級生(同クラス。地元を一度離れ、高校入学を機に戻って来た)。
・長次→図書室の非常勤職員。
・小平太→体育担当教員
・○○→生徒(ある人物が、義兄の関係)
・留三郎→放課後児童クラブの正規職員。
・伊作→同級生(同クラス)。
・
高校一年生の名無し○○は、前の席の生徒から配られたプリントに、目を通していた。
上部には、"夏休みの課題一覧"とタイトルが打たれ、国語、数学、理科、社会科…、それぞれ科目毎に出された課題の詳細について、記載されているのだ。
「今年の夏休み、お前達にやってもらうクラス課題のテーマは、"身近な人の御先祖様について"だ」
教壇に立つ、○○のクラスの担任を務める潮江文次郎が、手に持っていたプリントに目を配りながら、説明を始める。
「一人で取り組んでも良し。グループを作って、合同で取り組むも良し。お前らの好きにして構わん。成績にも反映させるから、忘れた奴は即刻、減点って事は覚えとけ」
午後のHR を終えて、放課後を知らせるチャイムがスピーカーを通して、○○達の居る教室内に鳴り響く。
「ねぇ。二人はクラス課題、どうする?」
教室に残り、○○の席には三人の人物が集っていた。その三人とは、クラスメイトの善法寺伊作、立花仙蔵、席の主の○○だ。
仙蔵と○○に話し掛けた伊作の頬には、絆創膏が貼られている。今朝の登校時に転倒して出来た物だと、伊作本人は困った様な笑みを浮かべて、○○に話したのだ。
『せっかくだし、このメンバーでやろうよ』
○○は、購買で購入した菓子パンを頬張りながら、あっけらかんとした様子で答える。
「良いね! クラス課題も、何だか楽しそうだし!」
「伊作。潮江先生の課題を楽しそうと思うのは、このクラスでお前だけだと思うぞ」
人当たりのいい笑みを見せる伊作とは対称的に、仙蔵は汗を垂らし、ジト目で伊作を見た。
三人の所属するクラスの担任を務める文次郎は、"課題添削の鬼"として生徒達に恐れられている。
普段のテスト時もカンニングは勿論、情けの点数追加を許さない。提出された課題も事細かくチェックをし、添削部分があれば、容赦なく赤ペンで書き込んでいくのだ。
生徒への愛があると纏められればいいものの、目の下には濃い隈が出来ている。外見だけで判断されれば、彼と関わりの少ない生徒は寄り付きもしない。
「じゃあ僕、保健委員会に行ってくる」
椅子から立ち上がり、伊作は保健室へ向かうべく、教室を後にしていく。
「さて、私達はどうする?」
『理科室に行く? 科学部、顔出しついでに』
仙蔵と○○は、科学部に所属している。
とはいっても専ら、部活動に精を出しているのは仙蔵の方であり、○○は幽霊部員の様なものだ。入学初日、部活に所属しなくてはならないと告げられ渋々、所属した。
そうと決まればと、仙蔵と○○は教室の灯りを消し、窓を施錠した事を確認してから、さっさと出ていく。
理科室へ向かう渡り廊下を歩く途中、グラウンドから、活きのいい男性の声が鼓膜を通して、二人の脳内に響き渡る。
「この声……やはり、七松先生だな」
仙蔵の視線の先には、バレー部の副顧問として、生徒達のランニングに同行する、快活な笑顔を浮かべる七松小平太の姿があった。
彼は体育担当の教員であり、二人と伊作も授業を受けている身である。有り余る体力・人並外れた運動神経・怪力や、豪快な性格が男子生徒には人気の高い。
大雑把な一面は、女子生徒に不評であるものの、自分達の気が付かない細かい所にも目を配る姿を見た日には、"ギャップが凄い"と盛り上がり、キャアキャアと影で歓声を上げられている。
『あー……そうだね』
どこか歯切れの悪い返事をした○○に、仙蔵は問い詰める事はしない。
今になって始まった事ではなく、入学当時から○○は小平太に対して、この様な態度を見せているから。
科学部に顔を出した○○は、仙蔵が実験に取り組む様を眺めつつ、時には記録の記載や写真撮影を担当する。
こうして、○○の一学期は終わりを告げた。
明日からは夏休み……、学校側から提示された、課題の量の豊富さに目を瞑るのは、学生のお約束だ。
・
自宅に帰った○○は、夕飯を食べてから風呂に入り、自室で過ごしていた。
文次郎のクラス課題について、伊作と仙蔵とグループ通話をし、どのように取り組むか、誰に話を聞くのか等の大まかな話をして、通話を終える。
そのタイミングを見計らったかの様に、○○の自室のドアをノックする音が聞こえた。
「○○、帰ったぞ」
ドアの向こう側から、聞き馴染みのある声が聞こえてくる。眉間に皺を寄せつつも、○○が扉をゆっくりと開ける。
『………おかえり』
○○の前に立っていたのは、○○達の通う学校の教員である小平太だった。
何故、生徒の○○の自宅に教員の小平太が居るのか。それは答えるとなれば、○○の精神世界に存在する、複雑な迷路を挑まされる事となる。
簡潔に言えば、○○の"家庭内のごたつき"を経て、新しい家族として当時は、まだ高校生だった小平太が現れたのだ。
「今日、仙蔵と科学部に顔を出したんだってな。顧問の先生も喜んでいたぞ」
『……そうなんだ』
仙蔵や伊作と接する時の態度と違い、どこかぶっきらぼうに言葉を返す○○は、扉を閉めようとした。
だが、扉を閉めるのを怪力を発揮した小平太に阻止され、二人分のカップアイスとスプーンの入ったレジ袋を突きつけられた。
カップアイスを食べ終えた小平太と○○は、○○の自室に設置された小型テレビで、巷で人気と評判の格闘ゲームで遊んでいた。
とはいうものの、小平太が強引に誘っただけで、○○はあまり乗り気ではない。けれど、我を通す小平太が引く姿勢を見せるのは無く、嫌だと訴えても、○○はゲームで遊ばざるを得ないのだ。
「もん……、潮江先生の課題、また面白そうなのが出たそうじゃないか」
下の名前で呼びかけた小平太だが、すぐに訂正を入れて、○○のクラス課題に触れた。
小平太が操作するパワー系のキャラの攻撃を受けた○○は、自分の操作するスピード系のキャラがステージ外から落下しない様、コマンド入力をして、復帰させる。
『七松先生には、関係ないんじゃない? 夏休みだって、バレー部は合宿やらで忙しいって、クラスの連中が言ってたから』
下の名前ではなく、学校内で使用され、他人行儀を表す名前が○○の口から出された。
「おう。いけいけどんどんで、合宿の予定は組んでいるからな」
小平太は、素早くコマンド入力をし、アイテムを取ると、○○が操作するスピード系のキャラに一撃必殺をお見舞いした。場外へと吹き飛ばされ、残機も無くなった事で、勝負が着いた。
小平太が操作していたパワー系のキャラが表彰され、効果音と共に、"Win!"と英語が表示される。
その時、○○の携帯から通知音が鳴った。
課題用で作成した、仙蔵と伊作のグループで、伊作から返信が来ていたのだ。
"図書室の中在家さんにも、話を聞いてみても良いんじゃない?"
