短編
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1.桜木清右衛門、若王寺勘兵衛×夢主
色々と疲れる出来事の連続だった、五年生時代の○○のある日の話。
2.桜木清右衛門、若王寺勘兵衛
with原作版 中在家長次、七松小平太
卒業生の桜木と若王寺の依頼で、合同忍務に赴いた後の六年ろ組の話。
(○○の感じる壁の話。長次と小平太がその壁について、桜木と若王寺に聞く話)
・
桜木清右衛門、若王寺勘兵衛×夢主
色々と疲れる出来事の連続だった、五年生時代の○○のある日の話。
ゲスト:七松小平太、土井半助
中在家長次(名前のみ)
・
○○は、悪寒が走った。
校舎外の近辺から、とある人物の気配を感じ取り、○○はこの場から逃げ出そうと目論む。
「五年ろ組、名無し○○」
しかし、その目論見は一瞬にして散った。
○○は声を掛けてきた人物の立っていた場所に、勢いよく体の向きを変えた。
『桜木清右衛門先輩。こんにちは』
「こんにちは、名無し」
○○は表面上、元気よく挨拶をする後輩の姿を取り繕う。
それでも目の前にいる桜木には、自分が取り繕っている等、お見通しなのであろうと諦観する。
『体育委員会 委員の五年ろ組、七松小平太をお探しでしょうか?』
「いや、小平太には用具倉庫から体育委員会が後日、裏方として使用する大運動会の用具確認をして欲しいと、俺から声を掛けたから、小平太を探している訳ではないさ」
○○は、同室で体育委員の小平太の名を出して、手短に会話を終わらせようとする。
だが、桜木は○○の想定以上の科白 を話し始める。まるで、○○の心中を読み取り、自分との会話を長引かせる為に。
「名無し、俺は偶然、ここを通りかかった。そしてたまたま、お前を見かけたから、声を掛けたんだ。そこに関して、何か問題でもあったか?」
桜木の発言を前にして、○○は短く息を吸った。
あの"外面如菩薩内心如夜叉 "……簡略化した名称の"菩薩夜叉 "を怒らせたら、どうなるのか。
あの並外れた体力、運動神経、怪力の持ち主の小平太でさえ、涼しい顔をして、"儚い"という言葉が似合う目の前の男に圧倒されているのだ。不用意な発言をしたら最期、どうなるのか____、
「桜木先輩!」
○○が必死に言葉を選んでいた時、遠方から小平太の声が聞こえてきた。
桜木は、○○から小平太の声が聞こえた方向に顔を向ける。
「備品は全て、用具倉庫に揃ってありました」
「御苦労。今日は随分と早く確認が済んだ様だが……備品の不備の見落としも、数の不足も無く、完璧にこなしたという事で良いのか?」
「はい!」
小平太の額には、汗が垂れている。
有り余る体力を持つ小平太が、そう簡単に汗を流す事はない。ならば、その汗は体育委員会 委員長の桜木への恐れから出てきた冷や汗だ。
「よし、判った。では今から、俺と一緒に再確認しに向かおう。名無し、お前と話した時間は、小平太を待つ間の良い時間潰しになった。では、失礼する」
『はい。委員会活動、頑張ってください。失礼します』
○○は深くお辞儀をした。桜木と小平太の二人が見えなくなるまで姿勢を保つ。
ようやく二人の気配が消えたと分かれば、○○は顔を上げた。桜木との会話で、張りつめていた緊張が一気に解れていく。
(若王寺勘兵衛先輩の所に、行かなきゃならないのに。もう指定した時間、過ぎてるよなぁ)
○○は、疲れきった顔をしている。
火薬委員会 委員長代理の仕事として、図書室に赴くつもりであった○○だったが、思わぬ人物に声を掛けられ、大きな溜息をついた。
・
「失礼します。若王寺図書委員会 委員長、火薬委員会 委員長代理、名無し○○です」
○○は挨拶をして、図書室に入っていく。
受付には、下級生の図書委員が貸出カードの確認を行っている。奥の本棚では、同じ五年ろ組の中在家長次が書物の整理に励んでいた。
