ドクタケ忍者隊 最強の軍師
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「助かったぜ、長次」
雑兵から離れたのを確認し、文次郎は自分達の危機を助けてくれた長次に礼を言う。
長次は「もそ…」と返事をしたが、文次郎には内容が聞き取れなかった。
「助けた八人は、留三郎と伊作が脱出させてるって」
小平太の通訳を聞いた文次郎だったが、人数が足りない事に気がつくと、顔を顰 めた。
「乱きりしんは、別行動で土井先生を探してるんだって」
「ったく。留の野郎、何やってんだ」
『"留三郎のせいじゃない。助ける前に、自力で牢を破った"……、らしい』
小平太に続き、○○も長次の言葉を通訳して、文次郎に伝える。
「何でお前ら、"もそ"だけで、そこまで分かんだよ!」
文次郎が、長次の言葉を通訳出来る小平太と○○にツッコミを入れたが、小平太と○○は変わらず無表情で、返事は無い。
「おい」
そんな中、仙蔵はある場所に目をつけた。
砦からそう遠くない位置にある、巨大な岩場に削られた穴から、灯りが漏れ出ていた。
砦内に、天鬼と八宝斎の姿は見当たらなかった。不自然に漏れ出ていた灯りを見て、五人はその場所に二人が居るのではないかと推察した。
同じく、山田も天鬼と八宝斎がそこに居るのではないかと推察し、向かっている真っ最中である。
・
六年生の五人と山田が動き出した頃、巨大な岩場の内部に根城を作った八宝斎は、悪い笑みを浮かべていた。
ここは、天鬼の待ち構えていた部屋。
倉庫から脱走した乱太郎、きり丸、しんベヱが自分の根城に忍び込み、自分の目の前に姿を現した所をドクタケ忍者達に捕らえさせた。
土井を連れ戻すと豪語する三人を見て、八宝斎は天鬼の元へ連れて来させたのだ。
「この三人を斬れ」
「こんな子供を……?」
首領である八宝斎から命令を下されるも、天鬼は、無関係と思わしき子供相手を斬首する事に疑問を抱き、躊躇 う。
「このガキンチョ共は、忍術学園の手の者だぞ」
それを聞いた天鬼は、乱太郎、きり丸、しんベヱを見る目付きが鋭くなった。
猿轡を解いた乱太郎、きり丸、しんベヱは、自由に口が動かせる様になったと分かれば、天鬼を見た。
「土井先生!」
「ここで、何やってるんですか!」
乱太郎、しんベヱが土井の名前を出すも、天鬼は反応を示さない。
そんな中で、きり丸はただ一人、ドクタケ忍者隊詰所付近の竹林で見かけて以来であり、改めて天鬼こと土井の姿を見ると、瞳が潤む。
「やっと……会えた………っ」
天鬼は、乱太郎、きり丸、しんベヱの三人を見ても、自分が土井半助であると思い出さない。何故、自分の事を土井先生と呼ぶのかと疑問を抱くのみ。
「私は、土井先生ではない」
天鬼は、他者を威圧する様な声色を三人に向けた。だが、三人にとっては土井である事に変わりなく、抗議の声を上げ始める。
「何言ってるんですか! どこからどう見たって、土井先生じゃないですか!」
「先生が居なくなって私達、どうなってると思います!?」
「雑渡さんに、授業を習ってなんですよ! あの怖い目で睨まれて、欠伸がしゃっくりになっちゃいますよ!!」
乱太郎、しんベヱは、土井と山田が不在の間、タソガレドキ任軍の組頭、雑渡の教えを受けていた事を叫んで伝えるも、反応は無い。
「先生……僕の事、分からないの?」
「……お前など知らぬ」
きり丸の問いかけに対して、眉を下げつつも、天鬼は冷たい雰囲気を漂わせて、そう言い放つ。
それを聞いたきり丸は、本当に記憶喪失であると嫌でも理解させられ、項垂れる。
自分の教え子を前にしても、記憶を思い出す事のない天鬼を見て、八宝斎は笑みを見せる。
その中で風鬼 は、乱太郎、きり丸、しんベヱの三人を哀れに思ったのか、眉を下げて困ったような表情を浮かべていた。
きり丸の項垂れる姿を見た乱太郎としんベヱも、眉を下げて困った様な顔をしたが、しんベヱはある事を思い出す。
「あっ、分かった!」
「何? しんベヱ」
この状況に似合わぬ明るい声を上げたしんベヱに、乱太郎が問いかける。
「先生は今、ある術をドクタケに使ってるんだよ。敵に自分を信用させた後、突然裏切ってやっつける……」
「あぁ、あったね。確か……」
しんベヱと乱太郎は、いつか受けた土井の授業で習った忍術の名前を思い出した。
「手のひら返しの術!!」
「袋返しの術だ!」
二人が言い放った術の名前が間違っていると、天鬼は思わず反応して、そう訂正した。
「天鬼! こいつらの言葉に、耳を貸すな!」
