ドクタケ忍者隊 最強の軍師
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二日後、ススキ野原の下を流れる渓流にて、土井が所持していた黒板消しが見つかったと六年生に情報が行き届いた。
一年は組の手入れの悪い物で、布に触れるだけでも、溜まりに溜まったチョークの粉が空気中に舞う。武器にもなり、目眩しに利用出来るのだと、○○は委員会活動中、土井から聞かされた。
『土井先生が使われる武器は少々、異彩の放つ物ばかり。けれどそのおかげで、渓流に落ちてしまわれたのだと手がかりは掴めた』
「もそ…まだ捜索に当たっていない別の村にも、足を運ぶとしよう」
「よーし! じゃあ早速、私はあの商人に話を聞いてくる!」
今日もまた山間部にて、い組、ろ組、は組の三組に別れ、それぞれ聞き込みを開始する。
"土井半助という方を見かけませんでしたか? 若い男性です"
"もそ…背の高い優しげな若い男性です。こちらの村でお見かけした事は?"
"見かけていない? そうですか……いえ、教えて下さり、ありがとうございます……、………いけいけどんどーん!"
捜索に当たる六年生の面々だが、ススキ野原に残された出席簿・渓流に落とされた黒板消し以外に、土井の手がかりを一向に掴めずにいたのだった。
「土井先生って、そんなに特徴の無いお方か?」
『身長は、俺達六年生より……そこらの山賊よりも大きい。目立つ筈だろ』
「もそ…この村に、土井先生は訪れていない……そういう事だろう」
捜索時間終了の間際、ろ組の三人は土井の特徴を話題にして、会話を始める。
『あと、髪が傷んでおられる。これだけ特徴があれば、村人の誰か一人でも気づく筈なのに……いや、かえって長身なのが良くないのか? それか、殺気は消されているとはいえ、村人からしたら、近寄り難いのかもしれない』
「もそ…○○、それは私達が土井先生と出会った頃の話だ。今は、一年は組の生徒達に向け、誤って殺気を見せるような事をしていない。あの頃とは違う」
土井の特徴の多さで、何一つ手がかりを得られないのは何故かと疑問を抱く。いつもの如く、○○は、一人で会話をして自己完結したのだが、そこに長次が割って入った。
「……土井先生は、優しいお方だ」
・
三日後、今日の捜索でも、六年生の面々は土井の手がかりは掴めなかった。
山田も一日の半分をタソガレドキ忍者に同行し、土井の行方を探っているが、やはり見つからない。その事実を知った六年生に、焦りが見え始めてきた。
(今日の夕食、留三郎だけ別の場所で食べた。文次郎と長次は、夜の鍛錬に出掛けている。小平太は、珍しく長屋に残っている。仙蔵は、変わらず長屋に居る。)
○○が書き写した地図には、いくつものバツ印が書かれている。全て、土井の手がかりを探る為に向かった場所だ。
『この地図、今の留三郎に見せないのが懸命かなぁ』
「うん、○○が怪我を負いたくなければね」
独り言のつもりで零したのか、気配を消して背後から現れた人物に話しかけた様に零したのか。両者どちらも当てはまる。
ニコリと笑みを見せた寝間着姿の伊作が、縁側に座る○○の背後に立っていた。
「小平太に、長屋を追い出されたのかい?」
「違うぞ、伊作! ○○は、自分から縁側に座りに行った!」
扉越しに、小平太の声が響く。しかしそれを最後に、声が聞こえてくる事はなかった。
『と……、いう訳で、ここに座っている』
「なるほどね」
そう言い、伊作は○○の隣に座る。
は組の長屋から、留三郎が厠以外の用事で外へ出ていない。小平太同様、珍しく鍛錬にも向かっていないのだ。
「六年間、同室だから。一人で落ち着きたい時もあるさ」