「名無し、来るのが遅かったな」
『すみません』
「怒っている訳ではない。ほら、火薬の新本だ」
○○に声を掛けたのは、若王寺だった。
指定した時間より、図書室を尋ねるのが遅くなった事を謝罪する○○だった。
そして、若王寺から火薬に関する情報が記載された書物を受け取った。
『ありがとうございます』
書物を受け取ってすぐ、○○は桜木の前でも見せた、深いお辞儀をする。
「訓練の方、調子はどうだ」
若王寺から突然、話を振られた○○は驚いた。
どうやら顔にも出ていた様で、若王寺は困った様に眉を下げる。
「肩の力を抜いてくれて良い。これは、雑談だ」
若王寺に気を遣わせてしまったと思うも、先輩相手に緊張するのは仕様がないだろうと、○○言葉に出さず、心の中で解決した。
「手裏剣の命中率は以前、若王寺先輩からごしつもされた時と変わらずです。静定剣は、どうしても、普段の生活の中で発揮出来ない物ではありますので、不安材料ではありますね』
静定剣とは、手裏剣を持ち合わせていない状況に遭った時、短刀や包丁等の刃物を敵に投擲 する。危機から脱する際に使用される技だ。
「そうか。足の方も変わらずという事か」
『はい。ランニングは継続中。裏々々々山までは何らかの事態に遭遇しなければ、特に問題なく____、』
「長次、活動に集中しろ。書物を整理する手が止まっている。同室がそんなに気になるか?」
本棚の向こうから、長次の謝罪が聞こえた。
○○は、長次が若王寺に注意された光景を物珍しく思う。
委員会活動には真面目に取り組み、若王寺からも頼りにされていると噂を聞いていた事もあったが、長次にもそういう日はあるか…、と、気にしない方向で問題を解決した。
『それでは、失礼します』
その後、若王寺との会話を終えた○○は、図書室を後にする。
最後に職員室に向かい、土井半助の居る部屋の前に到着した。引き戸を叩くと、部屋の向こうから土井の声が聞こえてくる。
『土井先生。火薬委員会 委員長代理、名無しです』
「あぁ、名無しか。入っていいよ」
『失礼します』
○○は土井の部屋に入り、引き戸を閉める。
若王寺から受け取った書物は、火薬委員会の活動で使用する物であった。
「名無し、大丈夫か?」
『えっ?』
「顔が疲れている」
部屋に入ってきてから、疲れた顔を必死に隠そうとする○○に、土井は気遣いを見せた。
教師相手に誤魔化しは効かないと分かっている○○は、土井にこれまでの経緯を簡略化して、説明した。
「あぁ、桜木と若王寺か。彼らも君達、五年生を気にかけているんだよ」
土井は内心、○○に対しての言葉選びに慎重であった。
○○をはじめ、五年生全員が桜木と若王寺、他の六年生に対して尋常ではない程に警戒しているのではないかと思っていたからだ。
そう思った理由として、五年生全員が桜木に向けて、深いお辞儀をしていたと下級生から聞かされ、何事かと思い、桜木に話を聞いた。
桜木からは、五年生は六年生に対して、尊敬の意を示す手法が大袈裟であり、それを見た下級生が騒ぎを起こしてしまった。そう思わせた六年生にも原因であると、涼しい顔をして言ったのだ。
「委員会で、肩身の狭い思いをしている筈だ。けれど、来年は五年生が委員長に就く。少しは気が楽になれるさ」
今年の委員会にて、○○ただ一人、委員長代理となっていた。その他の委員会は全員、六年生。
委員会 全体会議や予算会議で、六年生からの圧を受けながらも、後輩を引き連れ、必死に予算をもぎ取ろうとする○○を見てきたからこそ、一年後には、気の知れた学友が委員長となり、精神的負担も軽くなるのではと土井は思った。
だが、○○の心中は土井の想像と全く違っていた。
(土井先生……確かに俺は、六年生の先輩方に挟まれ、肩身の狭い思いはしています。ですが……来年の会計委員長は、五年い組の潮江文次郎が就かれます! そして、今年の様に予算会議が大揉めになるに違いありません!)
