短編(R指定版)
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原作版 潮江文次郎×夢主
真夜中、火薬委員会の用事で出掛ける予定の○○と会計室に居た文次郎が会話をして、口吸いをする話。
文次郎→←夢主(どちらからも、口吸いする)
※恋仲設定
ゲスト:火薬委員会(久々知兵助、斉藤タカ丸、池田三郎次、羽丹羽石人、二郭伊助)、土井半助、立花仙蔵(名前のみ)
・
丑三つ時を回った会計室からは、算盤を弾く音が聞こえてくる。
それだけで、誰が会計室に居るのかを忍術学園の誰しもが口を揃えて、同じ名前を言うだろう。
一人黙々と、数字が記入された帳簿と睨めっこを繰り広げていたのは、六年い組の会計委員会 委員長の潮江文次郎。
灯明 台に火が付いた灯芯が、帳簿を照らすと同時に、目の下の濃く残された隈までも目立たせる。何回目の徹夜なのか、ここでは伏せておこう。
文次郎は、会計室の出入り口となる引き戸の向こうから、気配を感じ取った。体臭は無し。
わざわざ自分の元へ出向いてくる輩を、文次郎は名前を告げずとも判るのだ。
『やっぱりここか』
引き戸を開けた音がすると、次に六年ろ組の名無し○○の声が文次郎の耳に聞こえてきた。
○○は寝間着姿であり、文次郎は日中帯と同じ忍装束の姿だ。
「何しに来た」
『明日、火薬委員会の用事で一日居ないからさ。文次郎の顔でも、拝んで置こうかと思って』
松の実の形をした右目、アーモンドの形をした左目と異なる目と、濃い隈により、文次郎が怪訝そうな顔をするだけで、悪さをしたのかと凄まれている様な気分に襲われるだろう。
だが、○○は慣れた様子で臆する事もなく、話し始める。
『あぁ、もしかして忘れてた?』
「んな訳ねぇだろ。覚えてたに決まってる」
事実、文次郎は○○が明日、学園を留守にする事は知っていた。
鍛練や会計委員会の用事で、恋仲の用事を忘れてしまう人でなしでは、今は無くなっていたのだから。
『じゃあ、明日は火薬委員会の何の用事で出掛けるでしょうか』
「は?」
『ちょっとした頭の体操だよ。あっ、誰かに聞かれても嫌だから、細かい答えは止めろよ。簡潔に答えて』
天井裏、床下、引き戸の向こう等と、いつ誰が自分達の会話を盗み聞きしているのか、油断ならないからだ。
最も、文次郎と○○はどこからも他者の気配がしない事など分かり切っている為、先程の○○の発言は無意味に近く、だが自分達は曲者を認識しているぞという、脅し文句にも使える。
「火薬の新型兵器開発・実践演習」
文次郎は至極真面目に、○○の質問に返答した。
○○が所属する火薬委員会は、主に学園内に建設されている焔硝蔵 の火薬の在庫確認を任されている。その他に、火薬の調査研究、兵器開発、新型兵器の実践演習を行う。そして、○○は火薬委員会 委員長を務めている。
○○は、未だに正解か不正解を言わない。ただジッと文次郎の目を見つめている。煮え切らない○○の姿に、文次郎が早くしろと急かそうとした時だった。
『違う。ピクニック』
文次郎の考えた回答とは、あまりにもかけ離れいた。それには文次郎も思わず、その場でずっこけてしまうのである。
「ピクニックだとぉ!?」
『うん。何回も言わすなよ』
起き上がった文次郎に詰められようが、○○は涼しい顔を崩す事もなく、淡々と返事をする。
『兵器開発と実践演習は、委員長の俺と五年い組の久々知兵助が顧問の土井先生に同行して行うから、下級生を連れてやる訳ないだろ』
ここで文次郎は、ようやく火薬委員会 委員全員が参加する用事であると気づかれた。
ピクニック等の楽観的思考に至らない文次郎は、○○と久々知が土井の同伴の元、先程の回答の用事を行うと考えていたからだ。
