ドクタケ忍者隊 最強の軍師
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翌日、仙蔵の伝達を受けていた事もあり、忍術学園を出発した六年生の面々は、まだ捜索活動に出ていない。
裏々 山の山中を歩き、とある神社前に辿り着く。
七人は、自分達以外の人間の気配が察知されない事を確認する。祠 前に、浮かない顔をした文次郎と、いつもと変わらぬ面持ちの仙蔵が立つ。
「すまんな。貴重な捜索時間を割く形となってしまって」
「学園じゃ、話せない事だから仕方ないよ」
伊作の言葉通り、伝達係の仙蔵が学園内でなく、わざわざこの地を選んだ事に理由がある。
至って簡単。学園内に滞在するタソガレドキ忍軍に盗聴されない様、警戒していただけでなく、下の学年の忍たまにも聞かれてはならなかったのだから。
『文次郎、仙蔵。俺は、二人の話を聞く。口出しはしない』
○○は、あえて二人にそう言った。
これから二人の口から放たれる言葉を、○○は否定も肯定もせず、自分の中で一旦、呑み込むという意味だ。
「我々、六年生と先生方……タソガレドキ忍軍協力の元に行われている、土井先生の捜索。状況が芳 しくないのは知ってるだろ」
この半月の間、山田とタソガレドキ忍者、六年生が総力を尽くして土井の捜索に当たっていたが、以前として手がかりは掴めていない。
その事実は誰もが知っていた。だが、暗黙の了解として、六年生全員の前で口にする者は居なかった。しかし、文次郎が発言した事で、その現実を嫌でも受け止めざるをえない。
「裏々山の山頂付近、山間部の村を捜索しても、手がかりは皆無。最悪の事態も考えた上で、俺達も聞き込みをする必要がある。聞き方から変える………土井先生が……、土井先生が、生きておられない____、」
「何が言いたい」
すると突然、留三郎が文次郎を睨みつけながら、話の腰を追った。
「話を聞け」
「何だと、文次郎!」
「黙ってろ、留三郎!」
「今、喧嘩してる場合じゃないだろう!」
今にでも文次郎の元へ向かおうとする留三郎の前に、伊作が現れる。留三郎の胸部に両手を押し当て、何とか制止させた。
「土井先生は、生きている!」
捜索初日から、留三郎は一貫して土井の生存を信じていた。犬猿の仲といえど、同じ忍たまである文次郎にそれを否定された事で、怒声を発する。
「半月、聞き込みをして何の手がかりも無い」
「明日、行方が分かるかもしれないだろ!」
「山田先生も探してらっしゃるのに、手がかりも掴めてないじゃないか」
そこまで言うと、文次郎は対峙する留三郎から視線を外す。文次郎の視線は左斜めに下がっており、地面に転がる枝や落ち葉を捉えている。
「だから……、………聞き方を変えろって、言ってるんだ」
文次郎は顔を歪めて、確かにそう言った。
「それって……、"怪我人を探す"じゃなくて、その……、………」
伊作の視線が下がり、言葉が詰まる。
聞き込みの際、"背の高い優しげな男性、怪我で負傷した男性"といった、平素の何ら変わりない姿や負傷して、療養している男性と評して、土井の行方を探っていた。
捜索が行き詰まっているこの中で、新たな聞き方をする。二度、同じ事を告げられた。とうにその意味を理解した留三郎が、文次郎の常服の襟元を掴もうとした時だった____、
(……、……長次!!)
これまで沈黙を貫いていた一人である長次が、留三郎を押し退けて、文次郎の襟元を掴みに行ったのだ。
○○が長次の右肩を掴み、動きを止めようとするも、勢いは止まらない。○○と同時に動いた小平太が、長次の左肩を掴む。既に文次郎の常服の襟元は掴まれていたが、長次の動きを二人がかりで止める事は出来た。
「冷静になれ! 忍術学園で何を習ってきたんだ!」
文次郎の傍に立っていた仙蔵が、仲間割れを起こす六年生の面々に喝を入れる。
「これからは、最悪の事も視野に入れて探す……、……良いな?」
文次郎、長次、小平太、○○、留三郎、伊作の顔を順番に見てから、仙蔵はそのように念を押した。
最悪の事____、それは正しく、恩師である土井半助の死亡。それを加味した上で、聞き込みをしなくてはならない。
仮定の話として、土井が尊奈門との果たし合いにて負傷し、渓流に呑まれた。負傷した体で自力で助かるのは難しく、低体温症や溺死といった事態に見舞われる。その際、遺体が発見される確率は限りなく低い。
留三郎と同じく、土井の生存を信じていた長次は、文次郎の襟元を掴む手を下ろす。そして、両膝から崩れ落ちた。
「うがあぁーーーっっ!!」
裏々山の山中から、長次の咆哮が響いた。
やるせない思いが込み上げ、普段からは想像も出来ない程の声の大きさとなって、外へ溢れ出たのだ。
・
下級生達が寝静まった頃____、○○は一人、忍装束を着たまま、運動場を走っていた。
"……土井先生は、優しいお方だ"
"半月となれば、誰かがその考えに辿り着くのは至極当然だ"
"最悪の事態も考えた上で、俺達も聞き込みをする必要がある"
"明日、行方が分かるかもしれないだろ!"