今だけでなく、六年生に進級してからも続く受難に○○は一人、嘆くのだった。
※
2.桜木清右衛門、若王寺勘兵衛
with原作版 中在家長次、七松小平太
卒業生の桜木と若王寺の依頼で、合同忍務に赴いた後の六年ろ組の話。
(〇〇の感じる壁の話。長次と小平太がその壁について、桜木と若王寺に聞く話)
※委員会事情の捏造あり
ゲスト:大川平次渦正
・
温もりが欲しい。
布団にくるまって得られる偽りの温もりではなく、他者に関わり、触れ合う事で得られる、安心できる、平時の自分を取り戻せる、温もりが。
先般(三週間前)の事だった。
忍術学園に、卒業生の桜木清右衛門と若王寺勘兵衛が学園長の大川平次渦正の元へ尋ねた。
卒業以来の再会であり、学園長は二人からの手土産と煎じた茶を嗜みながら、学園時代の話や卒業後の話に花を咲かせる。
一段落が着いた所で、桜木と若王寺は学園長にとある相談を持ちかけた。
内容は、忍術学園の領地内で、不審な動きを見せる忍者隊を発見。
忍術学園と因縁のあるドクタケ忍者隊とは、また別の国の忍者隊が、"変わり身の術"を用いて、身分や姿を偽った姿で領地内に足を踏み入れていると、桜木と若王寺は告げた。
忍術界の重鎮の大川平次渦正の領地内で、戦を仕掛けようと目論むなら、死を意味する。それを身をもって分からせねばならないと思うも、二人はまず忍術学園を尋ねたのだ。
「つきましては、忍術学園の実力ある最上級生のお力をお借り出来たらと思った所存です」
「なるほどな。いいじゃろう……どの生徒を忍務に同行させるかは、其方で決めてくれて構わん」
若王寺の言葉に、難色を示す事もなく、学園長は快諾した。二人は感謝の言葉を述べてから、三人の生徒の名前を告げたのだ。
・
桜木と若王寺の忍務に同行する事になったのは、六年ろ組の中在家長次、七松小平太、名無し○○だった。
桜木と小平太、若王寺と長次は委員会の先輩後輩の関係。
桜木、若王寺と○○は、二人が六年生登場、委員長と委員長代理として、委員会 会議等で諍いをした関係。
合同忍務は、作戦通りに遂行され、滞りなく終わりを告げる事が出来た。
若王寺の立てた作戦を中心に、体力勝負に有利な桜木と小平太が前線に出て、忍者達を仕留める。特に桜木は、外見だけなら徒桜 という言葉が似合うのだが、内面は全くの正反対であり、敵を欺瞞 させる事に長けている。
若王寺と長次は、自身の得意武器を生かし、近距離と遠距離攻撃を巧みに使い分け、敵の足止めや撃退に務めた。長次は、縄鏢の師匠でも若王寺との連携は抜群であり、若王寺自身も心配する事無く、敵との戦いに集中出来たのだ。
○○は、自身の俊敏さを活かして、囮役に徹した。これも若王寺の作戦の一つに組まれていた役割である。この面々の中では、○○は小柄だ。桜木同様、敵忍者に僅かながらの心の緩みを作らせる戦法を、○○は嫌がる素振りを全く見せず、ただ囮に徹した。
自分が敵を引き寄せ、桜木と小平太が、若王寺と長次が敵を薙ぎ倒す。疎外感が生まれてこようが、忍務中の○○には関係ない。今は忍務に徹する時だと、その場の悩みを解決させた。
・
「○○。桜木先輩と若王寺先輩が、肩の力を抜いて、無礼講ありの雑談でもしないかって誘ってくれたんだけど、お前どうする?」
布団の用意を終えた寝間着姿の○○は、同じく寝間着姿の小平太に声を掛けられた。
任務後、桜木と若王寺が事前に手配してくれた宿の一室で、長次、小平太、○○の三人が泊まっていた。
ちなみに桜木と若王寺は、三人の泊まる部屋とは別の部屋で宿泊予定である。
○○は言葉で返事する代わりに、小平太の手に金子を置き、空いている片方の手に和菓子が入った包みを無理やり持たせた。
小平太が何か言いかけても、○○は聞こえていない振りを貫き、布団の中へ潜っていく。
「……少しの間、席を外す」
○○の行動の意味を察した長次が、手短にそう告げてから、襖を開けて外へ出ていく。
金子と包みを持たされた小平太は、納得のいかない顔を見せたが、先へ向かう長次に置いてかれない様にと、部屋の外へ出ていった。
襖の閉まる音がして、長次と小平太の気配が遠のいたと分かると、○○は起き上がる。灯明 台に乗られた灯芯を消すと、部屋は一瞬して暗闇に包まれた。
○○は、自身の体を布団に包 せた。
仕様がない、仕様がないんだけどな……、そう思いながら、温もりが欲しいと冒頭で述べた言葉を脳内で木霊させていく。