『伊助、三郎次、石人、タカ丸、兵助、俺で親睦の意味を込めて、ピクニックに出掛けるんだよ。食堂のおばちゃんに、特製弁当を作ってもらう様に頼んでて、朝一番で取りに行かなくちゃで』
土井先生は、職員会議が重なってしまい、欠席されるから、ピクニックにはご同行されないんだけどな……、と、○○は補足説明を付け足した。
「なぁにがピクニックだぁ! ○○! お前がいつまでたっても腑抜け委員長だから、火薬委員会は"ヘタレ委員会"、"そんな事でいいんかい"なんて、蔑称を言われ、他の委員会から舐められているんだよ!!」
文次郎の怒号を間近で聞かされ、○○は両手で自身の耳を塞ぐ。
火薬委員会には、先述した仕事内容があるが、中には久々知主催の親睦会の意を込めた豆腐パーティーを開催・全委員会では比較的、平和な立ち位置であると言った事から、他委員会からは実力を侮られている部分がある。
だが○○は、それを卒業まで直す事もない。全て来たる委員会 会議等で、他者を欺く為に振舞っているからだ。
六年も付き合いのある委員長達には、それは周知の事実。だがお約束の如く、策略に嵌る面々には、○○も色々な意味で感謝しているのだ。
『なに、文次郎。委員長の俺を庇ってくれてるの? 嬉しい』
「精々、次の予算会議は期待してるこったな」
恋仲相手だろうが、予算会議で態度を変える文次郎ではない。
「そんな事を言いに来たんなら、さっさと長屋に帰れ」
『そんな事を言う為に、俺は文次郎の顔を拝みに来たかったんだから』
会話が噛み合わない。
文次郎は実力行使で、○○を会計室から追い出そうとも考えたが、○○の言葉の最後が引っかかった。
『今日で文次郎の顔を見るのが、最後だったらどうする?』
文次郎や○○は、プロ忍者を目指す忍者の卵。
六年生となれば、合戦場での戦をまみえる事が日常となり、時には外部からの忍務を請け負い、生と死の狭間に立つ感覚を味わうという。
中には、そのまま帰らぬ者となった忍たまも過去には存在する。
○○が火薬委員会 委員を連れて、ピクニックに出掛ける事もまた、賽の目が出れば、何も起きない。だが、天に見放されたら、山賊や領地内に足を踏み入れた敵忍者等の襲撃により、命を落とす可能性とあるのだ。
「俺は、そんな腰抜け野郎と恋仲になった覚えはねぇよ」
文次郎の言葉には、六年間を共にして、互いの実力を知り尽くし、認めあっているからこその重みがある。
文次郎と○○は、戦場に出れば立ち位置は異なる。得意・不得意もそれぞれ異なり、それは他の六年生にも同じ事が言えた。
『顧問不在で、ピクニック行って、下級生をお陀仏にしてしまいましたなんて、親御さんに謝罪しに、合わせる顔もないし、実家にも帰れないだろ。唯一残ったこの場所にも、文次郎の所にも行けないなんて、御免だね』
○○は変わらず、涼しい顔でそう言った。
○○本人も、ピクニックに出かけて、無事に学園に帰れるという保証は無いとは思っている。携帯用の撒菱 、錣 、目潰し用の唐辛子、薬品等を持参するのは当たり前。
仮に山賊等に出くわしたら、久々知とタカ丸に下級生を学園に帰す様に誘導。○○は学園の正門外にある練習場に山賊等を誘き寄せ、忍たま達が仕掛けた罠で懲らしめ、捕縛する。そこまでの事を想定した上で、ピクニックの計画を立てたのだ。
『俺が、ちゃんと文次郎の所に帰って来れる様に、文次郎に呪 いを掛けてもらいたくて、お前の所に来たんだ』
○○はようやく、本題に入った。
だが、それを聞いた文次郎は、呪 いと言われて、ある動作を思い浮かべている。
「九字護身法 か」
『馬鹿。違うよ』
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九つの呪文で、除災戦勝等を祈る作法である。
だが、○○が欲していた物をそれではない。
『文次郎と、口吸いがしたくて』