伊作が指した人物は、○○達の通う高校の非常勤職員で、図書室の業務を担当する中在家長次だ。
高身長で筋肉質な体格、寡黙だが、ごく稀に茶目っ気を見せる。図書委員会の生徒達は、長次が気まぐれで作る菓子を貰う機会があり、どれも絶品だと好評なのだ。
医学書を読み漁っていた時期のある伊作は、その時に長次と知り合い、交流を持ち始めた。
"○○が昔、世話になった食満先生の連絡は付いたか?"
今度は、仙蔵からの返信が来た。
○○が小学生の際に通っていた学童で当時、学生ボランティアとして顔を見せていた食満留三郎だ。
熱血漢で、子供と関わる仕事に就きたいと語っていたのを○○は覚えている。面倒見が良いだけでなく、学童内で破損した玩具等の修理もし、子供達の話を真摯に聞く姿は学童に勤務するスタッフからは概ね、評判が良かった。
「食満先生って、○○が学童で世話になっていた方か」
お兄ちゃんと呼び間違えた事もあったよなぁ……、懐かしそうにして言う小平太が、携帯を覗き込んでいたのに気がつくと、○○は携帯を隠す。
『勝手に見るなよ!』
「それは別に、見られて困る物じゃないだろ」
語気を荒げる○○だが、小平太は真面目な表情を見せ、そう言いのけた。
"家庭内のごたつき"で、新たな家族として高校生の小平太を迎え入れられた○○は、一回りも離れている男と何を話せば良いのかが、分からなかった。
そんな○○の心を見通したのか、小平太はボール投げや携帯ゲームを用いて、積極的な交流を図った。話していく内に、他人である自分を義弟として、可愛がってくれた小平太に対して、次第に心を開いていく。
時が経つにつれ、高校に上がる直前で○○は、小平太に対しての反抗期を迎える。
現在はそれでも落ち着いた方でもあるが、酷い時は部屋に入る小平太を拒み、殴り掛かる事もあった。大喧嘩になるも、小平太は○○を殴ったり蹴り返したりせず、○○本人もコントロール出来ない怒りの感情を真正面から受け止めた。
「夏休みの課題は、まぁ肩を張らずに頑張れ。じゃあ、私は部屋に戻る。おやすみ」
その場から立ち上がり、○○の部屋を後にする小平太の背中を○○は見つめる。
『………おやすみ』
扉が締まり切る直前、○○は小さくそう言った。
扉が閉められ、廊下に出た小平太は、反抗期の○○との接し方を探りつつも、"おやすみ"と自分に言ってくれた○○を義弟として、可愛い奴だと思う。
・
その日の午前中、○○は仙蔵、伊作と共に制服を着て、高校の図書室に足を運んでいた。
扉を開けると、入口付近に設置されたカウンター席には、非常勤職員の長次が座っている。
三人が図書室に入ってきた所を、チラリと視線を向け、認識した。
「こんにちは、中在家さん。約束してた時間より、少し早く着いちゃったんですけど……」
伊作は、人当たりのいい笑みを浮かべながら、小声で話しかける。
長次は、図書室内の飲食・火気・会話を特に気にする傾向がある。それでも、小声での最小限の会話なら咎める事はしない。
「……気にしなくていい。部屋を移そう」
カウンター席から立ち上がり、長次は三人を学習室へと案内する。
図書室内には、午前の当番を担当する図書委員が居る為、少しの離席ならば問題ないと、アポイントを取った伊作は長次から言われたのだ。
学習室に入ってすぐ、長次は熱中症対策も兼ね、自分用と三人用の冷茶を紙コップに注ぎ、机上に置かれた。仙蔵、伊作、○○は長次の好意に対して、礼を述べる。
「さて……、用件は、お前達のクラスの課題についてと言っていたな」
「はい。潮江先生から、身近な人の御先祖様を調べて欲しいって内容のものです」
生徒の三人と向き合う形で、席に着いた長次の言葉に、伊作はそう返答した。
「中在家さんの御先祖様には、どんな人が居たんですか?」
仙蔵は早速、課題の内容について深く切り込んだ。早々に答える羽目となる長次だが、至って冷静である。
「……私の御先祖様には、かつて忍者が居た」
中在家の家系図を辿った末、先祖に忍者が居る事を知った長次の口から、そのような言葉が放たれる。
『に、忍者?』
「……忍者だ」
はじめは、稀に見る茶目っ気のある冗談を言い放ったのかと思った○○だが、長次が二度も同じ回答をした事で、それが真実であると受け止めなくてはならない。
「忍者だなんて、カッコイイなぁ! 手裏剣を打ったりしてるの、歴史の展示会で見た事あります!」
『何か黒い服を着てて、足も速いし色々な術を使えるんだっけか。デカイ蛙が出てきたり、影分身してるの漫画で見た事ある」
忍者という未知の存在が出され、伊作と○○はカッコイイと思う物に触れた少年の様に、目を輝かせている。
「伊作、○○。お前達の知っている忍者は、あくまでフィクションで表現されたものばかりだ」
仙蔵はただ一人、盛り上がる様子を見せずに冷静な態度を崩さず、そう言った。
「……忍者とは本来、戦う者ではない。諜報活動を主とし、敵城から得た情報を自分の仕える城に届ける事が、忍者としての本分だ」
博識な長次が、忍者についての解説を三人にするも、伊作と○○は口を開けたまま、さながら宇宙空間に漂う驚き顔の猫となっている。
図書室を後にし、学校を出ていった仙蔵、伊作、○○は近所のハンバーガー屋で、昼食を取っていた。
『いやぁ、一発目から凄い情報がゲット出来たねー』
「うんうん。これだと次の人のネタが薄れるんじゃない?」
○○はチーズバーガー、伊作はチキンバーガーを頬張り、長次の先祖について話題を出した。
「○○、伊作。食べながら話をするな。行儀が悪い」
アールグレイを飲みながら、二人の会話を聞いていた仙蔵が眉を顰め、食事中の行儀の悪さについて注意した。
「それにしても、この辺りも昔と比べたら随分と変わったな」
仙蔵は窓越しに、都市開発の進んでいる地元に目を向けた。交通量の多い道路沿いは、飲食店やスーパー、雑貨屋等の店が並んでいる。
他にも、かつて田園 風景が見られた小学校の通りも埋め立てられ、住宅街となっているのだ。
「仙蔵は確か、高校に上がる前は別の所で暮らしていたんだよね」
「正確には地元を離れて、高校進学を機に、また戻ってきたのだがな」
仙蔵の知っている街並みは、田園 風景が広がる小学校の通学路、珍しい古風な佇まいの駄菓子屋、友達とよく遊んだ公園があったのだが全部、取り壊され、埋め立てられた。
・
夏休みという事もあり、小学生の集団や家族連れが多く見られる、冷房の効いた電車内。ロングシートに座る仙蔵、伊作、○○の体が、線路を走り、車輪が譜面に接して音を立てると同時に揺れていく。
車内で次の駅に停まるとアナウンスが流れ、そこは三人の目的地でもあった。
電車を降りて、バスを利用した三人は、とある小学校からそう離れていない、放課後児童クラブの建物前に居た。
