短編
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アニメ版 久々知兵助×夢主
○○が、意地とプライドをかけて兵助の豆腐地獄を無事に生還するまでに至った過去の話。
◇火薬委員会の前委員長、委員長代理就任について捏造あり
・
火薬委員会に所属する五年い組、久々知兵助主催の"豆腐パーティー"が、忍術学園の食堂にて開催されていた。
次から次へと運ばれてくる、久々知特製の豆腐料理の数の豊富さに、火薬委員は目が眩む。
『…、……』
唯一、黙々と豆腐料理を食べ進める火薬委員会 委員長の名無し ○○は、物怖じする様子も見せず、目が据わっていた。
「名無し先輩……よく、久々知先輩の豆腐料理を食べられますよね……」
「一心不乱に食べてますね……あんな風に食べるなんて、私にはまだ出来ません……」
「前から気になってはいたけど、きっと甘味物と同じ位、豆腐料理も好きなんだよ」
伊助、羽丹羽、タカ丸の三人は、黙々と豆腐料理にありつく○○の姿を見て、言葉を漏らす。
そんな中、三郎次は○○の姿を見てから、額に汗を垂らしていた。
(…、……)
◇
当時五年生の○○が、火薬委員会 委員長代理に就任してすぐの話だ。
『どうした。火薬委員会 委員の一年い組、池田三郎次』
「無理して、説明口調で返事しないで下さい。その状態なら、尚更です」
当時一年生の三郎次は、隣に座る○○の顔色の悪さを心配して、臆せずに声を掛けた。
その直後、豆腐料理を皿に乗せ、二人の元に運んでくる割烹着姿の久々知が現れる。
「まだまだ豆腐料理は、ありますから。どんどん食べて下さい」
三郎次が小さな悲鳴を上げても、久々知は気にする様子を見せない。
(………おい、豆腐料理出してるバヤイじゃないだろ。四年い組の久々知兵助。目の前で、顔を真っ青にしている委員長代理をしかと見ろ。後輩が、小さな悲鳴を上げた事を気にかけろ)
顔が真っ青の○○が久々知を睨みつけるも、今の久々知には効果が無い。
四年い組の久々知兵助は、成績優秀・頭脳明晰だ。火薬委員会の委員としても、優秀だ。難点があるなら、豆腐が絡むと人が変わる。
前火薬委員会 委員長は、○○は勿論、久々知の優秀さも買っており、火薬の兵器開発に○○だけでなく、久々知を同行させる事も稀にあった。そして、久々知の豆腐パーティー開催に好意的。
理由として、親睦を深めるという意味で有効・健啖家の自分が良しとしたの二点だ。
前火薬委員会 委員長は、忍術学園を卒業した。
六年生が不在の火薬委員会は、自動的に○○が委員長代理に就く事となったものの、豆腐パーティーの開催は継続。
委員会に所属したばかりの時、説明を聞いただけでも三郎次が顔を青ざめた。発起人の○○も、顔を青ざめていたのは、自覚あり。
しかし、豆腐パーティーの開催は、委員会の雰囲気の良さに繋がっていた。
それはあくまで、久々知の豆腐地獄を経験したからこその久々知以外の委員長代理含め、委員間の結束力強化なのだが。
◇
「兵助の奴、五年ろ組の名無し ○○先輩に豆腐料理を振舞ったって」
放課後、校舎裏から四年ろ組の竹谷八左ヱ門の声が聞こえ、○○は足を止める。
「火薬委員会の親睦会で、豆腐パーティーを開いたみたいだよ」
「名無し先輩。甘味物ならいくらでもいけるけど、豆腐料理となりゃ、さすがに無理だろうな」
続いて、竹谷と同じ組と不破雷蔵、鉢屋三郎が先日、開催された豆腐パーティーと○○について触れていた。
「名無し先輩、顔を真っ青にしながら食べていたらしい」
「えぇ? それ、大丈夫なのか?」
「食べ過ぎなだけだよ、雷蔵」