○○がそう言った直後、バカタレ!…、という言葉と共に、○○の脳天に拳骨 が直撃した。
ただでさえ、会計帳簿に時間を費やしたい文次郎だったが、恋仲の○○から口吸いをしたいと言われ、文次郎は腹正しくもなったが、愛おしくも思った。
『分かったよ』
拳骨された箇所を摩 る○○は、右手の人差し指を文次郎に近づけていく。
何をするつもりなんだ…、文次郎がそう思った矢先、○○の人差し指が唇に触れた。
ふにっとした感触と共に、手入れの行き届いていない唇のカサつきが○○に伝わる。
「………っ!」
○○に唇をソッとなぞられ、文次郎は小さく反応した。
人差し指が離れていくと、今度は○○自身の唇をなぞっていく。指越しに触れた、文次郎の唇の感触を忘れない様にと。
『文次郎が口吸いしたがらないから、これで我慢しとく。でも、最後に口吸いしたの何時だっけか?』
○○がそう言い切る前に、文次郎が○○の頬を掴んだ。唇は触れておらず、○○は自分を見る文次郎から目を逸らしはしない。
「分かったよ……お前と口吸いすりゃ、満足する話なんだろ!」
『俺は満足するけど、お前は満足しないの?』
○○は、回りくどい質問をせず、直球で文次郎で問いかけた。
『俺だけ満足する前提だけど、文次郎はどうなんだよ』
文次郎は、○○の素直な所が苦手だ。
文次郎は恋愛絡みとなると、如何せん不器用な面が目立つ。○○に好意を伝える事に関しては、同室の立花仙蔵に呆れられたのも数しれず。
対称的に、○○は文次郎へ好意を伝える事に恥じらいを見せない。それもまた、いつ自分が、文次郎が死を迎えても、可笑しくないからこそなのだろう。
「……わ、分かれ! 恋仲だったら、それぐらいの事!」
『無理難題をぶつけるなよ……まぁいいや、それでも。口吸いしてくれたら、ちゃんと文次郎の所に帰ってこれそうだから」
○○は笑みを零してから、唇を突き出し、目を瞑った。
文次郎から口吸いをしろ、という意味だ。あからさまな○○の行動の意味が分からない程、文次郎も初 ではない。
腹を括れ、潮江文次郎………、○○が目を瞑ってから、しばらくしての事。文次郎の唇が○○の唇に触れた。
文次郎の唇が触れた直後、○○は小さく声を漏らした。文次郎はそれを聞き逃さず、だが色欲に支配されない様にと、○○の唇から距離を離していく。
『ありがとな』
○○は、年相応の笑顔を見せた。
文次郎は、○○のこの笑顔は好きだ。時折、眩しくて腕で覆い隠したくなる程に、輝いて見えるこの笑顔が。
すると、○○は文次郎との距離を縮め、耳元に口を寄せた。
『俺からも、していい?』
○○に耳元で囁かれ、文次郎は唾を飲み込む。
言葉を濁されて、焦らされても嫌だった事もあり、○○はすぐに文次郎の唇を奪っていく。
『んっ……、…っ………』
始めは、軽く触れるだけの口吸いだったが、今度は文次郎の上唇を、下唇をはむっと甘噛みした。
そして再び、文次郎のカサつきのある唇に触れる。最後に名残惜しそうにしつつも、○○は唇がゆっくりと離れていく。
○○の妖艶 な口吸いを受け、文次郎は色欲と自制心に天秤を掛け、戦っていた。
顔を真っ赤にさせ、○○を自分の腕の中に閉じ込めてしまおうかと考えた時だ。
『盛 るんじゃないよ』
○○は、文次郎が邪な考えと戦っている事と分かれば、頭部に拳骨 を容赦なく喰らわせた。
咄嗟に避ける事も防御も出来ず、文次郎も○○と同様に拳骨を受けた箇所を摩 る。
「口吸いをしたいと言った、そっちが悪いだろ!」
『悪くない。文次郎の心の問題』
先程までの妖艶 な口吸いをした○○と、今の涼しい顔をした○○はもはや別人だ。
『続きがしたいんだったら、明日のピクニックを無事に帰って来たらな』
文次郎の返事を聞く前に、それまで心、乱すなよー…、と言い、○○を会計室を後にしていく。
