短編
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アニメ版 六年生×夢主
演劇『牛郎織女』(現在でいう七夕伝説)を一年は組に向けて、開演する事となった話。
ゲスト:一年は組の生徒達、土井半助、山田伝蔵、大川平次渦正
・
「六年生で演劇ぃ??」
六年い組の長屋に集められた、仙蔵と長次を除いた面々の声が揃った。
『どうして、またそんな事に?』
「"学園長先生の突然の思いつき"…、だそうだ」
仙蔵の返答を聞いた○○は、あぁ…、と、納得のいった様子を見せた。
「学年対抗で開催するなら分かるけど、どうしてまた六年生と名指しなのかな」
「あぁ、実は……」
伊作の問いかけを聞き、仙蔵が事の発端を話し出そうとした時、文次郎が立ち上がる。
「学園長先生が、忍術学園に危害を及ぼす曲者を呼び込ませる為に開催するのかもしれない!」
「お決まりのアレか! そうとなれば、六年生の私達の出番と言う訳だ!」
「曲者相手なら、武道派忍者と呼ばれるこの俺が!」
文次郎に続き、小平太と留三郎も立ち上がり、まだ見もしていない曲者相手に、武器を構えるのだった。
「いや、一年は組の授業を拝見して、思いつかれたそうだ」
だが、それを仙蔵がすぐに否定した。
文次郎、小平太、留三郎の三人がドドッと倒れ込むも、文次郎が"一年は組"という単語に反応を示す。
「また一年は組の奴等か……今度は、何をしでかしたんだ?」
そこから、仙蔵が事の発端を語り始める。
国語の授業で、明(現在の中国)の民話『牛郎 織女 』の音読を行っていた所、一年は組の面々が話の内容を理解出来ず、授業にならなかったという。
その授業風景を目撃した学園長先生は、一年生にも分かりやすく伝えられる手立ては無いのかと考えた。そこで、"牛郎 織女 "を演劇の形で一年は組に見せれば、分かりやすいのではないかと思いついた。
それを聞いた土井は、今期の授業がまた遅れてしまうと胃を痛めていたらしい。
「もそ…貴重な書物として、本来は貸出等は出来ないのだが、今回は学園長先生の命もあり、持ち出しの許可が出された。少しでも汚したり破る様なら、容赦はしない」
長次は、手にしていた書物を見せたから、不気味な笑みを浮かべた。
今回の演劇において、天帝 、織女 、牽牛郎 、カササギ、語り手の五つの役に振り分けられる。
挙手制だと口論になるからと、平等を期す為に、くじ引きで配役を決めると仙蔵から伝えられた。
「ちなみに、今回の演劇に関してはお前達、五人に出てもらう」
仙蔵が指した五人とは、文次郎、小平太、○○、留三郎、伊作だ。
「長次は、図書委員会 委員長として、一年生にも分かりやすく演劇が見れる様にと、演劇用の脚本を制作する事となっている」
仙蔵は、まず長次が演劇に参加出来ない理由を述べた。演劇用の脚本を制作するだけでも、時間を要される。そこに劇の出演も兼ねるとなれば、長次だけ負担が大きいからだ。
「それに私は、お前達の衣装の採寸やらと山積みでな。そこの納得のいかない顔をしている、六年い組の潮江文次郎。何なら、私と変わってくれても構わないぞ。これは、上級生のくのたまと合同で行うのだからな」
仙蔵の口から、"上級生のくのたま"と単語が出された瞬間、文次郎は分かりやすく苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
「学園長先生の命とは言え、上級生のくのたま達は内心、お冠に違いない。どうして、忍たまなんかの為に、時間を割かなくてはならないのかと……」
文次郎の顔色が青くなっているのに対して、仙蔵は変わらず、涼しい顔をしている。
くのたまは、これまで、自分達に散々な目に遭わせてきた女というのが、六年生の共通認識だ。
下級生のくのたまの仕打ちは、まだ可愛いと思える物ばかりだと、上級生のくのたまの仕打ちを受ける度に思うのだ。
「仙蔵……今回ばかりは、お前に譲ってやろう」
上級生のくのたまと同じ空間で過ごす等、忍術学園一、ギンギンに忍者している文次郎にとっても、地獄である。
文次郎は、"上級生のくのたまが怖いから"という理由は述べずに、そう言った。