かつて民宿として利用されていたらしく、現在は改修されて、このような形となっていると後に三人は知る。
○○が、来客用のインターホンを押す。しばらくしてから、三人に要件を女性の声が聞こえてくる。
『今日、そちらで働いている職員の食満さんに御用があって来ました、名無しです』
「はい、名無しさんですね。少々、お待ち下さい」
そこで、女性の声は切れた。
そう時間も掛からない内に、三人が立っていた玄関の扉が開かれる。三人よりも背丈の高い男性であり、○○の顔を見て、嬉しそうな表情を浮かべる。
「○○、久しぶりだな」
現れたのは、この放課後児童クラブの正規職員として勤務していた留三郎だった。
『食満先生こそ、お久しぶりです』
「堅苦しいのは無しだ。そこの二人が、お前と一緒に学校の課題をする友達か?」
○○の小学生時代から、顔見知りということもあってから、無理して敬語を使わなくていいと留三郎が言う。
前に立っていた○○の後ろには、仙蔵と伊作も居て、○○の友達かと問いかける。
「初めまして、立花仙蔵です」
「善法寺伊作です。今日は宜しくお願いします」
「あぁ、よろしくな」
礼儀正しく挨拶をする二人を見て、留三郎も挨拶を返し、笑顔を見せる。
「外は暑いから、立ち話もなんだ。上がってくれ」
そう言われた三人は、日差しの当たらない屋根の下から、玄関へと場所を移していく。
来客用のスリッパに履き替え、多目的室へ向かう途中、建物内の総合ホールからは子供の声が聞こえてくる。夏休みで利用者数も増えており、普段よりも賑やかであると留三郎は三人に言った。
多目的室は、既にエアコンの電源が入っており、三人は涼しい風に当たって、癒されていく。
机上には、来客用に用意されたコップに冷茶が注がれている。
「○○のクラスの課題だっけか? 俺の御先祖様について、知りたいんだったよな」
『うん。身近な人の御先祖様じゃないと、先生が減点にしちゃうから』
「食満さんの御先祖様は、どんな事をしていた人なんですか?」
留三郎と○○が他愛ない会話をしてから、伊作は留三郎の先祖について、話を伺う。
「気になって調べてみたら……、いや、俺もこれには驚いた。俺の御先祖様にはどうやら、忍者として生きていた人が居たんだ」
留三郎の答えを聞いた伊作と○○は、「えぇ!」と思わず声をあげる。仙蔵は表に感情を出さず、そんな二人を横目で見ていたが内心、驚いていた。
『な、中在家さんと同じだ……』
「忍者って、そんなに居たのかな……」
長次と同じ回答を得られ、二人はこそこそ話をして、驚きを隠せずにいる。
「実は、他の身近な人にも話を聞いた所、食満さんと同じ様に御先祖様に忍者が居たと話してくれた方が居たんです」
伊作と○○の反応に困惑していた留三郎に、仙蔵は助け舟の代わりとも思える言葉を投げ入れた。
「そうだったのか……いや、こんな話をするのはまず無いんだがな。忍者と言って、驚かれる事の方が少ないんだ。そうか……俺以外にも、忍者の御先祖様が居る人も居るのか。会った事はないが、親近感が湧くな」
放課後児童クラブを後にした仙蔵、伊作、○○は、カラオケ店に赴いていた。
先程とは、あまりにも空間や雰囲気が違いすぎるものの、三人は気にする様子は無い。
"食満先生、今日はありがとう"
仙蔵が、流行りのラブソングを歌っている最中、○○は留三郎に返事を送る。少ししてから既読が付き、留三郎から返信が来た。
"お前らの課題の役に立てたなら、良かったよ"
すると、立て続けに留三郎から返信が送られてきたのだ。
"そうだ、○○"
"身近な人と言えば、小平太が居るだろ"
留三郎と小平太は元々、知り合いではなかった。学童を利用していた小学生の○○の迎えに来た小平太と、年齢が近い事もあってか、世間話をする仲へとなった。
今は住んでいる場所は違えど、たまに連絡のやり取りはしているという。これは、○○には内緒であり、留三郎と小平太だけの秘密だ。
以前、○○の携帯を覗き見した際に放った言葉は、小平太の演技とも取れる。
"七松先生とは、あんまり喋れてない。どうやって話せば良いのか、分からなくなってて"
昔から世話になっている相手で、気が緩んだ○○は反抗期から、小平太への接し方に悩んでいる事を告げた。
"そういうのは、時間が解決する"
「○○も折角、カラオケ来たんだから。ほら、デンモクあげるから、歌いなって」
カラオケ店の雰囲気に呑まれているのか、伊作はどことなく陽気な性格となっている。
伊作からデンモクを渡され、○○はバンドグループの応援歌を選択し、仙蔵と伊作の二人も一歌う様にと声を掛けた。
・
「仙蔵。シークレットゲストって誰なのさ」
課題をこなす為に、学校に赴いた仙蔵、伊作、○○。仙蔵が紹介する身近な人物に会いに来たものの、一切の説明が無かったのだ。
「職員室で、待っているそうだ」
『えぇ、職員室?……って事は、学校の関係者の人?』
会話を繰り広げている間に、三人は職員室の前に到着した。誰が待っているのかと思いながら、○○が扉を開けた。
「来たな、お前ら」
仙蔵、伊作、○○の三人が揃っている事が分かれば、声を掛けたのは、三人の所属するクラスの担任の文次郎だ。
『し、潮江先生?』
「もしかして、仙蔵の言ってたシークレットゲストって……」
○○と伊作は、仙蔵の身近な人物として文次郎が現れるなど予想外であった。そんな二人を他所に、仙蔵は涼しい顔をしている。
「あぁ、潮江先生だ」
『仙蔵と潮江先生って……知り合いだったんですか?』
仙蔵と文次郎の出会いを知ろうと、○○は仙蔵に問いかける。
「幼い頃は、地元で暮らしていたと話していただろ? 私が住んでいた近所に当時、確か高校生か大学生位の潮江先生が暮らしていてな。その時に、知り合ったんだ。今なら、面倒見が良い人だと感謝している」
「小さなガキンチョだったこいつを、俺が面倒を見てた時期があっただけに過ぎん」
事細かく説明をした仙蔵に対して、文次郎は気恥しさを感じたのか、手短に言い終えた。
「昔の事は今、関係の無い事だ。課題の事で、俺に聞きに来たんだろ?」
文次郎からそう言われ、伊作と○○は学校に来た本来の目的を思い出す。
「お前ら、聞いて驚くなよ?」
突然、文次郎ははっきりとした物言いでは無くなり、勿体ぶった言い方に切り替えた。
今から爆弾発言でもするのかと、伊作と○○はゴクリと唾を飲み込む。
「俺の御先祖様には、忍者が居た」
伊作と○○は、デジャブを感じた。
これまでに聞いた同じ単語が文次郎の口から放たれ、これで三度目だと。
仙蔵の表情は変わらず、伊作と○○のどこかガッカリとした顔を見て、文次郎は怪訝そうにする。
「……おい、お前ら。何でそんなに、リアクションが薄いんだ」
「いや、これで三度目なので」
「僕達が先に聞いた人達も、潮江先生と同じでした」