・
「まるで、賄賂 を送られた気分だな」
目の前に置かれた金子と和菓子の包みを見て、桜木は笑顔を浮かべながら、はっきりとそう告げた。
「おい、清右衛門。冗談も程々にしろ」
「本気じゃないに決まってるだろ。名無しが、俺達二人の為に用意してくれた物を小平太を介して、持ってきてくれたのだからな」
二人の会話を姿勢を正し、正座を崩さず、微動だにしない長次と小平太は静かに聞いていた。
「せ、先輩方が頂かないのであれば、私がお先に頂いても宜しいでしょうか」
「あぁ、構わないよ」
震えた声で話し掛けた小平太に、桜木は平時の調子で返事をするのだった。
○○が用意した和菓子は、忍術学園の領地内で経営している和菓子屋で特に高価と知られる饅頭 だった。
「ぶぶ、無礼講ですから」と、小平太は"無礼講"という言葉を都合よく使い、饅頭 を頬張る。今の小平太は、桜木と若王寺相手に胆力を見せたせいで、○○が購入してくれた饅頭 の味がよく分からない。
「……何故、先輩方は○○を苗字で呼ばれるのですか」
四人の中で、一番最初に話題を提供したのは、長次だった。
饅頭 を頬張る小平太も目を丸くさせ、饅頭 の欠片を喉に詰まらせかけ、ゲホゲホと咳き込む。
「潮江や立花、食満や善法寺の事も、苗字で呼んでいたじゃないか」
「……いえ。ろ組で、私と小平太は委員会という繋がりで名前で呼んでいても、○○だけは頑なにお呼びしない所が気がかりでした」
桜木の言葉に、長次は小平太とは異なり、詰まらせる様子も見せずに饒舌に話す。
「一年間、委員会を通して、諍 いをした名残かもな」
そう返答したのは、若王寺だ。
一年前の桜木は、体育委員会 委員長。若王寺は、図書委員会 委員長。○○は五年生で唯一の火薬委員会 委員長代理であった。
「当時の六年生が委員長を務めている委員会相手でも、名無しは手を抜かなかった。むしろ、好戦的だった。五年生の委員長 代理だからと、見くびったら、名無しに背後を取られてしまうだろうなと」
まぁ、五年生相手に背後を取られる六年生など、居る筈がないけどな……、と、若王寺は、当時の六年生としてあった矜恃 をチラつかせた。
「名無しは委員会でも今回に限らず、どの忍務でも手を抜かない。忍務なら、他者を欺く事も厭わない。六年間、共にしているお前達なら、それも理解しているだろうけどな」
桜木は変わらず、涼しい顔をして○○についての評価を述べ、長次と小平太にそう言った。
長次は、先程から一言も発さずに饅頭を頬張っている小平太を横目で見た。
桜木と若王寺の話を無視していないのは、長次には分かる。小平太は、最後の饅頭の欠片を飲み込むと、口を開けた。
「○○は、甘味物を食べるのが大好きです!」
小平太は突然、桜木と若王寺に向けて、そのような事を言い出した。
「この饅頭、凄く美味いと評判で値段も高くて、学園に居る時も食べたいけど、金が足りないから貯めなきゃって、アルバイト探して稼ごうって、言ってました」
「仙蔵が買ってくる菓子も、長次が作る菓子も大好きなんですっ。食堂のおばちゃんが作る菓子も。もし、先輩方が一口も食べないのなら、私が○○の買った高い菓子を全部食べて差し上げます」
「悩みなんかあっても、自分で勝手に解決しちゃって、それでも、本当に困ってる時は、ちゃんと私達に声を掛けてくれて、何が良くて、何が嫌なのか、ちゃんと分かる様に伝えてくれて」
「私よりも足が速くて、追いつけなくて、それが○○の取り柄で、でもそれでも、私達の役に立てないとか、委員会の事とかで、凄い悩んでた時あって、あいつ、普段泣かないのに、泣いてて、その時に、あいつもちゃんと泣けるんだって知りました」
「こんな事、こんな事言うの、烏滸 がましいとは、思いますっ。でも、ぶぶ、無礼講だから、この場だから、言わせて頂きます。私達の、私達の方がっ、○○の事、先輩方よりも知ってます。言い所も、悪い所も、全部全部。その金子も、饅頭 も、○○が、先輩方の為に、用意して____、」
「小平太」
早口で捲し立てる小平太を止めたのは、長次の震える声だった。
桜木と若王寺には分からないが、小平太には長次の声が震えていると理解出来る。
上下関係の厳しい間柄である事、小平太にかつての委員会の委員長に無礼講の範疇に収まりきらない行動へ移させない様にと、長次が引き止めたのだ。だが、小平太は長次の様子から、ある事に気がつく。