「上級生のくのたまが怖いと、素直に言えばいいだろ」
「誰が怖いと言った、留三郎! お前だって、上級生のくのたまと関わるのは御免だと言ってただろ! お前が俺に小言を言える立場か!」
「何だと、やる気か! 相手にしてやるよ!」
「上等だ! どこからでも、かかってこい!」
文次郎と留三郎の喧嘩が始まろうとも、仙蔵は気にする様子もない。くじを用意して、残りの三人の前に持っていく。
「小平太、○○、伊作。先に決めていいぞ」
そう言われ、小平太と○○はなんの躊躇いもなく、くじを引いた。二人の喧嘩が気になりつつも、伊作もくじを引く。
「文次郎、留三郎。後は、お前達だけだ」
・
一週間後、一年は組の教室では、演劇の開演準備が進められていたのだ。
生徒用の机と教卓は、隅に整頓されており、は組の生徒全員が部屋の中央で固まって座っている。
六年生の姿が見えない様、入口側の引き戸近くに、教室の天井から床までの長さとなる、巨大な幕が貼られていた。
「また、一年は組の授業が遅れてしまう……うぅっ……胃が痛い…っ」
「まぁ、土井先生。授業の一環として、図書委員会 委員長の中在家が、一年は組にも分かりやすく見れる様に、劇の脚本を制作したみたいですから……」
この後、開演される演劇を楽しみにする一年は組の生徒を他所に、土井は授業の遅れを気にして、胃痛が襲ってきているのだ。
そんな土井にフォローを入れる山田だが、内心は授業の遅れを気にしている。
同時刻、一年は組の教室前の廊下では、六年生全員が待機していた。演劇に参加する五人は既に衣装を着ており、準備万端だ。
「いいか。土井先生と山田先生以外には、誰が何の役を担当するかは一切、知らせていない。横で待機するお前達も決して、口を滑らすんじゃないぞ」
「分かってる! 口を閉じてれば、良いのだろう?」
「もそ…小平太。息を止めろとまでは、仙蔵も言っていない」
仙蔵の言葉を別の意味で捉えた小平太が、息を吸い上げてから、呼吸を止めたのを見て、長次が言葉をかけた。
【今から、六年生による演劇『牛郎 と織女 』が始まります。物語の語り手は、六年は組の善法寺伊作が務めますので、一年は組のみんな、僕達の演劇を楽しんで観てね】
くじで語り手を引いた伊作が、一年は組の生徒の前に現れると、開演の呼びかけを行う。
「伊作先輩だ!」
「語り手だったら、伊作先輩の不運体質も発動しないと思うし、安心して見れそうだな」
乱太郎は、自身の所属する保健委員会の委員長が出てきた事で、感嘆とした声を上げる。
それに対して、伊作の不運が発動しないであろうと安心するきり丸であった。
【昔々、河西 という土地には、天帝 様と呼ばれる、とても偉いお方が居ました。】
「偉いお方?」
「学園長先生より偉いのかな?」
伊作の語りを聞いた夢前三治郎、笹山兵太夫が、天帝が学園長よりも偉いのかと些細な事を気にしだした。
するとそこに、くじで天帝役に引いた文次郎が舞台上に現れる。
一年は組の前に姿を見せると、文次郎が委員長を務める会計委員会 委員の加藤団蔵が反応した。
「あっ! 潮江文次郎先輩!」
「ちゃんと役名で呼ばんか、団蔵! 授業にならんだろ!」
役名でなく、自分の名前を読んだ団蔵に、文次郎も演劇と関係なく指摘するのだった。
「えぇ? 潮江先輩なのに?」
「天帝 様は、潮江先輩が演じられる役だ。ここでは、役名で呼ばないと」
すかさず、学級委員長を務める黒木庄左ヱ門が団蔵の疑問に答える。
【天帝 様には、潮江文次郎というお名前がありますが、天帝 様と呼ばれているのです。】
一年は組の生徒達のざわつきを見た伊作は、即座にアドリブを入れる。それを聞いた一年は組の生徒達から、笑いが漏れ出した。
「まぁ、出だしは順調だな……」
廊下から、舞台上に立つ文次郎と一年は組の様子を伺っていた仙蔵が、小声で呟く。
長次も顔には出ていないものの、一年は組の生徒達が自分が脚本を担当した劇を楽しんでいるのを内心、嬉しいと思っている。
【そんな天帝様には、一人娘が居ました。娘の名前は織女 と言います。】
伊作の語りが再開すると、舞台上に織女役を引き当てた○○が姿を見せた。