気がつけば、○○は校舎裏で話している三人の話を盗み聞きしていた。
下級生達は、そんな○○の姿を見ては、何事かと思うものの、声を掛けない。
「でもまぁ、名無し先輩は、いつか根を上げると私は賭けるかな」
鉢屋の発言を聞いた○○は、目を見開いた。
○○の視線は、自分が久々知の豆腐地獄で根を上げると言った鉢屋に向けられている。
「名無し先輩が豆腐料理の食べ過ぎで、寝込んでしまったら兵助が迷惑を掛けたお詫びで、見舞いに行くべきか……いや、先輩としての威厳があるから、同じ五年ろ組の中在家長次先輩を介した方がいいのか………」
今度は、自分を労る発言をした筈の不破に目が向けられる。
「それか、[[rb:焙烙火矢 > ほうろくひや]]の形をした豆腐を兵助に作ってもらうとか?」
そう言った瞬間、竹谷は悪寒が走った。
○○が話を聞いていたのかと、後ろを振り向く。だが、そこに○○の姿は無い。不破も鉢屋も、○○が盗み聞きしていた事など知らない。
○○は、同室の中在家長次・七松小平太と使用している長屋に戻っていた。
手にしていた教科書には、○○が力を込めていた為に、折り目が付けられている。
(どうして、おれは豆腐地獄に苦しめられている?)
そもそも豆腐パーティーの開催を中止すれば、自分や下級生がこんな目には遭わない。しかし、親睦会としては非常に有効。
なら、どうする?
だったら、自分が久々知の提供する豆腐料理を食べ切れる様になればいい。
そして○○は、四年ろ組の三人に個人的な怨念を抱いている。
(竹谷八左ヱ門…、不破雷蔵…、鉢屋三郎…、……ッッ!!、……ッッッ!!!)
◇
○○が朝食に選んだAランチの献立の副食は、麻婆豆腐。豆腐増し増し希望。
器に乗る麻婆豆腐は、豆腐の割合が大半を占めている。いくら食べても、豆腐の山しか見えてこない。
○○が顔を上げると、朝食を共にしている長次の姿が視界に入る。
そこで、先日の四年ろ組の三人の会話を盗み聞きした自分の姿を思い出してしまう。長次の所属する図書委員会には、四年生の不破雷蔵が所属していたからだ。
(どういう教育してんだ! お前んとこは!!)
その思いをぶつけるなら、長次ではなく、六年生の図書委員会 委員長の若王寺勘兵衛だ。もはや、理不尽の極み。
○○が昼食に選んだBランチの献立の副食は、冷奴。豆腐の個数を、通常より増やした。
腹を下さないか心配したものの、久々知と四年ろ組の事を考えたら、体調不良など、どうにでもなれと考えた。放課後、医務室に駆け込んだ。
○○が朝食で選んだAランチの献立の汁物は、味噌汁。豆腐増し増し。
豆腐が多すぎて、汁が無くなっていた。他の具材はどこかに消えたのかと疑った。もはや豆腐汁を食していた。
○○が昼食で選んだBランチの献立の副食は、餡掛け豆腐。豆腐増し増し。
他の生徒の餡掛け豆腐ちは、餡がかかっている。○○の餡掛け豆腐は、ただの豆腐だった。
夕飯の時間まで、豆腐の感触が口内を支配していた。
○○が昼食に選んだBランチの献立の副食は、肉豆腐。肉と豆腐の割合を、1:9に希望。
豆腐の量が多すぎたあまり、肉の感触を覚えていない。肉って柔らかいのかと○○は正気を失いかける。
○○が朝食で選んだAランチの献立の汁物は、八杯豆腐。豆腐増し増し。
味噌汁同様、ただの豆腐汁。汁物の筈なのに、副食が二品あるのかと○○は疑った。
○○の豆腐生活が長く続くと、次第に本来の目的から逸れ始めていく。
火薬委員会 委員長代理として、久々知の豆腐料理を自分が食べ切れる様になればいい。
それはもう、豆腐生活を続ける建前となっていた。
今は竹谷、不破、鉢屋への怨念の割合が、比重を占めていた。