『何というか、デジャブを感じました』
お前らなぁ……、そうボヤいた文次郎だったが、大きな音を立てて開かれた職員室の扉に目を向けた。
「おぉ、潮江先生! それに、仲良し三人組も一緒じゃないか!」
部活動を終え、戻って来た小平太の声が、職員室内で響いた。
今は文次郎、仙蔵、伊作、○○の四名のみしか居なかった為、甚大な被害までには至らなかった。
「七松先生、声がデカイんだよ」
「いやぁ、すまんすまん。練習試合が盛り上がったものでな、昂りが残ってしまっていた」
文次郎から、自身の声量について指摘を受けるも、小平太は反省しているのか分からない、朗らかな笑みを浮かべる。
「お前達、三人。もしかしてクラス課題で、潮江先生の御先祖様について聞いてたのか?」
小平太は、文次郎の席に集まる仙蔵、伊作、○○の三人を見下ろし、問いかけた。
「はい。七松先生は、御先祖様がどのような人かをご存知ですか?」
「あぁ、忍者じゃなかったっけかな」
凛々しい眉を顰め、唸っている様子の小平太だが、正しい答えを言ってのけた。
「忍者と言えば……この近辺の山奥に昔、忍者の学校があったな」
小平太の発言を聞き、仙蔵は小さく声を上げ、伊作は「えぇっ!?」と大袈裟に驚く。
「それって、石碑の所だろ?」
「そうだ。学校自体は、もう何百年も昔に全焼したらしいが、その跡地とも言うべき所だ」
文次郎と小平太の会話を聞いている三人は、地元に住んでいながらも、自分達の住む町に忍者の学校が存在していた等、初耳であったのだ。
「先生方、随分と詳しいんですね」
「まぁな。けど、今のは図書室で借りた本に書いてあった事を、話しただけに過ぎない」
「忍者好きとか、そういう奴等がごぞってこの町に来て、山に向かう所を見かけりゃ嫌でも知る」
仙蔵の言葉に、小平太は再び笑顔を見せる。
文次郎は、忍者好きの観光客の姿を思い出したからか、草臥 れた様子で居た。
「けどな、あそこは行かない方が良い。出るんだとよ」
在籍していた生徒達の地縛霊がな……、文次郎は、末尾にそう付け足した。
「お前らも、警告を無視してやって来る観光客の真似するんじゃねぇぞ。そんな事したら、クラス課題を採点前から、減点にしてやる。覚えておけ」
・
文次郎の言葉に圧倒された仙蔵、伊作、○○は、職員室を後にする。
三人は課題の減点は避けるべく、実際に赴く事はしない。せめて、忍者の学校があったという事実だけでも目に焼き付けておこうと小平太が図書室で見つけたという文献を探すべく、今度は図書室へと向かう。
非常勤職員の長次は、カウンター席には座っていない。今日は出勤する日ではないようで、不在だ。
「忍者となれば、歴史の本棚にあったりしないかな」
『手分けして、探そうぜ』
○○は真ん中の本棚、仙蔵と伊作はそれぞれ端に設置された本棚を中心に、忍者の学校について記載された文献を探していく。
二時間ほど、経過した頃だった。
○○が日本史の文献を読み漁っていると、自分達の住む地方、町の名前が記載されたコラムを発見した。タイトルには、"忍術学園"といかにも忍者の学校と思わしき名前まで入っている。
○○は、文献を探している仙蔵と伊作を呼びつけ、自分の元へ集わせる。三人は、ページの隅に記載されたコラムに目を通していく。
"近畿地方の山奥に存在したと言われる、忍者の学校、忍術学園とは"
"室町時代末期、凄腕の忍者として知られた大川平次渦正が創設した忍者の養成機関。男のみならず、くノ一の養成も行っていたとされる。安土桃山時代〜江戸時代の間、戦により、建物は全焼されたと伝えられている。現在は、その跡地に石碑が立てられている"
『えっ、終わり?』
「二時間かけて、ようやく見つけたのがこれだけ……?」
○○と伊作は、忍術学園の説明があまりにも呆気なく終わってしまった事が受け入れられないのか、呆然とした様子だ。
「忍術書は、自分の子供にも見せないと書いてある。情報自体も極秘で、見つからない様にと消されていたんだろう」
冷静さを保つ仙蔵は、コラムの隣に設けられた"忍者とは何か?"という説明欄を見てから、忍術書の説明について読み上げていく。
「そういえば、七松先生もあんまり説明していなかったけなぁ……」
『まぁ、それは置いといて………でも、中在家さんも食満先生も潮江先生も、この町の出身らしいから。三人の御先祖様も、忍術学園には通っていたんじゃないかな』
○○は再度、コラムを読んでいく。
文章だけの説明であり、忍術学園の建物の画などある筈もなく、あまりにも不明瞭な情報だらけだ。
『この時代の忍者って、どんな風に生きていたんだろう……』
ふと、○○は疑問に思った。
自分達よりも五百年も前に生を受け、忍者として活動していた人達が、どのようにして生きていたのかを。
「少なくとも、この時代は今の様な平和な時代では無い筈だ。室町時代末期は、戦で多くの死人が出ていたと授業でも教わった。もし、どちらかの時代で生きろと言われたら……私は、この平和な時代で、穏やかな時間を過ごす方を選ぶ」
仙蔵の言葉を聞いた伊作と○○は、下手な発言が出来なくなる。
忍者がカッコイイから、この時代に行ってみたい、忍者の学校で授業を教わりたい……、そんな事を言えば、普段の冷静さから一転して、仙蔵は怒りの感情を露わにするだろう。
(もし、俺が昔読んでいた、青い猫型ロボットの航時機 があったら、五百年前にも行けるんだよな。でも……、俺も今の平和な時代の方が良いな)
冷房の聞いた図書室で、誰も言葉を発しなくなった。三人は本棚から出した書物を片付けると、学校を後にしていく。
近畿地方のとある山奥____、かつて忍術学園が建設されていた場所には石碑が立てられている。
石碑の周りは草原となっており、風に吹かれて草木が揺れた。
学園に在籍していた生徒の地縛霊は、自分達が死亡したという認識となく、今日も授業を受けるべく、青空教室で忍術について学んでいるのだとか。
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六年生×夢主 現パロ(年齢操作)
夏休みのクラス課題で、"身近な人の御先祖様について知る"をテーマに、同級生の仙蔵と伊作と共に、御先祖様に忍者が居ると言う、ある三人と会う話。
◆忍たま乱太郎の元の舞台(室町時代末期)を主軸とした話が好き・現代パロディが苦手の方は、ブラウザバック推奨。
◆夢主含め、現代を生きる六年生は前世の記憶無しです。容姿の設定は一切、設けていません。一人称はそのままですが、読者様のご想像に一任します。
◆本夢短編のみの設定
・文次郎→○○達の担任。
・仙蔵→同級生(同クラス。地元を一度離れ、高校入学を機に戻って来た)。
・長次→図書室の非常勤職員。