(長次も、私と同じ事を考えていたのだな)
細かい事を気にしないと豪語し、自由気ままに振る舞うその姿からは、想像出来ない程、小平太は取り乱していた。
どちらかと言えば小平太よりか、情に厚い長次が取り乱す頻度が多い。止める側に回る小平太が、まさか長次に止められる等、本人も驚きだったのだ。
忍者としては落第点だが、桜木と若王寺は二人(主に小平太)が親友の○○を庇う様子を見せた事には、何も言わない。
冷静さを取り戻した小平太が、桜木と若王寺に謝罪をする。桜木は自分も揶揄いすぎたと言い、○○の用意した饅頭 に手を伸ばしていく。
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○○が合同忍務で疲れて、鬱憤を晴らす話→ちょっとした小話集(立花・善法寺)(二番目収録)
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1.桜木清右衛門、若王寺勘兵衛×夢主
色々と疲れる出来事の連続だった、五年生時代の○○のある日の話。
2.桜木清右衛門、若王寺勘兵衛
with原作版 中在家長次、七松小平太
卒業生の桜木と若王寺の依頼で、合同忍務に赴いた後の六年ろ組の話。
(○○の感じる壁の話。長次と小平太がその壁について、桜木と若王寺に聞く話)
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桜木清右衛門、若王寺勘兵衛×夢主
色々と疲れる出来事の連続だった、五年生時代の○○のある日の話。
ゲスト:七松小平太、土井半助
中在家長次(名前のみ)
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○○は、悪寒が走った。
校舎外の近辺から、とある人物の気配を感じ取り、○○はこの場から逃げ出そうと目論む。
「五年ろ組、名無し○○」
しかし、その目論見は一瞬にして散った。
○○は声を掛けてきた人物の立っていた場所に、勢いよく体の向きを変えた。
『桜木清右衛門先輩。こんにちは』
「こんにちは、名無し」
○○は表面上、元気よく挨拶をする後輩の姿を取り繕う。
それでも目の前にいる桜木には、自分が取り繕っている等、お見通しなのであろうと諦観する。
『体育委員会 委員の五年ろ組、七松小平太をお探しでしょうか?』
「いや、小平太には用具倉庫から体育委員会が後日、裏方として使用する大運動会の用具確認をして欲しいと、俺から声を掛けたから、小平太を探している訳ではないさ」
○○は、同室で体育委員の小平太の名を出して、手短に会話を終わらせようとする。
だが、桜木は○○の想定以上の
「名無し、俺は偶然、ここを通りかかった。そしてたまたま、お前を見かけたから、声を掛けたんだ。そこに関して、何か問題でもあったか?」
桜木の発言を前にして、○○は短く息を吸った。
あの"
あの並外れた体力、運動神経、怪力の持ち主の小平太でさえ、涼しい顔をして、"儚い"という言葉が似合う目の前の男に圧倒されているのだ。不用意な発言をしたら最期、どうなるのか____、
「桜木先輩!」
○○が必死に言葉を選んでいた時、遠方から小平太の声が聞こえてきた。
桜木は、○○から小平太の声が聞こえた方向に顔を向ける。
「備品は全て、用具倉庫に揃ってありました」
「御苦労。今日は随分と早く確認が済んだ様だが……備品の不備の見落としも、数の不足も無く、完璧にこなしたという事で良いのか?」
「はい!」
小平太の額には、汗が垂れている。
有り余る体力を持つ小平太が、そう簡単に汗を流す事はない。ならば、その汗は体育委員会 委員長の桜木への恐れから出てきた冷や汗だ。
「よし、判った。では今から、俺と一緒に再確認しに向かおう。名無し、お前と話した時間は、小平太を待つ間の良い時間潰しになった。では、失礼する」
『はい。委員会活動、頑張ってください。失礼します』
○○は深くお辞儀をした。桜木と小平太の二人が見えなくなるまで姿勢を保つ。
ようやく二人の気配が消えたと分かれば、○○は顔を上げた。桜木との会話で、張りつめていた緊張が一気に解れていく。
(若王寺勘兵衛先輩の所に、行かなきゃならないのに。もう指定した時間、過ぎてるよなぁ)