一学年の差ではあるが、○○も他の五年生同様、四年生への対抗心はそれなりにあった。
四年生の久々知の豆腐地獄も切り抜けられない、腰抜けの五年生と烙印を付けられようなど、○○の矜恃が許さなかった。
ここまで来ると、もはや意地とプライドが今の○○を支えている様なものであった。
◇
そして遂に、火薬委員の久々知主催の"豆腐パーティー"が、またしても食堂内で開催された。
「今日も、腕によりを振るって豆腐料理を作りますね」
割烹着を着た久々知の笑顔は、悪魔の笑顔と三郎次は思った。
だが、隣に座る○○は涼しい顔をしている。
三郎次は○○を見て、何が起きるのかと身震いした。
数分後、三郎次と○○の座る席に、久々知特製の豆腐料理が運ばれてきた。麻婆豆腐・肉豆腐・冷奴の三品だ。
「い、いただきます……」
腹を括った三郎次が食べようとした時、○○はいつの間にか冷奴を完食していた。
「えっ!?」
今度は、麻婆豆腐、肉豆腐を黙々と食べ始めていく。
豆腐を口に入れ、水で押し流す。
口に入れて、水で押し流す。流れ作業の様に、○○は豆腐料理を食べ進める。
「名無し先輩、そんなにお腹を空いてらしたんですか? お腹が空いても、腹が満たされても、豆腐は良いですよね」
○○の食べっぷりを見た久々知は、笑顔を見せる。だが、○○は返事すらしない。
三郎次は、どうしたのかと顔を顰める。
○○の顔を覗き込んだ時、三郎次は悲鳴を上げそうになった。
(名無し先輩、目が死んでいる……いや、違う。目が据わっている……据わり過ぎていて、死んでいる様にしか見えない………)
久々知は豆腐料理を運び続ける。
○○が死んだような据わっている目で、豆腐料理を完食する。久々知は豆腐料理を作り、運び続ける。
三郎次は恐怖した。
この場には、狂人しか居ない。
この豆腐地獄を切り抜けるには、狂人になるしかないのか。
三郎次は、○○が豆腐料理を全て完食し終えるまで、○○と久々知に話し掛ける事が出来なかった。
「いやぁ、名無し先輩がこんなに食べて下さるなんて、驚きました。もし良かったら、委員会外でも振る舞いますけど、どうですか?」
豆腐料理を作り終えた久々知は、○○に向けて満面の笑みを見せ、そのように提案した。
『兵助……』
三郎次は、○○の返答が気になって仕方ない。
名無し先輩は、委員の親睦を深める為に自分を犠牲にするのかと。
だが、それは杞憂に終わる。
『四年生に、振舞ってやりなさい 』
○○は笑顔で、久々知に言いのけた。
竹谷、不破、鉢屋だけでなく、久々知と同室の四年い組の尾浜勘右衛門も道連れにして、豆腐地獄の餌食にしようと○○は目論んだ。
そんな○○の目論見を知らない久々知は、まんまと策に嵌る。
久々知以外の四年生はその時、悪寒が走ったのだった。
――――――――――――――――
◆名無し ○○
火薬委員会 委員長代理。
久々知の豆腐地獄に重ね、四年生に舐められた態度を取られた(と思い込む)結果、豆腐生活を開始。
見事に地獄を生き延び、今度は四年生全員を地獄へ招待する。
◆久々知 兵助
豆腐小僧。
委員長代理が豆腐料理を黙々と食べ進める様子には、ご満悦。
◆池田 三郎次
当時一年生。
委員長代理と四年生の頼りになる先輩が、(色々な意味で)狂人であるのを知っている。
◆二郭 伊助、羽丹羽 石人、斉藤 タカ丸
現在の委員長、五年生の頼りになる先輩が狂人なのをまだ知らない。
◆前火薬委員会 委員長
卒業生。
久々知主催の豆腐パーティーが親睦の意味も兼ねて、委員同士の仲が深まればいいと思っていた。
本音は、健啖家で腹一杯になるから、やっていた。