伊作と同じ長さの黒髪を唐輪 にして纏め上げ、余った横髪をもみ上げ代わりにして、女性らしさを作り上げていた。
「あの女の人って…… 名無し先輩!?」
「ほんとだ! いつも違う髪で、歩き方も違うから気が付かなかった!」
○○が委員長を務める火薬委員会 委員の二郭 伊助が一番に反応し、続いて、佐武虎若が○○の髪だけでなく、所作にも注目した。
「えぇ! 名無し先輩のお父さんって、潮江先輩だったの!?」
「似てないねー」
だが、伊作の語りを聞いて、○○が文次郎の娘だと勘違いした皆本金吾と福富しんべヱが声を上げると、舞台上の文次郎と○○がずっこけた。
『年の差だよ、年の差』
「同い年だろ」
女性の役という事で、裏声で一年は組に話しかける○○に、文次郎が横から訂正する。
「文次郎、○○……。舞台上で、台本に無い事を……」
二人が台本に書かれていない事を言い出すと、仙蔵の眉間に皺が寄り始める。
【天帝 様と織女 は、顔は似てないのですが、それでも親子である事に変わりないのです。そんな織女 は、機織りが上手で、服を作るお仕事をしていました。】
語り手の伊作が二人の容姿に軽く触れながら軌道修正し、織女の紹介に繋げた。自然に物語を進めた伊作を見て、仙蔵の眉間の皺は無くなっていく。
【そんなある日、天帝 様は織女 に結婚相手を紹介します。河東 という土地に住み、牛を飼うお仕事をする牽牛郎 という若い男の人でした。】
三番目に舞台上に登場したのは、牽牛郎 の役を引いた留三郎であった。
「食満せんぱーい!」
「頑張って下さーい!」
留三郎が委員長を務める用具委員会 委員のしんベヱと山村喜三太は、留三郎だと分かると、声援を送る。
「ありがとな! しんベヱ! 喜三太!」
可愛い後輩からの声援を受けた事により、留三郎は条件反射で返事をしてしまうのだった。
【そして、子供好きなのです。】
すかさず、伊作がアドリブを入れた。
それにより、先程の留三郎の発言で怒りかけた仙蔵は、込み上げてくる怒りを何とか鎮めたのである。
「む、娘を、よ、宜しく頼むぞ。」
「あ、有難いお言葉、、感謝、致します。」
【天帝 様と牽牛郎 は、緊張のあまりに体がカチカチに固まってしまうのでした。】
普段から犬猿の仲である文次郎と留三郎だが、舞台上で喧嘩などすれば、舞台袖に居る仙蔵が焙烙火矢を片手に上がってくるかもしれないと、珍しく意思疎通した。
片言気味の演技となり、先程までは雲ひとつない空模様だったが、遠方から暗雲が立ち込め始める。
「潮江先輩と食満先輩、急にカチカチになっちゃったね」
「他の先輩方が好き勝手に演技して、伊作先輩がフォローに入っている姿を見てると、あれが今日の伊作先輩の不運なのかなって、思っちゃうよな」
文次郎と留三郎の演技を見て、苦笑を見せる乱太郎だったが、きり丸は伊作はやはり不運であると一人、納得していた。
【それから、織女 と牽牛郎 は、仲良く暮らしていました。けれど、仲良くなりすぎて、二人共、お仕事をしなくなってしまいます。】
「バカタレーーッッ!! お前達、仕事もしないで、何をのうのうと過ごしているんだ!!」
文次郎は、長次が制作した脚本に沿って科白 を言うも、凄みのある姿を前にして、一年は組の面々は驚きのあまり、ポカンとしていたのだ。
「文次郎、一年は組に色々言われてたから、あの二人に鬱憤を晴らしてるな」
「まぁ、私情を挟んでいるとはいえ……心做しか、怒る演技が上手く見えるとは………」
舞台袖に待機していた小平太が冷静に呟き、仙蔵は無理くり納得しようとする様子である。
「のうのうと過ごしてるだとぉ!? 文次郎、お前の方が、仕事もしないで、のうのうと過ごしてるだろうが!!」
「黙れ、留三郎! お前は牛飼いだろ! 牛飼いなら、牛の世話をするのが仕事の筈だ!!」
平時のノリで、留三郎は文次郎に突っかかる。それには負けじと文次郎も突っかかり、二人の間に火花が飛び散る。
「潮江先輩、頑張れー!」
「食満先輩、負けないでー!」
一年は組の面々は、文次郎と留三郎の二人を応援し始め、物語が本来の道筋から脱線し始めていた。
『あぁー、お父様ぁ、牽牛郎 様ぁ。喧嘩はお止め下さいー』