土井の捜索が想定より難航していた事は、留三郎の心の乱れの原因となっていた。忍者を志す者として、心が乱れてはならない。留三郎は夕食時も、就寝前も一人で落ち着ける時間を欲していた。言葉無しで理解していた伊作はこうして、は組の長屋を出て、外に赴いたのだ。
『伊作は、図太い精神力がありますから』
「ははっ、褒めてくれるのは有難いけど、出せる物は何も無いよ?」
『夕飯時なんて毎回、顔を出してるだろ。普通、疲れてる筈だけど、けろっとした様子でさ」
夕食を共にする事は、強制という訳ではない。
留三郎の様に夕食時を数少ない憩いの時間に変え、一人で落ち着いて過ごしたい者も少なからず居る。全員揃って食べたのは、初日だけだ。だが、伊作はいつもと変わらぬ様子で顔を出しており、無欠席なのだ。
「文次郎も留三郎の事には、特に触れなかったもんね」
『だって文次郎は、本人の居ない所で陰口は言わないさ。本人の前でなら、ハッキリと伝える』
「確かに」
文次郎は何だかんだで、人に甘い所があるから……、と、伊作は文次郎の人間性について触れた。
・
翌朝、○○は厠にて用を足すと、ろ組の長屋へ戻ろうと廊下を歩く。
『……、………あれ』
見覚えのある人物が、既に常服に着替えており、草鞋を履こうと縁側に座っていた事に○○は気がついた。
その人物も○○の気配に気がつき、○○の歩いてくる方向に顔を向ける。
『何してるんだ』
長次…、と、名前が零れた。
単独で捜索に当たろうとしているのか……、そこまで考えた○○であったが、長次はそれを読んでいた。
"夜明け前に目が覚めた。そこから、やけに目が冴えてしまい、眠れなくなった。身なりを整え、外に出て、気を落ち着かせようとしていただけだ"……、いつものボソボソ声で、そう言った。
「もそ…らしくない行動を見せてしまったな」
『長次らしくない行動ねぇ……。気になるんだろう、きり丸の事も』
きり丸の名前を出すと、長次はピクリと反応を示す。
図書委員会の後輩だけでなく、休日には文次郎と小平太と共にアルバイトを手伝っている。
かつて、きり丸とペアを組んで参加したオリエンテーリングで優勝し、学費免除の権利を得たのだが、それをきり丸に譲渡したのだ。
「……今は乱太郎、しんベヱ……一年は組の生徒達が、きり丸の傍に居る……。だが、きり丸本人が一番、土井先生の帰りを待っている筈だ」
中在家長次という人間は、筋肉質で大柄な体格、傷の付いた頬、常に無表情という厳つい見た目から、誤解される事が多い。
だが、かつては朗らかな笑顔を見せていた。そして、忍術学園で一番、心の優しい男であると同室の小平太と○○は理解している。
『長屋に戻る』
○○はその場に居座る事はせず、長屋の扉を開ける。扉が完全に締まり、○○の気配が遠のいていくのを確認した長次は、ただ空を見上げた。
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二日後、ススキ野原の下を流れる渓流にて、土井が所持していた黒板消しが見つかったと六年生に情報が行き届いた。
一年は組の手入れの悪い物で、布に触れるだけでも、溜まりに溜まったチョークの粉が空気中に舞う。武器にもなり、目眩しに利用出来るのだと、○○は委員会活動中、土井から聞かされた。
『土井先生が使われる武器は少々、異彩の放つ物ばかり。けれどそのおかげで、渓流に落ちてしまわれたのだと手がかりは掴めた』
「もそ…まだ捜索に当たっていない別の村にも、足を運ぶとしよう」
「よーし! じゃあ早速、私はあの商人に話を聞いてくる!」
今日もまた山間部にて、い組、ろ組、は組の三組に別れ、それぞれ聞き込みを開始する。
"土井半助という方を見かけませんでしたか? 若い男性です"
"もそ…背の高い優しげな若い男性です。こちらの村でお見かけした事は?"
"見かけていない? そうですか……いえ、教えて下さり、ありがとうございます……、………いけいけどんどーん!"