ようやく○○が帰ったかと思いたかったが、一人残された文次郎は、悶々とする。
口吸いの続きなど、今までの○○と文次郎の間でなら、同衾 しかない。
文次郎は、賽の目が出た火薬委員会が、○○が無事に帰ってきたら、おかえりと挨拶するだろう。そして、その後に情交を結ぶのだろうか。
文次郎が、○○に掛けた呪 いが、最後まで効力を発揮するのを願うばかりだ。
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原作版 潮江文次郎×夢主
真夜中、火薬委員会の用事で出掛ける予定の○○と会計室に居た文次郎が会話をして、口吸いをする話。
文次郎→←夢主(どちらからも、口吸いする)
※恋仲設定
ゲスト:火薬委員会(久々知兵助、斉藤タカ丸、池田三郎次、羽丹羽石人、二郭伊助)、土井半助、立花仙蔵(名前のみ)
・
丑三つ時を回った会計室からは、算盤を弾く音が聞こえてくる。
それだけで、誰が会計室に居るのかを忍術学園の誰しもが口を揃えて、同じ名前を言うだろう。
一人黙々と、数字が記入された帳簿と睨めっこを繰り広げていたのは、六年い組の会計委員会 委員長の潮江文次郎。
文次郎は、会計室の出入り口となる引き戸の向こうから、気配を感じ取った。体臭は無し。
わざわざ自分の元へ出向いてくる輩を、文次郎は名前を告げずとも判るのだ。
『やっぱりここか』
引き戸を開けた音がすると、次に六年ろ組の名無し○○の声が文次郎の耳に聞こえてきた。
○○は寝間着姿であり、文次郎は日中帯と同じ忍装束の姿だ。
「何しに来た」
『明日、火薬委員会の用事で一日居ないからさ。文次郎の顔でも、拝んで置こうかと思って』
松の実の形をした右目、アーモンドの形をした左目と異なる目と、濃い隈により、文次郎が怪訝そうな顔をするだけで、悪さをしたのかと凄まれている様な気分に襲われるだろう。
だが、○○は慣れた様子で臆する事もなく、話し始める。
『あぁ、もしかして忘れてた?』
「んな訳ねぇだろ。覚えてたに決まってる」
事実、文次郎は○○が明日、学園を留守にする事は知っていた。
鍛練や会計委員会の用事で、恋仲の用事を忘れてしまう人でなしでは、今は無くなっていたのだから。
『じゃあ、明日は火薬委員会の何の用事で出掛けるでしょうか』
「は?」
『ちょっとした頭の体操だよ。あっ、誰かに聞かれても嫌だから、細かい答えは止めろよ。簡潔に答えて』
天井裏、床下、引き戸の向こう等と、いつ誰が自分達の会話を盗み聞きしているのか、油断ならないからだ。
最も、文次郎と○○はどこからも他者の気配がしない事など分かり切っている為、先程の○○の発言は無意味に近く、だが自分達は曲者を認識しているぞという、脅し文句にも使える。
「火薬の新型兵器開発・実践演習」
文次郎は至極真面目に、○○の質問に返答した。
○○が所属する火薬委員会は、主に学園内に建設されている
○○は、未だに正解か不正解を言わない。ただジッと文次郎の目を見つめている。煮え切らない○○の姿に、文次郎が早くしろと急かそうとした時だった。
『違う。ピクニック』
文次郎の考えた回答とは、あまりにもかけ離れいた。それには文次郎も思わず、その場でずっこけてしまうのである。
「ピクニックだとぉ!?」
『うん。何回も言わすなよ』
起き上がった文次郎に詰められようが、○○は涼しい顔を崩す事もなく、淡々と返事をする。
『兵器開発と実践演習は、委員長の俺と五年い組の久々知兵助が顧問の土井先生に同行して行うから、下級生を連れてやる訳ないだろ』
ここで文次郎は、ようやく火薬委員会 委員全員が参加する用事であると気づかれた。
ピクニック等の楽観的思考に至らない文次郎は、○○と久々知が土井の同伴の元、先程の回答の用事を行うと考えていたからだ。
