ドクタケ忍者隊 最強の軍師
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学園長の庵から姿を消した六年生の面々は、忍装束を脱いで裏返すと、外出時に着用する常服へと着替えた。
裏々山の山間部に位置する田畑の道沿いにて、仙蔵が地図を広げる。山田をはじめ、タソガレドキ忍者が捜索に当たっている土地周辺が描かれたものだ。
「土井先生が尊奈門如きに負けるなど、有り得ん」
「激しく同意」
土井が尊奈門に負けたという出来事は、文次郎と小平太にとって、信用に値しない物と分類されている。
「珍しく意見が合う」
「もそ…」
留三郎や長次もまた、文次郎と小平太と同じ考えを持っているのだ。
「だが、先生が戻られないのは事実だ」
「どこかで動けなくなっているといけない」
仙蔵と伊作は、行方不明となった土井の安否を気にする。○○は仙蔵が手にしている地図に指を当て、土井と諸泉尊奈門の果たし合いが行われたススキ野原と思わしき場所をなぞる。
『大丈夫、いつでも行ける』
「さぁ、聞き込みを始めよう」
い組、ろ組、は組の三組に別れ、それぞれ山間部の村や畑に居る農民や商人への聞き込みを開始する。
文次郎と仙蔵が通った道には、阿修羅像が置かれ、曼珠沙華 が咲いていた。
・
長次、小平太と共に村内で聞き込みに回っていた○○だが、土井に関する情報は何一つ得られなかった。そんな中、○○は小平太と合流を果たす。
「どうだった」
『誰一人として、知らないの一点張りで収穫無し』
「私もだ。首や手を横に振る素振りしか見られなかった」
○○同様、小平太もまた土井に関する情報を得られていない。その直後、二人の元に聞き込みを終えた長次が戻ってきた。
二人から送られた視線から状況を察した長次だが、目を閉じて首を横に振る。三人共々、情報を得られなかったのが初日の結果だ。
「もそ…今日の捜索は、ここまでか」
日は、西の方角に向けて沈もうとしていた。
別行動している文次郎と仙蔵、留三郎と伊作らと情報共有を行う為、田畑にて落ち合う事となっていたのだ。初日の捜索は、ここで切り上げとなる。
『戻ろう』
○○と長次が足を進める中、後ろで腕を組んだ小平太は最後尾についた。
「そう落ち込むな! 今日はまだ初日だ。土井先生は、必ず生きておられる! 私達、六年生が弱気になってどうするんだ。こういう時こそ、いけいけどんどーん!」
快活な声と共に、お決まりの口癖が○○と長次の背後から飛んできた。
『お望みの言葉を言ってやろうか? 落ち込んでないし、弱気にもなっていない』
その言葉通り、○○は土井の情報を得られなかったからと落ち込んでいる訳ではない。長次も頷き、○○と同意見であると言葉無しで伝える。
「まぁ、そうだろうな。言葉を詰まらす事もなく、即座に返事をする元気があるのだから。お前達がすぐ落ち込むような奴ではないと、私とて理解している」
小平太は、意味もなく発言をした訳ではない。
○○は、土井が顧問を務める火薬委員会の委員長を務める。長次は土井の安否以外にも、自身の所属する図書委員会の一年は組、摂津のきり丸を気にかけている。保護者の土井が不在となり、長次はきり丸の精神面が心配なのであった。小平太も他の六年生と同じく、土井を慕っている。それぞれ、土井に対して深い思い入れがあるのだ。
とは言え、忍務だから私情を挟むのは、忍者を志す者として如何なものだろう。土井への思いを優先して、落ち込んだりと弱気になったりと忍務に支障をきたさないだろうか……、と、初めから結果は分かっている前提で、小平太はあのような事を口にした。
途中で、根を上げたりなんてするなよ…、と、釘を指すように、小平太は二人に告げた。
恩師の捜索忍務を降りるという選択肢は、○○と長次の中には無い。それすら分かっている筈なのに、小平太はまだしても口にした。
○○は、ゆっくりと小平太の方に顔を向けると、口を開く。
『根を上げるだなんて、バカタレじゃございませんこと?』
かつて文次郎、留三郎、小平太の三人は女装の補習授業を受けた事がある。結果は不合格。その後も受けた第二の補習授業で、三人は町娘に扮した。
その際、文次郎の言い放った台詞を○○は、自分の言い分を混ぜて真似したのだ。
「○○。それ、文次郎の前でやってみせろ。アイツ、自分の真似をされてるって直ぐに分かるぞ」
「もそ…あの時の女装は、減点ものだった」
「何ぃ? 私が一番、可愛い"お嬢さん"になりきっていただろう?」
『全員、零点だったろ』