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アニメ版 久々知兵助×夢主
○○が、意地とプライドをかけて兵助の豆腐地獄を無事に生還するまでに至った過去の話。
◇火薬委員会の前委員長、委員長代理就任について捏造あり
・
火薬委員会に所属する五年い組、久々知兵助主催の"豆腐パーティー"が、忍術学園の食堂にて開催されていた。
次から次へと運ばれてくる、久々知特製の豆腐料理の数の豊富さに、火薬委員は目が眩む。
『…、……』
唯一、黙々と豆腐料理を食べ進める火薬委員会 委員長の名無し ○○は、物怖じする様子も見せず、目が据わっていた。
「名無し先輩……よく、久々知先輩の豆腐料理を食べられますよね……」
「一心不乱に食べてますね……あんな風に食べるなんて、私にはまだ出来ません……」
「前から気になってはいたけど、きっと甘味物と同じ位、豆腐料理も好きなんだよ」
伊助、羽丹羽、タカ丸の三人は、黙々と豆腐料理にありつく○○の姿を見て、言葉を漏らす。
そんな中、三郎次は○○の姿を見てから、額に汗を垂らしていた。
(…、……)
◇
当時五年生の○○が、火薬委員会 委員長代理に就任してすぐの話だ。
『どうした。火薬委員会 委員の一年い組、池田三郎次』
「無理して、説明口調で返事しないで下さい。その状態なら、尚更です」
当時一年生の三郎次は、隣に座る○○の顔色の悪さを心配して、臆せずに声を掛けた。
その直後、豆腐料理を皿に乗せ、二人の元に運んでくる割烹着姿の久々知が現れる。
「まだまだ豆腐料理は、ありますから。どんどん食べて下さい」
三郎次が小さな悲鳴を上げても、久々知は気にする様子を見せない。
(………おい、豆腐料理出してるバヤイじゃないだろ。四年い組の久々知兵助。目の前で、顔を真っ青にしている委員長代理をしかと見ろ。後輩が、小さな悲鳴を上げた事を気にかけろ)
顔が真っ青の○○が久々知を睨みつけるも、今の久々知には効果が無い。
四年い組の久々知兵助は、成績優秀・頭脳明晰だ。火薬委員会の委員としても、優秀だ。難点があるなら、豆腐が絡むと人が変わる。
前火薬委員会 委員長は、○○は勿論、久々知の優秀さも買っており、火薬の兵器開発に○○だけでなく、久々知を同行させる事も稀にあった。そして、久々知の豆腐パーティー開催に好意的。
理由として、親睦を深めるという意味で有効・健啖家の自分が良しとしたの二点だ。
前火薬委員会 委員長は、忍術学園を卒業した。
六年生が不在の火薬委員会は、自動的に○○が委員長代理に就く事となったものの、豆腐パーティーの開催は継続。
委員会に所属したばかりの時、説明を聞いただけでも三郎次が顔を青ざめた。発起人の○○も、顔を青ざめていたのは、自覚あり。
しかし、豆腐パーティーの開催は、委員会の雰囲気の良さに繋がっていた。
それはあくまで、久々知の豆腐地獄を経験したからこその久々知以外の委員長代理含め、委員間の結束力強化なのだが。
◇
「兵助の奴、五年ろ組の名無し ○○先輩に豆腐料理を振舞ったって」
放課後、校舎裏から四年ろ組の竹谷八左ヱ門の声が聞こえ、○○は足を止める。
「火薬委員会の親睦会で、豆腐パーティーを開いたみたいだよ」
「名無し先輩。甘味物ならいくらでもいけるけど、豆腐料理となりゃ、さすがに無理だろうな」
続いて、竹谷と同じ組と不破雷蔵、鉢屋三郎が先日、開催された豆腐パーティーと○○について触れていた。
「名無し先輩、顔を真っ青にしながら食べていたらしい」
「えぇ? それ、大丈夫なのか?」
「食べ過ぎなだけだよ、雷蔵」
気がつけば、○○は校舎裏で話している三人の話を盗み聞きしていた。