『伊助、三郎次、石人、タカ丸、兵助、俺で親睦の意味を込めて、ピクニックに出掛けるんだよ。食堂のおばちゃんに、特製弁当を作ってもらう様に頼んでて、朝一番で取りに行かなくちゃで』
土井先生は、職員会議が重なってしまい、欠席されるから、ピクニックにはご同行されないんだけどな……、と、○○は補足説明を付け足した。
「なぁにがピクニックだぁ! ○○! お前がいつまでたっても腑抜け委員長だから、火薬委員会は"ヘタレ委員会"、"そんな事でいいんかい"なんて、蔑称を言われ、他の委員会から舐められているんだよ!!」
文次郎の怒号を間近で聞かされ、○○は両手で自身の耳を塞ぐ。
火薬委員会には、先述した仕事内容があるが、中には久々知主催の親睦会の意を込めた豆腐パーティーを開催・全委員会では比較的、平和な立ち位置であると言った事から、他委員会からは実力を侮られている部分がある。
だが○○は、それを卒業まで直す事もない。全て来たる委員会 会議等で、他者を欺く為に振舞っているからだ。
六年も付き合いのある委員長達には、それは周知の事実。だがお約束の如く、策略に嵌る面々には、○○も色々な意味で感謝しているのだ。
『なに、文次郎。委員長の俺を庇ってくれてるの? 嬉しい』
「精々、次の予算会議は期待してるこったな」
恋仲相手だろうが、予算会議で態度を変える文次郎ではない。
「そんな事を言いに来たんなら、さっさと長屋に帰れ」
『そんな事を言う為に、俺は文次郎の顔を拝みに来たかったんだから』
会話が噛み合わない。
文次郎は実力行使で、○○を会計室から追い出そうとも考えたが、○○の言葉の最後が引っかかった。
『今日で文次郎の顔を見るのが、最後だったらどうする?』
文次郎や○○は、プロ忍者を目指す忍者の卵。
六年生となれば、合戦場での戦をまみえる事が日常となり、時には外部からの忍務を請け負い、生と死の狭間に立つ感覚を味わうという。
中には、そのまま帰らぬ者となった忍たまも過去には存在する。
○○が火薬委員会 委員を連れて、ピクニックに出掛ける事もまた、賽の目が出れば、何も起きない。だが、天に見放されたら、山賊や領地内に足を踏み入れた敵忍者等の襲撃により、命を落とす可能性とあるのだ。
「俺は、そんな腰抜け野郎と恋仲になった覚えはねぇよ」
文次郎の言葉には、六年間を共にして、互いの実力を知り尽くし、認めあっているからこその重みがある。
文次郎と○○は、戦場に出れば立ち位置は異なる。得意・不得意もそれぞれ異なり、それは他の六年生にも同じ事が言えた。
『顧問不在で、ピクニック行って、下級生をお陀仏にしてしまいましたなんて、親御さんに謝罪しに、合わせる顔もないし、実家にも帰れないだろ。唯一残ったこの場所にも、文次郎の所にも行けないなんて、御免だね』
○○は変わらず、涼しい顔でそう言った。
○○本人も、ピクニックに出かけて、無事に学園に帰れるという保証は無いとは思っている。携帯用の
仮に山賊等に出くわしたら、久々知とタカ丸に下級生を学園に帰す様に誘導。○○は学園の正門外にある練習場に山賊等を誘き寄せ、忍たま達が仕掛けた罠で懲らしめ、捕縛する。そこまでの事を想定した上で、ピクニックの計画を立てたのだ。
『俺が、ちゃんと文次郎の所に帰って来れる様に、文次郎に
○○はようやく、本題に入った。
だが、それを聞いた文次郎は、
「
『馬鹿。違うよ』
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九つの呪文で、除災戦勝等を祈る作法である。
だが、○○が欲していた物をそれではない。
『文次郎と、口吸いがしたくて』
○○がそう言った直後、バカタレ!…、という言葉と共に、○○の脳天に