○○は、疲れきった顔をしている。
火薬委員会 委員長代理の仕事として、図書室に赴くつもりであった○○だったが、思わぬ人物に声を掛けられ、大きな溜息をついた。
・
「失礼します。若王寺図書委員会 委員長、火薬委員会 委員長代理、名無し○○です」
○○は挨拶をして、図書室に入っていく。
受付には、下級生の図書委員が貸出カードの確認を行っている。奥の本棚では、同じ五年ろ組の中在家長次が書物の整理に励んでいた。
「名無し、来るのが遅かったな」
『すみません』
「怒っている訳ではない。ほら、火薬の新本だ」
○○に声を掛けたのは、若王寺だった。
指定した時間より、図書室を尋ねるのが遅くなった事を謝罪する○○だった。
そして、若王寺から火薬に関する情報が記載された書物を受け取った。
『ありがとうございます』
書物を受け取ってすぐ、○○は桜木の前でも見せた、深いお辞儀をする。
「訓練の方、調子はどうだ」
若王寺から突然、話を振られた○○は驚いた。
どうやら顔にも出ていた様で、若王寺は困った様に眉を下げる。
「肩の力を抜いてくれて良い。これは、雑談だ」
若王寺に気を遣わせてしまったと思うも、先輩相手に緊張するのは仕様がないだろうと、○○言葉に出さず、心の中で解決した。
「手裏剣の命中率は以前、若王寺先輩からごしつもされた時と変わらずです。静定剣は、どうしても、普段の生活の中で発揮出来ない物ではありますので、不安材料ではありますね』
静定剣とは、手裏剣を持ち合わせていない状況に遭った時、短刀や包丁等の刃物を敵に
「そうか。足の方も変わらずという事か」
『はい。ランニングは継続中。裏々々々山までは何らかの事態に遭遇しなければ、特に問題なく____、』
「長次、活動に集中しろ。書物を整理する手が止まっている。同室がそんなに気になるか?」
本棚の向こうから、長次の謝罪が聞こえた。
○○は、長次が若王寺に注意された光景を物珍しく思う。
委員会活動には真面目に取り組み、若王寺からも頼りにされていると噂を聞いていた事もあったが、長次にもそういう日はあるか…、と、気にしない方向で問題を解決した。
『それでは、失礼します』
その後、若王寺との会話を終えた○○は、図書室を後にする。
最後に職員室に向かい、土井半助の居る部屋の前に到着した。引き戸を叩くと、部屋の向こうから土井の声が聞こえてくる。
『土井先生。火薬委員会 委員長代理、名無しです』
「あぁ、名無しか。入っていいよ」
『失礼します』
○○は土井の部屋に入り、引き戸を閉める。
若王寺から受け取った書物は、火薬委員会の活動で使用する物であった。
「名無し、大丈夫か?」
『えっ?』
「顔が疲れている」
部屋に入ってきてから、疲れた顔を必死に隠そうとする○○に、土井は気遣いを見せた。
教師相手に誤魔化しは効かないと分かっている○○は、土井にこれまでの経緯を簡略化して、説明した。
「あぁ、桜木と若王寺か。彼らも君達、五年生を気にかけているんだよ」
土井は内心、○○に対しての言葉選びに慎重であった。
○○をはじめ、五年生全員が桜木と若王寺、他の六年生に対して尋常ではない程に警戒しているのではないかと思っていたからだ。
そう思った理由として、五年生全員が桜木に向けて、深いお辞儀をしていたと下級生から聞かされ、何事かと思い、桜木に話を聞いた。
桜木からは、五年生は六年生に対して、尊敬の意を示す手法が大袈裟であり、それを見た下級生が騒ぎを起こしてしまった。そう思わせた六年生にも原因であると、涼しい顔をして言ったのだ。
「委員会で、肩身の狭い思いをしている筈だ。けれど、来年は五年生が委員長に就く。少しは気が楽になれるさ」
今年の委員会にて、○○ただ一人、委員長代理となっていた。その他の委員会は全員、六年生。
委員会 全体会議や予算会議で、六年生からの圧を受けながらも、後輩を引き連れ、必死に予算をもぎ取ろうとする○○を見てきたからこそ、一年後には、気の知れた学友が委員長となり、精神的負担も軽くなるのではと土井は思った。
だが、○○の心中は土井の想像と全く違っていた。
(土井先生……確かに俺は、六年生の先輩方に挟まれ、肩身の狭い思いはしています。ですが……来年の会計委員長は、五年い組の潮江文次郎が就かれます! そして、今年の様に予算会議が大揉めになるに違いありません!)