天鬼の思わぬ行動を間近で見た八宝斎が、三人の斬首を焦らされていたのも合わさり、記憶を思い出されない様にと、天鬼に声を掛ける。
「えー? そうでしたっけ?」
「それは聞いた事、ないような……」
乱太郎としんベヱが、呑気にそう言った。
その中で、きり丸は天鬼が記憶喪失でありながらも、僅かながらに自分達の事を覚えているのではないかと、希望を抱き始めた。
「そうか! まだ習ってないんだ!!」
「教えた筈だ!」
乱太郎としんベヱがそう言うと、天鬼はまたしても、口を挟んで言い放った。
「うっ……!」
「どうした! 天鬼!」
「急に胃が……っ!」
天鬼は、土井が一年は組の生徒達の物覚えの悪さ等から引き起こす胃痛を、ここで引き起こす。乱太郎、しんベヱの見当違いな発言を聞いて、体が引き起こした反応だ。
「しっかりしろ! こいつらを斬れば、その痛みも無くなる!」
八宝斎の言葉を受けて、しばらくしてからだった。土井の瞳に、赤茶色が彩られた。ドクタケ忍者隊詰所付近で、六年生と対峙した時に見せた物と同じだ。
天鬼は太刀を構えると、乱太郎、きり丸、しんベヱに向ける。乱太郎としんベヱが悲鳴を上げる中、きり丸は怯える様子を一切見せずに、天鬼の目を見つめていた。
「己の命より、銭大事!」
きり丸の言葉を聞いた天鬼の動きが止まった。それは、自分の命よりも銭を優先するきり丸を土井が叱りつけた記憶が、天鬼を止めたのだろう。
「バイト一番、宿題二番!」
「テストの点数、目の検査!」
「予習、何それ美味しいの?」
きり丸に続き、乱太郎としんベヱも大声で言い始めると、天鬼は再び、胃痛に襲われる。
だが、憎き忍術学園の生徒であるならば、八宝斎の命に従い、斬首しなければ……、天鬼は、改めて太刀を構えた。
「掴んだ銭は、離しません!」
「四里先の銭落つる音!」
「スペシャル雑炊、バッタ入り!」
「卵売るときゃ、烏骨鶏 !」
「手裏剣は、勿体なくて打てません!!」
「まきびしは、勿体なくて巻けません!!」
しかし、きり丸も負けじと言葉を発し続けた。目から涙を零し、必死に天鬼に呼びかける。
太刀を下ろそうとする天鬼に襲いかかる胃痛は、まるで乱太郎、きり丸、しんベヱを斬首するなと、体が必死に止めている様にも思えた。
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「助かったぜ、長次」
雑兵から離れたのを確認し、文次郎は自分達の危機を助けてくれた長次に礼を言う。
長次は「もそ…」と返事をしたが、文次郎には内容が聞き取れなかった。
「助けた八人は、留三郎と伊作が脱出させてるって」
小平太の通訳を聞いた文次郎だったが、人数が足りない事に気がつくと、顔を
「乱きりしんは、別行動で土井先生を探してるんだって」
「ったく。留の野郎、何やってんだ」
『"留三郎のせいじゃない。助ける前に、自力で牢を破った"……、らしい』
小平太に続き、○○も長次の言葉を通訳して、文次郎に伝える。
「何でお前ら、"もそ"だけで、そこまで分かんだよ!」
文次郎が、長次の言葉を通訳出来る小平太と○○にツッコミを入れたが、小平太と○○は変わらず無表情で、返事は無い。
「おい」
そんな中、仙蔵はある場所に目をつけた。
砦からそう遠くない位置にある、巨大な岩場に削られた穴から、灯りが漏れ出ていた。
砦内に、天鬼と八宝斎の姿は見当たらなかった。不自然に漏れ出ていた灯りを見て、五人はその場所に二人が居るのではないかと推察した。
同じく、山田も天鬼と八宝斎がそこに居るのではないかと推察し、向かっている真っ最中である。
・
六年生の五人と山田が動き出した頃、巨大な岩場の内部に根城を作った八宝斎は、悪い笑みを浮かべていた。
ここは、天鬼の待ち構えていた部屋。
倉庫から脱走した乱太郎、きり丸、しんベヱが自分の根城に忍び込み、自分の目の前に姿を現した所をドクタケ忍者達に捕らえさせた。
土井を連れ戻すと豪語する三人を見て、八宝斎は天鬼の元へ連れて来させたのだ。
「この三人を斬れ」
「こんな子供を……?」
首領である八宝斎から命令を下されるも、天鬼は、無関係と思わしき子供相手を斬首する事に疑問を抱き、
「このガキンチョ共は、忍術学園の手の者だぞ」
それを聞いた天鬼は、乱太郎、きり丸、しんベヱを見る目付きが鋭くなった。
猿轡を解いた乱太郎、きり丸、しんベヱは、自由に口が動かせる様になったと分かれば、天鬼を見た。
「土井先生!」