ただでさえ、会計帳簿に時間を費やしたい文次郎だったが、恋仲の○○から口吸いをしたいと言われ、文次郎は腹正しくもなったが、愛おしくも思った。
『分かったよ』
拳骨された箇所を
何をするつもりなんだ…、文次郎がそう思った矢先、○○の人差し指が唇に触れた。
ふにっとした感触と共に、手入れの行き届いていない唇のカサつきが○○に伝わる。
「………っ!」
○○に唇をソッとなぞられ、文次郎は小さく反応した。
人差し指が離れていくと、今度は○○自身の唇をなぞっていく。指越しに触れた、文次郎の唇の感触を忘れない様にと。
『文次郎が口吸いしたがらないから、これで我慢しとく。でも、最後に口吸いしたの何時だっけか?』
○○がそう言い切る前に、文次郎が○○の頬を掴んだ。唇は触れておらず、○○は自分を見る文次郎から目を逸らしはしない。
「分かったよ……お前と口吸いすりゃ、満足する話なんだろ!」
『俺は満足するけど、お前は満足しないの?』
○○は、回りくどい質問をせず、直球で文次郎で問いかけた。
『俺だけ満足する前提だけど、文次郎はどうなんだよ』
文次郎は、○○の素直な所が苦手だ。
文次郎は恋愛絡みとなると、如何せん不器用な面が目立つ。○○に好意を伝える事に関しては、同室の立花仙蔵に呆れられたのも数しれず。
対称的に、○○は文次郎へ好意を伝える事に恥じらいを見せない。それもまた、いつ自分が、文次郎が死を迎えても、可笑しくないからこそなのだろう。
「……わ、分かれ! 恋仲だったら、それぐらいの事!」
『無理難題をぶつけるなよ……まぁいいや、それでも。口吸いしてくれたら、ちゃんと文次郎の所に帰ってこれそうだから」
○○は笑みを零してから、唇を突き出し、目を瞑った。
文次郎から口吸いをしろ、という意味だ。あからさまな○○の行動の意味が分からない程、文次郎も
腹を括れ、潮江文次郎………、○○が目を瞑ってから、しばらくしての事。文次郎の唇が○○の唇に触れた。
文次郎の唇が触れた直後、○○は小さく声を漏らした。文次郎はそれを聞き逃さず、だが色欲に支配されない様にと、○○の唇から距離を離していく。
『ありがとな』
○○は、年相応の笑顔を見せた。
文次郎は、○○のこの笑顔は好きだ。時折、眩しくて腕で覆い隠したくなる程に、輝いて見えるこの笑顔が。
すると、○○は文次郎との距離を縮め、耳元に口を寄せた。
『俺からも、していい?』
○○に耳元で囁かれ、文次郎は唾を飲み込む。
言葉を濁されて、焦らされても嫌だった事もあり、○○はすぐに文次郎の唇を奪っていく。
『んっ……、…っ………』
始めは、軽く触れるだけの口吸いだったが、今度は文次郎の上唇を、下唇をはむっと甘噛みした。
そして再び、文次郎のカサつきのある唇に触れる。最後に名残惜しそうにしつつも、○○は唇がゆっくりと離れていく。
○○の
顔を真っ赤にさせ、○○を自分の腕の中に閉じ込めてしまおうかと考えた時だ。
『
○○は、文次郎が邪な考えと戦っている事と分かれば、頭部に
咄嗟に避ける事も防御も出来ず、文次郎も○○と同様に拳骨を受けた箇所を
「口吸いをしたいと言った、そっちが悪いだろ!」
『悪くない。文次郎の心の問題』
先程までの
『続きがしたいんだったら、明日のピクニックを無事に帰って来たらな』
文次郎の返事を聞く前に、それまで心、乱すなよー…、と言い、○○を会計室を後にしていく。
ようやく○○が帰ったかと思いたかったが、一人残された文次郎は、悶々とする。
口吸いの続きなど、今までの○○と文次郎の間でなら、
文次郎は、賽の目が出た火薬委員会が、○○が無事に帰ってきたら、おかえりと挨拶するだろう。そして、その後に情交を結ぶのだろうか。
文次郎が、○○に掛けた
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