下級生達は、そんな○○の姿を見ては、何事かと思うものの、声を掛けない。
「でもまぁ、名無し先輩は、いつか根を上げると私は賭けるかな」
鉢屋の発言を聞いた○○は、目を見開いた。
○○の視線は、自分が久々知の豆腐地獄で根を上げると言った鉢屋に向けられている。
「名無し先輩が豆腐料理の食べ過ぎで、寝込んでしまったら兵助が迷惑を掛けたお詫びで、見舞いに行くべきか……いや、先輩としての威厳があるから、同じ五年ろ組の中在家長次先輩を介した方がいいのか………」
今度は、自分を労る発言をした筈の不破に目が向けられる。
「それか、[[rb:焙烙火矢 > ほうろくひや]]の形をした豆腐を兵助に作ってもらうとか?」
そう言った瞬間、竹谷は悪寒が走った。
○○が話を聞いていたのかと、後ろを振り向く。だが、そこに○○の姿は無い。不破も鉢屋も、○○が盗み聞きしていた事など知らない。
○○は、同室の中在家長次・七松小平太と使用している長屋に戻っていた。
手にしていた教科書には、○○が力を込めていた為に、折り目が付けられている。
(どうして、おれは豆腐地獄に苦しめられている?)
そもそも豆腐パーティーの開催を中止すれば、自分や下級生がこんな目には遭わない。しかし、親睦会としては非常に有効。
なら、どうする?
だったら、自分が久々知の提供する豆腐料理を食べ切れる様になればいい。
そして○○は、四年ろ組の三人に個人的な怨念を抱いている。
(竹谷八左ヱ門…、不破雷蔵…、鉢屋三郎…、……ッッ!!、……ッッッ!!!)
◇
○○が朝食に選んだAランチの献立の副食は、麻婆豆腐。豆腐増し増し希望。
器に乗る麻婆豆腐は、豆腐の割合が大半を占めている。いくら食べても、豆腐の山しか見えてこない。
○○が顔を上げると、朝食を共にしている長次の姿が視界に入る。
そこで、先日の四年ろ組の三人の会話を盗み聞きした自分の姿を思い出してしまう。長次の所属する図書委員会には、四年生の不破雷蔵が所属していたからだ。
(どういう教育してんだ! お前んとこは!!)
その思いをぶつけるなら、長次ではなく、六年生の図書委員会 委員長の若王寺勘兵衛だ。もはや、理不尽の極み。
○○が昼食に選んだBランチの献立の副食は、冷奴。豆腐の個数を、通常より増やした。
腹を下さないか心配したものの、久々知と四年ろ組の事を考えたら、体調不良など、どうにでもなれと考えた。放課後、医務室に駆け込んだ。
○○が朝食で選んだAランチの献立の汁物は、味噌汁。豆腐増し増し。
豆腐が多すぎて、汁が無くなっていた。他の具材はどこかに消えたのかと疑った。もはや豆腐汁を食していた。
○○が昼食で選んだBランチの献立の副食は、餡掛け豆腐。豆腐増し増し。
他の生徒の餡掛け豆腐ちは、餡がかかっている。○○の餡掛け豆腐は、ただの豆腐だった。
夕飯の時間まで、豆腐の感触が口内を支配していた。
○○が昼食に選んだBランチの献立の副食は、肉豆腐。肉と豆腐の割合を、1:9に希望。
豆腐の量が多すぎたあまり、肉の感触を覚えていない。肉って柔らかいのかと○○は正気を失いかける。
○○が朝食で選んだAランチの献立の汁物は、八杯豆腐。豆腐増し増し。
味噌汁同様、ただの豆腐汁。汁物の筈なのに、副食が二品あるのかと○○は疑った。
○○の豆腐生活が長く続くと、次第に本来の目的から逸れ始めていく。
火薬委員会 委員長代理として、久々知の豆腐料理を自分が食べ切れる様になればいい。
それはもう、豆腐生活を続ける建前となっていた。
今は竹谷、不破、鉢屋への怨念の割合が、比重を占めていた。
一学年の差ではあるが、○○も他の五年生同様、四年生への対抗心はそれなりにあった。
