ドクタケ忍者隊 最強の軍師
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学園長の庵には、灯明皿 に乗せられた灯芯に火が付けられている。
学園長の大川平次渦正と山田伝蔵の姿があり、二人の視線の先には_____、負傷して、処置が施された六年生の七名ときり丸が居た。
ドクタケ忍者隊詰所へ向かおうとした際、六年生の面々が、自分達が相手をした軍師の名を口にするも、二人は顔を顰 めた。
「軍師"天鬼"……?」
「聞かぬ名ですな」
ドクタケ忍者隊に所属する忍者は、名前の最後に「鬼」が付けられる。今まで対峙してきたドクタケ忍者に、天鬼という名をした忍者とかち合わせた事は無い。
「我ら七人がかりでも、歯が立ちませんでした」
仙蔵の言葉を聞き、学園長と山田は驚いた様子を見せる。それは歴代の六年生の中でも、戦闘力は上位に値する彼らでも苦戦したというのだからだ。
「そして"天鬼"は、土井先生の顔をしていました」
その言葉を聞いたきり丸は、小さく呻き声を上げて、俯いた。
「土井先生に、家族は?」
「いえ。天涯孤独と聞いております」
学園長の問いに、山田が簡潔に答えた。
忍術学園で教師を務める以前から、土井と関わりがある山田は、土井が天涯孤独であると知っていた為に、親族では無いとすぐに分かった。
「これを……」
仙蔵が、二人に赤朽葉 色の書物を差し出した。
それは、長次が天鬼との対決の際に手に入れた"ドクタケ忍者隊 巻ノ一"と表紙の書かれた物である。
「尊奈門との果し合いの時、土井先生は何らかの原因で、記憶を失ったのではないでしょうか? そこに、そのような物を読ませて……」
左目を掠めた跡が残る文次郎が、土井が記憶喪失になってのではないかと仮説を入れて、問いかける。
「自分が、ドクタケ忍者隊の軍師だと思い込ませた……」
学園長と山田は、書物に目を通す。
そこには、ドクタケ忍者隊は"愛と正義の忍者"と謳われ、忍術学園は倒すべき敵であるという、大まかなあらすじの元に展開されている戯画が描かれていたのだ。
「きり丸の名前を出したのですが、反応ありませんでした」
『忍術学園を"敵"と認識しており、我らに攻撃を仕掛けてきました』
伊作、○○は、戦闘時の天鬼の様子をそれぞれ伝えた。学園長と山田は、俯いているきり丸に顔を向ける。
「きり丸。土井先生は、私達が必ず連れ戻す」
「じゃから、事は内密にな。四年生以下には、余計な心配を掛けたくないのじゃ……頼むの」
山田と学園長は、下級生に対する優しい声色できり丸に話しかけた。
それを聞いたきり丸は、俯いていた顔をゆっくりと上げ、二人を見る。
「学園長先生、山田先生……僕は、大丈夫です。土井先生の事も………、……誰にも言いません」
そう言って、無理やり取り繕った笑顔を浮かべた。
学園長と山田、六年生の面々には、お見通しであったが、誰も口にはしない。
一年の忍たま長屋へ戻るべく、きり丸は学園長の案を後にしていく。
きり丸の寂しげな背中に、とぼとぼ歩いて長屋へと向かう姿を長次、小平太、○○の三人は心配そうにして、見つめる。
「なるほど。土井殿は、ドクタケ忍者隊に……」
突如として天井から、男の声が聞こえた。
外に声が漏れない様にと、小平太がすぐさま、障子を閉める。
声の主は、タソガレドキ忍軍の組頭を務める、雑渡昆奈門であった。園田村の一件から、忍術学園とは中立的関係を維持しつつ、現在は土井・山田不在時に一年は組の教科・実技担当担任を臨時で務めている(今では雑渡が生徒役となり、尊奈門が教壇に立つ形と立場が逆転しているのだが)。
「失礼、ちょっと通りかかったもので……」
「白々しい!」
気配を消し、天井裏から自分達の話を聞いていたであろう雑渡に、留三郎が突っかかる。すかさず、伊作が「冗談だよ」と言い、間に入る。
雑渡は比較的、伊作の所属する保健委員会と友好関係を築いている。その元を辿れば、雑渡が伊作への恩義があるからこそ、成り立っている物だが、詳細については割愛させて頂く。