"それって……、"怪我人を探す"じゃなくて、その……、………"
"これからは、最悪の事も視野に入れて探す……、……良いな?"
長次、小平太、文次郎、留三郎、伊作、仙蔵の言葉が一斉に、○○の脳内に木霊する。次第に全員の声が混ざり合い、誰が何を話しているのかさえ、判別が付かなくなっていた。
"それは、土井先生がもう、この世に居ないのかもしれない"
最後に、○○の言葉が木霊した。
○○が足を止めると、運動場から大きく移動しており、演習場まで走っていたのだ。○○は、演習場に設置された手裏剣用の的に目を向ける。
(一年の頃、初めて土井先生と出会った時……手裏剣の実技訓練をやっていたんだっけな)
六年前、○○は水色の忍装束を身に纏っていた。文次郎、仙蔵、長次、小平太、留三郎、伊作とも顔見知りで、その日は山田指導の元、手裏剣の実技訓練に取り組んでいた。
"新しい先生が来た!"
縄鏢 の訓練で傷が付いていない頃の長次が、的から大きく外れた手裏剣を取りに戻って来るや否や、慌てた様子で幼き頃の皆に伝えた。
"新しい先生?"
新しい物に興味を抱きやすい年頃の○○達は、長次が遭遇した新しい先生の元へと走り出す。
一悶着ありつつも、○○達は新しい先生である、若き頃の土井と対面した。
"はじめまして!"
"小平太です!"
"ぼく、伊作です!"
"先生は教科の先生ですか? 実技の先生ですか?"
○○、小平太、伊作、仙蔵が、物怖じせずに若き頃の土井に話しかける。これが現六年生と土井の出会いだった。
・
「おかえり」
「発散してきたのか」
手裏剣練習場から、六年の忍たま長屋へと帰ってきた○○を縁側に座る伊作と仙蔵が出迎えた。
『落ち着かないし、走ってでもしないと発散出来ないから』
そう言いながら、○○は伊作と仙蔵の間に割って入り、腰を下ろした。○○は懐から書き写した地図を取り出し、それを広げて眺める。
『山頂付近、山間部の村で聞き込みをして、全滅か……』
「こうして地図で見ると、僕達も結構な数の村を回ったのがよく分かるよ」
ススキ野原を中心に、山頂付近や山間部の村、上流に当たる位置に建てられた小さな村にも、バツ印が付けられている。代わりに、平野部にはこれといった印は無い。
「……これは、仮説として捉えてもらって構わない」
そこで、聞き耳を立てているお前も来い…、仙蔵は、ろ組の長屋に向かい、そう言った。
○○と伊作の二人も、扉の向こうから出現した気配を察知している。
「バレてた?」
「何がバレてた、だ。私達に気づかせるつもりで、気配を出していた奴が言う言葉か。小平太」
「まぁ、細かい事は気にするな」
長次も居るけどな…、と、小平太に続いて、長次も姿を見せた。日中に見せた取り乱した様子は鳴りを潜め、長次も今は平素の状態に戻っている。
「後は、文次郎と留三郎の二人……だけど……、………」
伊作は、この場に居ない二人の名前を出したが、困った様な顔を見せる。
「任せておけ。引っ張ってでも、連れてくるぞ」
「もそ…文次郎の居所は知っている。ここに連れて来よう」
「じゃあ、私は留三郎を」
「頼むぞ。私達は……そうだな、は組の長屋に移動するとしよう」
そこから、長次と小平太の動きは速かった。一瞬にして姿を消し、長次は文次郎の元へ、小平太は留三郎の元へと向かう。
「頼りになるな。お前の同室達は」
仙蔵に話し掛けられた○○は、得意げに『でしょ?』と答える。笑う回数が少なくなっていた○○が久方ぶりに、小さく笑みを見せたのだ。
『俺だったら、文次郎と留三郎に力の差で逃げられるかもしれない』
「どちらかといえば、○○は逃げる方が得意じゃないかな」
伊作は、○○の俊敏さについて触れた。
文次郎と留三郎相手との力勝負では、些か不安がある。だが、二人から○○が逃げるとなれば、○○が有利であろうと伊作は思ったのだ。
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翌日、仙蔵の伝達を受けていた事もあり、忍術学園を出発した六年生の面々は、まだ捜索活動に出ていない。
七人は、自分達以外の人間の気配が察知されない事を確認する。
「すまんな。貴重な捜索時間を割く形となってしまって」
「学園じゃ、話せない事だから仕方ないよ」
伊作の言葉通り、伝達係の仙蔵が学園内でなく、わざわざこの地を選んだ事に理由がある。