文次郎と留三郎に挟まれていた○○は、涙ぐむ演技を見せたのだ。あえて言うなら、実際に泣いている訳ではない。
○○が二人の喧嘩の仲裁に入る気が無いと察した伊作は、慌てた様子で語り始める。
【結婚してから、仲が悪くなった天帝 様と牽牛郎 。織女 も二人を止めに入りますが、喧嘩は収まりません。そして怒りに怒った天帝 様は、織女 と牽牛郎 を離れ離れにさせたのです。】
「潮江先輩、ひどーい!」
「どうして、そんな酷い事が出来るんですかー!」
大声で語り始めた伊作を見て、文次郎と留三郎の喧嘩はようやく収まる。
伊作の語りを聞いた喜三太と金吾が、文次郎に野次を飛ばす。
「でも、名無し先輩も良くないよ。お父さんの潮江先輩を怒らせちゃったんだもん」
「それを言ったら、食満先輩だって」
すると、兵太夫と三治郎が○○と留三郎にも非があると、別の角度から野次を飛ばしていく。
『あーん。牽牛郎 様と離れ離れになってしまうなんて、私には耐えられません』
「心配するな、織女 。真面目に働けば、一年に一度、天帝 様も俺達二人が会う事を許してくれた。共に仕事に励もう」
【織女 と約束した牽牛郎 は、故郷の河東 へ帰っていきます。】
○○と留三郎が離れていく姿を見た一年は組は、先程の様な明るい野次を飛ばさなくなっていた。
「やっぱり、名無し先輩と食満先輩が可哀想だよ」
「織女 が機織りをしなくなったから、着物がボロボロになってしまったんだよ。他には、牽牛郎 が飼っていた牛も痩せ細ってしまったり。確かに二人は可哀想だけど、二人が仕事をしなくなって、大変な思いをした人達も居るんだから」
「庄ちゃんってば」
「相変わらず冷静ね」
虎若にそう言った庄左ヱ門を見て、乱太郎ときり丸がお約束の科白 を横から言った。
【それから、織女 と牽牛郎 は仕事に励みました。汗水垂らして、また会える日まで、仕事を頑張りました。その姿を見た天帝 様が、七月七日に二人が会う事を許したのです。】
「先輩達、良かったね!」
「潮江先輩、優しい!」
喜三太と伊助は、伊作の語りを聞いて二人が会えると分かり、笑顔を見せた。
【そして、七月七日。河西 に居る織女 。河東 に居る牽牛郎 の再会の日です。ところが、二人が河を渡ろうとした時に、雨が降ってきました。】
「えー! 何で雨が降るのー!」
「名無し先輩と食満先輩を会わせてあげてー!」
舞台上に○○と留三郎の二人きりとなり、しんベヱと団蔵の二人を心配する声が飛んでいく。
【雨が降り、河に水が溜まってしまいました。このままでは、織女 と牽牛郎 は会う事も出来ません。そんな時、二人の前にカササギが現れたのです】
「いけいけどんどーん!」
カササギの役を引いた小平太が、ようやく舞台上に登場した。お決まりの口癖を言う様にとは、台本に書かれていない。
【いけいけどんどんと鳴くカササギが、織女 と牽牛郎 の前に現れたのです。】
「そんな鳴き声のカササギが、居てたまるか」
文次郎、○○、留三郎と同様に、台本に無い科白を言う小平太を見て、仙蔵はツッコミを入れざるを得なかった。
【カササギが橋となり、織女 と牽牛郎 の二人を会わせてくれるの____、】
「橋だと? そんな物を作らずとも、体育委員なら前を見て、突っ走る! 金吾、そうだろう?」
「は、はい!」
突然、自分の所属する体育委員会 委員長に話を振られた金吾が、慌てて返事をした。
小平太は○○の手を引いて、留三郎の元へと連れていくのだった。
【えぇっ? た、体育委員のカササギは、橋を作らずに、自分で織女 を牽牛郎 の元まで連れていきました。】
「体育委員ではない! 体育委員会 委員長だ!」
「小平太、台本通りにやれと言った筈だ……」
仙蔵は、もう舞台上に顔を向けていない。俯いて、廊下の木材の模様を眺めていた。
「牽牛郎 ! 織女 を連れて来たぞ!」
小平太は○○の手を離し、二人の元から離れていく。舞台上の真ん中で、○○と留三郎が対面し、見つめ合う。
『牽牛郎 様……会えて、嬉しいです』
「織女 ……俺もだ」
【こうして、織女 と牽牛郎 は七月七日に、無事に再会出来たのでした。】