・小平太→体育担当教員
・○○→生徒(ある人物が、義兄の関係)
・留三郎→放課後児童クラブの正規職員。
・伊作→同級生(同クラス)。
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高校一年生の名無し○○は、前の席の生徒から配られたプリントに、目を通していた。
上部には、"夏休みの課題一覧"とタイトルが打たれ、国語、数学、理科、社会科…、それぞれ科目毎に出された課題の詳細について、記載されているのだ。
「今年の夏休み、お前達にやってもらうクラス課題のテーマは、"身近な人の御先祖様について"だ」
教壇に立つ、○○のクラスの担任を務める潮江文次郎が、手に持っていたプリントに目を配りながら、説明を始める。
「一人で取り組んでも良し。グループを作って、合同で取り組むも良し。お前らの好きにして構わん。成績にも反映させるから、忘れた奴は即刻、減点って事は覚えとけ」
午後の
「ねぇ。二人はクラス課題、どうする?」
教室に残り、○○の席には三人の人物が集っていた。その三人とは、クラスメイトの善法寺伊作、立花仙蔵、席の主の○○だ。
仙蔵と○○に話し掛けた伊作の頬には、絆創膏が貼られている。今朝の登校時に転倒して出来た物だと、伊作本人は困った様な笑みを浮かべて、○○に話したのだ。
『せっかくだし、このメンバーでやろうよ』
○○は、購買で購入した菓子パンを頬張りながら、あっけらかんとした様子で答える。
「良いね! クラス課題も、何だか楽しそうだし!」
「伊作。潮江先生の課題を楽しそうと思うのは、このクラスでお前だけだと思うぞ」
人当たりのいい笑みを見せる伊作とは対称的に、仙蔵は汗を垂らし、ジト目で伊作を見た。
三人の所属するクラスの担任を務める文次郎は、"課題添削の鬼"として生徒達に恐れられている。
普段のテスト時もカンニングは勿論、情けの点数追加を許さない。提出された課題も事細かくチェックをし、添削部分があれば、容赦なく赤ペンで書き込んでいくのだ。
生徒への愛があると纏められればいいものの、目の下には濃い隈が出来ている。外見だけで判断されれば、彼と関わりの少ない生徒は寄り付きもしない。
「じゃあ僕、保健委員会に行ってくる」
椅子から立ち上がり、伊作は保健室へ向かうべく、教室を後にしていく。
「さて、私達はどうする?」
『理科室に行く? 科学部、顔出しついでに』
仙蔵と○○は、科学部に所属している。
とはいっても専ら、部活動に精を出しているのは仙蔵の方であり、○○は幽霊部員の様なものだ。入学初日、部活に所属しなくてはならないと告げられ渋々、所属した。
そうと決まればと、仙蔵と○○は教室の灯りを消し、窓を施錠した事を確認してから、さっさと出ていく。
理科室へ向かう渡り廊下を歩く途中、グラウンドから、活きのいい男性の声が鼓膜を通して、二人の脳内に響き渡る。
「この声……やはり、七松先生だな」
仙蔵の視線の先には、バレー部の副顧問として、生徒達のランニングに同行する、快活な笑顔を浮かべる七松小平太の姿があった。
彼は体育担当の教員であり、二人と伊作も授業を受けている身である。有り余る体力・人並外れた運動神経・怪力や、豪快な性格が男子生徒には人気の高い。
大雑把な一面は、女子生徒に不評であるものの、自分達の気が付かない細かい所にも目を配る姿を見た日には、"ギャップが凄い"と盛り上がり、キャアキャアと影で歓声を上げられている。
『あー……そうだね』
どこか歯切れの悪い返事をした○○に、仙蔵は問い詰める事はしない。
今になって始まった事ではなく、入学当時から○○は小平太に対して、この様な態度を見せているから。
科学部に顔を出した○○は、仙蔵が実験に取り組む様を眺めつつ、時には記録の記載や写真撮影を担当する。
こうして、○○の一学期は終わりを告げた。
明日からは夏休み……、学校側から提示された、課題の量の豊富さに目を瞑るのは、学生のお約束だ。
・
自宅に帰った○○は、夕飯を食べてから風呂に入り、自室で過ごしていた。
文次郎のクラス課題について、伊作と仙蔵とグループ通話をし、どのように取り組むか、誰に話を聞くのか等の大まかな話をして、通話を終える。
そのタイミングを見計らったかの様に、○○の自室のドアをノックする音が聞こえた。
「○○、帰ったぞ」
ドアの向こう側から、聞き馴染みのある声が聞こえてくる。眉間に皺を寄せつつも、○○が扉をゆっくりと開ける。
『………おかえり』
○○の前に立っていたのは、○○達の通う学校の教員である小平太だった。
何故、生徒の○○の自宅に教員の小平太が居るのか。それは答えるとなれば、○○の精神世界に存在する、複雑な迷路を挑まされる事となる。
簡潔に言えば、○○の"家庭内のごたつき"を経て、新しい家族として当時は、まだ高校生だった小平太が現れたのだ。
「今日、仙蔵と科学部に顔を出したんだってな。顧問の先生も喜んでいたぞ」
『……そうなんだ』
仙蔵や伊作と接する時の態度と違い、どこかぶっきらぼうに言葉を返す○○は、扉を閉めようとした。
だが、扉を閉めるのを怪力を発揮した小平太に阻止され、二人分のカップアイスとスプーンの入ったレジ袋を突きつけられた。
カップアイスを食べ終えた小平太と○○は、○○の自室に設置された小型テレビで、巷で人気と評判の格闘ゲームで遊んでいた。
とはいうものの、小平太が強引に誘っただけで、○○はあまり乗り気ではない。けれど、我を通す小平太が引く姿勢を見せるのは無く、嫌だと訴えても、○○はゲームで遊ばざるを得ないのだ。
「もん……、潮江先生の課題、また面白そうなのが出たそうじゃないか」
下の名前で呼びかけた小平太だが、すぐに訂正を入れて、○○のクラス課題に触れた。
小平太が操作するパワー系のキャラの攻撃を受けた○○は、自分の操作するスピード系のキャラがステージ外から落下しない様、コマンド入力をして、復帰させる。
『七松先生には、関係ないんじゃない? 夏休みだって、バレー部は合宿やらで忙しいって、クラスの連中が言ってたから』
下の名前ではなく、学校内で使用され、他人行儀を表す名前が○○の口から出された。
「おう。いけいけどんどんで、合宿の予定は組んでいるからな」
小平太は、素早くコマンド入力をし、アイテムを取ると、○○が操作するスピード系のキャラに一撃必殺をお見舞いした。場外へと吹き飛ばされ、残機も無くなった事で、勝負が着いた。
小平太が操作していたパワー系のキャラが表彰され、効果音と共に、"Win!"と英語が表示される。
その時、○○の携帯から通知音が鳴った。
課題用で作成した、仙蔵と伊作のグループで、伊作から返信が来ていたのだ。
"図書室の中在家さんにも、話を聞いてみても良いんじゃない?"