至って簡単。学園内に滞在するタソガレドキ忍軍に盗聴されない様、警戒していただけでなく、下の学年の忍たまにも聞かれてはならなかったのだから。
『文次郎、仙蔵。俺は、二人の話を聞く。口出しはしない』
○○は、あえて二人にそう言った。
これから二人の口から放たれる言葉を、○○は否定も肯定もせず、自分の中で一旦、呑み込むという意味だ。
「我々、六年生と先生方……タソガレドキ忍軍協力の元に行われている、土井先生の捜索。状況が
この半月の間、山田とタソガレドキ忍者、六年生が総力を尽くして土井の捜索に当たっていたが、以前として手がかりは掴めていない。
その事実は誰もが知っていた。だが、暗黙の了解として、六年生全員の前で口にする者は居なかった。しかし、文次郎が発言した事で、その現実を嫌でも受け止めざるをえない。
「裏々山の山頂付近、山間部の村を捜索しても、手がかりは皆無。最悪の事態も考えた上で、俺達も聞き込みをする必要がある。聞き方から変える………土井先生が……、土井先生が、生きておられない____、」
「何が言いたい」
すると突然、留三郎が文次郎を睨みつけながら、話の腰を追った。
「話を聞け」
「何だと、文次郎!」
「黙ってろ、留三郎!」
「今、喧嘩してる場合じゃないだろう!」
今にでも文次郎の元へ向かおうとする留三郎の前に、伊作が現れる。留三郎の胸部に両手を押し当て、何とか制止させた。
「土井先生は、生きている!」
捜索初日から、留三郎は一貫して土井の生存を信じていた。犬猿の仲といえど、同じ忍たまである文次郎にそれを否定された事で、怒声を発する。
「半月、聞き込みをして何の手がかりも無い」
「明日、行方が分かるかもしれないだろ!」
「山田先生も探してらっしゃるのに、手がかりも掴めてないじゃないか」
そこまで言うと、文次郎は対峙する留三郎から視線を外す。文次郎の視線は左斜めに下がっており、地面に転がる枝や落ち葉を捉えている。
「だから……、………聞き方を変えろって、言ってるんだ」
文次郎は顔を歪めて、確かにそう言った。
「それって……、"怪我人を探す"じゃなくて、その……、………」
伊作の視線が下がり、言葉が詰まる。
聞き込みの際、"背の高い優しげな男性、怪我で負傷した男性"といった、平素の何ら変わりない姿や負傷して、療養している男性と評して、土井の行方を探っていた。
捜索が行き詰まっているこの中で、新たな聞き方をする。二度、同じ事を告げられた。とうにその意味を理解した留三郎が、文次郎の常服の襟元を掴もうとした時だった____、
(……、……長次!!)
これまで沈黙を貫いていた一人である長次が、留三郎を押し退けて、文次郎の襟元を掴みに行ったのだ。
○○が長次の右肩を掴み、動きを止めようとするも、勢いは止まらない。○○と同時に動いた小平太が、長次の左肩を掴む。既に文次郎の常服の襟元は掴まれていたが、長次の動きを二人がかりで止める事は出来た。
「冷静になれ! 忍術学園で何を習ってきたんだ!」
文次郎の傍に立っていた仙蔵が、仲間割れを起こす六年生の面々に喝を入れる。
「これからは、最悪の事も視野に入れて探す……、……良いな?」
文次郎、長次、小平太、○○、留三郎、伊作の顔を順番に見てから、仙蔵はそのように念を押した。
最悪の事____、それは正しく、恩師である土井半助の死亡。それを加味した上で、聞き込みをしなくてはならない。
仮定の話として、土井が尊奈門との果たし合いにて負傷し、渓流に呑まれた。負傷した体で自力で助かるのは難しく、低体温症や溺死といった事態に見舞われる。その際、遺体が発見される確率は限りなく低い。
留三郎と同じく、土井の生存を信じていた長次は、文次郎の襟元を掴む手を下ろす。そして、両膝から崩れ落ちた。
「うがあぁーーーっっ!!」
裏々山の山中から、長次の咆哮が響いた。
やるせない思いが込み上げ、普段からは想像も出来ない程の声の大きさとなって、外へ溢れ出たのだ。
・
下級生達が寝静まった頃____、○○は一人、忍装束を着たまま、運動場を走っていた。
"……土井先生は、優しいお方だ"
"半月となれば、誰かがその考えに辿り着くのは至極当然だ"
"最悪の事態も考えた上で、俺達も聞き込みをする必要がある"
"明日、行方が分かるかもしれないだろ!"