伊作の語りが終わったか終わらない所で、一年は組の生徒は歓声を上げ、拍手をした。
「六年生の先輩方、ありがとうございました!」
「何だかんだ話が纏まって、良い感じに締まりましたね」
「とっても面白かったです!」
「うん、そうじゃな。儂も感動した」
乱太郎、きり丸、しんベヱに続き、学園長の言葉が聞こえると、一同が驚きの表情を見せた。
「学園長先生!!!」
「いやいや、六年生の演劇は、ちと個性的ではあったが、終わりの部分まで、一年は組の皆に見せた所は花丸をあげよう」
「あ、ありがとうございます!!」
学園長からの直々の褒めの言葉に対して、六年生全員が声を揃えて感謝を伝え、お辞儀をした。
「そこでじゃ!」
「へっ?」
学園長の明るい声を響くと、またしても、六年生全員の声が揃った。
「この演劇を一年は組だけで見納めるのは、勿体ないと儂は思った……ならば、全校生徒にも、この演劇を観てもらおうではないか! という訳で、明日のこの時間にまた宜しくのぅ」
それを最後に、学園長は一年は組の教室から姿を消した。その中でただ一人、明日の午前の授業が潰れると分かった土井は一人、激しい胃痛に襲われているのであった。
【今日の演劇は、ここまで! 皆、楽しんでくれたかな? 明日もやる事が決まっちゃったけど……、ひとまず、これにて閉幕!】
・
◆参考資料等
・牛郎織女-Wikipedia
・殷芸『小説』
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アニメ版 六年生×夢主
演劇『牛郎織女』(現在でいう七夕伝説)を一年は組に向けて、開演する事となった話。
ゲスト:一年は組の生徒達、土井半助、山田伝蔵、大川平次渦正
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「六年生で演劇ぃ??」
六年い組の長屋に集められた、仙蔵と長次を除いた面々の声が揃った。
『どうして、またそんな事に?』
「"学園長先生の突然の思いつき"…、だそうだ」
仙蔵の返答を聞いた○○は、あぁ…、と、納得のいった様子を見せた。
「学年対抗で開催するなら分かるけど、どうしてまた六年生と名指しなのかな」
「あぁ、実は……」
伊作の問いかけを聞き、仙蔵が事の発端を話し出そうとした時、文次郎が立ち上がる。
「学園長先生が、忍術学園に危害を及ぼす曲者を呼び込ませる為に開催するのかもしれない!」
「お決まりのアレか! そうとなれば、六年生の私達の出番と言う訳だ!」
「曲者相手なら、武道派忍者と呼ばれるこの俺が!」
文次郎に続き、小平太と留三郎も立ち上がり、まだ見もしていない曲者相手に、武器を構えるのだった。
「いや、一年は組の授業を拝見して、思いつかれたそうだ」
だが、それを仙蔵がすぐに否定した。
文次郎、小平太、留三郎の三人がドドッと倒れ込むも、文次郎が"一年は組"という単語に反応を示す。
「また一年は組の奴等か……今度は、何をしでかしたんだ?」
そこから、仙蔵が事の発端を語り始める。
国語の授業で、明(現在の中国)の民話『
その授業風景を目撃した学園長先生は、一年生にも分かりやすく伝えられる手立ては無いのかと考えた。そこで、"
それを聞いた土井は、今期の授業がまた遅れてしまうと胃を痛めていたらしい。
「もそ…貴重な書物として、本来は貸出等は出来ないのだが、今回は学園長先生の命もあり、持ち出しの許可が出された。少しでも汚したり破る様なら、容赦はしない」
長次は、手にしていた書物を見せたから、不気味な笑みを浮かべた。
今回の演劇において、
挙手制だと口論になるからと、平等を期す為に、くじ引きで配役を決めると仙蔵から伝えられた。
「ちなみに、今回の演劇に関してはお前達、五人に出てもらう」
仙蔵が指した五人とは、文次郎、小平太、○○、留三郎、伊作だ。
「長次は、図書委員会 委員長として、一年生にも分かりやすく演劇が見れる様にと、演劇用の脚本を制作する事となっている」
仙蔵は、まず長次が演劇に参加出来ない理由を述べた。演劇用の脚本を制作するだけでも、時間を要される。そこに劇の出演も兼ねるとなれば、長次だけ負担が大きいからだ。