伊作が指した人物は、○○達の通う高校の非常勤職員で、図書室の業務を担当する中在家長次だ。
高身長で筋肉質な体格、寡黙だが、ごく稀に茶目っ気を見せる。図書委員会の生徒達は、長次が気まぐれで作る菓子を貰う機会があり、どれも絶品だと好評なのだ。
医学書を読み漁っていた時期のある伊作は、その時に長次と知り合い、交流を持ち始めた。
"○○が昔、世話になった食満先生の連絡は付いたか?"
今度は、仙蔵からの返信が来た。
○○が小学生の際に通っていた学童で当時、学生ボランティアとして顔を見せていた食満留三郎だ。
熱血漢で、子供と関わる仕事に就きたいと語っていたのを○○は覚えている。面倒見が良いだけでなく、学童内で破損した玩具等の修理もし、子供達の話を真摯に聞く姿は学童に勤務するスタッフからは概ね、評判が良かった。
「食満先生って、○○が学童で世話になっていた方か」
お兄ちゃんと呼び間違えた事もあったよなぁ……、懐かしそうにして言う小平太が、携帯を覗き込んでいたのに気がつくと、○○は携帯を隠す。
『勝手に見るなよ!』
「それは別に、見られて困る物じゃないだろ」
語気を荒げる○○だが、小平太は真面目な表情を見せ、そう言いのけた。
"家庭内のごたつき"で、新たな家族として高校生の小平太を迎え入れられた○○は、一回りも離れている男と何を話せば良いのかが、分からなかった。
そんな○○の心を見通したのか、小平太はボール投げや携帯ゲームを用いて、積極的な交流を図った。話していく内に、他人である自分を義弟として、可愛がってくれた小平太に対して、次第に心を開いていく。
時が経つにつれ、高校に上がる直前で○○は、小平太に対しての反抗期を迎える。
現在はそれでも落ち着いた方でもあるが、酷い時は部屋に入る小平太を拒み、殴り掛かる事もあった。大喧嘩になるも、小平太は○○を殴ったり蹴り返したりせず、○○本人もコントロール出来ない怒りの感情を真正面から受け止めた。
「夏休みの課題は、まぁ肩を張らずに頑張れ。じゃあ、私は部屋に戻る。おやすみ」
その場から立ち上がり、○○の部屋を後にする小平太の背中を○○は見つめる。
『………おやすみ』
扉が締まり切る直前、○○は小さくそう言った。
扉が閉められ、廊下に出た小平太は、反抗期の○○との接し方を探りつつも、"おやすみ"と自分に言ってくれた○○を義弟として、可愛い奴だと思う。
・
その日の午前中、○○は仙蔵、伊作と共に制服を着て、高校の図書室に足を運んでいた。
扉を開けると、入口付近に設置されたカウンター席には、非常勤職員の長次が座っている。
三人が図書室に入ってきた所を、チラリと視線を向け、認識した。
「こんにちは、中在家さん。約束してた時間より、少し早く着いちゃったんですけど……」
伊作は、人当たりのいい笑みを浮かべながら、小声で話しかける。
長次は、図書室内の飲食・火気・会話を特に気にする傾向がある。それでも、小声での最小限の会話なら咎める事はしない。
「……気にしなくていい。部屋を移そう」
カウンター席から立ち上がり、長次は三人を学習室へと案内する。
図書室内には、午前の当番を担当する図書委員が居る為、少しの離席ならば問題ないと、アポイントを取った伊作は長次から言われたのだ。
学習室に入ってすぐ、長次は熱中症対策も兼ね、自分用と三人用の冷茶を紙コップに注ぎ、机上に置かれた。仙蔵、伊作、○○は長次の好意に対して、礼を述べる。
「さて……、用件は、お前達のクラスの課題についてと言っていたな」
「はい。潮江先生から、身近な人の御先祖様を調べて欲しいって内容のものです」
生徒の三人と向き合う形で、席に着いた長次の言葉に、伊作はそう返答した。
「中在家さんの御先祖様には、どんな人が居たんですか?」
仙蔵は早速、課題の内容について深く切り込んだ。早々に答える羽目となる長次だが、至って冷静である。
「……私の御先祖様には、かつて忍者が居た」
中在家の家系図を辿った末、先祖に忍者が居る事を知った長次の口から、そのような言葉が放たれる。
『に、忍者?』
「……忍者だ」
はじめは、稀に見る茶目っ気のある冗談を言い放ったのかと思った○○だが、長次が二度も同じ回答をした事で、それが真実であると受け止めなくてはならない。
「忍者だなんて、カッコイイなぁ! 手裏剣を打ったりしてるの、歴史の展示会で見た事あります!」
『何か黒い服を着てて、足も速いし色々な術を使えるんだっけか。デカイ蛙が出てきたり、影分身してるの漫画で見た事ある」
忍者という未知の存在が出され、伊作と○○はカッコイイと思う物に触れた少年の様に、目を輝かせている。
「伊作、○○。お前達の知っている忍者は、あくまでフィクションで表現されたものばかりだ」
仙蔵はただ一人、盛り上がる様子を見せずに冷静な態度を崩さず、そう言った。
「……忍者とは本来、戦う者ではない。諜報活動を主とし、敵城から得た情報を自分の仕える城に届ける事が、忍者としての本分だ」
博識な長次が、忍者についての解説を三人にするも、伊作と○○は口を開けたまま、さながら宇宙空間に漂う驚き顔の猫となっている。
図書室を後にし、学校を出ていった仙蔵、伊作、○○は近所のハンバーガー屋で、昼食を取っていた。
『いやぁ、一発目から凄い情報がゲット出来たねー』
「うんうん。これだと次の人のネタが薄れるんじゃない?」
○○はチーズバーガー、伊作はチキンバーガーを頬張り、長次の先祖について話題を出した。
「○○、伊作。食べながら話をするな。行儀が悪い」
アールグレイを飲みながら、二人の会話を聞いていた仙蔵が眉を顰め、食事中の行儀の悪さについて注意した。
「それにしても、この辺りも昔と比べたら随分と変わったな」
仙蔵は窓越しに、都市開発の進んでいる地元に目を向けた。交通量の多い道路沿いは、飲食店やスーパー、雑貨屋等の店が並んでいる。
他にも、かつて
「仙蔵は確か、高校に上がる前は別の所で暮らしていたんだよね」
「正確には地元を離れて、高校進学を機に、また戻ってきたのだがな」
仙蔵の知っている街並みは、
・
夏休みという事もあり、小学生の集団や家族連れが多く見られる、冷房の効いた電車内。ロングシートに座る仙蔵、伊作、○○の体が、線路を走り、車輪が譜面に接して音を立てると同時に揺れていく。
車内で次の駅に停まるとアナウンスが流れ、そこは三人の目的地でもあった。