土井の捜索を協力する形で、今回は忍術学園と関わっていた。しかし、敵軍の組頭である事に変わりなく、六年生全員が警戒心を抱きながら、天井から顔を覗かせる雑渡と対峙する。
「半助は必ず連れ戻す。信用して頂きたい」
「いつです?」
山田の言葉に、雑渡は即座にそう問いかけた。
「一月後ですか? 三月後ですか? その間に、ドクタケが勢力を拡大したら?」
それは、大勢の部下を率いる組頭だからこその発言だ。
ドクタケ忍者隊の軍師として、八方斎の手中 に収められた天鬼こと土井。
天鬼が軍師として着任して間もなく、ドクタケを中心に隣国で様々な動きが見られた。
スッポンタケに自身の領地を譲渡する様にと強要。拒否すれば、力ずくで奪い取ると脅す。
スッポンタケの領地に接する山上の砦にて、一夜城を建設。
チャミダレアミタケが、不審な動きを見せている。
これらの出来事が立て続けに起きるなど、偶然とは思えない。
「元々、そっちの尊奈門先生が原因だろう!」
「黙っておれ」
自分の部下が引き起こした騒ぎであると、文次郎が雑渡を責め立てる。すると、学園長は普段からは想像もつかない低い声で、文次郎を窘 めた。
「力だけのドクタケはさほど、怖くない。しかし、土井半助という知恵が加わったら? 山の上の一夜城、チャミダレアミタケとの連携……今までのドクタケでは考えられない事だ」
雑渡は、八宝斎を"要注意人物"と見なし、一目置いている。それは、八宝斎もまたプロ忍者としての実力が高く、かつて六年生全員に対し、一人で相手にした事もある程に。
「土井殿の無事が知れたからには、私達は引き上げます」
「……御苦労じゃった」
「いえ、良い経験をさせて頂きました」
良い経験とは____、土井の行方を眩ませた原因でも尊奈門に、"土井半助という、一人の教師兼忍者が居なくなった事の重大さ"を、本人に分からせたという意味だ。
忍術学園で過ごした日々で、雑渡なりに飴と鞭を上手く使い分けていたという。
『雑渡昆奈門さん』
雑渡が、天井裏へ姿を消そうとした時だった。○○が、雑渡に声を掛けたのだ。
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学園長の庵には、
学園長の大川平次渦正と山田伝蔵の姿があり、二人の視線の先には_____、負傷して、処置が施された六年生の七名ときり丸が居た。
ドクタケ忍者隊詰所へ向かおうとした際、六年生の面々が、自分達が相手をした軍師の名を口にするも、二人は顔を
「軍師"天鬼"……?」
「聞かぬ名ですな」
ドクタケ忍者隊に所属する忍者は、名前の最後に「鬼」が付けられる。今まで対峙してきたドクタケ忍者に、天鬼という名をした忍者とかち合わせた事は無い。
「我ら七人がかりでも、歯が立ちませんでした」
仙蔵の言葉を聞き、学園長と山田は驚いた様子を見せる。それは歴代の六年生の中でも、戦闘力は上位に値する彼らでも苦戦したというのだからだ。
「そして"天鬼"は、土井先生の顔をしていました」
その言葉を聞いたきり丸は、小さく呻き声を上げて、俯いた。
「土井先生に、家族は?」
「いえ。天涯孤独と聞いております」
学園長の問いに、山田が簡潔に答えた。
忍術学園で教師を務める以前から、土井と関わりがある山田は、土井が天涯孤独であると知っていた為に、親族では無いとすぐに分かった。
「これを……」
仙蔵が、二人に
それは、長次が天鬼との対決の際に手に入れた"ドクタケ忍者隊 巻ノ一"と表紙の書かれた物である。
「尊奈門との果し合いの時、土井先生は何らかの原因で、記憶を失ったのではないでしょうか? そこに、そのような物を読ませて……」
左目を掠めた跡が残る文次郎が、土井が記憶喪失になってのではないかと仮説を入れて、問いかける。
「自分が、ドクタケ忍者隊の軍師だと思い込ませた……」
学園長と山田は、書物に目を通す。
そこには、ドクタケ忍者隊は"愛と正義の忍者"と謳われ、忍術学園は倒すべき敵であるという、大まかなあらすじの元に展開されている戯画が描かれていたのだ。
「きり丸の名前を出したのですが、反応ありませんでした」