その後、文次郎と仙蔵、留三郎と伊作と落ち合ったろ組の面々は、自分達の聞き込みの結果を情報共有した。初日は、土井の手がかりを掴めた者は一人も居なかったのだ。
忍術学園に戻り、久方ぶりに合同で夕食を共にした六年生の面々は、明日も続く捜索に備えて、気力を蓄える。
・
『仙蔵、手元に地図あるか?』
夕食後、い組の長屋に訪れた○○は、仙蔵が昼間に見せた地図の行方について問う。
文次郎は小平太、長次と共に夜の鍛錬に赴いており、不在だ。
『文次郎は留守だし、せっかくだから、ここで書いてくか』
○○はろ組の長屋に戻ると、楮紙 と呼ばれる和紙、硯 、墨汁、細筆を持ってくる。仙蔵から借りた地図を置き、○○は細筆を持つ。まっさらな状態の和紙に、地図を写し始めていく。
サラサラと慣れた手つきで書き写し、○○は一言も発さない。目の前でその姿を見せられている仙蔵もまた、言葉を出さない。恐らく、皆で共有する物以外に、自分だけで情報整理が出来る様にこうして書き写しているのだろう…、と、何年もその光景を見てきた仙蔵は、改めて思ったのだ。
そして、四半時(30分)も経たない内に、○○は二枚目の地図を完成させてしまった。
「前から気になってはいたが、その和紙は学園負担で購入した物か?」
『自腹で購入してる。そもそも、この書き写しだって学園側の命令じゃなくて、自発的に行っている事だ。私用目的で使う和紙に、負担してくれる訳がないだろう』
そんな事が出来てしまえば、会計委員会委員長に、委員会の予算を減らされかねない……、と、○○は、この場に居ない者の名前を出した。
「私は構わないぞ。突然、どこからともなく予算が現れる。出処は不明。無駄な諍 いをせずに、それぞれの委員会に分けられる事で、委員会の活動がより良いものとなるのなら」
『そこに、火薬委員会は含まれているのですかね。そして、"いつも"は諍 いなんて、起きていない様な物言いもどうかと思います』
「私が委員長を務める作法委員会は、予算会議では、事を穏便に進めようと動いていたつもりだが?」
『作法委員の罠の標的にされるのは御免なので、自分の長屋に帰らせて頂きまーす』
ついでに、張り詰めていた気も収まったので……、と、最後に付け足され、○○は誰も居ないろ組の長屋へ戻っていく。
学園一、クールで冷静と謳 われる仙蔵だが、茶目っ気も持ち合わせている。土井の行方が掴めず、明日以降も続く捜索で疲労困憊 にならない様、こうした何気ない会話を交わす事で、己を保つ。大人と子供の境目に立ち、最上級生としての資質も問われる六年生の数少ない憩いの時間なのだ。
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学園長の庵から姿を消した六年生の面々は、忍装束を脱いで裏返すと、外出時に着用する常服へと着替えた。
裏々山の山間部に位置する田畑の道沿いにて、仙蔵が地図を広げる。山田をはじめ、タソガレドキ忍者が捜索に当たっている土地周辺が描かれたものだ。
「土井先生が尊奈門如きに負けるなど、有り得ん」
「激しく同意」
土井が尊奈門に負けたという出来事は、文次郎と小平太にとって、信用に値しない物と分類されている。
「珍しく意見が合う」
「もそ…」
留三郎や長次もまた、文次郎と小平太と同じ考えを持っているのだ。
「だが、先生が戻られないのは事実だ」
「どこかで動けなくなっているといけない」
仙蔵と伊作は、行方不明となった土井の安否を気にする。○○は仙蔵が手にしている地図に指を当て、土井と諸泉尊奈門の果たし合いが行われたススキ野原と思わしき場所をなぞる。
『大丈夫、いつでも行ける』
「さぁ、聞き込みを始めよう」
い組、ろ組、は組の三組に別れ、それぞれ山間部の村や畑に居る農民や商人への聞き込みを開始する。
文次郎と仙蔵が通った道には、阿修羅像が置かれ、
・
長次、小平太と共に村内で聞き込みに回っていた○○だが、土井に関する情報は何一つ得られなかった。そんな中、○○は小平太と合流を果たす。
「どうだった」
『誰一人として、知らないの一点張りで収穫無し』
「私もだ。首や手を横に振る素振りしか見られなかった」
○○同様、小平太もまた土井に関する情報を得られていない。その直後、二人の元に聞き込みを終えた長次が戻ってきた。
二人から送られた視線から状況を察した長次だが、目を閉じて首を横に振る。三人共々、情報を得られなかったのが初日の結果だ。
「もそ…今日の捜索は、ここまでか」
日は、西の方角に向けて沈もうとしていた。