四年生の久々知の豆腐地獄も切り抜けられない、腰抜けの五年生と烙印を付けられようなど、○○の矜恃が許さなかった。
ここまで来ると、もはや意地とプライドが今の○○を支えている様なものであった。
◇
そして遂に、火薬委員の久々知主催の"豆腐パーティー"が、またしても食堂内で開催された。
「今日も、腕によりを振るって豆腐料理を作りますね」
割烹着を着た久々知の笑顔は、悪魔の笑顔と三郎次は思った。
だが、隣に座る○○は涼しい顔をしている。
三郎次は○○を見て、何が起きるのかと身震いした。
数分後、三郎次と○○の座る席に、久々知特製の豆腐料理が運ばれてきた。麻婆豆腐・肉豆腐・冷奴の三品だ。
「い、いただきます……」
腹を括った三郎次が食べようとした時、○○はいつの間にか冷奴を完食していた。
「えっ!?」
今度は、麻婆豆腐、肉豆腐を黙々と食べ始めていく。
豆腐を口に入れ、水で押し流す。
口に入れて、水で押し流す。流れ作業の様に、○○は豆腐料理を食べ進める。
「名無し先輩、そんなにお腹を空いてらしたんですか? お腹が空いても、腹が満たされても、豆腐は良いですよね」
○○の食べっぷりを見た久々知は、笑顔を見せる。だが、○○は返事すらしない。
三郎次は、どうしたのかと顔を顰める。
○○の顔を覗き込んだ時、三郎次は悲鳴を上げそうになった。
(名無し先輩、目が死んでいる……いや、違う。目が据わっている……据わり過ぎていて、死んでいる様にしか見えない………)
久々知は豆腐料理を運び続ける。
○○が死んだような据わっている目で、豆腐料理を完食する。久々知は豆腐料理を作り、運び続ける。
三郎次は恐怖した。
この場には、狂人しか居ない。
この豆腐地獄を切り抜けるには、狂人になるしかないのか。
三郎次は、○○が豆腐料理を全て完食し終えるまで、○○と久々知に話し掛ける事が出来なかった。
「いやぁ、名無し先輩がこんなに食べて下さるなんて、驚きました。もし良かったら、委員会外でも振る舞いますけど、どうですか?」
豆腐料理を作り終えた久々知は、○○に向けて満面の笑みを見せ、そのように提案した。
『兵助……』
三郎次は、○○の返答が気になって仕方ない。
名無し先輩は、委員の親睦を深める為に自分を犠牲にするのかと。
だが、それは杞憂に終わる。
『四年生に、
○○は笑顔で、久々知に言いのけた。
竹谷、不破、鉢屋だけでなく、久々知と同室の四年い組の尾浜勘右衛門も道連れにして、豆腐地獄の餌食にしようと○○は目論んだ。
そんな○○の目論見を知らない久々知は、まんまと策に嵌る。
久々知以外の四年生はその時、悪寒が走ったのだった。
――――――――――――――――
◆名無し ○○
火薬委員会 委員長代理。
久々知の豆腐地獄に重ね、四年生に舐められた態度を取られた(と思い込む)結果、豆腐生活を開始。
見事に地獄を生き延び、今度は四年生全員を地獄へ招待する。
◆久々知 兵助
豆腐小僧。
委員長代理が豆腐料理を黙々と食べ進める様子には、ご満悦。
◆池田 三郎次
当時一年生。
委員長代理と四年生の頼りになる先輩が、(色々な意味で)狂人であるのを知っている。
◆二郭 伊助、羽丹羽 石人、斉藤 タカ丸
現在の委員長、五年生の頼りになる先輩が狂人なのをまだ知らない。
◆前火薬委員会 委員長
卒業生。
久々知主催の豆腐パーティーが親睦の意味も兼ねて、委員同士の仲が深まればいいと思っていた。
本音は、健啖家で腹一杯になるから、やっていた。
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