『忍術学園を"敵"と認識しており、我らに攻撃を仕掛けてきました』
伊作、○○は、戦闘時の天鬼の様子をそれぞれ伝えた。学園長と山田は、俯いているきり丸に顔を向ける。
「きり丸。土井先生は、私達が必ず連れ戻す」
「じゃから、事は内密にな。四年生以下には、余計な心配を掛けたくないのじゃ……頼むの」
山田と学園長は、下級生に対する優しい声色できり丸に話しかけた。
それを聞いたきり丸は、俯いていた顔をゆっくりと上げ、二人を見る。
「学園長先生、山田先生……僕は、大丈夫です。土井先生の事も………、……誰にも言いません」
そう言って、無理やり取り繕った笑顔を浮かべた。
学園長と山田、六年生の面々には、お見通しであったが、誰も口にはしない。
一年の忍たま長屋へ戻るべく、きり丸は学園長の案を後にしていく。
きり丸の寂しげな背中に、とぼとぼ歩いて長屋へと向かう姿を長次、小平太、○○の三人は心配そうにして、見つめる。
「なるほど。土井殿は、ドクタケ忍者隊に……」
突如として天井から、男の声が聞こえた。
外に声が漏れない様にと、小平太がすぐさま、障子を閉める。
声の主は、タソガレドキ忍軍の組頭を務める、雑渡昆奈門であった。園田村の一件から、忍術学園とは中立的関係を維持しつつ、現在は土井・山田不在時に一年は組の教科・実技担当担任を臨時で務めている(今では雑渡が生徒役となり、尊奈門が教壇に立つ形と立場が逆転しているのだが)。
「失礼、ちょっと通りかかったもので……」
「白々しい!」
気配を消し、天井裏から自分達の話を聞いていたであろう雑渡に、留三郎が突っかかる。すかさず、伊作が「冗談だよ」と言い、間に入る。
雑渡は比較的、伊作の所属する保健委員会と友好関係を築いている。その元を辿れば、雑渡が伊作への恩義があるからこそ、成り立っている物だが、詳細については割愛させて頂く。
土井の捜索を協力する形で、今回は忍術学園と関わっていた。しかし、敵軍の組頭である事に変わりなく、六年生全員が警戒心を抱きながら、天井から顔を覗かせる雑渡と対峙する。
「半助は必ず連れ戻す。信用して頂きたい」
「いつです?」
山田の言葉に、雑渡は即座にそう問いかけた。
「一月後ですか? 三月後ですか? その間に、ドクタケが勢力を拡大したら?」
それは、大勢の部下を率いる組頭だからこその発言だ。
ドクタケ忍者隊の軍師として、八方斎の
天鬼が軍師として着任して間もなく、ドクタケを中心に隣国で様々な動きが見られた。
スッポンタケに自身の領地を譲渡する様にと強要。拒否すれば、力ずくで奪い取ると脅す。
スッポンタケの領地に接する山上の砦にて、一夜城を建設。
チャミダレアミタケが、不審な動きを見せている。
これらの出来事が立て続けに起きるなど、偶然とは思えない。
「元々、そっちの尊奈門先生が原因だろう!」
「黙っておれ」
自分の部下が引き起こした騒ぎであると、文次郎が雑渡を責め立てる。すると、学園長は普段からは想像もつかない低い声で、文次郎を
「力だけのドクタケはさほど、怖くない。しかし、土井半助という知恵が加わったら? 山の上の一夜城、チャミダレアミタケとの連携……今までのドクタケでは考えられない事だ」
雑渡は、八宝斎を"要注意人物"と見なし、一目置いている。それは、八宝斎もまたプロ忍者としての実力が高く、かつて六年生全員に対し、一人で相手にした事もある程に。
「土井殿の無事が知れたからには、私達は引き上げます」
「……御苦労じゃった」
「いえ、良い経験をさせて頂きました」
良い経験とは____、土井の行方を眩ませた原因でも尊奈門に、"土井半助という、一人の教師兼忍者が居なくなった事の重大さ"を、本人に分からせたという意味だ。
忍術学園で過ごした日々で、雑渡なりに飴と鞭を上手く使い分けていたという。
『雑渡昆奈門さん』
雑渡が、天井裏へ姿を消そうとした時だった。○○が、雑渡に声を掛けたのだ。
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