"それって……、"怪我人を探す"じゃなくて、その……、………"
"これからは、最悪の事も視野に入れて探す……、……良いな?"
長次、小平太、文次郎、留三郎、伊作、仙蔵の言葉が一斉に、○○の脳内に木霊する。次第に全員の声が混ざり合い、誰が何を話しているのかさえ、判別が付かなくなっていた。
"それは、土井先生がもう、この世に居ないのかもしれない"
最後に、○○の言葉が木霊した。
○○が足を止めると、運動場から大きく移動しており、演習場まで走っていたのだ。○○は、演習場に設置された手裏剣用の的に目を向ける。
(一年の頃、初めて土井先生と出会った時……手裏剣の実技訓練をやっていたんだっけな)
六年前、○○は水色の忍装束を身に纏っていた。文次郎、仙蔵、長次、小平太、留三郎、伊作とも顔見知りで、その日は山田指導の元、手裏剣の実技訓練に取り組んでいた。
"新しい先生が来た!"
"新しい先生?"
新しい物に興味を抱きやすい年頃の○○達は、長次が遭遇した新しい先生の元へと走り出す。
一悶着ありつつも、○○達は新しい先生である、若き頃の土井と対面した。
"はじめまして!"
"小平太です!"
"ぼく、伊作です!"
"先生は教科の先生ですか? 実技の先生ですか?"
○○、小平太、伊作、仙蔵が、物怖じせずに若き頃の土井に話しかける。これが現六年生と土井の出会いだった。
・
「おかえり」
「発散してきたのか」
手裏剣練習場から、六年の忍たま長屋へと帰ってきた○○を縁側に座る伊作と仙蔵が出迎えた。
『落ち着かないし、走ってでもしないと発散出来ないから』
そう言いながら、○○は伊作と仙蔵の間に割って入り、腰を下ろした。○○は懐から書き写した地図を取り出し、それを広げて眺める。
『山頂付近、山間部の村で聞き込みをして、全滅か……』
「こうして地図で見ると、僕達も結構な数の村を回ったのがよく分かるよ」
ススキ野原を中心に、山頂付近や山間部の村、上流に当たる位置に建てられた小さな村にも、バツ印が付けられている。代わりに、平野部にはこれといった印は無い。
「……これは、仮説として捉えてもらって構わない」
そこで、聞き耳を立てているお前も来い…、仙蔵は、ろ組の長屋に向かい、そう言った。
○○と伊作の二人も、扉の向こうから出現した気配を察知している。
「バレてた?」
「何がバレてた、だ。私達に気づかせるつもりで、気配を出していた奴が言う言葉か。小平太」
「まぁ、細かい事は気にするな」
長次も居るけどな…、と、小平太に続いて、長次も姿を見せた。日中に見せた取り乱した様子は鳴りを潜め、長次も今は平素の状態に戻っている。
「後は、文次郎と留三郎の二人……だけど……、………」
伊作は、この場に居ない二人の名前を出したが、困った様な顔を見せる。
「任せておけ。引っ張ってでも、連れてくるぞ」
「もそ…文次郎の居所は知っている。ここに連れて来よう」
「じゃあ、私は留三郎を」
「頼むぞ。私達は……そうだな、は組の長屋に移動するとしよう」
そこから、長次と小平太の動きは速かった。一瞬にして姿を消し、長次は文次郎の元へ、小平太は留三郎の元へと向かう。
「頼りになるな。お前の同室達は」
仙蔵に話し掛けられた○○は、得意げに『でしょ?』と答える。笑う回数が少なくなっていた○○が久方ぶりに、小さく笑みを見せたのだ。
『俺だったら、文次郎と留三郎に力の差で逃げられるかもしれない』
「どちらかといえば、○○は逃げる方が得意じゃないかな」
伊作は、○○の俊敏さについて触れた。
文次郎と留三郎相手との力勝負では、些か不安がある。だが、二人から○○が逃げるとなれば、○○が有利であろうと伊作は思ったのだ。
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