電車を降りて、バスを利用した三人は、とある小学校からそう離れていない、放課後児童クラブの建物前に居た。
かつて民宿として利用されていたらしく、現在は改修されて、このような形となっていると後に三人は知る。
○○が、来客用のインターホンを押す。しばらくしてから、三人に要件を女性の声が聞こえてくる。
『今日、そちらで働いている職員の食満さんに御用があって来ました、名無しです』
「はい、名無しさんですね。少々、お待ち下さい」
そこで、女性の声は切れた。
そう時間も掛からない内に、三人が立っていた玄関の扉が開かれる。三人よりも背丈の高い男性であり、○○の顔を見て、嬉しそうな表情を浮かべる。
「○○、久しぶりだな」
現れたのは、この放課後児童クラブの正規職員として勤務していた留三郎だった。
『食満先生こそ、お久しぶりです』
「堅苦しいのは無しだ。そこの二人が、お前と一緒に学校の課題をする友達か?」
○○の小学生時代から、顔見知りということもあってから、無理して敬語を使わなくていいと留三郎が言う。
前に立っていた○○の後ろには、仙蔵と伊作も居て、○○の友達かと問いかける。
「初めまして、立花仙蔵です」
「善法寺伊作です。今日は宜しくお願いします」
「あぁ、よろしくな」
礼儀正しく挨拶をする二人を見て、留三郎も挨拶を返し、笑顔を見せる。
「外は暑いから、立ち話もなんだ。上がってくれ」
そう言われた三人は、日差しの当たらない屋根の下から、玄関へと場所を移していく。
来客用のスリッパに履き替え、多目的室へ向かう途中、建物内の総合ホールからは子供の声が聞こえてくる。夏休みで利用者数も増えており、普段よりも賑やかであると留三郎は三人に言った。
多目的室は、既にエアコンの電源が入っており、三人は涼しい風に当たって、癒されていく。
机上には、来客用に用意されたコップに冷茶が注がれている。
「○○のクラスの課題だっけか? 俺の御先祖様について、知りたいんだったよな」
『うん。身近な人の御先祖様じゃないと、先生が減点にしちゃうから』
「食満さんの御先祖様は、どんな事をしていた人なんですか?」
留三郎と○○が他愛ない会話をしてから、伊作は留三郎の先祖について、話を伺う。
「気になって調べてみたら……、いや、俺もこれには驚いた。俺の御先祖様にはどうやら、忍者として生きていた人が居たんだ」
留三郎の答えを聞いた伊作と○○は、「えぇ!」と思わず声をあげる。仙蔵は表に感情を出さず、そんな二人を横目で見ていたが内心、驚いていた。
『な、中在家さんと同じだ……』
「忍者って、そんなに居たのかな……」
長次と同じ回答を得られ、二人はこそこそ話をして、驚きを隠せずにいる。
「実は、他の身近な人にも話を聞いた所、食満さんと同じ様に御先祖様に忍者が居たと話してくれた方が居たんです」
伊作と○○の反応に困惑していた留三郎に、仙蔵は助け舟の代わりとも思える言葉を投げ入れた。
「そうだったのか……いや、こんな話をするのはまず無いんだがな。忍者と言って、驚かれる事の方が少ないんだ。そうか……俺以外にも、忍者の御先祖様が居る人も居るのか。会った事はないが、親近感が湧くな」
放課後児童クラブを後にした仙蔵、伊作、○○は、カラオケ店に赴いていた。
先程とは、あまりにも空間や雰囲気が違いすぎるものの、三人は気にする様子は無い。
"食満先生、今日はありがとう"
仙蔵が、流行りのラブソングを歌っている最中、○○は留三郎に返事を送る。少ししてから既読が付き、留三郎から返信が来た。
"お前らの課題の役に立てたなら、良かったよ"
すると、立て続けに留三郎から返信が送られてきたのだ。
"そうだ、○○"
"身近な人と言えば、小平太が居るだろ"
留三郎と小平太は元々、知り合いではなかった。学童を利用していた小学生の○○の迎えに来た小平太と、年齢が近い事もあってか、世間話をする仲へとなった。
今は住んでいる場所は違えど、たまに連絡のやり取りはしているという。これは、○○には内緒であり、留三郎と小平太だけの秘密だ。
以前、○○の携帯を覗き見した際に放った言葉は、小平太の演技とも取れる。
"七松先生とは、あんまり喋れてない。どうやって話せば良いのか、分からなくなってて"
昔から世話になっている相手で、気が緩んだ○○は反抗期から、小平太への接し方に悩んでいる事を告げた。
"そういうのは、時間が解決する"
「○○も折角、カラオケ来たんだから。ほら、デンモクあげるから、歌いなって」
カラオケ店の雰囲気に呑まれているのか、伊作はどことなく陽気な性格となっている。
伊作からデンモクを渡され、○○はバンドグループの応援歌を選択し、仙蔵と伊作の二人も一歌う様にと声を掛けた。
・
「仙蔵。シークレットゲストって誰なのさ」
課題をこなす為に、学校に赴いた仙蔵、伊作、○○。仙蔵が紹介する身近な人物に会いに来たものの、一切の説明が無かったのだ。
「職員室で、待っているそうだ」
『えぇ、職員室?……って事は、学校の関係者の人?』
会話を繰り広げている間に、三人は職員室の前に到着した。誰が待っているのかと思いながら、○○が扉を開けた。
「来たな、お前ら」
仙蔵、伊作、○○の三人が揃っている事が分かれば、声を掛けたのは、三人の所属するクラスの担任の文次郎だ。
『し、潮江先生?』
「もしかして、仙蔵の言ってたシークレットゲストって……」
○○と伊作は、仙蔵の身近な人物として文次郎が現れるなど予想外であった。そんな二人を他所に、仙蔵は涼しい顔をしている。
「あぁ、潮江先生だ」
『仙蔵と潮江先生って……知り合いだったんですか?』
仙蔵と文次郎の出会いを知ろうと、○○は仙蔵に問いかける。
「幼い頃は、地元で暮らしていたと話していただろ? 私が住んでいた近所に当時、確か高校生か大学生位の潮江先生が暮らしていてな。その時に、知り合ったんだ。今なら、面倒見が良い人だと感謝している」
「小さなガキンチョだったこいつを、俺が面倒を見てた時期があっただけに過ぎん」
事細かく説明をした仙蔵に対して、文次郎は気恥しさを感じたのか、手短に言い終えた。
「昔の事は今、関係の無い事だ。課題の事で、俺に聞きに来たんだろ?」
文次郎からそう言われ、伊作と○○は学校に来た本来の目的を思い出す。
「お前ら、聞いて驚くなよ?」
突然、文次郎ははっきりとした物言いでは無くなり、勿体ぶった言い方に切り替えた。