「ここで、何やってるんですか!」
乱太郎、しんベヱが土井の名前を出すも、天鬼は反応を示さない。
そんな中で、きり丸はただ一人、ドクタケ忍者隊詰所付近の竹林で見かけて以来であり、改めて天鬼こと土井の姿を見ると、瞳が潤む。
「やっと……会えた………っ」
天鬼は、乱太郎、きり丸、しんベヱの三人を見ても、自分が土井半助であると思い出さない。何故、自分の事を土井先生と呼ぶのかと疑問を抱くのみ。
「私は、土井先生ではない」
天鬼は、他者を威圧する様な声色を三人に向けた。だが、三人にとっては土井である事に変わりなく、抗議の声を上げ始める。
「何言ってるんですか! どこからどう見たって、土井先生じゃないですか!」
「先生が居なくなって私達、どうなってると思います!?」
「雑渡さんに、授業を習ってなんですよ! あの怖い目で睨まれて、欠伸がしゃっくりになっちゃいますよ!!」
乱太郎、しんベヱは、土井と山田が不在の間、タソガレドキ任軍の組頭、雑渡の教えを受けていた事を叫んで伝えるも、反応は無い。
「先生……僕の事、分からないの?」
「……お前など知らぬ」
きり丸の問いかけに対して、眉を下げつつも、天鬼は冷たい雰囲気を漂わせて、そう言い放つ。
それを聞いたきり丸は、本当に記憶喪失であると嫌でも理解させられ、項垂れる。
自分の教え子を前にしても、記憶を思い出す事のない天鬼を見て、八宝斎は笑みを見せる。
その中で
きり丸の項垂れる姿を見た乱太郎としんベヱも、眉を下げて困った様な顔をしたが、しんベヱはある事を思い出す。
「あっ、分かった!」
「何? しんベヱ」
この状況に似合わぬ明るい声を上げたしんベヱに、乱太郎が問いかける。
「先生は今、ある術をドクタケに使ってるんだよ。敵に自分を信用させた後、突然裏切ってやっつける……」
「あぁ、あったね。確か……」
しんベヱと乱太郎は、いつか受けた土井の授業で習った忍術の名前を思い出した。
「手のひら返しの術!!」
「袋返しの術だ!」
二人が言い放った術の名前が間違っていると、天鬼は思わず反応して、そう訂正した。
「天鬼! こいつらの言葉に、耳を貸すな!」
天鬼の思わぬ行動を間近で見た八宝斎が、三人の斬首を焦らされていたのも合わさり、記憶を思い出されない様にと、天鬼に声を掛ける。
「えー? そうでしたっけ?」
「それは聞いた事、ないような……」
乱太郎としんベヱが、呑気にそう言った。
その中で、きり丸は天鬼が記憶喪失でありながらも、僅かながらに自分達の事を覚えているのではないかと、希望を抱き始めた。
「そうか! まだ習ってないんだ!!」
「教えた筈だ!」
乱太郎としんベヱがそう言うと、天鬼はまたしても、口を挟んで言い放った。
「うっ……!」
「どうした! 天鬼!」
「急に胃が……っ!」
天鬼は、土井が一年は組の生徒達の物覚えの悪さ等から引き起こす胃痛を、ここで引き起こす。乱太郎、しんベヱの見当違いな発言を聞いて、体が引き起こした反応だ。
「しっかりしろ! こいつらを斬れば、その痛みも無くなる!」
八宝斎の言葉を受けて、しばらくしてからだった。土井の瞳に、赤茶色が彩られた。ドクタケ忍者隊詰所付近で、六年生と対峙した時に見せた物と同じだ。
天鬼は太刀を構えると、乱太郎、きり丸、しんベヱに向ける。乱太郎としんベヱが悲鳴を上げる中、きり丸は怯える様子を一切見せずに、天鬼の目を見つめていた。
「己の命より、銭大事!」
きり丸の言葉を聞いた天鬼の動きが止まった。それは、自分の命よりも銭を優先するきり丸を土井が叱りつけた記憶が、天鬼を止めたのだろう。
「バイト一番、宿題二番!」
「テストの点数、目の検査!」
「予習、何それ美味しいの?」
きり丸に続き、乱太郎としんベヱも大声で言い始めると、天鬼は再び、胃痛に襲われる。
だが、憎き忍術学園の生徒であるならば、八宝斎の命に従い、斬首しなければ……、天鬼は、改めて太刀を構えた。
「掴んだ銭は、離しません!」
「四里先の銭落つる音!」
「スペシャル雑炊、バッタ入り!」
「卵売るときゃ、
「手裏剣は、勿体なくて打てません!!」
「まきびしは、勿体なくて巻けません!!」
しかし、きり丸も負けじと言葉を発し続けた。目から涙を零し、必死に天鬼に呼びかける。
太刀を下ろそうとする天鬼に襲いかかる胃痛は、まるで乱太郎、きり丸、しんベヱを斬首するなと、体が必死に止めている様にも思えた。
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