今だけでなく、六年生に進級してからも続く受難に○○は一人、嘆くのだった。
※
2.桜木清右衛門、若王寺勘兵衛
with原作版 中在家長次、七松小平太
卒業生の桜木と若王寺の依頼で、合同忍務に赴いた後の六年ろ組の話。
(〇〇の感じる壁の話。長次と小平太がその壁について、桜木と若王寺に聞く話)
※委員会事情の捏造あり
ゲスト:大川平次渦正
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温もりが欲しい。
布団にくるまって得られる偽りの温もりではなく、他者に関わり、触れ合う事で得られる、安心できる、平時の自分を取り戻せる、温もりが。
先般(三週間前)の事だった。
忍術学園に、卒業生の桜木清右衛門と若王寺勘兵衛が学園長の大川平次渦正の元へ尋ねた。
卒業以来の再会であり、学園長は二人からの手土産と煎じた茶を嗜みながら、学園時代の話や卒業後の話に花を咲かせる。
一段落が着いた所で、桜木と若王寺は学園長にとある相談を持ちかけた。
内容は、忍術学園の領地内で、不審な動きを見せる忍者隊を発見。
忍術学園と因縁のあるドクタケ忍者隊とは、また別の国の忍者隊が、"変わり身の術"を用いて、身分や姿を偽った姿で領地内に足を踏み入れていると、桜木と若王寺は告げた。
忍術界の重鎮の大川平次渦正の領地内で、戦を仕掛けようと目論むなら、死を意味する。それを身をもって分からせねばならないと思うも、二人はまず忍術学園を尋ねたのだ。
「つきましては、忍術学園の実力ある最上級生のお力をお借り出来たらと思った所存です」
「なるほどな。いいじゃろう……どの生徒を忍務に同行させるかは、其方で決めてくれて構わん」
若王寺の言葉に、難色を示す事もなく、学園長は快諾した。二人は感謝の言葉を述べてから、三人の生徒の名前を告げたのだ。
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桜木と若王寺の忍務に同行する事になったのは、六年ろ組の中在家長次、七松小平太、名無し○○だった。
桜木と小平太、若王寺と長次は委員会の先輩後輩の関係。
桜木、若王寺と○○は、二人が六年生登場、委員長と委員長代理として、委員会 会議等で諍いをした関係。
合同忍務は、作戦通りに遂行され、滞りなく終わりを告げる事が出来た。
若王寺の立てた作戦を中心に、体力勝負に有利な桜木と小平太が前線に出て、忍者達を仕留める。特に桜木は、外見だけなら
若王寺と長次は、自身の得意武器を生かし、近距離と遠距離攻撃を巧みに使い分け、敵の足止めや撃退に務めた。長次は、縄鏢の師匠でも若王寺との連携は抜群であり、若王寺自身も心配する事無く、敵との戦いに集中出来たのだ。
○○は、自身の俊敏さを活かして、囮役に徹した。これも若王寺の作戦の一つに組まれていた役割である。この面々の中では、○○は小柄だ。桜木同様、敵忍者に僅かながらの心の緩みを作らせる戦法を、○○は嫌がる素振りを全く見せず、ただ囮に徹した。
自分が敵を引き寄せ、桜木と小平太が、若王寺と長次が敵を薙ぎ倒す。疎外感が生まれてこようが、忍務中の○○には関係ない。今は忍務に徹する時だと、その場の悩みを解決させた。
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「○○。桜木先輩と若王寺先輩が、肩の力を抜いて、無礼講ありの雑談でもしないかって誘ってくれたんだけど、お前どうする?」
布団の用意を終えた寝間着姿の○○は、同じく寝間着姿の小平太に声を掛けられた。
任務後、桜木と若王寺が事前に手配してくれた宿の一室で、長次、小平太、○○の三人が泊まっていた。
ちなみに桜木と若王寺は、三人の泊まる部屋とは別の部屋で宿泊予定である。
○○は言葉で返事する代わりに、小平太の手に金子を置き、空いている片方の手に和菓子が入った包みを無理やり持たせた。
小平太が何か言いかけても、○○は聞こえていない振りを貫き、布団の中へ潜っていく。
「……少しの間、席を外す」
○○の行動の意味を察した長次が、手短にそう告げてから、襖を開けて外へ出ていく。
金子と包みを持たされた小平太は、納得のいかない顔を見せたが、先へ向かう長次に置いてかれない様にと、部屋の外へ出ていった。
襖の閉まる音がして、長次と小平太の気配が遠のいたと分かると、○○は起き上がる。
○○は、自身の体を布団に
仕様がない、仕様がないんだけどな……、そう思いながら、温もりが欲しいと冒頭で述べた言葉を脳内で木霊させていく。
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「まるで、