「それに私は、お前達の衣装の採寸やらと山積みでな。そこの納得のいかない顔をしている、六年い組の潮江文次郎。何なら、私と変わってくれても構わないぞ。これは、上級生のくのたまと合同で行うのだからな」
仙蔵の口から、"上級生のくのたま"と単語が出された瞬間、文次郎は分かりやすく苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
「学園長先生の命とは言え、上級生のくのたま達は内心、お冠に違いない。どうして、忍たまなんかの為に、時間を割かなくてはならないのかと……」
文次郎の顔色が青くなっているのに対して、仙蔵は変わらず、涼しい顔をしている。
くのたまは、これまで、自分達に散々な目に遭わせてきた女というのが、六年生の共通認識だ。
下級生のくのたまの仕打ちは、まだ可愛いと思える物ばかりだと、上級生のくのたまの仕打ちを受ける度に思うのだ。
「仙蔵……今回ばかりは、お前に譲ってやろう」
上級生のくのたまと同じ空間で過ごす等、忍術学園一、ギンギンに忍者している文次郎にとっても、地獄である。
文次郎は、"上級生のくのたまが怖いから"という理由は述べずに、そう言った。
「上級生のくのたまが怖いと、素直に言えばいいだろ」
「誰が怖いと言った、留三郎! お前だって、上級生のくのたまと関わるのは御免だと言ってただろ! お前が俺に小言を言える立場か!」
「何だと、やる気か! 相手にしてやるよ!」
「上等だ! どこからでも、かかってこい!」
文次郎と留三郎の喧嘩が始まろうとも、仙蔵は気にする様子もない。くじを用意して、残りの三人の前に持っていく。
「小平太、○○、伊作。先に決めていいぞ」
そう言われ、小平太と○○はなんの躊躇いもなく、くじを引いた。二人の喧嘩が気になりつつも、伊作もくじを引く。
「文次郎、留三郎。後は、お前達だけだ」
・
一週間後、一年は組の教室では、演劇の開演準備が進められていたのだ。
生徒用の机と教卓は、隅に整頓されており、は組の生徒全員が部屋の中央で固まって座っている。
六年生の姿が見えない様、入口側の引き戸近くに、教室の天井から床までの長さとなる、巨大な幕が貼られていた。
「また、一年は組の授業が遅れてしまう……うぅっ……胃が痛い…っ」
「まぁ、土井先生。授業の一環として、図書委員会 委員長の中在家が、一年は組にも分かりやすく見れる様に、劇の脚本を制作したみたいですから……」
この後、開演される演劇を楽しみにする一年は組の生徒を他所に、土井は授業の遅れを気にして、胃痛が襲ってきているのだ。
そんな土井にフォローを入れる山田だが、内心は授業の遅れを気にしている。
同時刻、一年は組の教室前の廊下では、六年生全員が待機していた。演劇に参加する五人は既に衣装を着ており、準備万端だ。
「いいか。土井先生と山田先生以外には、誰が何の役を担当するかは一切、知らせていない。横で待機するお前達も決して、口を滑らすんじゃないぞ」
「分かってる! 口を閉じてれば、良いのだろう?」
「もそ…小平太。息を止めろとまでは、仙蔵も言っていない」
仙蔵の言葉を別の意味で捉えた小平太が、息を吸い上げてから、呼吸を止めたのを見て、長次が言葉をかけた。
【今から、六年生による演劇『
くじで語り手を引いた伊作が、一年は組の生徒の前に現れると、開演の呼びかけを行う。
「伊作先輩だ!」
「語り手だったら、伊作先輩の不運体質も発動しないと思うし、安心して見れそうだな」
乱太郎は、自身の所属する保健委員会の委員長が出てきた事で、感嘆とした声を上げる。
それに対して、伊作の不運が発動しないであろうと安心するきり丸であった。
【昔々、
「偉いお方?」
「学園長先生より偉いのかな?」
伊作の語りを聞いた夢前三治郎、笹山兵太夫が、天帝が学園長よりも偉いのかと些細な事を気にしだした。
するとそこに、くじで天帝役に引いた文次郎が舞台上に現れる。
一年は組の前に姿を見せると、文次郎が委員長を務める会計委員会 委員の加藤団蔵が反応した。
「あっ! 潮江文次郎先輩!」
「ちゃんと役名で呼ばんか、団蔵! 授業にならんだろ!」