別行動している文次郎と仙蔵、留三郎と伊作らと情報共有を行う為、田畑にて落ち合う事となっていたのだ。初日の捜索は、ここで切り上げとなる。
『戻ろう』
○○と長次が足を進める中、後ろで腕を組んだ小平太は最後尾についた。
「そう落ち込むな! 今日はまだ初日だ。土井先生は、必ず生きておられる! 私達、六年生が弱気になってどうするんだ。こういう時こそ、いけいけどんどーん!」
快活な声と共に、お決まりの口癖が○○と長次の背後から飛んできた。
『お望みの言葉を言ってやろうか? 落ち込んでないし、弱気にもなっていない』
その言葉通り、○○は土井の情報を得られなかったからと落ち込んでいる訳ではない。長次も頷き、○○と同意見であると言葉無しで伝える。
「まぁ、そうだろうな。言葉を詰まらす事もなく、即座に返事をする元気があるのだから。お前達がすぐ落ち込むような奴ではないと、私とて理解している」
小平太は、意味もなく発言をした訳ではない。
○○は、土井が顧問を務める火薬委員会の委員長を務める。長次は土井の安否以外にも、自身の所属する図書委員会の一年は組、摂津のきり丸を気にかけている。保護者の土井が不在となり、長次はきり丸の精神面が心配なのであった。小平太も他の六年生と同じく、土井を慕っている。それぞれ、土井に対して深い思い入れがあるのだ。
とは言え、忍務だから私情を挟むのは、忍者を志す者として如何なものだろう。土井への思いを優先して、落ち込んだりと弱気になったりと忍務に支障をきたさないだろうか……、と、初めから結果は分かっている前提で、小平太はあのような事を口にした。
途中で、根を上げたりなんてするなよ…、と、釘を指すように、小平太は二人に告げた。
恩師の捜索忍務を降りるという選択肢は、○○と長次の中には無い。それすら分かっている筈なのに、小平太はまだしても口にした。
○○は、ゆっくりと小平太の方に顔を向けると、口を開く。
『根を上げるだなんて、バカタレじゃございませんこと?』
かつて文次郎、留三郎、小平太の三人は女装の補習授業を受けた事がある。結果は不合格。その後も受けた第二の補習授業で、三人は町娘に扮した。
その際、文次郎の言い放った台詞を○○は、自分の言い分を混ぜて真似したのだ。
「○○。それ、文次郎の前でやってみせろ。アイツ、自分の真似をされてるって直ぐに分かるぞ」
「もそ…あの時の女装は、減点ものだった」
「何ぃ? 私が一番、可愛い"お嬢さん"になりきっていただろう?」
『全員、零点だったろ』
その後、文次郎と仙蔵、留三郎と伊作と落ち合ったろ組の面々は、自分達の聞き込みの結果を情報共有した。初日は、土井の手がかりを掴めた者は一人も居なかったのだ。
忍術学園に戻り、久方ぶりに合同で夕食を共にした六年生の面々は、明日も続く捜索に備えて、気力を蓄える。
・
『仙蔵、手元に地図あるか?』
夕食後、い組の長屋に訪れた○○は、仙蔵が昼間に見せた地図の行方について問う。
文次郎は小平太、長次と共に夜の鍛錬に赴いており、不在だ。
『文次郎は留守だし、せっかくだから、ここで書いてくか』
○○はろ組の長屋に戻ると、
サラサラと慣れた手つきで書き写し、○○は一言も発さない。目の前でその姿を見せられている仙蔵もまた、言葉を出さない。恐らく、皆で共有する物以外に、自分だけで情報整理が出来る様にこうして書き写しているのだろう…、と、何年もその光景を見てきた仙蔵は、改めて思ったのだ。
そして、四半時(30分)も経たない内に、○○は二枚目の地図を完成させてしまった。
「前から気になってはいたが、その和紙は学園負担で購入した物か?」
『自腹で購入してる。そもそも、この書き写しだって学園側の命令じゃなくて、自発的に行っている事だ。私用目的で使う和紙に、負担してくれる訳がないだろう』
そんな事が出来てしまえば、会計委員会委員長に、委員会の予算を減らされかねない……、と、○○は、この場に居ない者の名前を出した。
「私は構わないぞ。突然、どこからともなく予算が現れる。出処は不明。無駄な
『そこに、火薬委員会は含まれているのですかね。そして、"いつも"は
「私が委員長を務める作法委員会は、予算会議では、事を穏便に進めようと動いていたつもりだが?」
『作法委員の罠の標的にされるのは御免なので、自分の長屋に帰らせて頂きまーす』
ついでに、張り詰めていた気も収まったので……、と、最後に付け足され、○○は誰も居ないろ組の長屋へ戻っていく。
学園一、クールで冷静と
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