今から爆弾発言でもするのかと、伊作と○○はゴクリと唾を飲み込む。
「俺の御先祖様には、忍者が居た」
伊作と○○は、デジャブを感じた。
これまでに聞いた同じ単語が文次郎の口から放たれ、これで三度目だと。
仙蔵の表情は変わらず、伊作と○○のどこかガッカリとした顔を見て、文次郎は怪訝そうにする。
「……おい、お前ら。何でそんなに、リアクションが薄いんだ」
「いや、これで三度目なので」
「僕達が先に聞いた人達も、潮江先生と同じでした」
『何というか、デジャブを感じました』
お前らなぁ……、そうボヤいた文次郎だったが、大きな音を立てて開かれた職員室の扉に目を向けた。
「おぉ、潮江先生! それに、仲良し三人組も一緒じゃないか!」
部活動を終え、戻って来た小平太の声が、職員室内で響いた。
今は文次郎、仙蔵、伊作、○○の四名のみしか居なかった為、甚大な被害までには至らなかった。
「七松先生、声がデカイんだよ」
「いやぁ、すまんすまん。練習試合が盛り上がったものでな、昂りが残ってしまっていた」
文次郎から、自身の声量について指摘を受けるも、小平太は反省しているのか分からない、朗らかな笑みを浮かべる。
「お前達、三人。もしかしてクラス課題で、潮江先生の御先祖様について聞いてたのか?」
小平太は、文次郎の席に集まる仙蔵、伊作、○○の三人を見下ろし、問いかけた。
「はい。七松先生は、御先祖様がどのような人かをご存知ですか?」
「あぁ、忍者じゃなかったっけかな」
凛々しい眉を顰め、唸っている様子の小平太だが、正しい答えを言ってのけた。
「忍者と言えば……この近辺の山奥に昔、忍者の学校があったな」
小平太の発言を聞き、仙蔵は小さく声を上げ、伊作は「えぇっ!?」と大袈裟に驚く。
「それって、石碑の所だろ?」
「そうだ。学校自体は、もう何百年も昔に全焼したらしいが、その跡地とも言うべき所だ」
文次郎と小平太の会話を聞いている三人は、地元に住んでいながらも、自分達の住む町に忍者の学校が存在していた等、初耳であったのだ。
「先生方、随分と詳しいんですね」
「まぁな。けど、今のは図書室で借りた本に書いてあった事を、話しただけに過ぎない」
「忍者好きとか、そういう奴等がごぞってこの町に来て、山に向かう所を見かけりゃ嫌でも知る」
仙蔵の言葉に、小平太は再び笑顔を見せる。
文次郎は、忍者好きの観光客の姿を思い出したからか、
「けどな、あそこは行かない方が良い。出るんだとよ」
在籍していた生徒達の地縛霊がな……、文次郎は、末尾にそう付け足した。
「お前らも、警告を無視してやって来る観光客の真似するんじゃねぇぞ。そんな事したら、クラス課題を採点前から、減点にしてやる。覚えておけ」
・
文次郎の言葉に圧倒された仙蔵、伊作、○○は、職員室を後にする。
三人は課題の減点は避けるべく、実際に赴く事はしない。せめて、忍者の学校があったという事実だけでも目に焼き付けておこうと小平太が図書室で見つけたという文献を探すべく、今度は図書室へと向かう。
非常勤職員の長次は、カウンター席には座っていない。今日は出勤する日ではないようで、不在だ。
「忍者となれば、歴史の本棚にあったりしないかな」
『手分けして、探そうぜ』
○○は真ん中の本棚、仙蔵と伊作はそれぞれ端に設置された本棚を中心に、忍者の学校について記載された文献を探していく。
二時間ほど、経過した頃だった。
○○が日本史の文献を読み漁っていると、自分達の住む地方、町の名前が記載されたコラムを発見した。タイトルには、"忍術学園"といかにも忍者の学校と思わしき名前まで入っている。
○○は、文献を探している仙蔵と伊作を呼びつけ、自分の元へ集わせる。三人は、ページの隅に記載されたコラムに目を通していく。
"近畿地方の山奥に存在したと言われる、忍者の学校、忍術学園とは"
"室町時代末期、凄腕の忍者として知られた大川平次渦正が創設した忍者の養成機関。男のみならず、くノ一の養成も行っていたとされる。安土桃山時代〜江戸時代の間、戦により、建物は全焼されたと伝えられている。現在は、その跡地に石碑が立てられている"
『えっ、終わり?』
「二時間かけて、ようやく見つけたのがこれだけ……?」
○○と伊作は、忍術学園の説明があまりにも呆気なく終わってしまった事が受け入れられないのか、呆然とした様子だ。
「忍術書は、自分の子供にも見せないと書いてある。情報自体も極秘で、見つからない様にと消されていたんだろう」
冷静さを保つ仙蔵は、コラムの隣に設けられた"忍者とは何か?"という説明欄を見てから、忍術書の説明について読み上げていく。
「そういえば、七松先生もあんまり説明していなかったけなぁ……」
『まぁ、それは置いといて………でも、中在家さんも食満先生も潮江先生も、この町の出身らしいから。三人の御先祖様も、忍術学園には通っていたんじゃないかな』
○○は再度、コラムを読んでいく。
文章だけの説明であり、忍術学園の建物の画などある筈もなく、あまりにも不明瞭な情報だらけだ。
『この時代の忍者って、どんな風に生きていたんだろう……』
ふと、○○は疑問に思った。
自分達よりも五百年も前に生を受け、忍者として活動していた人達が、どのようにして生きていたのかを。
「少なくとも、この時代は今の様な平和な時代では無い筈だ。室町時代末期は、戦で多くの死人が出ていたと授業でも教わった。もし、どちらかの時代で生きろと言われたら……私は、この平和な時代で、穏やかな時間を過ごす方を選ぶ」
仙蔵の言葉を聞いた伊作と○○は、下手な発言が出来なくなる。
忍者がカッコイイから、この時代に行ってみたい、忍者の学校で授業を教わりたい……、そんな事を言えば、普段の冷静さから一転して、仙蔵は怒りの感情を露わにするだろう。
(もし、俺が昔読んでいた、青い猫型ロボットの
冷房の聞いた図書室で、誰も言葉を発しなくなった。三人は本棚から出した書物を片付けると、学校を後にしていく。
近畿地方のとある山奥____、かつて忍術学園が建設されていた場所には石碑が立てられている。
石碑の周りは草原となっており、風に吹かれて草木が揺れた。
学園に在籍していた生徒の地縛霊は、自分達が死亡したという認識となく、今日も授業を受けるべく、青空教室で忍術について学んでいるのだとか。
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