役名でなく、自分の名前を読んだ団蔵に、文次郎も演劇と関係なく指摘するのだった。
「えぇ? 潮江先輩なのに?」
「
すかさず、学級委員長を務める黒木庄左ヱ門が団蔵の疑問に答える。
【
一年は組の生徒達のざわつきを見た伊作は、即座にアドリブを入れる。それを聞いた一年は組の生徒達から、笑いが漏れ出した。
「まぁ、出だしは順調だな……」
廊下から、舞台上に立つ文次郎と一年は組の様子を伺っていた仙蔵が、小声で呟く。
長次も顔には出ていないものの、一年は組の生徒達が自分が脚本を担当した劇を楽しんでいるのを内心、嬉しいと思っている。
【そんな天帝様には、一人娘が居ました。娘の名前は
伊作の語りが再開すると、舞台上に織女役を引き当てた○○が姿を見せた。
伊作と同じ長さの黒髪を
「あの女の人って…… 名無し先輩!?」
「ほんとだ! いつも違う髪で、歩き方も違うから気が付かなかった!」
○○が委員長を務める火薬委員会 委員の
「えぇ! 名無し先輩のお父さんって、潮江先輩だったの!?」
「似てないねー」
だが、伊作の語りを聞いて、○○が文次郎の娘だと勘違いした皆本金吾と福富しんべヱが声を上げると、舞台上の文次郎と○○がずっこけた。
『年の差だよ、年の差』
「同い年だろ」
女性の役という事で、裏声で一年は組に話しかける○○に、文次郎が横から訂正する。
「文次郎、○○……。舞台上で、台本に無い事を……」
二人が台本に書かれていない事を言い出すと、仙蔵の眉間に皺が寄り始める。
【
語り手の伊作が二人の容姿に軽く触れながら軌道修正し、織女の紹介に繋げた。自然に物語を進めた伊作を見て、仙蔵の眉間の皺は無くなっていく。
【そんなある日、
三番目に舞台上に登場したのは、
「食満せんぱーい!」
「頑張って下さーい!」
留三郎が委員長を務める用具委員会 委員のしんベヱと山村喜三太は、留三郎だと分かると、声援を送る。
「ありがとな! しんベヱ! 喜三太!」
可愛い後輩からの声援を受けた事により、留三郎は条件反射で返事をしてしまうのだった。
【そして、子供好きなのです。】
すかさず、伊作がアドリブを入れた。
それにより、先程の留三郎の発言で怒りかけた仙蔵は、込み上げてくる怒りを何とか鎮めたのである。
「む、娘を、よ、宜しく頼むぞ。」
「あ、有難いお言葉、、感謝、致します。」
【
普段から犬猿の仲である文次郎と留三郎だが、舞台上で喧嘩などすれば、舞台袖に居る仙蔵が焙烙火矢を片手に上がってくるかもしれないと、珍しく意思疎通した。
片言気味の演技となり、先程までは雲ひとつない空模様だったが、遠方から暗雲が立ち込め始める。
「潮江先輩と食満先輩、急にカチカチになっちゃったね」
「他の先輩方が好き勝手に演技して、伊作先輩がフォローに入っている姿を見てると、あれが今日の伊作先輩の不運なのかなって、思っちゃうよな」
文次郎と留三郎の演技を見て、苦笑を見せる乱太郎だったが、きり丸は伊作はやはり不運であると一人、納得していた。
【それから、
「バカタレーーッッ!! お前達、仕事もしないで、何をのうのうと過ごしているんだ!!」
文次郎は、長次が制作した脚本に沿って
「文次郎、一年は組に色々言われてたから、あの二人に鬱憤を晴らしてるな」
「まぁ、私情を挟んでいるとはいえ……心做しか、怒る演技が上手く見えるとは………」
舞台袖に待機していた小平太が冷静に呟き、仙蔵は無理くり納得しようとする様子である。
「のうのうと過ごしてるだとぉ!? 文次郎、お前の方が、仕事もしないで、のうのうと過ごしてるだろうが!!」
「黙れ、留三郎! お前は牛飼いだろ! 牛飼いなら、牛の世話をするのが仕事の筈だ!!」
平時のノリで、留三郎は文次郎に突っかかる。それには負けじと文次郎も突っかかり、二人の間に火花が飛び散る。
「潮江先輩、頑張れー!」
「食満先輩、負けないでー!」
一年は組の面々は、文次郎と留三郎の二人を応援し始め、物語が本来の道筋から脱線し始めていた。
『あぁー、お父様ぁ、
文次郎と留三郎に挟まれていた○○は、涙ぐむ演技を見せたのだ。あえて言うなら、実際に泣いている訳ではない。