目の前に置かれた金子と和菓子の包みを見て、桜木は笑顔を浮かべながら、はっきりとそう告げた。
「おい、清右衛門。冗談も程々にしろ」
「本気じゃないに決まってるだろ。名無しが、俺達二人の為に用意してくれた物を小平太を介して、持ってきてくれたのだからな」
二人の会話を姿勢を正し、正座を崩さず、微動だにしない長次と小平太は静かに聞いていた。
「せ、先輩方が頂かないのであれば、私がお先に頂いても宜しいでしょうか」
「あぁ、構わないよ」
震えた声で話し掛けた小平太に、桜木は平時の調子で返事をするのだった。
○○が用意した和菓子は、忍術学園の領地内で経営している和菓子屋で特に高価と知られる
「ぶぶ、無礼講ですから」と、小平太は"無礼講"という言葉を都合よく使い、
「……何故、先輩方は○○を苗字で呼ばれるのですか」
四人の中で、一番最初に話題を提供したのは、長次だった。
「潮江や立花、食満や善法寺の事も、苗字で呼んでいたじゃないか」
「……いえ。ろ組で、私と小平太は委員会という繋がりで名前で呼んでいても、○○だけは頑なにお呼びしない所が気がかりでした」
桜木の言葉に、長次は小平太とは異なり、詰まらせる様子も見せずに饒舌に話す。
「一年間、委員会を通して、
そう返答したのは、若王寺だ。
一年前の桜木は、体育委員会 委員長。若王寺は、図書委員会 委員長。○○は五年生で唯一の火薬委員会 委員長代理であった。
「当時の六年生が委員長を務めている委員会相手でも、名無しは手を抜かなかった。むしろ、好戦的だった。五年生の委員長 代理だからと、見くびったら、名無しに背後を取られてしまうだろうなと」
まぁ、五年生相手に背後を取られる六年生など、居る筈がないけどな……、と、若王寺は、当時の六年生としてあった
「名無しは委員会でも今回に限らず、どの忍務でも手を抜かない。忍務なら、他者を欺く事も厭わない。六年間、共にしているお前達なら、それも理解しているだろうけどな」
桜木は変わらず、涼しい顔をして○○についての評価を述べ、長次と小平太にそう言った。
長次は、先程から一言も発さずに饅頭を頬張っている小平太を横目で見た。
桜木と若王寺の話を無視していないのは、長次には分かる。小平太は、最後の饅頭の欠片を飲み込むと、口を開けた。
「○○は、甘味物を食べるのが大好きです!」
小平太は突然、桜木と若王寺に向けて、そのような事を言い出した。
「この饅頭、凄く美味いと評判で値段も高くて、学園に居る時も食べたいけど、金が足りないから貯めなきゃって、アルバイト探して稼ごうって、言ってました」
「仙蔵が買ってくる菓子も、長次が作る菓子も大好きなんですっ。食堂のおばちゃんが作る菓子も。もし、先輩方が一口も食べないのなら、私が○○の買った高い菓子を全部食べて差し上げます」
「悩みなんかあっても、自分で勝手に解決しちゃって、それでも、本当に困ってる時は、ちゃんと私達に声を掛けてくれて、何が良くて、何が嫌なのか、ちゃんと分かる様に伝えてくれて」
「私よりも足が速くて、追いつけなくて、それが○○の取り柄で、でもそれでも、私達の役に立てないとか、委員会の事とかで、凄い悩んでた時あって、あいつ、普段泣かないのに、泣いてて、その時に、あいつもちゃんと泣けるんだって知りました」
「こんな事、こんな事言うの、
「小平太」
早口で捲し立てる小平太を止めたのは、長次の震える声だった。
桜木と若王寺には分からないが、小平太には長次の声が震えていると理解出来る。
上下関係の厳しい間柄である事、小平太にかつての委員会の委員長に無礼講の範疇に収まりきらない行動へ移させない様にと、長次が引き止めたのだ。だが、小平太は長次の様子から、ある事に気がつく。
(長次も、私と同じ事を考えていたのだな)
細かい事を気にしないと豪語し、自由気ままに振る舞うその姿からは、想像出来ない程、小平太は取り乱していた。
どちらかと言えば小平太よりか、情に厚い長次が取り乱す頻度が多い。止める側に回る小平太が、まさか長次に止められる等、本人も驚きだったのだ。
忍者としては落第点だが、桜木と若王寺は二人(主に小平太)が親友の○○を庇う様子を見せた事には、何も言わない。
冷静さを取り戻した小平太が、桜木と若王寺に謝罪をする。桜木は自分も揶揄いすぎたと言い、○○の用意した
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○○が合同忍務で疲れて、鬱憤を晴らす話→ちょっとした小話集(立花・善法寺)(二番目収録)
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