捜索に当たる六年生の面々だが、ススキ野原に残された出席簿・渓流に落とされた黒板消し以外に、土井の手がかりを一向に掴めずにいたのだった。
「土井先生って、そんなに特徴の無いお方か?」
『身長は、俺達六年生より……そこらの山賊よりも大きい。目立つ筈だろ』
「もそ…この村に、土井先生は訪れていない……そういう事だろう」
捜索時間終了の間際、ろ組の三人は土井の特徴を話題にして、会話を始める。
『あと、髪が傷んでおられる。これだけ特徴があれば、村人の誰か一人でも気づく筈なのに……いや、かえって長身なのが良くないのか? それか、殺気は消されているとはいえ、村人からしたら、近寄り難いのかもしれない』
「もそ…○○、それは私達が土井先生と出会った頃の話だ。今は、一年は組の生徒達に向け、誤って殺気を見せるような事をしていない。あの頃とは違う」
土井の特徴の多さで、何一つ手がかりを得られないのは何故かと疑問を抱く。いつもの如く、○○は、一人で会話をして自己完結したのだが、そこに長次が割って入った。
「……土井先生は、優しいお方だ」
・
三日後、今日の捜索でも、六年生の面々は土井の手がかりは掴めなかった。
山田も一日の半分をタソガレドキ忍者に同行し、土井の行方を探っているが、やはり見つからない。その事実を知った六年生に、焦りが見え始めてきた。
(今日の夕食、留三郎だけ別の場所で食べた。文次郎と長次は、夜の鍛錬に出掛けている。小平太は、珍しく長屋に残っている。仙蔵は、変わらず長屋に居る。)
○○が書き写した地図には、いくつものバツ印が書かれている。全て、土井の手がかりを探る為に向かった場所だ。
『この地図、今の留三郎に見せないのが懸命かなぁ』
「うん、○○が怪我を負いたくなければね」
独り言のつもりで零したのか、気配を消して背後から現れた人物に話しかけた様に零したのか。両者どちらも当てはまる。
ニコリと笑みを見せた寝間着姿の伊作が、縁側に座る○○の背後に立っていた。
「小平太に、長屋を追い出されたのかい?」
「違うぞ、伊作! ○○は、自分から縁側に座りに行った!」
扉越しに、小平太の声が響く。しかしそれを最後に、声が聞こえてくる事はなかった。
『と……、いう訳で、ここに座っている』
「なるほどね」
そう言い、伊作は○○の隣に座る。
は組の長屋から、留三郎が厠以外の用事で外へ出ていない。小平太同様、珍しく鍛錬にも向かっていないのだ。
「六年間、同室だから。一人で落ち着きたい時もあるさ」
土井の捜索が想定より難航していた事は、留三郎の心の乱れの原因となっていた。忍者を志す者として、心が乱れてはならない。留三郎は夕食時も、就寝前も一人で落ち着ける時間を欲していた。言葉無しで理解していた伊作はこうして、は組の長屋を出て、外に赴いたのだ。
『伊作は、図太い精神力がありますから』
「ははっ、褒めてくれるのは有難いけど、出せる物は何も無いよ?」
『夕飯時なんて毎回、顔を出してるだろ。普通、疲れてる筈だけど、けろっとした様子でさ」
夕食を共にする事は、強制という訳ではない。
留三郎の様に夕食時を数少ない憩いの時間に変え、一人で落ち着いて過ごしたい者も少なからず居る。全員揃って食べたのは、初日だけだ。だが、伊作はいつもと変わらぬ様子で顔を出しており、無欠席なのだ。
「文次郎も留三郎の事には、特に触れなかったもんね」
『だって文次郎は、本人の居ない所で陰口は言わないさ。本人の前でなら、ハッキリと伝える』
「確かに」
文次郎は何だかんだで、人に甘い所があるから……、と、伊作は文次郎の人間性について触れた。
・
翌朝、○○は厠にて用を足すと、ろ組の長屋へ戻ろうと廊下を歩く。
『……、………あれ』
見覚えのある人物が、既に常服に着替えており、草鞋を履こうと縁側に座っていた事に○○は気がついた。
その人物も○○の気配に気がつき、○○の歩いてくる方向に顔を向ける。
『何してるんだ』
長次…、と、名前が零れた。
単独で捜索に当たろうとしているのか……、そこまで考えた○○であったが、長次はそれを読んでいた。
"夜明け前に目が覚めた。そこから、やけに目が冴えてしまい、眠れなくなった。身なりを整え、外に出て、気を落ち着かせようとしていただけだ"……、いつものボソボソ声で、そう言った。
「もそ…らしくない行動を見せてしまったな」
『長次らしくない行動ねぇ……。気になるんだろう、きり丸の事も』
きり丸の名前を出すと、長次はピクリと反応を示す。
図書委員会の後輩だけでなく、休日には文次郎と小平太と共にアルバイトを手伝っている。
かつて、きり丸とペアを組んで参加したオリエンテーリングで優勝し、学費免除の権利を得たのだが、それをきり丸に譲渡したのだ。
「……今は乱太郎、しんベヱ……一年は組の生徒達が、きり丸の傍に居る……。だが、きり丸本人が一番、土井先生の帰りを待っている筈だ」
中在家長次という人間は、筋肉質で大柄な体格、傷の付いた頬、常に無表情という厳つい見た目から、誤解される事が多い。
だが、かつては朗らかな笑顔を見せていた。そして、忍術学園で一番、心の優しい男であると同室の小平太と○○は理解している。
『長屋に戻る』
○○はその場に居座る事はせず、長屋の扉を開ける。扉が完全に締まり、○○の気配が遠のいていくのを確認した長次は、ただ空を見上げた。
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