○○が二人の喧嘩の仲裁に入る気が無いと察した伊作は、慌てた様子で語り始める。
【結婚してから、仲が悪くなった
「潮江先輩、ひどーい!」
「どうして、そんな酷い事が出来るんですかー!」
大声で語り始めた伊作を見て、文次郎と留三郎の喧嘩はようやく収まる。
伊作の語りを聞いた喜三太と金吾が、文次郎に野次を飛ばす。
「でも、名無し先輩も良くないよ。お父さんの潮江先輩を怒らせちゃったんだもん」
「それを言ったら、食満先輩だって」
すると、兵太夫と三治郎が○○と留三郎にも非があると、別の角度から野次を飛ばしていく。
『あーん。
「心配するな、
【
○○と留三郎が離れていく姿を見た一年は組は、先程の様な明るい野次を飛ばさなくなっていた。
「やっぱり、名無し先輩と食満先輩が可哀想だよ」
「
「庄ちゃんってば」
「相変わらず冷静ね」
虎若にそう言った庄左ヱ門を見て、乱太郎ときり丸がお約束の
【それから、
「先輩達、良かったね!」
「潮江先輩、優しい!」
喜三太と伊助は、伊作の語りを聞いて二人が会えると分かり、笑顔を見せた。
【そして、七月七日。
「えー! 何で雨が降るのー!」
「名無し先輩と食満先輩を会わせてあげてー!」
舞台上に○○と留三郎の二人きりとなり、しんベヱと団蔵の二人を心配する声が飛んでいく。
【雨が降り、河に水が溜まってしまいました。このままでは、
「いけいけどんどーん!」
カササギの役を引いた小平太が、ようやく舞台上に登場した。お決まりの口癖を言う様にとは、台本に書かれていない。
【いけいけどんどんと鳴くカササギが、
「そんな鳴き声のカササギが、居てたまるか」
文次郎、○○、留三郎と同様に、台本に無い科白を言う小平太を見て、仙蔵はツッコミを入れざるを得なかった。
【カササギが橋となり、
「橋だと? そんな物を作らずとも、体育委員なら前を見て、突っ走る! 金吾、そうだろう?」
「は、はい!」
突然、自分の所属する体育委員会 委員長に話を振られた金吾が、慌てて返事をした。
小平太は○○の手を引いて、留三郎の元へと連れていくのだった。
【えぇっ? た、体育委員のカササギは、橋を作らずに、自分で
「体育委員ではない! 体育委員会 委員長だ!」
「小平太、台本通りにやれと言った筈だ……」
仙蔵は、もう舞台上に顔を向けていない。俯いて、廊下の木材の模様を眺めていた。
「
小平太は○○の手を離し、二人の元から離れていく。舞台上の真ん中で、○○と留三郎が対面し、見つめ合う。
『
「
【こうして、
伊作の語りが終わったか終わらない所で、一年は組の生徒は歓声を上げ、拍手をした。
「六年生の先輩方、ありがとうございました!」
「何だかんだ話が纏まって、良い感じに締まりましたね」
「とっても面白かったです!」
「うん、そうじゃな。儂も感動した」
乱太郎、きり丸、しんベヱに続き、学園長の言葉が聞こえると、一同が驚きの表情を見せた。
「学園長先生!!!」
「いやいや、六年生の演劇は、ちと個性的ではあったが、終わりの部分まで、一年は組の皆に見せた所は花丸をあげよう」
「あ、ありがとうございます!!」
学園長からの直々の褒めの言葉に対して、六年生全員が声を揃えて感謝を伝え、お辞儀をした。
「そこでじゃ!」
「へっ?」
学園長の明るい声を響くと、またしても、六年生全員の声が揃った。
「この演劇を一年は組だけで見納めるのは、勿体ないと儂は思った……ならば、全校生徒にも、この演劇を観てもらおうではないか! という訳で、明日のこの時間にまた宜しくのぅ」
それを最後に、学園長は一年は組の教室から姿を消した。その中でただ一人、明日の午前の授業が潰れると分かった土井は一人、激しい胃痛に襲われているのであった。
【今日の演劇は、ここまで! 皆、楽しんでくれたかな? 明日もやる事が決まっちゃったけど……、ひとまず、これにて閉幕!】
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◆参考資料等
・牛郎織女-Wikipedia
・殷芸『小説』
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